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本当にあなたはあなたなの?

タイトル:(仮)本当にあなたはあなたなの?

▼登場人物
●三河敏郎(みかわ としお):男性。37歳。妻帯者。子供はない。
●三河美和子(みかわ みわこ):女性。享年36歳。少し前に幻聴・幻覚を見始めた敏郎に殺された。
●川野里美(かわの さとみ):女性。30代。若く見える。敏郎の幻聴・幻覚から生まれた生霊。

▼場所設定
●敏郎と美和子の自宅:都内にある一軒家のイメージで庭付き(その庭に松の木がある)。
●Invasion without Knowing:お洒落なカクテルバー。里美の行きつけ。本編では主に「カクテルバー」と記載。

▼アイテム
●Understand People:里美が敏郎に勧める特製のカクテル。これを飲むと里美の言う事が更に理解できるようになり、幻聴・幻覚の世界を更に目の当たりにする(敏郎は自分の幻聴・幻覚を知らされる形に)。イメージはほんの景気づけの形でも良いです。

NAは三河敏郎でよろしくお願い致します。

イントロ〜

あなたは、あなたでしょうか?
奇妙な質問ですが、あながち冗談でもありません。
誰も彼も、自分について説明できず
物心ついた時にポンと地上に生まれており、
何となく生きている生物…それが人間ではないでしょうか?
人間がそうなら他の動植物たちもそうかもしれません。
でも人は誰もその動植物を実際に経験した事がなく、
道端に落ちてる石ころすらその内側に入って体験した事はないでしょう?
今回は、全体的にSFがかった不思議なお話。

メインシナリオ〜

ト書き〈自宅〉

敏郎「おい!一体どうしたんだよ最近、なんかお前、ここん所ずっとおかしいぞ…?」

美和子「はぁ…ごめんなさい、確かに最近、なんだか私おかしいのよ。幻覚のようなものが見えるっていうか、幻聴が聞こえるっていうか…。あなた、どこにも怪我はなかった?本当にごめんなさい…」

俺の名前は三河敏郎。
今年37歳になる妻帯者だが、妻との間に子供はまだなく、
それよりも、妻の美和子の最近の様子がどうもおかしい。

確かに彼女の言うように、時々本当に
幻覚のようなもの・幻聴のようなものが聞こえるらしく、
部屋の隅の1点を眺めてぼうっとしていたり、
食事中に突然空中に耳を傾けて、何かを聞こうとしたり…。

確かに俺達は出会って電撃結婚みたく1年足らずで結婚したから
美和子のそれ以前の様子がどんなものだったのか?
それをつぶさには知らない。

でも、事は幻覚・幻聴。
どう考えてもおかしいとしか言えず、
これまで何度か総合病院・心療内科へ行こうと言ったのだが妻は…

美和子「大丈夫よ、その内きっと収まるから」

と言って聞かない。
無理やり連れて行こうとすればまた暴れ出し、
とても手がつけられなくなる。

美和子を愛しているからそれ以上負担をかけたくなかったが、
でもこれ以上激しい状態になりご近所まで
騒がすような事になってしまったら放ってもおけない。

美和子は自分で自分の事を、
「少し前に精神病を患った事がある」
と言い、もしかしたらそれが悪化しているのかも…
なんて自分の秘密を打ち明けるように言ってきたが、
それでも直接その状態を解決しようとはせず、
日々、そんな調子の繰り返しで生活していた。

少し前にそんな問題があり、
最近はそれからまた少し落ち着いていたが、
そんな彼女を家に1人置いとくのはどうにも忍びない。

でも、それと同時に俺も介護疲れと言うか
そんな彼女に四六時中、顔を向き合わせて居るにも疲れてしまい、
ある日の仕事帰り。
俺は久しぶりに行きつけの飲み屋へ飲みに行こうと思った。

ト書き〈カクテルバー〉

いつもの通りを歩いていると、
全く見慣れないバーに気づいた。
名前は『Invasion without Knowing』。

変わった名前の店だ…と思いつつも興味を惹かれそこに入り、
カウンターについて1人飲んでいた。

すると…

里美「こんばんは♪お1人ですか?もしよければご一緒しましょうか?」

と1人の若い女が声をかけてきた。
歳の頃20代に見えたが実は俺と同年代。
名前は川野里美と言い、都内でメンタルヒーラーや
ライフコーチのような仕事をしてると言う。

俺は「ちょっと1人で考え事してるから」と断ろうとしたのだが、
彼女を見ていると何となく気を許してしまい、
とりあえず一緒に席に着く。

そして話しているともう1つ不思議な事に気づいたが、
「昔どこかで会った事がある人?」
のような気がして少し心が和み、
その「1人でしようとしていた考え事」を彼女に聞いて貰う事にした。

里美「え、そうなんですか?奥様が」

最近の妻の様子がおかしくなった事を
なるべく事細かに彼女に伝え、どうすれば良いのか…
そんな事を場違いながら彼女に聞いたりしていた。

でも彼女は真剣に耳を傾けてくれた上、
アドバイスめいた事と、少し不思議な事を言ってきた。

里美「まぁ女性と言うのはホルモンバランスの関係で、男性にはよく解らない発作的な変調をきたしたりするものです。ですが、幻覚・幻聴というのは少し違う気もしますねぇ…。それに、そこまで頑なに病院へ行かないと言うのもどこか変だし。…少し違った視点から、彼女を眺めてみると良いかもしれません」

