【どこよりも詳しい】オリックス新外国人ジャレル・コットン投手徹底分析
こんにちは、シュバルベです( ✌︎'ω')✌︎
パリーグ連覇、そして日本一を達成したオリックス・バファローズ。このオフシーズンでは吉田正尚選手をポスティングでMLBに送り出した一方、森友哉選手をFAで獲得するなどリーグ三連覇に向けて陣容を整えています。
新外国籍選手の獲得調査は何度か報道されていましたが、ようやく公式でフランク・シュウィンデル選手とジャレル・コットン投手の2選手の獲得発表がありました。
先行公開のフランク・シュウィンデル選手についてのnoteはこちら。
第2弾となる本noteではリリーフ投手として期待のかかるジャレル・コットン投手について、どんな投手か、そしてチームにどうフィットしていくかを考えていきましょう。
0.ジャレル・コットン投手のプロフィール
米国領バージン諸島セント・トーマス島出身のジャレル・コットン投手は、身長180cm体重91kgのMLBではやや小柄な投手です。
兄のジャメイン・コットン氏も元野球選手で、2010年にドラフト15位でヒューストン・アストロズから投手として指名されています(MLB登板は無し)。
ジャレル・コットン投手は1992年1月19日生まれの31歳。オリックスでの同年代は、近藤投手や杉本選手が居ます。多くのMLBプレイヤーを輩出しているイースト・キャロライナ大学から、2012年にロサンゼルス・ドジャースのドラフト20位で指名されました。
入団後は主に先発としてマイナーリーグで実績を積み、2016年にジョシュ・レディック選手やリッチ・ヒル選手の絡んだトレードでオークランド・アスレチックスへ移籍。同年9月にMLB初登板を経験すると、5試合5先発で2勝0敗、防御率2.15。
2016年のアスレチックスでのプロスペクトランキング4位にも位置付けられ、翌2017年には先発ローテーションに入り24先発で9勝。MLBでの活躍の道筋が見えたかに思われましたが、2018年3月に右肘の内側側副靱帯損傷。
靱帯再建手術を受けるも、MLB登板はそれから3年間無し。
2021年にテキサス・レンジャーズで4年ぶりにMLB登板を果たすと、22年は2球団を渡り歩きつつ中継ぎ投手として30試合に登板しました。
そしてこのオフ、オリックスと単年で年俸9,000万円で契約。
記事内で、横田昭作球団本部長は「コットンは馬力もあるし複数イニングも可能かなと。中でいい仕事をしてくれるのかなと思う」と語っています。
背番号は42番。オリックスでは2008年アレックス・カブレラ選手以来、10人続けて外国籍選手が着用している番号です(昨年はラベロ選手が着けていました)。MLBでは言わずとしれた黒人初のメジャーリーガー、ジャッキー・ロビンソン選手の永久欠番であります。
1.ジャレル・コットン投手の投球成績
2022年のMLBでのジャレル・コットン投手のシーズン成績はこちらです。
30試合に中継ぎ登板し、防御率は3点台半ば。主にビハインド~4点以上リード時に登板し1~3イニングを投げる形で運用されました。
奪三振能力は21.5K%と悪くない数字で、与四球率も11.0BB%でまずまず。特に前半戦は防御率2点台で、ゲームを壊さず良い繋ぎの役割を果たしています。
直近4年間のMLBおよびAAAでの成績はこちら。
21年~22年にかけてMLBで安定しており、防御率・K%・BB%とも同程度の成績を残すことが出来ています。MLB通算成績は2016年~17年にかけての先発時の数字が入っていますが、それでも奪三振率は20K%近くあるので信頼が置けるでしょう。
実際、AAAでの奪三振率は30K%を超えており、NPBでも20~30K%は固く予想できるのではないでしょうか。
靱帯再建手術から4年が経過していますが、直近二年でMLBとマイナー合わせて100試合近く投げており術後の経過は安定。1年間フルに稼働しても問題ないと考えて良いのはプラス材料です。
打者の左右の打席による被打率の乖離は少なく、1イニングしっかりと任せられるのも強みです。2022年は走者あり時や得点圏に背負ったときの被打率が2割を下回っており、ピンチでも動じないメンタルも持ち合わせています。
2.ジャレル・コットン投手の投球内容
この章ではジャレル・コットン投手の投げているボールについて見ていきましょう。
2022年、投じられた球種は次の通りです。
フォーシームとチェンジアップで投球の85%を占めており、スライド方向に曲がる2球種、スライダーとカーブは投球のアクセント程度の使い方になっています。
フォーシームの平均球速は149km/hと来日するリリーフ投手としては遅い部類にはいりますが、被打率は.231と低く、空振り率は20%を超えています。
マネーピッチはチェンジアップで、被打率は2割を切り、空振り率は33%。フォーシームとの球速差は約20km/hで、MLB平均のチェンジアップと比べてかなり遅いボールとなっています。
カウントを整えるのにフォーシーム、スライダーをメインで使い、ツーストライクに追い込んでからは70%以上の確率でチェンジアップを投じています。このボールで年間33個の三振を奪っており、まさにマネーピッチと言えるボールです。
