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YouTubeに住む破滅の帝王

タイトル: YouTubeに住む破滅の帝王

▼登場人物
●横島 猛(よこしま たける):男性。30歳。在宅ワーカー。欲望が凄まじい。
●穂美野 蘆子(ほびの ろこ):女性。30代。猛の欲望から生まれた生霊。

▼場所設定
●街中:公園など一般的なイメージでOKです。
●猛の自宅:都内にある一般的なアパートのイメージで。
●電子空間:猛が電子の住人となって住む世界。いわゆるパソコンの中の世界。
●King of YouTube:蘆子が個人経営しているオフィス。

▼アイテム
●メモリーカード:蘆子が猛に勧めるカード。中には莫大な利益を生むYouTubeチャンネルが保存されている。それと同時に使用者を電子の空間へ放り込む力も秘める。

NAは横島 猛でよろしくお願い致します。

イントロ〜

あなたはこれまでに、YouTubeサイトを管理した事がありますか?
YouTubeでひと儲けする…こんな夢を現実に掲げ、奔走した事がないでしょうか?
最近では「YouTubeドリーム」として多くの日本人にも認められ、政治家、芸能人、コメンテーター、そして一般人に至るまで、どこを見ても誰を見てもYouTube…そんな現状が飛び交ってるようです。
でもYouTubeで儲ける事は至難の業。その為には高すぎる程のハードルを乗り越えねばなりません。
どれだけ理想的・魅力的な動画を作りそれをアップしても「全く稼げない」そんな経験はなかったでしょうか?
実はそうなる人がかなり多く、それにはちゃんとした理由があったようです。

メインシナリオ〜

ト書き〈公園〉

俺の名前は横島 猛(よこしま たける)。
YouTuberとして今仕事を始めようとしているところ。
自宅で稼げるなんてまさにジャパニーズドリーム!
世間に出て一切働きたくなかった俺はこれ幸いとそのYouTubeに注目し、そこで「自分の夢を何が何でも叶えてやろう!」と躍起になっていた。

そんな事を考えていたところへ…

蘆子「ウフフ、こんな所で何してるんですかお1人で?」

と1人の女が声をかけてきた。

彼女の名前は穂美野 蘆子(ほびの ろこ)。
歳は俺と同じぐらいで結構な美人。
それから少し彼女と喋っていたが、不思議な事に、彼女に対しては何の恋愛感情も湧かなかった。

そしてあと2つ不思議だったのは、「昔どこかでいちど会った事がある人?」と言う印象を投げかけると共に、
彼女の前だと自分の悩みを何故か打ち明けたくなり、俺は今の自分の夢を叶える為に日頃から悩んでいたその夢を、
全部彼女に話していたのだ。

蘆子「へぇ、YouTuber・Vチューバーとして活躍されたいと?」

猛「へへっwええ、まぁ」

彼女はどうも都内で就活コンサルタントの仕事に就いており、その副業で「これから仕事を始めようとしている人」の支援もしていたようだ。
俺も「これから仕事を始める人」だったので、彼女は相談に乗ってくれ、その為の援助もしてくれた。

蘆子「素晴らしいですね。では本格的にサポートして差し上げましょう。そうですね、明日は空いてますか?もしお時間あれば、ここへいらして下さい」

そう言って彼女は俺に名刺をくれた。

ト書き〈『King of YouTube』へ〉

そして翌日、俺がやってきたのは、彼女に勧められて誘われた『King of YouTube』という企画オフィス。
ここは彼女が独自に経営しているマイオフィスだったようで、都内の片隅にひっそり建っていた。

蘆子「さぁどうぞこちらへ♪」

彼女に勧められるままソファーに座り、それからビジネス談笑が始まった。

蘆子「こちらのメモリーカードを差し上げます。これは無料ですのでご安心を。その中には当社が立ち上げたYouTubeチャンネルがありまして、そこで動画をアップし続けて行けばきっとあなたの夢は叶えられます」

俺はメモリーカードを受け取り、その中に保存されていたYouTubeチャンネルの経営の権利を譲渡された。
そのオフィスのパソコンで少し見せてもらったが…

猛「す、すげぇ…」

チャンネル登録者数は初めから1億人を超えており、そこにアップされていた幾つかの動画の視聴回数とグッドボタンも、100万から1億回数を超えている。

つまり俺はYouTubeでの仕事を始めるにあたり、膨大な利益を生む土台を履かされたのだ。YouTuberにとってこれほど大きな夢と利益もなかろう。

猛「ありがとうございます!うはは…w」

ト書き〈自宅〉

俺は早速自宅に戻り、これまでとりあえず貯めておいた幾つかの動画をそのチャンネルでアップしてみた。
すると同じく瞬く間に視聴回数は伸び、グッドボタンの数も目の前で一気に増えてゆく。100万突破だ。

