見出し画像

朋子との(約300文字)

 クラスメートになった朋子のお弁当には時々真っ白にみえる卵焼きが入ってた。朋子の家では普段生卵の透明な所が余るらしく、彩りが黄色の時はカボチャやパプリカ、漬けた大根であることのほうが多かったように思う。私のお弁当との間で小分けされた小品が互いを行き来し、二つの箱庭の国の往来をするのを、朋子はモジモジ嬉しそうにして時々見ていた。最後の夏に彼女は転校をすることになった。
 ほんと何度かの転校ぶりだよ、お弁当のおかずの交換なんて、したの。そんなこと、あんまり無かったから。そうして朋子は遠くへ越した。
 何度目かの桜の季節に私はお菓子作りをするようになり、故に往来を懐かしみ、ほどなくして小鳥が庭へと飛来し賑わしく 幼なさえずりが響くと私の心の彼女の国へと届いた。

いただいたサポートは欲しかった書籍の購入のために使わせていただきます。