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Day.25 広域抗菌薬の診療メモ【総合診療トピックゼミ】


<Story>

 他院から、重症細菌感染疑いの患者が搬送されてきた。感染源は尿路が疑わしいが、どうにも確定できない。培養をとりつつ、年齢やベースの疾患を考えて、褒められたものではないと分かりつつも、広域抗菌薬を使用せざるを得ないとの判断に踏み切る。しかしふと思う。この抗菌薬って、アレはカバーしてたっけ……?

<メロペネムの弱点>

〇多くのグラム陽性菌、グラム陰性菌(緑膿菌含む)、嫌気性菌をカバー。
〇ESBL酸性菌、AmpC過剰酸性菌にも効く。
……ただし、下記はカバーしていません。
×MRSA
×腸球菌(尿路感染、腹腔内感染等の原因になる)
×非定型細菌
×C.difficile

<メロメネム+バンコマイシンの弱点>

バンコマイシンは、MRSAや腸球菌を含めて、グラム陽性菌を全てカバーします。従って、非定型細菌以外はカバーが可能です。

<ピペラシリン/タゾバクタムの弱点>

〇イメージとしては、ABPC/SBTに緑膿菌カバーが加わった感じです。
……ただし、下記はカバーしていません。
×MRSA
×非定型細菌

<ピペラシリンの弱点>

緑膿菌はカバーしています。しかし、嫌気性菌やMRSAに対するカバーは、ピペラシリン/タゾバクタムに劣ります。

<セフェピムの弱点>

〇セフェム版、ピペラシリンタゾバクタムですが、セフェム系の宿命として、下記をカバーしていません。
×腸球菌
×リステリア
また、下記への作用も今一つです。
△MSSA
△嫌気性菌
そして、やはり下記はダメです。
×MRSA
×非定型細菌

<Column>

 大きな病院(紹介を受けるような病院)で働いていると、「え、なんで培養も取らずにこんな抗菌薬流して紹介したん!?」と思うことがあるでしょう。これに関しては申し訳ないと思う一方で、地域の医療機関は、そんなに自由に動けないケースが少なくないこともお伝えしたいのです。そもそも、資材の不足で適切な培養が取れないケースがあります。点滴の抗菌薬をおいていないクリニックもあります。ピペラシリンはあるけれど、本当に使いたいピペラシリン/タゾバクタムがないこともあります。そういった環境で必死になんとかしようとした先の紹介なのです。

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