敏郎「違った視点…?」

里美「ええ。あなたは奥さんの事をまだよく知らないとおっしゃってましたね。出会ってすぐに結婚したから、彼女の生活歴の隅々までを知らないと」

敏郎「ええ」

里美「でも、たとえ彼女のこれまでの生活をよく知っていたとしても、彼女の心の中、つまり彼女の正体が何なのか?…それについては旧知の間柄でもわからないポイントになるのではないでしょうか?」

敏郎「…え?」

何か急に難しい事を言ってきて、よく解らなかった。
でも、そこでもやはり彼女は不思議な人で、
ずっとそうして話を聞いてると、何となく頷かされる形で
俺の心にもそれなりの理解がやってきた。

敏郎「え?…つまり妻の正体ってのは…俺が思ってる美和子とは別人…って事を言ってるんですかあなた…?」

里美「ええそうです。人は誰も他人の内側に入って、その人の本性を確かめる事が出来ません。心の内側が分からないのと同じように、その人が今何を考え、どう感じているか。それを知らない限り、その人の事を把握している…つまり知っていると言う事にはならないんですよ」

そう言っていきなりカクテルを差し出してきた里美は
まだ話を続けた。

里美「まぁ、景気づけにそちらをお飲み下さい。それは『Understand People』と言う特製のカクテルで、気分が落ち着きます。…おそらく奥さんは今後、あなたにもっとひどい事をしてくるようになるでしょう」

里美「同じ女性だてらに分かる事かもしれませんが、奥さんはきっとその幻聴・幻覚に従ってあなたを殺そうとしてくるかもしれません。もちろん奥さんは自分のしている事が分からないまま。女性の突発的な感情の揺れ動きとは、時にそんな行動に駆り立てるものです。どうか気をつけて、もし必要なら別れる事も考えた方が良いかもしれません」

敏郎「な、何言うんですかあなた…!」(遮るように里美が喋り出す)

里美「あなたの為を思って言ってるんです。お話を聞く限り、奥さんは今普通の状態にはありません。もしどうしても病院へ連れて行く事ができずそれなりの施設に隔離する事ができないのなら、ひとつ屋根の下で暮らしているあなたは、それなりの覚悟をもって自分の身の安全を確保しなきゃならない…と言う事です」

俺は少し怒って席を立ち、店を出た。

ト書き〈自宅でトラブル〉

でもそれから僅か数日後。
里美の言った通りになった。

敏郎「や、やめろ!おい美和子ぉ!やめないか!」

美和子「殺してやる!お前を殺してやる!」(男のようなドスの効いた声で)

ある日の夜、いきなり包丁を持って襲いかかってきた美和子。
俺は何が何だかよく分からないままとにかく自分の身を守ろうと、
必死で美和子から包丁を取り上げようとしながら
つい思いきり引っ叩いてしまった。

そのとき包丁を握り締めたまま倒れた美和子は
その包丁で自分の体を刺してしまい、
呻きながらキッチンの床でのたうち回った。

敏郎「み…美和子ぉ!」

でもその時、血が一滴も流れ出ていない。
更に次に見たのは
美和子の体から出ていた配線のようなもの。

敏郎「な…なんだこれ…は」

そして次に驚いたのは
さっきの格闘で床に落ちかかっていたキッチンの上のグラスが
ついに床に落ち、中の水が美和子にかかった時…

美和子「あぶぶぶぶ!!」

と言って電気がショートしたような声を出した事。

敏郎「美和…子…?」

そのとき初めて気づいたのだ。
美和子がAIロボットだった…事に。

ト書き〈数日後〉

それから数日後。

そんな状態で美和子を失ってしまった俺は
やはり普段の生活に戻ろうとすればする程
訳が分からなくなり、とにかく気を落ち着けながら
美和子と俺の間に起きた出来事は他人に伏せ、
美和子の正体を突き止める事だけに躍起になった。

でも本当に不思議な事に、
美和子の身内がみんな姿を消している。

結婚した時は少なからず美和子の身内数人と会っていたのに、
貰っていた連絡先に電話をかけても誰も出ず、
その住所に行ってみても別人が住んでいた。

敏郎「…一体どうなってんだ…これ…」

誰が何の目的で美和子に似せた精巧な
あんなAIロボットを造ったのか知らないけれど、
俺の生活の全てはもはやそれだけに注意するようになり、
この不思議な現象をとにかく誰かに伝えたい…
そして解決して欲しい…
そう思うまではやはり早かった。

そして次に不思議な事というか恐怖に出会ったのは、
家のクローゼットの中に安置していた
AIロボットの美和子が消えていた事。

敏郎「無い…どこ行ったんだ…誰かがここへきて美和子を取り出し、持って行ったのか…?」

そんな事が立て続けに起き、
唯一のAIロボット美和子(証拠)を失くした俺は
その事を誰に言ったってもう信じて貰えない。

下手すれば俺が美和子を殺した殺人犯に問われ兼ねない…
現実的に考えればそうなるもので、
俺は親にも言う事ができず、唯この秘密を胸に秘め、
この事を教えてくれたあの人・里美に頼るしかない。
そう思い、又あのバーへ駆け込んでいた。

