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リストラの女

タイトル:(仮)リストラの女

▼登場人物
●津川(つかわ)レナ:女性。38歳。OL。基本的に人間関係が苦手(顔見知りなら大丈夫)。接客もダメ。企画事務から営業に転属させられる(リストラの為)。営業は全くの苦手。ウェブキャラに成った後は「キャラ・レナ」と記載。キャラ名は「愛(あい)レナ」。この「愛」は「IT」の「I」とかけています。キャラデザインは「初音ミク」みたいな感じでOKです。
●上司:男性。50歳。レナの上司。一般的なイメージで。
●鬼川誠人(おにかわ まこと):男性。50歳。営業部の部長。鬼のように厳しい。
●加納由香子(かのう ゆかこ):女性。35歳。レナが働く会社の営業部に所属。仕事が出来る。レナを馬鹿にする。
●同僚:営業部の女子社員。20代~30代。由香子と一緒にレナを馬鹿にする。
●富山裕子(とやま ゆうこ):女性。38歳。レナの同僚であり親友。
●夢緒香苗(ゆめお かなえ):女性。30代。レナの「安定して仕事がしたい・自分だけが活躍できる仕事空間が欲しい」という理想と夢から生まれた生霊。

▼場所設定
●最高畜(さいこうちく)ネットIT企業:一流大手IT企業のイメージで。最近になり会社の再構築のためリストラが激しい。
●バー「ユーチューBAR」:お洒落な感じのカクテルバー。香苗の行き付け。
●V型就労支援施設「戻り木(もどりぎ)の里」:一般的な就労支援施設だが、健常者向けの施設(障碍者向けではない)。内装は一流企業のように豪華。通常の仕事が出来なくなった人達の為の就労支援施設。入所費無料。1日働くとその分の給料が貰える。但し利用期間は半年。

▼アイテム
●ウェブキャラ・ミュール:モスコミュールみたいなお酒。これを飲むとその人の体が電子に変わり、パソコンの中(つまりインターネットの中)だけで活動するようになってしまう。つまり「電子の中の住人」と成り果てる。

NAは津川レナでよろしくお願いいたします。

メインシナリオ~
(メインシナリオのみ=4374字)

ト書き〈最高畜ネットIT〉

私の名前は津川レナ(38歳)。
私はネット業界でも一流企業として知られる、
「最高畜ネットIT企業」
で働いている。

私が所属するのは企画部署。
企画と言っても私の主な仕事は書類作成。
もっぱらパソコンと向き合う仕事だ。
ここでの仕事は毎日、順調だった。

ト書き〈営業に配属〉

しかし…

レナ「え?!い、今、何と…?」

上司「今年の春の人事で、キミを営業部で使ってみようって事になってね」

レナ「ちょ、ちょっと待って下さい!私、営業なんてとてもムリです!」

上司「もう決まったんだ。これを機にキミもキャリアを伸ばし給え」

レナ「そんな…」

営業なんて絶対に無理。
私はもともと人間関係が苦手だ。
接客なんて出来るワケない。

ト書き〈営業部〉

鬼川「おい津川ぁ!ぬわんだこの成績はぁ!」

レナ「はい!すみません!」

鬼川「お前みたいな社員をよくウチが採ったもんだ!」

由香子「部長、それは無理なご注文ですわ。いきなり競争の激しい営業部なんかに来たって、人並みに働けるワケありませんわ。そのうちリストラでもされるんじゃないかしら?ウチはそのへん厳しいですし。それ迄の辛抱です」

鬼川「フン、まぁそうだな。津川君、キミはお茶くみでもやってろ」

由香子「フフフ」

イヤミたっぷりなコイツは加納由香子(35歳)。
営業部のスター的存在。
仕事は出来るし上司からの評判もいい。

ト書き〈バー「ユーチューBAR」へ〉

営業部に回されて数か月。
もう地獄の毎日だった。

レナ「もうダメ…アタシやってけない」

そんな或る日、私は1人で飲みに行った。
いつもの飲み屋街を歩いていた時…

レナ「ん、『ユーチューBAR』?新しいお店かしら…?」

全く知らないバーがある。
中は落ち着いた雰囲気だ。
私はカウンターで飲む事にした。

レナ「もうやってられないあんな会社!」

1人で愚痴っていた時…

香苗「こんばんは。お1人ですか?ご一緒してもイイかしら?」

1人の綺麗な女性が声を掛けて来た。
彼女の名前は夢緒香苗。
見た感じ30代。
ライフコーチ・転職アドバイザー等をしてると言う。

話す内に分かったが、彼女は不思議なオーラを持っていた。
「私の事を昔から知っていた人」
そんな感覚が何となく漂うのである。

それに彼女といると、何故か自分の事を話したくなる。
気付くと私は、今の悩みを全て彼女に打ち明けていた。

レナ「新製品の売り込み企画や、宣伝コピーなんかを社内で作成するだけならまだいいんですが、外へ出てそれを実践するとなると…。事務畑から完全に放り出されてしまって、もう私、この先やっていける自信がありません…」

