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アフターデジタル2のスーパーアプリの日本的観点での補足とLINEプラットフォームの強み

アフターデジタル2売れていますね!
前作のアフターデジタルからファンな自分はアマゾンで当日手に入らないとわかったらリアル店舗を回って予約しようとしたら、POSが導入されているはずのとある大型書店で入荷は翌週とか言われ、小さなお店を回ってようやく予約でましたが、問い合わせた大型書店は問い合わせたその日の夕方に入荷されましたってTwitterで流れていて、やるせいない気持ちと小さな店舗での予約のキャンセルは心情的に厳しいなと思い、翌日の購入となりました汗。

内容についてはアフターデジタルが事例メインだったのが、今回はどう設計すべきか?その時の注意点が具体的に記載されているので、前作のアフターデジタルでよかったけどここは日本だよって言って大陸と切り分けて考えてしまう人にとって届きやすくなったかなと思います。 
あと個人的な見解ですが、中国でアフターデジタル(OMO)な状況になったのはオンラインのコストが上昇してオフラインでのリーチコストを上回ってしまったと言うのが要因の一つと言われていますが、このコロナ禍の中でデジタルシフトに遅れていた企業が一斉にデジタルの対応の必要があると言う機運になっており、結果オンラインのリーチコストが上がり、中国のアフターデジタル前夜な状況になりつつあるのでは?と思ってもいます。

そんなアフターデジタル2でスーパーアプリの文脈が語られていて、前回もwechatやアリペイはしっかりと記載されてましたが、その二つのイメージが強すぎて、スーパーアプリと言うキーワードは少し影が薄かったかな?と思ったりもするのですが、今回はスーパーアプリのキーワードが随所に出ます。

【1-2 アジアに学ぶスーパーアプリ】

「ぺイメント、MaaSコミュニケーション」の3つに大別
ソフトバンクワールド2019の基調講演で孫正義氏は、ペイメント機能に始まり、移動、飲食、金融など生活インフラ機能を全方位的にたアブリを「スーバーアプリ」と表現し、その分野のグローレイヤーを紹介しました。「本書を執筆している2020年の日本ではヤフーとLINEの統合をはじめ、ペイメント競争から「スーパーアプリ」競争に変化しつつありますが、アジアでは既に多くのスーパーアプリ」が生まれています。
スーパーアプリになり得るサービスは、毎日利用される「ペイメント、MaaS、コミュニケーション」の3つに大別されます。特にアジア圏では、ペイメントとMaaSが強いです。ペイメントでは、インドのPaytm(ペイティーエム)、フィリピンのCoins.ph(コインズ)、MaaSでは東南アジア全域に広がるrabグラブ)、インドネシアのGO-JEKなどが挙げられます。MaaSやコミュニケーションから始まっても、最終的にはペイメント機能を持つことで生活全方位に機能を拡大し、アフターデジタル型産業構造で頂点に君臨する「決済プラットフォーマー」になることを目指しています。
現状のスーパーアプリのマネタイズは、金融が主体です。ペイメントのデータをはじめとする大量かつ高頻度のトランザクションデータが得られ、さらに高い粘着度を持った行動データの効率が上がります。

と言う説明から記載されていてスーパーアプリの意味や利便性が語られていますが、

【日本と中国における決済プラットフォーマーの違い】

(1)日本の決済プラットフォーマーは中国の2強ほどは強くならない
中国は、アリババとテンセントの2大決済プラットフォーマーに牛
耳られています。「2社は、顧客接点から得られるデータを何に生かし
どうマネタイズするかが明確で、圧倒的な強さを持っています。日本
の決済プラットフォーマーも一定の強さを持つと思われますが、中国
の2強ほどの力を持つことはないでしょう。
ただし、どの企業がその地位になったとしても、中国の2強ほどはくならないと考えています。「その理由は、まず、中国に14億人もいて、ネットワーク効果(人数が多いことによって提供価直や効果が増幅すること)がすごく大きく働くことです。5,000万のユーザーが使うプラットフォーと、5億人が使うブラットフォームでは、参加企業のインセンティブは当然大きく異なります。より多くの企業がよりユーザーの多いプラットフォームに乗ってくるので、ユーザーにとっても選択肢が増え、さらに多くのユーザーが高頼度に使うようになり、すると企業にとってもメリットがさらに増え、といった形で効果が増えていきます。

