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トライポフォビア

タイトル:(仮)トライポフォビア

▼登場人物
●木津下 真希(きづした まき):女性。34歳。独身OL。トライポフォビア。
●加瀬流月(かせ るづき):女性。30代。真希の本心から生まれた生霊。

▼場所設定
●真希の自宅:都内にある一般的なアパートのイメージで。
●カクテルバー:都内にあるお洒落なカクテルバー。流月の行きつけ。

▼アイテム
●一杯のカクテル:流月が真希に勧める特製のカクテル。これを飲むとそのとき気付かなった大事な事に気付かせ、何らかの形で夢の中へいざない安眠させる。

NA木津下 真希でよろしくお願い致します。

イントロ〜

あなたは、何かの恐怖症を持って居ますか?
この恐怖症に悩む人というのは、世の中、結構多いものです。
自分が既にその何らかの恐怖症になっている事に気づかない人も多く、
或る時いきなり気づいて、運悪くどうにかなってしまう事も。
今回はそんな人の日常のひとコマをピックアップ。
そのひとコマだけでその人…
彼女の人生を語り終えるには充分でした。

メインシナリオ〜

ト書き〈部屋の中〉

私の名前は木津下 真希(きづした まき)。
今年34歳になる独身OL。

私は今、極度の恐怖症に悩んでいた。
それはトライポフォビア。
いわゆる集合体恐怖症である。

テレビを見る時でも本を見る時でもネットを見る時でも図鑑を見る時も
とにかくその「集合体」に気をつけて見るようにしている。

私がなぜその恐怖症に悩み始めたかと言えば、
それは自分の肌にできた湿疹が理由(もと)だった。
赤いイチゴのような斑点のようなその湿疹。

もとから肌は強いほうでなく、
それでも自分の美意識には過剰だったのもあり、
そしてちょうど恋をし始めようとしていた時でもあって、
私はその皮膚病に悩み苦しみ、挙句の果てにこうなった。

かかりつけの主治医に言わせれば、
「大した事ない。すぐ治るでしょう」
との事だったが、女の私には大した事あり、
それがもとで世の中の全てが終わり…
そこまで落ち込んだ程なのだ。

こんな私みたいな人、女の中でも珍しいだろう。
およそ男には理解できない。

太宰治が書いた『皮膚と心』という小説の内容もよくわかる。

かぼちゃの種、砂利道、胡麻、蜂の巣、蓮の種、
そして月面に至るまで、あんなのを図鑑でもネットでも見てしまえば
今の私にはもう耐えられない。

そこで見た集合体が今この私の肌にも存在している?
そう思うと恐怖のようなものすらやってくる。

ト書き〈カクテルバー〉

そんな或る日、私は飲みに行った。
日頃の憂さ晴らし。

するとそこで1人の女性に出会った。
名前は加瀬流月(かせ るづき)さん。
都内で心理カウンセラーのような仕事をしてるらしく、
どこか上品ながら、心休めてくれるものがある。

そのせいか私はその時の自分の悩みを彼女に打ち明けていた。

流月「まぁ、集合体恐怖症?」

真希「え、ええ。お恥ずかしい話、この歳でそんな事で悩むようになっちゃって…」

彼女は真剣に聴いてくれていた。

流月「何も恥ずかしい事なんてありません。誰しもそんな恐怖症の1つや2つ持っていますよ?でもあなたのその恐怖症は本当にひどいようですね?」

私のその恐怖症は益々ひどくなっていた。
最近ではアスファルトを歩いているだけでも
その地面がツブツブの集合体に見えてきて、
もうそこを歩きたくなくなる。

本を読んでいたって字面の並びや、
シラミのようなルビを見た瞬間、
またトライポファイアの発作のようなものがやってきて、
それまでのようには読めなくなる。

全てはあの時期に、私の肌にできた湿疹のせい。
こんな醜い私が恋愛なんて…と1人勝手に決めてしまい、
そのとき恋していた相手の事も諦めた。

私の人生は変わったのだ。

その事を延々話しつつ彼女に向き合っていた時、
彼女は1つ、諭すように私に言ってきた。

流月「なるほど。確かに大変だと思います。私もこのお仕事を長年している傍ら、そのような恐怖症に悩む人の事を多く見てきました。その上で今のあなたの状態を見れば、今後一生、その事で悩み続けるかもしれません」

真希「え…?」

流月「良いでしょう、こちらをどうぞ。あなたをその悩みから永遠に解放してくれるお薬です」

そう言って彼女が勧めてきたのは、
そこでオーダーした一杯のカクテル。

真希「え?…お薬って、どう言う事です?これカクテルじゃ…」

「担がれてるのか?」なんて思いながら少し怒り調子に訊いたが彼女は…

流月「フフ、どうか気を鎮めて。担いでるんじゃありませんよ。本当の事です。それを飲めば、あなたは悩みから解放されます。信じるかどうかはあなた次第。今すぐその悩みを全て解消したければ、それを飲む事です。信じられない方法で、あなたは永遠の平安を手にする事ができるでしょう」

そこまで来て、彼女にとても不思議なものを感じ始めていた。
まず、彼女に言われた事ならどんな事でも信じさせられてしまう。
他の人が言ってくるのに比べれば、彼女の言葉は説得力がまるで違う。

そして「昔どこかで1度会った事のある人?」みたいな感覚を投げかけてきて、
それがもとで心が解放させられ、彼女の言葉をスッと受け入れてしまう。

これは不思議な体験だった。

気づくと私は「お薬」と称して勧めてきたそのカクテルを手に取り、
その場で一気に飲み干していた。

そして彼女は続けて言う。

流月「フフ、お役に立てて何より。ところで真希さん?あなた1つだけ気づいてない事があります」

真希「ふぅ。…え?気づいてない事?なんですかそれ?」

流月「こちらをご覧下さい」

彼女は持っていたバッグの中から
1枚のパンフレットのような物を取り出し、
それを私に見せてそう言った。

真希「こ、これは…?」

流月「そこに記載されている写真は、人体模型を象って描かれた人の体内の様子。その編みかけ部分は実は、人の細胞1つ1つを表しているのです…」

それを聞いた瞬間、私はカッと目を見開き心が開かれ…

真希「うわぁあぁ!!ギャアアァアァ!!!」

とその場に卒倒した。

どうやら失神してしまったようで、
狂ったように気を失った私はそのとき運悪く
カウンターの角に頭をぶつけそのまま昏睡で
その後の人生をずっと送る事になったらしい。

ト書き〈自宅で彼女の世話をしながら〉

流月「フフ、これであなたはもう夢の中で悩む事は無い。起きて居ればずっとその悩み事が続いていたわ。私はあなたの内から生まれた生霊。あなたの本心の願いを叶える為だけに現れた」

流月「私があのとき見せた写真は人間の細胞の1つ1つ。1人の人間の体の内には60兆個もの細胞が集まり、それで人体を形成し生かされている。彼女はそれを自分の内に知った瞬間、実は自分そのものがトライポフォビアの原型だと知り、そこから逃れる事なく、狂って卒倒していた」

流月「まさに灯台もと暗し、よね。私が今後、ここであなたの世話をずっとしてあげる、あなたはもう何の心配もせずに、その夢の中で幸せを掴むのよ?あの時あなたに勧めたカクテルの中には、その為の成分も含まれてるから…」

動画はこちら(^^♪
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