香苗「それきっとリストラを前提にした、人員減らしですね」

レナ「え?」

香苗「社員をクビにするには理由が要ります。その理由を会社が作るんですよ。適材適所を完全に無視した部署へ特定の社員を放り込み、そこで毎日辛い思いをさせる。そうするだけで心身共に衰弱し、そのうち社員のほうから『辞めます』と言ってくる。そうなれば会社は儲けもの、となるワケです。最近はこんな人員減らしの社内戦略が、特に大手企業で見られるようです」

レナ「や、やっぱり…そうですよね!私もそんな気がしてたんです!」

香苗「いいでしょう。あなたの生活が少しでも充実するよう、お手伝いさせて頂きましょう。3日後、あなたを素敵な場所へお連れいたします。お代は結構です。私共の事業は元々ボランティアですからサービスは全て無料です」

レナ「え?」

ト書き〈3日後〉

それから3日後。
私は香苗に連れられて「戻り木の里」という施設へ来た。
ここはV型就労支援施設。
入所費用は無料。

通常の仕事が出来なくなった人達の為の就労支援施設。
障碍者でなくても普通に入れる。
しかも1日働けばその分の給料が貰える。
その給料は、会社で働いていた時と同じ給与額。

私は最高畜ネットIT企業で、手取り30万円貰っていた。
つまりここでも、それと同じ30万円の給料が貰えるのだ。

レナ「こ…こんな所があったなんて」

香苗「ここにはあなたと同じような人が沢山居られます。この施設の特長は『利用者に最適な仕事が与えられる』という点です。あなたはデスクワークが得意なようですから、そちらのお仕事をなさってみてはいかがでしょう?」

レナ「自分で仕事を決めてイイんですか?」

香苗「ええ♪就労支援施設ですから。利用者にとって最適な仕事を与える事が出来なければ、就労支援とは言えないでしょう。各自の才能を伸ばすのがこの施設の目的です。ぜひここで心身を休め、新しい目標を見つけて下さいな」

レナ「す、凄い!こんな素敵な場所で、自分の好きな仕事だけに打ち込んで、しかもそれで会社で貰える給料と、同じ額の給料を貰えるなんて…凄い!」

香苗「但しこの施設の利用期間は半年です。その間に、次のステップへ進む準備をなさっておいて下さいね。ここは飽くまで就労支援施設、つまり社会復帰する為のリハビリ施設ですから、ずっと居座るという事は出来ません」

レナ「分かりました」

でもこのとき少し気分が浮かれ、香苗の言葉を軽く聞いていた。
会社には休職願を出した。

ト書き〈3か月後、戻り木の里にて〉

香苗「お久しぶりですレナさん。調子はどうですか?」

レナ「あ、香苗さん!」

「戻り木の里」へ入所して3か月後。
香苗が私の様子を見に来てくれた。

レナ「大満足です!好きな仕事が出来て、それでお給料も貰えて!ほんと最高です!最近はユーチューバーにもなって楽しみが増えました♪ホラ見て下さい!私が創ったWebキャラクター!今ユーチューブで使ってるんです♪」

パソコン画面に、私が創ったユーチューブキャラが躍っていた。

香苗「ほう凄い、集客用ですね♪でもなんだか初〇ミクさんみたいですねー」

レナ「はは♪キャラデザインはまだ少し不慣れだから、アレをモデルに創ってみたんです。最近ウチの会社でも、こういうWebキャラを使って商品宣伝するのを推奨してるみたいなんですよ♪その勉強も兼ねて…なんですけど」

ト書き〈3か月後〉

それからあっと言う間に3か月。
この施設の利用期間も終わり。
私はまた会社へ戻った。

ト書き〈変わらずいびられる〉

鬼川「ぬわんだこのショボい営業戦略は!」

レナ「す、すみません!」

鬼川「もういい!お前はもう営業部に要らん!とっとと帰れ!」

由香子「アンタってホント使えないわね~w」

ト書き〈裕子が用事で営業部に来る〉

裕子「すみませーん、お邪魔しまーす。ってあれ?レナ…?」

レナ「うう…ううう」(泣く)