と言う部分については確かにその通りだとは思うのですが、ならスーパーアプリは日本ではそんなに意識しなくて良いのか?ってのではなく、前からよくお話させていただいていますが、顧客とカジュアルに繋がる必要性の現実解として企業ごとのネイティブアプリの提供は正しいのか?って話は結論として現実的ではないと思われます。

日本のスーパーアプリとして、例えばPayPayは登録ユーザー数が3,000万人を達成(2020年6月29日)していますし、

ではD払いが2,526万(2020年3月末)やAu Payが2,300万超(時期未記載)などとなっており、LINE Payは登録者数3880万人で、LINE本体としては国内8400万MAU(月あたりのアクティブユーザー数)と言う状態で、wechatやアリペイのようなスーパーアプリ基盤の数字には追いついていませんが、だからスーパーアプリをやめてネイティブアプリを選ぼうってロジックにはならないと思います。
企業内のマーケティング担当の方が過去の反省点から一つのチャネルに依存するのはダメと言うロジックもありそこは非常に正しいとは思うのですが、そもそもなぜ一つのチャネルに依存って考えてしまうのか?ってところが疑問で、例えばLINEミニアプリは作成にオープンなインターネット上の技術であるHTML5とJava Scriptで実装し、LINE特有の部分はLINE Front-end Framework(LIFF)のSDKでラッピングされ実装しやすくなっており、LINEミニアプリだけで実装するのではなく、多分公開されるであろう他のスーパーアプリ上やWEBでHTML5で提供したり、それでもネイティブアプリと言われるならネイティブアプリ内部でWEBビューなどを使って差分のみ開発し、サービスを提供すればと思います。
ただチャンネルに依存したくないってお話は、そもそも企業側の論理であってユーザーの論理ではないので、そこにこだわり議論の中心にもっていくマーケティング担当の方は、結果的にアフターデジタル的な思考ではないのかなとも思います。
また今日のサービス提供スタイルとして小さな機能を素早くリリースし続けるってのは、ネイティブアプリだとあまり小さすぎるサービスではなんとなく企業としてリリースするのは考えてしまいますし、体裁の為によくわからない機能をたくさん入れてチグハグなネイティブアプリをリリースするのは本末転倒な結果を招くのでスーパーアプリ上でのミニプロラム(ミニアプリ)のスモールスタートは現実的かなと思います。

LINEミニアプリ

LINEは8400万MAUと日本国内ではたくさんのユーザーが利用していただいております。そしてアフターデジタル2の中でも記載されていますが、LINEは2019年6月にLINE CONFERENCE 2019で「LIFE on LINE」のコンセプトを発表し、その中でLINEミニアプリを発表しました。

クローズドにLINEミニアプリの企業様とご一緒に開発してきましたが、先日LINEミニアプリを審査制ではありますが、公開させていただきました。詳細を書き出すとボリューム多いので

にまとめさせていただいていますのでよかったら見てください。
ちなみにLINEミニアプリ利用料は無料となり、必要なWEBサーバーなどのインフラについては、サービスを開発される会社様でお好きに選択できますのでお好きなクラウドやオンプレミス環境をご用意していただければと思います。
審査からするのは大変、まずは自社でプロトタイプやモックを作って試して見たいって方は審査なしに開発する方法として

をまとめさせていただいていますので開発者の方は見ていただければと。
LINEミニアプリは現状でも様々なサービスがリリースされていますが、中でもPAL CLOSETの事例については

「取り組みに当たっては、新規会員数をKPIに設定しました。2020年3月以降、新型コロナウイルスの拡大を受けて多くの店舗が営業自粛となったにもかかわらず、PAL CLOSETの新規会員数は前月比(LINEミニアプリのリリース前)と比べて倍増。しかも、3COINSの店舗に限定すれば、新規会員の8割がネイティブアプリではなくLINEミニアプリで登録いただいています。PAL CLOSETの会員数増加に伴い、LINE公式アカウントの友だち数・ターゲットリーチ数も、取り組み開始からわずか1カ月で約3倍に増加しました。反面、ブロック数は下がっており、店頭のロイヤルティーの高いお客さまにLINEミニアプリを利用いただけていると考えています。
また、課題としていたECサイト『PAL CLOSET』への誘導についても、LINEミニアプリの導入後、友だち数が増加したことでメッセージ経由のECサイトの売上が前年比5倍となりました」