ジャレル・コットン投手が2022年に投じたボールの変化量を縦×横でマッピングすると次のようになります。
フォーシーム、チェンジアップの2球種は横の広がりも縦の広がりも分布範囲が小さく、非常に再現性の高いボールとなっています。フォーシームと比べてシュート成分がそこまで大きくない割に、落差はしっかりとつけられるチェンジアップは確かに有効なものでしょう。
逆にスライダーとカーブは球数の割に横の広がりが大きく、再現性にはやや難があるボールとなっています。ただ、スライダーはチェンジアップと近しい球速帯で、スライド成分が非常に大きいボールとなっていることから、左右の幅を使うには有効なボールとなっています。
来日した・来日する他の外国籍選手と比較をしてみましょう。比べる球種は投球割合の多くを占めるフォーシームとチェンジアップです。
比較対象として、その2球種を持ち球とする5人の右投手を入れました。オリックスのワゲスパック投手、日ハムのポンセ投手、元スワローズのA.J.コール投手、元阪神のスアレス投手、23年に西武に加わるティノコ投手です。
まずはフォーシームから。
コットン投手のフォーシームはシュート成分が20cmを超え、ホップ成分は50cm近く。投げているゾーンは左右問わず真ん中~高めのストライクゾーンに入れてカウントを作っていくボールです。
右打者に対しては被打率.167とホップしながら食い込む有効なボールとなっている一方、左打者に対しては外に逃げていくボールになるため踏み込まれやすいのか被打率は3割を超えています。
続いてチェンジアップ。
シュート成分は34cm、ホップ成分は15cmと小さく、フォーシームと比べた時の落差が非常に大きくなっています。球速差20km/hによる影響も大きいですが、フォーシームと同じ腕の振りでこれだけの落差を作れるボールを投げられるゆえに、チェンジアップは高い空振り率を記録出来ているのでしょう。
右打者に対してはゾーン関係なく低めに落とすボールとして使い、左打者に対しては徹底してアウトコース低めに投じているボールとなっています。
右バッターに対してはスライダーも17%の割合で投じていますが、左打者に対してはフォーシームとチェンジアップの2球種で90%以上を構成しており、NPBでもこの2球種の精度がどこまで高められるかでしょう。
球速の面は多少ネックで、チェンジアップの落差がNPBのボールでそこまで出ず、ファウルが多くなってしまうと苦しいピッチングになるシーンが出てくるかもしれません。
最後に実際の映像を見ての定性的な情報です。
踏み出し脚の幅は小さく、ボールの制球面で左右のブレが非常に少ない投手です。投げるボールの緩急と落差で勝負するタイプで、フォーシームに対してバットが下をくぐったり、チェンジアップに対して大きくタイミングを外されるシーンが目立ちました。
予備動作が少ないためクイックのタイムも比較的速く、ランナーケアもしっかりとできそうです。
3.ジャレル・コットン投手に求められる役割
最後に、ジャレル・コットン投手がオリックス・バファローズで果たす役割についてです。
MLBでの2年間のリリーフ経験を活かした、セットアッパー候補という役割になっていくと考えられます。
22年、オリックスはシーズン終盤に中継ぎが強固に整備され、宇田川投手、山﨑颯投手、ワゲスパック投手、阿部投手、平野投手といった選手が9回のクローザーの役割も含めてリリーフのイニングを消化してきました。23年は山﨑颯投手・ワゲスパック投手が先発に戻りシーズンを迎える可能性も高く、リリーフの枚数を厚くしておきたいと考えているでしょう。
仮にワゲスパック投手がリリーフのままでも球質や投球スタイルはコットン投手と真逆(フォーシームはスライド成分が高くい)で、2人ともブルペンに控えていても差別化ができる状態です。
中継ぎで2枠外国籍選手を使ってしまうのは勿体なく感じますが、オリックスは昨年も外国人登録枠を余らせており、一定の結果さえ出してくれればワゲスパック投手とコットン投手の併用は問題ないでしょう。
2022年をもって退団したジェシー・ビドル投手は35試合40イニングを一軍で投げ、防御率4.02。フォーシームの球威で押すことが出来ず、シーズン後半戦に宇田川投手らの速球派リリーバーに席を奪われてしまいまいた。
コットン投手には一軍で30イニング、防御率3点台前半がその次の年の契約をもぎ取るために最低限必要になるでしょう。
球速という分かりやすい数字の部分が物足りないものの、ボールに適応できればチェンジアップは脅威のはず。多くの三振を奪えるかにかかっています。
頑張って結果を残してほしいですね。
Go, Cotton!!
■出典
https://baseballsavant.mlb.com/
https://1point02.jp/op/index.aspx
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