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エスカレート

タイトル:(仮)エスカレート

▼登場人物
●夏末礼人(かすえ れいと):男性。27歳。独身サラリーマン。
●夢野佳澄(ゆめの かすみ):女性。26歳。礼人の同僚。かなり美人。
●トラックの兄ちゃん:男性。40代。一般的なイメージでお願いします。
●金井夢葉(かない ゆめは):女性。20代。礼人の欲望と理性から生まれた生霊。

▼場所設定
●某IT企業:礼人達が働いている。一般的なイメージでお願いします。
●バー『UNREQUITED LOVE』:お洒落なカクテルバー。礼人の行きつけ。
●街中:会社の帰り道や公園横の道など一般的なイメージでOKです。

NAは夏末礼人でよろしくお願い致します。

イントロ〜

皆さんこんにちは。
皆さんには今、片想いしている人は居ますか?
特に学生の頃なんか、想っている人が居れば
ついその人を目で追ってしまい、暫く悩まされてしまった…
なんて経験は無かったでしょうか?
それは大人になってもやはり同じ事で、
気になる人が目の前に現れるとついその人に心を奪われ、
思わず理性も人生も何かに奪われてしまう事があるようです。
今回はそんな人生を辿ってしまった
ある男性にまつわる不思議なお話。

メインシナリオ〜

ト書き〈会社〉

礼人「はぁ…イイなぁ。佳澄ちゃん。本当に可愛くて綺麗で、気品もあって、あんなに溌剌としていて…」

俺の名前は夏末礼人。
今年27歳になる独身サラリーマン。
今は都内のIT企業で働いてるが、
俺には片想いしている人がいた。

彼女の名前は夢野佳澄さん。
俺とはほぼ同期に入った彼女で、一緒に働き始める
ようになってからすぐ俺は彼女に一目惚れしていた。

でも、彼女は俺の事なんか見向きもしない。
俺は生まれつき器量が悪く、奥手な性格。
彼女に近づく事すらできず、いつもただ、
遠くから彼女を眺めているだけ。

ト書き〈会社帰り〉

礼人「はぁ。お疲れ様〜」

その日の会社帰り、久しぶりに飲みに行った。

(バー『UNREQUITED LOVE』)

礼人「はぁ。…イイなぁ、彼女。あんな彼女ともし付き合えたら…」

思う事はやっぱり佳澄ちゃんの事ばかり。
そうして行きつけのバーでいつものように飲んでいた時…

夢葉「こんばんは♪お1人ですか?よかったらご一緒しません?」

いきなり声をかけてくる人がいた。
振り返って見ると結構な美人。

礼人「あ、は、はい…どうぞ」

落ち込んだ拍子に何となく寂しかったので、
俺は彼女と一緒に飲む事にした。

彼女の名前は金井夢葉。
都内で恋愛コンサルタントをしていたらしく、
それから少し話も弾んだ。

お互い軽く自己紹介なんかし合い、
世間話から悩み相談のような形になってゆく。
1つ気づいた不思議な事は、
彼女とこうして一緒にいるだけで何となく懐かしさを思い、
「もしかして昔どこかで会った人?」
という気持ちになってくる。

そんな気持ちにさせられるせいか、
不思議と彼女に対しては欲情を抱かなかった。

そしてもう1つ不思議な事は、
彼女と話していると自分の事を打ち明けたくなる。
その流れで俺は、今の自分の悩みを全て彼女に打ち明けていた。

夢葉「そうなんですか?片想いされている人が」

礼人「ええ。いやぁお恥ずかしい話です。こんな歳になってまだこんなことを言って…あははwボク溜まってるんでしょうかね?あははw」

本当に愚痴のような相談だったが、
それでも彼女は真剣に聴いてくれていた。

夢葉「いえいえ、健全な男性である事の証明だと思いますよ?誰でも想う人がそばに居たらそんな気持ちにさせられます」

礼人「はぁ」

夢葉「良いでしょう。ここでこうしてお会いできたのも何かのご縁。私がそのお悩みを少し軽くして差し上げましょうか?」

礼人「え?」

そう言って彼女は次に会う約束を俺に取り付け、
今日から3日後に、又この店で会おうと言ってきた。

ト書き〈3日後〉

そして3日後の夜。
俺は又このバーに来ていた。

礼人「ええっ!?こ、これって…」

夢葉「いかがです?あなたが想われている人は、多分その方(かた)じゃないですか?」

心底、驚いた。
なんと彼女は、あの佳澄ちゃんの写真を何枚も撮って持ってきており、
それを俺の前に並べてきたのだ。

写真の数は50枚ほど。
驚いたのは、外に居る時の彼女の姿だけでなく、
プライベートの姿…つまり彼女が家に居る時の写真まで
しっかり撮って持参していた事。

礼人「こ、こんなのどうやって撮ったんですか!?そ、それにこれは、プライバシーの侵害…。あ、あなたもしかしてヤバい人なんじゃ…?」

夢葉「ウフフ♪まぁ私は恋愛コンサルタントをしている傍ら、探偵じみた事までしなきゃならない事もあるんですよ。大丈夫です。この事が外に漏れるなんて事はありませんし、事後処理のほうもしっかりしていますから。あなたさえ、外部に漏らさなければ…大丈夫ですよ」

