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【単語リクエスト②】憂い×苺

ベッドの中から窓の外を見ている妹の表情は、心なしか憂いの色が濃く見えた。

開いたドアの横を軽くノックすると、夢から醒めたように妹は振り向いた。

私だと分ると、さっきまでの表情が嘘のように大きな笑顔を浮かべる。

「お疲れ様、お姉ちゃん。」

妹が入院してから2年が経つ。今でも週に2回は仕事帰りに立ち寄り、着替えや食べ物を持って来ている。

気分はどう?と聞くと、「うん、いいよ。」と短い返事が返ってきた。私も、そう、良かった。と短く返事をした。

いいはずはないのに。日に日にやせ細っていく妹の強がりを、否定することはできなかった。

椅子に腰かけ、さっきの表情の意味を問うと、妹は意外にも笑みを浮かべた。

「んーなんでもない。」

えー何なに?欲しいものでもあるの?お姉ちゃんがなんでも買ってあげる。そう笑って答えると、妹はそんなんじゃないよと笑って下を向いた。

立ち上がり、お茶を入れようとポットに手を掛けたところで、小さく声が聞こえた。

「…やっぱり、なんでもなくない。」

その声に、やっぱりあるんじゃん、と少し笑って顔をあげると、妹はひどく心細そうな表情を浮かべていた。

「苺、また食べられるかな。」

それを聞いた途端、私は胸が苦しくなった。

__夏生まれの妹は苺が大好きだった。小さい頃は、誕生日ケーキに苺がのってない、と泣くこともあったくらいに。

今は8月。妹の余命は後2ヶ月と言われている。

「…夏苺っていうのがあるらしいよ。夏にもとれる苺だって。この辺にはなかったから、取り寄せてみる?」

努めて明るく言うと、妹は一瞬目を輝かせた。けれど、その次には首を横に振った。どうして、と問うと妹は手を固く握りしめた。

「12月まで生きてやるんだって、頑張るための目標にしたの。」

そう言ってまた窓の外を見つめる妹の手に、私はただそっと手のひらを重ねた。

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