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交通事故で死んだ親友にもう1度 逢いたい

タイトル:交通事故で死んだ親友にもう1度 逢いたい

▼登場人物
●俊也(しゅんや):男性。25歳。普通のサラリーマン。旅行に行く時にバスの事故に遭う。
●シンジ:男性。25歳。俊也の親友。同じく旅行時に事故に遭う。
●ユカリ:女性。25歳。俊也の友達。同じく旅行時に事故に遭う。
●夢野ミライ(ゆめの みらい):女性。20代。俊也の「どうしても死んだ親友と話がしたい」という思いから生まれた生霊。
●添乗員:女性。30代。一般的なツアー旅行の添乗員のイメージで。
●運転手:男性。50代。ツアーバスの運転手。

▼場所設定
●会社:俊也、シンジ、ユカリが働いている。一般的なIT企業のイメージで。
●バスの中:一般的なバスのイメージで。事故に遭う。
●居酒屋「リ・ユニオン」:座敷のある落ち着いた感じの居酒屋。ミライの行き付け。
●シンジの家:一般的な戸建て住宅のイメージで。
●俊也の自宅:一般的な戸建て住宅のイメージで。

▼アイテム
●ミステリアスノート:死者との連絡交換が出来るノート。

NAは俊也でよろしくお願いいたします。

メインシナリオ~
(メインシナリオのみ=4145字)

ト書き〈会社〉

シンジ)「おーい、俊也!このまえ言ってたツアー旅行の予約取れたぜ♪」

俊也)「え、マジかよ!?やったぁ!」

ユカリ)「取れないと思ってたのによかったぁ!」

NA)
俺の名は俊也(しゅんや)(25歳)。
どこにでもいる普通のサラリーマン。
旅行の予約を取ってくれたのはシンジ。
俺の親友だ。
そして横にいるのはユカリで、中学からの友達。
皆、幼馴染の同級生。
俺達は、1泊2日のツアー旅行に行く予定だった。

俊也)「あのツアー人気だからもう予約取れないかと思ってたけど、ホント運が良かったなぁ俺達♪ま、これも日頃の俺達の行ないが良いからかもな♪」

NA)
今度の旅行はバスツアー。
観光名所を順々に巡って行く。
俺は今からとても楽しみにしていた。

ト書き〈旅行当日〉

NA)
旅行当日。
集合場所には沢山の旅行客が集まっていた。
山越え谷越えし、都内から信州に入る。
そしてそのまま関西方面へ行く予定だ。

ト書き〈快適に走る〉

添乗員)「右手に観えますのがー・・・」

シンジ)「やっぱり来て良かったなぁ」

ユカリ)「ホントホント♪」

俊也)「景色もキレイだなぁー♪」

NA)
そんなこんなでワイワイしながらバスは快適に走っていった。

ト書き〈落石事故から転落へ〉

NA)
そうしてちょうど山梨県から長野県へ差し掛かろうとした時・・・

運転手)「うわぁ!危ない!」

NA)
一瞬の叫び声。
その直後、大きな岩が幾つもバスを襲った。

客)「うわぁぁああ!!」
客)「きゃあぁあぁ!!」

俊也)「な、なんだ!」
シンジ)「ぐわぁぁ!」
ユカリ)「きゃあぁ!」

NA)
皆、騒然となった。
落石事故だ。

事故音)「ぐわしゃあぁ!」

NA)
走っていたのは幅の狭い山道。
バスはそのまま谷底へ落下した。

ト書き〈俊也以外、全員死亡〉

俊也)「痛ツツツ・・・お、おい・・・シンジ、大丈夫か・・・痛ツツ」

NA)
俺はなんとか奇跡的に助かった。
でも周りはしぃんとしている。
運転手も添乗員も血を流して倒れていた。
誰も微動だにしない。
呼吸の音すら聞こえなかった。

俊也)「お、おいシンジ!・・・ユカリ!」

NA)
シンジもユカリも、頭から血を流して意識不明。
他の客もずっと動かない。

俊也)「ま、まさか…助かったのは俺だけか?」

NA)
「助かった」と思えばあっと言う間のこの光景。
気持ちの整理を付けるのに時間が掛かった。
このバスに乗っていたのは50人。
俺を除く49人が死んでしまった。
「奇跡の生還」
こんなテロップをよくニュースで観たりする。
その瞬間が今まさに起きたのだ。