礼人「は、はぁ…?」

明らかに犯罪に近い行為…いや犯罪そのものだろ。
でも俺はこの時、満更でもない気持ちになった。
どこからどのようにしてこの写真を撮ってきたのか知らないが、
そんな方法や写真の出どころはどうでも良い。

とにかくあの人…佳澄ちゃんの
こんな写真まで手に入れる事が出来るなんて!
そっちの嬉しさ・刺激のほうが遥かに勝ってしまい、
俺はその写真を出来れば、払える限りのお金で買おうとまでしていた。

しかし夢葉さんは…

夢葉「フフ♪そんなに気に入られたのならその写真、無料で差し上げますよ?私がしている仕事はボランティアでして、お金を取ったりするような事はありませんから」

礼人「ええっ!?む、無料で…?」

夢葉「ええ」

なんと無料(タダ)で全部くれると言う。

礼人「あ、有難うございます!ほ、ホントに頂けるんですねこれだけの彼女の写真を!」

夢葉「ええ、どうぞ♪」

礼人「あ、あはは…wす、すごい…」

佳澄ちゃんを写したそのプライバシーの写真の内容は
絶対彼女が人に言えない事。
つまり恥ずかしい時の写真まで入っており、
俺はそれ目当てにこれらの写真もどうしても欲しい…
そう願っていたのだ。

でもこのとき夢葉さんは、俺に1つだけ注意してきた。

夢葉「でも礼人さん、1つだけ約束して下さいね。その写真は差し上げますけど、その写真を悪用するような事だけはしないで下さい」

礼人「え?」

夢葉「私はあなたの今抱えておられるお悩みを、少しでも軽くして差し上げようとその写真を撮ってきました。ですからあなたの今の悩みは、全てその写真の中だけに留めるようにして下さい。絶対、一線を超えて彼女に迫ったりしないように」

礼人「…?は、はぁ」

なんの事か少しよく分からなかったが、
つまりこの写真を使って彼女に迫るような事はするな…
そう言われてるんだと思った。

礼人「…あ、あははw大丈夫ですよそんな事!ずっと想ってきた彼女の写真がこうして手に入った以上、これ以上の喜びなんてありませんから!」

礼人「本当に会社では、彼女に近づく事も出来なかったような僕なんです。その彼女を今こうしてゆっくり眺めて居られるだけで、本当に最高の幸せですよ…」

とは言うものの、佳澄ちゃんの恥ずかしい写真まで
そのとき手に持っていたから、自分の言ってる事が
少し滑稽に思えはしたけど。

夢葉「そうですか。それなら安心ですね。でも人は欲望に駆られた時、つい魔が差したりするものですから、その辺りにだけはどうかご注意を」

ト書き〈数週間後〉

それから数週間後。
俺は佳澄ちゃんの写真をずっと傍らに置き、
毎日の活力・刺激にしようと、ずっと彼女を眺めて
自分を慰めていた。

でも…

礼人「ハァハァ…や、やっぱり…やっぱりダメだ…!しゃ、写真だけじゃもう我慢できない!」

となってしまい、俺はある時、ある行動に出た。

ト書き〈脅し〉

会社帰り、ひとけの引いた頃合いを見計らい、
俺は初めて佳澄ちゃんを自分の元へ引き寄せ、
更にひとけの無い所へ連れて行った。

そして…

礼人「グフフw佳澄ちゃぁん、キミ、外では結構上品ぶってるけど、1人になると結構いろんな事してるんだねぇ?ハハwこんな恥ずかしい事までさ…?」

佳澄「えっ…?!や、な、なにコレ!?」

俺はそこで夢葉さんに貰ったあの写真を全部、佳澄に見せつけそう言った。
そこには佳澄のあられもない姿が写されており、見るだけで彼女は当然赤面。

佳澄「か、返して!こ、こんな事やめてよ!」

佳澄は焦るようにそう言ってきた。
でもこの写真はみんなコピーしてあり、
ここにあるのは全てレプリカ。

佳澄「そ、そんな…」

礼人「グフフw分かったかい?君はもう僕の言う事を聞くしかないんだ。まぁ手始めにさぁ、明日の夜、僕のアパートまで来てくれないかなぁ?そこでこの写真の事、じっくり相談してもイイんだよ?w」