ト書き〈カクテルバー〉

敏郎「あ、居た!」

店に入ると、また前と同じ席に座って飲んでいる里美を見つけた。
俺はすぐに駆け寄り、これまでの事を全部打ち明けた。

敏郎「一体これ、どうなってるんでしょう…?もう何が何だか訳が分からなくて、どうして良いか…。ねぇ、あなたはどう思うんです?また前のようにアドバイス、してくれるんですか…?」

彼女はほとんど無表情で俺のほうを向きこう言った。

里美「なるべくしてなった事。驚く事じゃありません。あなたには、美和子(かのじょ)がどこへ行ったのか?本当はその事が分かってるんです。ただあなたの中の幻覚と幻聴のようなものが今のあなたを支配しており、彼女の居場所を見えなくさせているだけ。胸に手を当てて、もう1人の自分によく聞いてごらんなさい。きっとわかると思いますよ」

里美「…それに、彼女の身内に電話をかけたような事も言ってましたけど、本当はかけてないんでしょう?自分をごまかす為だけの衝動…。だから、彼女の身内の本当の住所にもあなたは行く事ができなかった…」

敏郎「…え?あんた、何言って…」

里美「今あなたの目の前でこうして喋っている私。この私も、もしかするとあなたの分身かもしれません。だったら、私が教えてあげましょうか?…あなたの家の庭の、松の木が生えているその下…少し右横。よく見れば、土が柔らかそうに掘り起こされている。またそこを掘ってご覧になりますか?…これで解決です」

ト書き〈トラブル2〉

確かに里美は不思議な女。
彼女が自分で自分の事を「俺の分身」と言えば、
知らず内にその気にさせられる。

俺は彼女の言う事に従い、それからすぐ自宅へ戻り、
庭に出て、彼女が言う松の木の下まで行った。

土が柔らかそうに掘り起こされた後、また埋められている。
そこを掘ってみた。

すると、少し腐敗した美和子の死体が出てきた。

ちょうど美和子がおかしくなり始めた時、
あの時の自分の身の周りの事を思い出し、
おそらくここに美和子を埋めたのはその時辺り。

ト書き〈里美の声が心の中に聞こえてくる・オチ〉

敏郎「み…美和子…」

美和子の遺体を見ていた時に俺の心の中に、
里美の声が聞こえ始めた。

里美「これで分かったでしょ?幻聴・幻覚を見ていたのは本当は誰だったのか?」

敏郎「…お、オレ…」

里美「いいえ、そんな単純なものでもありません。美和子さんだってそこに死体として置かれているけど、それが本当に彼女だったのかどうか?それは未だにあなたにも良く分かってない筈。誰にも分からない事よ。これはとりあえずあなたへの慰めとして、今こう言っておくわ」

敏郎「…え?」

里美「人が人を見る時、その外見しか見る事ができず、中身を知る事は永遠にない。あなたは知らず内に別の何かに支配されていたのよ。幻聴・幻覚もそのせい。その『何か』があなたに気づかれないように日常を段々支配していき、あなたの人生も生活も乗っ取ってしまった」

里美「だからこれだけは聞いてみたいわ。今のあなたは、本当にあなたなの?」

(NA:里美の声で)

私は敏郎の幻聴・幻覚から生まれた生霊。
取り返しのつかない事をしてしまった敏郎に、
真実を教える為だけにやってきた。

美和子は、幻聴・幻覚を見始めた敏郎と別れたがっていた。
それを拒んだ敏郎はつい勢い余り、美和子を殺していた。

そしてその幻聴・幻覚の勢いは更に敏郎を支配し、
自分が美和子を殺した事すら分からなくさせ、
美和子が自分を襲ってきて正当防衛でそれを撃退し、
更に美和子がAIロボットであると自分に言い聞かせていた。

なんとも理由は単純。

でも人の幻覚と言うものは本当に恐ろしいものよね。
愛する人を、ロボットにまで変えてしまうんだから。

でも、科学が更に発展していけば更にその科学力は人間の生活に浸透し、
本当にロボットか人間か、その区別すらつかなくしてしまうかも。

AIロボットがいつの間にか人間になりすまし
あなたの愛する人に取って代わっている。

そこに心の隙間ができてあなたはAIロボットを愛してしまい
裏切られた時には何に裏切られたのか?
それすら解らなくなる。

あるいは、地球外生物が地上にやってきて、
すでに人の中に入り、
人類の生活と人生を侵略しているかもしれない。
地球侵略…昔からのSFがかった夢のような世界よね。

もう1度だけ、改めて聞いてみたいわ。
これを見ているあなた。
本当にあなたは、あなたなの?

フフ、最近の人は難しい話は苦手よね?
まぁこんな事は考えず、ゆっくりおやすみなさい…

動画はこちら(^^♪
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