俊也)「そ、そんな・・・シンジ、ユカリぃ!」

NA)
それから俺は何とか、逆様になったバスを這い出た。
そしてポケットから携帯電話を取り出し、警察と救急車を呼んだ。
その直後、俺は意識を失った。
俺もどうやら頭を打っていたらしい。
額から血が出ているのを見、そのままバスの外で横たえた。

ト書き〈数週間後〉

NA)
あれから俺は回復。
いつも通りの日常を過していた。
でも・・・

俊也)「シンジ・・・ユカリ・・・どうして2人共、逝っちまったんだよ」

NA)
2人はもういない。

ト書き〈数日後〉

NA)
数日後の夕方。
俺は1人で飲みに行った。
悲しみを酒で紛らわそうとしたのだ。
そしていつもの飲み屋街を歩いていると・・・

俊也)「あれ?こんな所に居酒屋なんてあったっけ?」

NA)
行き付けの飲み屋に行こうとした時。
全く見慣れない居酒屋があるのに気付いた。

俊也)「へぇ、『リ・ユニオン』ってのか」

NA)
居酒屋の名前にしては珍しい横文字。
俺は何となく入ってみた。

ト書き〈居酒屋「リ・ユニオン」〉

NA)
中は落ち着いた雰囲気。
俺は座敷に上がり、1人飲んでいた。

俊也)「はぁ。やっぱ座敷で1人ってのは淋しいな。ホントならシンジやユカリと来たかったんだがな・・・。はぁ。出来ればもう1度だけ、2人に会いたい」

NA)
そんな事を想いながら飲んでいた時。
1人の女性が声を掛けて来た。

ミライ)「こんばんは」

俊也)「え?」

ミライ)「お座敷で1人ですか?良かったらご一緒してもイイかしら?」

NA)
いきなり訊いて来た。
淋しかったので俺は即OKした。
それから何となく会話が弾む。
彼女の名前は夢野(ゆめの)ミライ。
年齢は俺と同じ20代のようだ。
彼女はライフコーチをしてるらしい。
俺はシンジとユカリを亡くした悲しみを、彼女に何となく話してしまった。

ミライ)「それはお気の毒です」

俊也)「ホント、出来れば2人ともう1度会いたいです。こんな事になるんなら、あんな旅行 行かなきゃよかったなんて、ずっと思ってるんです。ホントにもう1度だけでいいから、2人と話がしたいですよ。淋しくってね・・・」

ミライ)「・・・」

NA)
彼女は親身に聴いてくれた。
そして・・・

ミライ)「分かりました。それではお2人と会話できるようにしてあげましょう。こう見えて私、実はその昔スピリチュアル系のお仕事もしておりまして、降霊術とまではいかないですけど、死者と通信できる方法を心得ています」

俊也)「え?何ですって?」

NA)
意外な答え。
こんな事、普通なら全く信じない。
または怖くなって敬遠するところ。
でも俺は・・・

俊也)「お、お願いします!その方法、どうか俺に教えて下さい!お願いします!俺、あいつらとまた話せるんなら、何でもします!会いたいんですよ!」

NA)
と言ってしまった。
シンジとユカリは俺の幼馴染であり親友だ。
その2人とまた会えるんなら何でも良い!

ミライ)「それではこちらをどうぞ」

NA)
そう言ってミライは1冊のノートをくれた。

俊也)「これ、何ですか?ノート?」

NA)
見た感じ、普通の大学ノート。

ミライ)「それは『ミステリアスノート』と言って、死者と連絡交換が出来るノートです。今そのノートは白紙ですが、そのうちシンジさんとユカリさんからの言葉が書き込まれて行きます。どうぞ肌身離さず持っていて下さい」

俊也)「は?そ、そんな事・・・」

ミライ)「信じる事が大切ですよ。そのノートに2人からの文字が書き込まれて行くのは、あなた達が事故に遭われた日、いわゆる命日です。その日ごとにノートを開いてみて下さい。きっと2人からの言葉が表れる事でしょう」

俊也)「命日に、言葉が表れる・・・?」

NA)
インチキだと思った。
でも信じる事にした。
2人と会話が出来るなら、何でも信じてやろうと思った。

ト書き〈月命日〉

NA)
今日は事故で死んだ2人の月命日だ。
その日、俺はミライに言われた通り、ノートを開いて見た。
すると・・・

ト書き〈ノートの内容〉

(シンジ)
よぉ俊也、久し振りだな。
あれから俺達、元気にしてるぜ。
そっちはどうだ?
元気にやってるか?

