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着信アリと言えばあるけど無いと言えば無い

タイトル:着信アリと言えばあるけど無いと言えば無い

ある日、俺は魔族にやられこの世を去った。
魔族にやられた者は空中をさまよい苦しむと
あの聖典・ドラゴンボールは語っていたが
別にそうでもない。

霊だし体は無いし、神経が刺激されて痛むという事もなく、
霊は肉体と違って寿命が無いから
不老不死をそのまま手に入れたようなものになる。

ただ街中をずっとさまよいながら
人間の行き来するのを眺めているだけ。
体が無いから別に栄養を取る必要もなく、
霊はただ生き長らえるだけの存在だったらしい。

唯一、苦しみがあるとすればそれは孤独だ。
誰も相手にしてくれない。
見えないからそもそも人間には相手できない。

でも自分では体の輪郭がうっすらとあり、
少し透明がかった存在になっている事は自覚する。

それに棺桶に何か入れて
持って行けるようにと人間はよくやってるが、
あれは本当だったらしく、俺の場合は携帯電話。
携帯を持っている時に魔族にやられ
この世を去ったもんだから、
携帯は霊になった今でも肌身離さず持てる
アイテムになっていたらしい。

しかし携帯持ってても、誰からもかかってこない。
当たり前のこと…
だと思っていたらかかってきた。

「こ、これは!?」

なんとその着信音は
あの映画で見た『着信アリ』のテーマ曲。

霊になった今でもあいつは襲ってくるのか!?
と少し思ったが、俺はその時あまりに孤独だったので
「別にそいつでもなんでもイイ!とにかく人の形をしたものに会いたい!」
と強く願ってしまい、速攻で電話に出た。

で、あの映画通りの展開になったわけだが
なにぶん俺は体を持たず霊の存在。
あいつの攻撃全部が効かず、むしろあいつの体を持って
「ここに居てくれえ!1人で寂しいんだよお!」
と声を大にして延々訴えていた。訴え続けると、あいつは少し根負けしたような感じになり少しだけ俺のそばに居てくれた。

おそらく自分の力が全く効かなかったことが
俺に対する対等の感覚を呼び、
「こいつに何かしても意味が無い、
だったら別のヤツをターゲットにした方が
自分にとっても得になる…」
みたいな思惑を芽生えさせ、一種の諦めのようなものを見せたのだろうか。

それから寂しかったときの自分の心、
これまでの思い出、その時々で感じていたこと、
こうしたいああしたいという欲望の事、
それらを延々俺はあいつにすがり付くように話し続けた。

それがウザかったのか。
その時限りで、あいつは2度と俺の前に現れてくれなくなった。
だからもう今は着信ない。

でもさすがは霊の存在と言ったところか。
霊同士ならあいつの着信番号が
しっかり俺の携帯に残されており、
それから俺は毎日毎日、自分の孤独を埋める為にと
あいつの携帯にかけ続けていた。

どうやらブロックをしないところを見ると、
あいつも少しは俺の事を許容してくれている。そう信じている。

そのうちまた会える気がする。
会ってまた話を聞いてもらえると今は信じる。
俺は今日も、あいつに電話をかけ続けている。

(着信アリのあの霊が1人で)

着信アリのあの霊「ひっ!またかかってきた!?やめて、お願いだからもうやめてよぉ!」

動画はこちら(^^♪
【怖い】【喫茶店で上映されてる映画の感覚☕】【ドラマ小説】【ショートホラー系~心理ストーリー】着信アリと言えばあるけど無いと言えば無い I have a call but it's not there (youtube.com)

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