マガジンのカバー画像

単語リクエスト作品まとめ

5
【単語リクエストシリーズ】の作品をまとめています。
運営しているクリエイター

記事一覧

【単語リクエスト④】雨上がり×鰯

4日ぶりに雨が上がった。 久々に顔を出した太陽がうんと日差しをよこすので、雨の膜が張ったアスファルトに日光が反射して目が痛いほどだった。 さっきたとんだ傘を左手にぶら下げて歩いていると、頭上からパラパラと雨粒が落ちてきた。お天気雨が降ってきたようだ。 お天気雨は虹が出来やすい。足を止めて、日光に照らされてきらきら光る雨をしばらく見ていると、次第にきらきらの中の銀色の光が増してきた。 不思議なことに、銀色の光が強くなると同時に雨粒もどんどん大きくなっているように見えた。

【単語リクエスト③】色×ラマ

家に帰るやいなや、お帰りの挨拶もそこそこに、旦那がものすごい勢いで私の元に駆け寄ってきた。そして、にこにこしながらおもむろに自分のシャツをめくりあげた。 何事、と驚く私をよそ目に、彼は一層にこにこしながらお腹を指さした。 つられてお腹を見ると、毛糸で編まれたおちゃめなラマがびっくりしたようにこちらを見ている。 「見て!ラマのはらまき!らまの、は、ら、ま、き!」 旦那お得意のダジャレが飛び出した。普段だったら、寒い!と一蹴するところだが、してやったりというような彼の顔が

【単語リクエスト②】憂い×苺(逆視点ver.)

ぼぅ、と外を見ていると少し暗くなった空にカラスの影が見えた。きっと外は暑いんだろうな、そう考えていると微かにノックの音が聞こえてきた。 ___もうお姉ちゃんがくる頃か。 後ろを振り向くと、小包を抱えた姉が手を振っていた。顔を見ると自然と笑顔になる。 姉が病室に入ってドアを閉めた途端、ふわりと病室の匂いが変わった。 ___あ、私があげたストロベリーの香水。 去年の誕生日に、少し子供っぽかったかもと不安になりながらあげた香水だったけれど。姉はとても気に入ってよくつけてい

【単語リクエスト②】憂い×苺

ベッドの中から窓の外を見ている妹の表情は、心なしか憂いの色が濃く見えた。 開いたドアの横を軽くノックすると、夢から醒めたように妹は振り向いた。 私だと分ると、さっきまでの表情が嘘のように大きな笑顔を浮かべる。 「お疲れ様、お姉ちゃん。」 妹が入院してから2年が経つ。今でも週に2回は仕事帰りに立ち寄り、着替えや食べ物を持って来ている。 気分はどう?と聞くと、「うん、いいよ。」と短い返事が返ってきた。私も、そう、良かった。と短く返事をした。 いいはずはないのに。日に日

【単語リクエスト➀】駅×愛

──駅は愛が通る場所だと、小説の一節で読んだことがある。本好きの他人(ひと)に勧められて読んだ本だった。 その他人は、いま腕の中にいる彼女でないことは確かだ。 ──ごめん、好きになれなかった。 ふんわりとした笑顔が可愛くて、人懐っこい。それでいて芯の強い彼女。 ゆっくりと腕をほどくと、彼女はうつむいたまま一歩後ずさった。 少しずり落ちたショルダーバッグの肩紐を戻してやると、彼女は泣き笑いの顔をした。 「…とおる君ってほんと、…。」 僕に聞こえないくらいの声でつぶ