(ユカリ)
俊也君。
あたし達、あなたの事忘れないからね。
この世を離れても、ずっと一緒だから。

俊也)「おぉ・・・おお!?2人からの言葉が届いてる!」

NA)
俺は心底、喜んだ!
あれからこのノートに俺は1度も手を触れていない。
なのに文章が勝手に浮かんでいる。
神秘的な感動だ!
俺はそれから2人の文章のあとに、自分の言葉を綴った。
「俺も元気でやってるよ。3人ずっと一緒だからな・・・」
いろいろ書いたがとにかく、
「ずっと一緒」
と言ってやりたかった。

ト書き〈1年後〉

NA)
それからあっと言う間に1年が過ぎた。
この1年間、俺はずっとノートで2人と会話していた。
でも最近になり、少し妙な事に気付いた。

ト書き〈ノートの内容〉

(シンジ)
お前がいなくなってから、世間もだいぶ様変わりしたよ。
そういや今日ニュースで、
「あの事故の日、誰かがすぐ救急車と警察を呼んでくれたのが良かった」
って言ってたぜ。
通りすがりの誰かが匿名で電話したんだろう、って言ってた。
でも俺は、
「お前が皆の為に電話してくれたんじゃないか・・」
って思えてならないんだ。

(ユカリ)
今日もちゃんとお掃除しといたからね。
あとそれから、俊也が好きだった豆餅、持って来たよ♪
ゆっくり食べてね。

俊也)「え・・・?な、なんだこれ・・・」

NA)
読んでいると、何だかまるで俺のほうが死んだみたいに言って来る。

俊也)「世間ってなんだよ・・・。死んだ後に世間なんてあんのか?」

俊也)「それに掃除って、どこの掃除だよ?」

俊也)「電話って・・・助かったの俺1人なのに。どういう事だ?」

NA)
あまりに妙な気がしたので、俺はついシンジの家に行ってみた。

ト書き〈シンジの家の前〉

俊也)「誰もいないのか・・・」

NA)
家の中はしぃんとしている。
何度かインターホンを鳴らしてみたが誰も出て来ない。
仕方なくふと周りを見渡した時・・・

俊也)「・・・あれ?」

NA)
人っ子1人いない。
車道の車はエンジンが掛けられたまま停まっている。
街はいつも通り。
でも人が全くいない。
さっきまで聞こえていた街の音がピタリとやんだ。

俊也)「どうなってんだよ・・・これ・・・」

NA)
俺は自宅に帰ったが、誰もいなかった。
さっきまで母親が家事をしていた筈なのに。
俺は今でもずっと人の気配を探し回り、街中を徘徊している。

ト書き〈俊也の墓を眺めながら〉

ミライ)「俊也もそのうち気付くだろう。あの事故で死んだのが自分だけだった事に。俊也は自分が死んだ事に気付かず、ずっと死後の世界をこの日常で体験していた。死んだのが、自分以外の全ての旅行客だったと勘違いして」

ミライ)「私は俊也の『どうしても死んだ親友と話がしたい』という思いから生まれた生霊。その願いを叶える為だけに現れた。私には人を生き返らせる力は無いけれど、せめて死者と交信させてあげられる力だけは持っている」

ミライ)「シンジが言ってた『世間』というのは、文字通り現実の『世間』。ユカリが言った『掃除』というのは、俊也のお墓周りの掃除の事。シンジとユカリは月命日に俊也のお墓まで来て、俊也といろいろ会話していたのよ」

ミライ)「あの事故の日、俊也が掛けた電話だけは繋がった。そのお陰で救急車も警察も早く救助に来れた。信じられない事だけど、これも俊也の友達を想う心が強かったから、まるで不可能な事が現実に起きたのかも知れないわ」

ミライ)「私が俊也に渡したノートは、墓前で2人が言った言葉を表すノート。俊也はそれを見て『まるで死後の世界から2人が言葉をくれた・・・』と勘違いしていたのね。得てして死者から見れば、生きている人が普通に暮らすこの世界こそ、まるで『死後の世界』と同じように映るのかも知れないわね」

動画はこちら(^^♪
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