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抜け毛をクリア~新たなスキンシップ

タイトル:抜け毛をクリア~新たなスキンシップ

▼登場人物
●奈屋実 抜男(なやみ ぬけお):男性。55歳。独身サラリーマン。抜け毛に悩む。
●語り手:奈屋実 抜男本人。思いきりダンディな声でイメージして下さい。

▼場所設定
●抜男の自宅:都内にある場末の簡易アパート。
●抜男の新しい自宅:少し郊外にある真新しいアパート。

NAは奈屋実 抜男でよろしくお願い致します。

イントロ〜

あなたは抜け毛で悩んだ事がありますか?
これは男女ともに共通の問題でしょうか。
まぁトラブルと言っても良いかもしれません。日常のトラブル。
このトラブルをどうやって切り抜けるか。どうやって乗り越えるか。
それを考えてみるのも乙なもの…そう思った或る紳士が居たようです。

メインシナリオ〜

ト書き〈自宅〉

抜男「…まただ。また抜け毛が…」

俺の名前は奈屋実 抜男(なやみ ぬけお)。
ほぼ名前の通り、今、抜け毛で悩んでる。
ダンディーな男ほど抜け毛が激しい…そう言う決まり文句をどこかで聞いたこともあるが、俺は別にダンディーでもないのに抜け毛が激しい。

一体なぜなんだ。なぜこんなに…
本当に不思議なのは、それまで見たことも無い、触れたこともない家のあらゆる箇所に抜け毛が落ちていること。
どうしてこんなところに…?素朴な疑問がそうして立ち上がる。
本当に不思議だ。風に乗って髪の毛がここまで来ているのか?

まぁなんにせよ、この抜け毛の悩みから解放されたい…
いっときからそう思うようになり、俺は密かに或る秘策を考えていた。
これはもう背水の陣のような秘策。捨て身の覚悟であり、それは…

抜男「…スキンヘッドにしてしまうこと。そうすればもう抜け出る髪の毛もあるまい…」

と言うことなのだ。

ト書き〈転機〉

しかしそうは言っても…と俺の中の常識がまだくすぶっている。
そんなスキンヘッドなんかにしてしまえば周りの人はおろか、自分でさえ驚きながら自虐してしまうかもしれない。
鏡の前に立つたびに「お前はそこまで来たのか…」となんだか怪しげな雰囲気になり、
自分で自分を責めてしまうそんな自虐の精神がさらに膨らみ始め、
もしかすると、今よりもっと不幸になるかもしれない。そんなことを思えば、なかなか。

しかし、もう俺も50代半ば。髪の毛にモノを言わせてヘアスタイル・全身のスタイルを気にする歳でもなく、
おまけにこれまで独身ながら恋愛や結婚への夢はもう諦めており、誰に見せるでもなく今のこの姿を、
自分の理想通りにしつらえて構わない。
「そうだろう?」と自分を励ます新たな自分を知って、
俺は今本気でスキンヘッドにしようと考えている。
器量はどちらかと言うと不細工で、誰も見やしない。見向きもせねば、今更スキンヘッドにしたところで何がどうと言う事もない。

それどころか俺はこの悩みから一生解放されることになり、抜け出ることになり、
「抜け毛よ、ざまぁみろ」と言ったまた新たな気分で、第2の生活・理想の空間を歩み始める事が出来るのだ。

1人での覚悟。1人での人生。1人での生活。1人での理想。これを求めるのは今しかない。

そんなことをあれこれ思っていた時、俺は引っ越すことになった。
それまで住んでいた場末のアパートが立ち退きになり、それが理由で出なきゃならなくなったから。

在宅ワークでそれなりに収益を得ていた俺は、まぁその点では困らず、
それからすぐにまた新しい別のアパートに越してきたのだ。そしてこれが転機となった。

抜男「新しい生活をするのだ。頭も新しくしよう」

その思い1つで踏ん張り、俺はついにスキンヘッドを手に入れた。
もうこれまでのようなチマチマした事で悩む必要は無い。

新しいスキンヘッドと言うスタイルを手に入れたから、妙に心に余裕ができたのか。
その覚悟と共に、これまでの生活を振り返る。正確には振り返らされるのだ。
本当になぜあんなところに髪の毛が…?この疑問がまず湧いてきた。

それまでほとんど触ったことのない机の引き出しの中や、
日常生活を送っていて全く手を触れることのない天井裏、
それに家具と壁の1ミリほどの隙間や、或いはいつも使っていた自転車のサドルにまで、
まるで「ほらこれを見ろ、言わんこっちゃない!」と髪の毛に言われてるような、そんな架空の世界すらチラついていた。

皆そんな経験は無いだろうか?特に抜け毛が激しい人、それで悩んでいる人は、俺と同じような経験をしてきたのじゃなかろうか。

ホントに「なぜこんな所に…?」言う所に髪の毛が落ちていたのだ。
これを思えば、人の髪の毛は本当に無数にあるほど多いもので、
それだけ抜けても髪の毛はちゃんとまだ頭の上に残ってる…それを確認しつつもやはりそれで悩まされ、
「抜け毛で悩む」などと言う愚かな悩みに悩み続けるのである。

俺はもうその悩みを捨て去った。2度とやって来る事もあるまい。
新しい部屋。ここに抜け毛は無い。全てが新しい。床などもう金(きん)ピカだ。ピカピカしている。
風呂もピカピカだ。トイレもピカピカ。そのうち自転車も新しいのに替えようなんて思ってる。

ト書き〈疑問?〉

しかしその直後。

抜男「うわっ…」

その夜、風呂に入ろうと浴室のドアを開けたところ、排水溝にちょっと気になるほどの抜け毛があった。
少し恐怖を覚えながらフロアに戻って見ると、リビングの床にも何本か抜け毛が落ちていた。

抜男「……………………誰の髪…?」

動画はこちら(^^♪
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