顔を青ざめさせた彼女に対し、俺はそう言って明日の夜、
自分の部屋へ来るようにと彼女を誘った。

ト書き〈帰り道を1人歩きながら〉

そしてその日の帰り。
一旦、佳澄ちゃんとは別れて、
俺はいつものように帰宅する。

礼人「グフフフwついに思いを遂げられる!アッハハァ〜w彼女のあの肉付きの良い体…全部俺のモノに出来るんだぁ〜wケヒヒヒw」

俺はもう欲望に取り憑かれており、
彼女の全てを奪う事しかもう考えられない。

そうして、いつもの帰り道を1人で歩いていた時…

夢葉「こんばんは、礼人さん」

礼人「えっ?!」

いきなり後ろから声をかけられて驚いた。
そこは一通路の路地裏で、それまで人の気配は何もしなかったのに
急に現れた事に少し不思議さえ覚えた程。

礼人「ゆ…夢葉さん?!」

そこに居たのは、紛れもなく夢葉さん。
そして彼女は、表情を1つも変えずにこう言った。

夢葉「礼人さんあなた、私との約束を破りましたね?あれ程あの写真を悪用しないように言っといたのに」

礼人「えっ??」

夢葉「その写真を利用して佳澄さんを脅したでしょう?あなたは一線を超えてしまったんです。その事についての責任は、今から取って貰わなきゃなりません」

なぜ彼女がその事を知っていたのか?
確かに疑問だったが、でも、その時あまりに一方的に
そう言われたのもあり、俺は段々怒りを覚えてしまい…

礼人「な、何の事を言ってるんですか!あなた、一体何なんですか!?僕の前に急にちょろちょろ現れたりして!…もしかして僕のこと尾行してたんですか!?もうイイからどいて下さい!あなたには関係ない事でしょう!」

そう怒鳴るように言ってその場を立ち去ろうとした時、
すれ違い様に彼女が指を鳴らした。
その瞬間、俺は1度意識が飛んだ。

ト書き〈オチ〉

そして何秒後か何分後かに目覚めた時、
夢葉はもうそこに居なかった。

礼人「…な、何なんだよこれ。俺、寝てたのか…?」

訳の分からないまま、とりあえず又起き上がり、
それから帰路につく。

そして自宅から最寄りの公園横の道を通っていたとき自販機が見え、
そこで俺はなぜかすごく喉が乾いた。

おあつらえ向きにその自販機の横には青いベンチがあり、
そこに俺はとりあえず手に持っていた
佳澄のあの写真を入れた封筒を置き、
自販機でコーヒーを買ってベンチに座る。

そして乾いた喉を潤しながらコーヒーを飲んでいた時…

礼人「うわっぷ!…ああっ!?」(飛んでいく写真を眺めながら叫ぶ)

といきなり突風が吹いてきて、
横に置いていた封筒の中の写真がなぜか外に飛び出し、
そのまま風に乗って散らばった。

俺は急いでベンチから立ち上がり、
その写真を全部かき集めようと道に躍り出た。

するとそこへ…

運転手「あっ、危ない!!」

ここはめったに車が通らない道だったのに
その時に限って軽トラが向こうからやってきて、
そのまま俺を思いきりはねてしまった。

礼人「うう…か…佳澄ちゃんと…せっかく約束…したのに…こんな所で…」(道を這いずりながら)

俺はそれから3日後。
その事故が理由でこの世を去ってしまった。

ト書き〈少し時間を巻き戻し道端に倒れてる礼人を眺めながら〉

夢葉「やっぱりこうなってしまったか。欲望に取り憑かれた人間の末路というのは得てしてこんなもの。ある日、急にやってきた何かのきっかけで、ふとその人生を終わらせてしまう」(道に散らばる写真を拾い集めながら)

夢葉「私は礼人の欲望と理性から生まれた生霊。欲望の中に理性を見出し、それを歯止めにし、なんとか真っ当な人生を歩んで欲しかったけど無理だったわね」

夢葉「さっき佳澄さんのほうにも、あなたがこんな末路を辿ってしまった事を伝えておいたわ。だからもう彼女があなたのアパートに行く事もないでしょう。私があなたを眠らせた時、あなたの人生はもう終わっていたのよ。それに気づかずまだ欲望に走ろうなんて。人は自分で気づかない程、哀れな生き物なのかも…」

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