と、このコロナ禍でもLINEミニアプリの事業的有効性が発揮されました。

LINEと他の国内スーパーアプリとの大きな違い

他のスーパーアプリと違うLINEのスーパーアプリの強みですが、コミュニケーションを使った伝播力の違いが一番大きいかと思います。
LINEミニアプリの「ジョルダン乗り換え」は

に記載されていますが、シェア機能が非常に強力です。詳しくは記事を見ていただくとして、検索結果を友だちに簡単にシェアする事ができて、しかもシェアされた友だちが検索結果のメッセージをクリックすると「ジョルダン乗り換え」起動しサービスをコミュニケーションの中でアクティブにできる機能が使えるのは大きな差分かなと思います。
今までなら
・情報共有のスクリーンショットをとる
・メッセージングアプリなどの別アプリでスクリーンショットをシェア
・情報共有内容を返したい場合は別アプリをインストール
・メッセージングアプリなどの別アプリでスクリーンショットをシェア
と言う流れでしたが、この流れをLINEの中だけで完結する事ができ、ユーザー的にも企業的にもメリットがあります。
このシェア機能は「Share Target Picker」とLIFFやLINEミニアプリのURL起動の組み合わせで可能ですので、うまく活用いただければと(Share Target Pickerも無料です)

またLINEミニアプリ事例ではありませんが、東急ストア様のLINE Pay決済からのLINE公式アカウントが増えた事例

などは、これから的な部分もありますが、このコロナ禍で2020年7月29日現在友だち数164,000オーバーで、一度リアルで決済したユーザーをフリクションレスに繋がる事ができた良い事例だと思います。
公式アカウント内での機能も追加されてきており、実はアジャイルなスモールスタートでサービスをリリースする良いやり方だと思っています。
また東急グループ内の連携としての可能性も垣間みえており、東急ストアアカウントから、「東急電鉄 券売機チャージ」

への誘導など、グループ間連携が今後広がって行けば、スーパーアプリの中での東急グループの新たなサービス経済圏が生まれるのでは?なんかも期待しています。

また少し違う観点ですが、アフターデジタル2の中で【1-4 インドに見る「サービスとしての政府」】の記載がありますが、LINEとしてもLINE 福岡が福岡で行政様と進めている、「LINE Smart City Fukuoka」

で培ったノウハウを「LINE SMART CITY GovTechプログラム」

としてソースコードを無償提供させていただく事にもなりました。
LINEのUIと行政サービスは相性が良いので各行政様で個別にサービスをリリースしていますが、これからは安価に各行政の方がサービスをLINEのUI上でフリクションレスに提供できるようになるので、ユーザーと行政の距離を縮める為のスーパーアプリ文脈も今後広がっていくと思います。
余談ですが、福岡でのLINE活用は木の葉モールのLINEを使ったモバイルオーダー

が、三密対策の流れもあり、放送も含めた多くのメディアで取り上げられました。

LINE IDの強み

MAU8400万人のID数はユーザー数の多さだけではなく、他のユーザーIDと比べLINEのメッセージサービスだけでなく、LINE Payや他のサービスに紐づいており、普通に使っている場合に他のIDのような使い捨てされにくいユーザーIDが特徴で、端末交換時にでも引き継がれるIDの最上位かと思います。
このユーザーIDはLINEの中だけでなくLINEログインとして外部のWEBサイトやアプリにも組み込めるので、LINEの中以外でもメリットがあるかと思います。

より強固な本人認証の仕組みであるe-KYCも提供していますので、ますますLINE IDの企業的な価値が高まってきています。



長々と記載させていただきましたが、アフターデジタルやるぞというタイミングが日本にも来つつあるので、そこの顧客のチャネル作りの実現方法の基盤としての現実解としてスーパーアプリをご検討していただければと思います。
中国と日本の状況はアフターデジタルの中でも違うと記載されており、そのままの中国の事例を適用とは難しいと思いますが、今後の日本の労働人口減少問題などを考えると日本こそアフターデジタルな世界観を諸外国よりも先に実装していく必要があると思いますので、アフターデジタルな世界観の日本での実装をみなさまとご一緒できればと思います。


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