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サステナブル社会にトップパフォーマーは不要

なぜ、サステナブルが叫ばれているのでしょうか。それは、ヒト・モノ・カネという資源には限りがあり、使い捨ての消費社会から循環型の社会を目指しましょう、というのが大雑把な見方と言えるでしょう。

組織論で言えば、ある程度市場の限界が見えてきた以上、現在の市場で上手く立ち回って生きていく必要が生じてきたのです。これまでは隙間産業、いわゆるベンチャーの活躍するスペースもありましたが、産業は飽和し、有限な資源を無駄にすることなく限りある市場で工夫しながら生き抜いていかなければならなくなったのです。

18歳人口の減少

大学業界において2018年問題が叫ばれていましたが、もはや過去のこととなってしまいました。今では2030年には100万人を切るとまで言われ、大学進学率も頭打ち、いよいよ市場縮小の時代に突入してきたのです。では、新たな市場に手を出しましょうか。

リカレント教育や留学生の受け入れ、確かにそれらが当てはまりますが、それがどれぐらいの収入になると言うのでしょう。4年間の学生から得られる学納金はおよそ400万円程度です。ところが、生涯学習として資格講座や公開講座を行ってもせいぜい、数万円というレベルでしょう。科目等履修生、聴講生も同じです。留学生に至っては私学事業団の経常費補助金を得るぐらいのもので、およそ18歳人口の市場とは比較できないレベルの収入でしかないのです。

私立大学のライバルは、専門学校や技能訓練校、資格の学校も含まれるとすると、彼らを取り込むことはそれほど魅力的なものではありません。また、新たなコースを開講するとなれば、講師陣を増やさねばならなくなり、収支の構造はどうなるでしょうか。あまり考えたくない話ですね。

余談ですが、新卒採用業務で18歳人口について尋ねると、ほぼ100%と言って良いほどリカレント教育と留学生の受け入れに対する答えが返ってきますが、上述のとおり、あまり現実的ではないのです。だからと言って、応募者段階でここまで現実的に考えられるような材料はありませんので、落とす理由とまではなりませんが。

役目を与えていかなくてはならない

不思議なもので、どの組織にも余剰人員というものがいます。というよりも、2:6:2の法則よろしく、組織とは2のトップパフォーマーと6の上澄によって牽引されているというのが一般的です。大学職員と聞くと、まったり高給でのんびり仕事をしているようなイメージをお持ちの方もいらっしゃるでしょう。

確かに、数十年前までは18歳人口は上昇し続けていましたので、遊んでいても受験生が集まり、偏差値は上がり、入試手当で車が買えるほどの好景気な時代もあったようです。ところが今となっては、死に物狂いで大学のブランディングに奔走し、18歳人口減少時代に立ち向かっていかなければならなくなりました。

そんな時代にあって、かつてのように手持ち無沙汰な人をそのままにしておく訳にはいきませんし、場合によっては、組織の縮小再生産をしながら業務を削減しつつ強みを残すという苦しい決断をせざるを得ない場面も多くなってきます。それほど今の大学業界は苦しく、持てる力を全員で発揮して運営していかなければならなくなったのです。

そうすると、どんな人にでも役目を与えて活躍する場を用意しながら、もちろんそれは縮小再生産の中にあっても必要なもの、教育・訓練して継続的に頑張ってもらわなければなりません。属人化を避けながらも、モチベーションを維持してもらい、可能な限り頑張ってもらうという環境を用意することが今後の人事部門には求められてきます。

トップパフォーマー不要論

ようやく本論といったところですが、皆さんの組織はいかがでしょうか。一部のトップパフォーマーがとんでもない力で組織を牽引している場面を見たことはありませんか。確かに頼もしい存在であり、その人に頼めばどんなことでも実現でき、寝ているのか?と思うほどに働き続けるワーカーホリックな人がどの組織にも存在します。

そのバイタリティの根元が、出世なのか、金なのか、正義なのか、暇なのか、それは凡人である私にはわかりません。ただ、今後の組織を考えていく上で、持続可能性、すなわちサステナブルの観点からすると、そうした存在は一時は良くても、後に残るのは息切れした周囲の人間と、悪くすれば揺り戻しの反対勢力の台頭という目も当てられない状況だけです。

サラリーマンのジレンマとでも言いましょうか。我々サラリーマンは一つの歯車であると認識しながらも、どこかで特別な存在でありたいと望んでしまう悲しい生き物なのです。まずはそれを自覚することが大切で、どうしてもできないというのであれば、自組織以外に自身の居場所を作ることが肝要です。このことは副業や複業と親和性が非常に高く、正規雇用では無理でも、高いスキルを間借りしたい組織というのはたくさんあるので、組織的に推奨することも時代の潮流とマッチしているでしょう。

いずれにせよ、トップパフォーマーに依存する組織というのは、短期的には成功しているように見えても、サステナブルの観点からは非常に危ういのです。トップパフォーマーへの一点投資が短期的効果しかないために、ローパフォーマーのモチベーションアップ・能力の底上げが望ましいという組織論もありますが、サステナブル社会においては、それに加えて持続可能性の観点から、人材の無駄を失くし、人ありきでの仕事ではなく、組織や社会環境に合わせて仕事を与える仕組み作りこそが重要であると言えます。

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