裕子「ちょ、ちょっとレナ!どうしたのよ!」

由香子「富山さん、アナタ確かレナさんと仲良かったわね?」

裕子「え、ええ…」

由香子「付き合う相手、選んだほうがイイわよぉ~?こぉんなのとずっと付き合ってたらさ、アンタもレナさんと同じような視線で見られちゃうわよ?」

由香子「はーいはい!皆もこんなのほっといて、さっさと仕事に戻りましょ」

後輩「はぁーい」

裕子「レ…レナ」

レナ「もう…イヤ…こんな所…もうイヤ…」

ト書き〈香苗に無心〉

数日後。
私はまたあのバーへ行った。

レナ「あ、いた!香苗さん!」

カウンターにいた香苗を見つけ、私は走り寄って無心した。

レナ「お願いです香苗さん!私をまたあの『戻り木の里』へ戻れるようにして下さい!お願いします!もう私、あの会社に耐えられません!お願い!」

香苗「前にも言いましたが『戻り木の里』はリハビリの為の施設なのです。通常の就労支援施設とも違います。利用期間は厳守。戻る事は出来ません」

レナ「お願いです!私が安定して仕事でき、活躍できる場所を、どうか私に教えて下さい!あなたはきっと知ってるんでしょうその場所を?初めてあなたを見た時から、私は何となく、あなたに不思議なものを感じてたんです。あなたなら私を救ってくれる…そんな思いが自然と湧いていたんです!」

そこまで聞いて、香苗は静かに答えてくれた。

香苗「仕方ありません。ではあなたにとって、最適なお仕事の空間をご紹介しましょう。但しその仕事に就けば、あなたは今までの生活を失います。もう1度お聞きしますが、今の会社に戻る事、或いは転職する気はないですか?」

もう私の中には、あの「戻り木の里」での感動が染み付いていた。

営業部でもういびられたくない。
他の会社でもきっと同じような目に遭う。
そうならない保証はどこにも無い。

私はずっと安定・安心して働ける場所が欲しいのだ!
その為なら今までのこんな下らない、辛い生活など全部捨てられる。

レナ「…はい、それで構いません!お願いします」

香苗「分かりました、それではどうぞ。こちらをお飲み下さい」

そう言って香苗は、特別にオーダーしたカクテルを差し出した。

レナ「これは…?」

香苗「それは『ウェブキャラ・ミュール』という特性のお酒で、それを飲めばあなたに新しい未来が開け、あなただけが活躍できる空間を獲得できます」

レナ「はぁ?」

何を言ってるのか解らなかった。
でも香苗は…

香苗「信じる事が大切です。仕事も伴侶と同じ。あなたがその仕事を信じれば、仕事のほうから応えてくれます。本当に自分の職場が欲しいなら、その空間があると本気で信じる事です。強制はしません。あなたが決めて下さい」

私はウェブキャラ・ミュールを一気に飲んだ。

ト書き〈最高畜ネットIT企業のウェブキャラになったレナ〉

キャラ・レナ「皆さ~んこんにちは~♪毎度おなじみ、最高畜ネットIT企業ウェブキャラの『愛レナ』で~す♪さぁて今回ご紹介する商品はぁ~~♪」

ト書き〈パソコンを眺めながら〉

香苗「ふぅ。結局レナは会社のウェブキャラとして、パソコンの中でずっと商品宣伝する仕事に就いた。これなら確かに誰にも邪魔されず、直接非難を受ける事なく、快適な仕事環境で、ずっと働いていけるかも知れないわね」

香苗「私は、レナの『安定して仕事がしたい・自分だけが活躍できる仕事空間が欲しい』と言う理想と夢から生まれた生霊。その夢を叶える為だけに現れた。レナには自力で仕事を見つけ、独立した生活をしてほしかったけど」

香苗「あの『戻り木の里』も私が創った架空の施設。あの『ウェブキャラ・ミュール』はね、飲んだ人の体を電子に変えて、パソコンの中…つまりインターネットの中だけで活動できる『電子の住人』に変えてしまうのよ…」

香苗「レナは心の中で、その電子の生活に夢を見た。現実ではいつ又あんなふうに非難されるか分からない。自分に合う仕事も無いかも知れない。それならいっそ…と、レナは現実の生活を諦め、ネット空間に『自分の居場所』を見つけていた。あの『戻り木の里』での感動が、よほど大きかったようね」

香苗「今はネット社会。電子の中に自分の安らぎを創り上げ、そこでの生活をまるで実生活のように見てしまう。でもあんまりのめり込んでしまうと、現実に居場所を失くしてしまい、ネットの中でしか生きられなくなるかも…」

動画はこちら(^^♪
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