猛「ハハwウハハハハ!!これだ!これこそ俺が経営すべきYouTubeチャンネル!」

その後もどんどん自分の動画をアップしてゆき、俺が挙げた動画だけがあらゆる分野で視聴回数、グッドボタンの数、そして新たなチャンネル登録者を獲得し、俺は「YouTubeの帝王」と呼ばれるまでになったのだ。

猛「ハハ!ざまぁみろってんだこいつらぁ!w」

人には見せられない姿を、俺は1人この部屋で満喫していた。

ト書き〈それから3日後〉

そしてそれから3日後の事。俺に異変が起きた。
いつものように動画をアップしてた時…

猛「…え?な、なんだ、オイ…!おぉおぉ!?」

俺の体が粒子分解するように消えてゆき、やがてその部屋から居なくなった。
そして一瞬の暗闇を通り抜け、次に気づくと…

猛「…な、なんだ、ここ…?」

暗闇の中に幾つもの光があって、その光の正体は動画そのもの。誰かがアップした動画が俺の周りにあり、それが光って見えている。
俺はどうも電子の住人になってしまった…?

でも人間とは環境に順応するもので、それから数週間、数ヶ月経ってゆくと、俺はそこでの生活を学び始め、
YouTubeサイトの中でのみ動き回れるその体を使い、更に自分がこれまでアップしてきた動画の視聴回数、そしてチャンネルサイトの登録者数を手動で伸ばしていった。

つまり俺は電子の住人になった上、YouTubeサイトの中で自由に動き回ることができ、物理的に自分のサイトの人気だけを伸ばす事ができていたのだ。

他のヤツの挙げたサイトなど勝手に消す事もでき、誰の目にも触れないようにYouTubeの闇の底へ封印する事もできてしまう。

猛「ケッ!ここに住む事になったって俺は構わねぇぜ!俺はYouTubeの帝王だ。YouTubeの中に住んでこそ、帝王たる資格もあるってもんだw♪」

懲りずにそんな野望に狂奔し続け、俺はそれでも自分のチャンネルサイト・動画の人気を上げる事だけに躍起になった。

その効果もあったのか。
俺の他に動画を挙げるヤツが段々減っていった。

「こんなYouTubeみたいなサイトに動画挙げたって、俺の・私の作った動画は全然誰の目にも触れず、知られず、どこ行ったか分からなくなっちゃうんだから!」

そんな声がコメント欄にも寄せられるようになり、いわゆるYouTubeサイトは俺の独壇場になっていた。

ト書き〈消される〉

しかしここで又トラブルが起きたのだ。決定的なやつ。

現実の管理者「何がどうなってこうなったのか。…仕方がない、YouTubeは一旦閉鎖しましょう…」

猛「へへへへへへwうぇへはははwさぁ〜〜今日もみんなの注目を集める動画を……え?今何つったこいつ…?」

世界中から注目を集め続けてきた今までのYouTubeサイトは、本当に一旦、閉鎖される事になってしまった。

猛「お…おい!オイィ!!ちょっと…ちょっと待てぇえ!!う…うわぁあぁあぁ!!!!」

YouTubeが閉鎖されたと同時に、闇の中に生き続けてきた「電子の住人としての俺」の体も更に粒子分解し、その闇の中ですら存在を消してしまった。
つまり俺はどこの世界にも居なくなったのだ。

ト書き〈パソコンを見ながら〉

蘆子「フフ、YouTubeから新しく『MyTube』に名前を変えたのね。『あなたの夢を叶えるメディアの世界』…か。ちょっとらしくて笑っちゃうけど、分かり易くてウケも良いみたい」

蘆子「私は猛の欲望そのものから生まれた生霊。彼を戒める為に現れた。他のYouTuberが挙げた動画、それが全然人気が出なかったのは全て彼のせい。彼が闇の中でそう仕向けていたから何をどうやっても人気など出ず、人の耳目にも触れず、集客できるその土台すら奪われていた」

蘆子「でも、もう彼は居なくなったからそんな事も無いでしょう。でもまた彼のような人が現れたら、同じ事が起きるでしょうね。つまり猛のような人はどこにでも居ると言う事。この人間の欲望が渦巻く世界、居ないと言うほうがおかしいわ」

蘆子「電子の向こう…いやその中身が見えない世界。その見えない所でいろんな野望が先走り、他人を蹴落とした上、自分だけの牙城を保とうとする人が本当に多いみたい。でも彼のように、いつか誰かに何かのきっかけにより、消されないように注意することね」

蘆子「人から見えない空間は、他のものが見えなくなった欲望の世界にも似ている。その『他のもの』に人が守るべき正義や道徳がある場合、その正義も道徳も無視して欲望だけに走る事になってしまう。そうなればいっとき『帝王』と自称できるけど、その人の正体は独裁者。その独裁の先には破滅しか無いものなのよ。見えない無数のエゴに粛清されちゃうからね」

動画はこちら(^^♪
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