見出し画像

東京ヤクルトスワローズ期待の二遊間“長武コンビ”の現在地

あけましておめでとうございます、シュバルベです(๑╹ω╹๑ )

私もnoteの資料等で大変お世話になっている株式会社DELTAが、21年8月から二軍のデータも有料公開していることはご存じでしょうか。

このニュースを見た時から私は1つ書きたい記事がありました。スワローズ期待の二遊間“長武コンビ”についてです。“長武コンビ”とは2019年ドラフトで獲得した2人の選手のことで、5巡目の長岡秀樹選手と6巡目の武岡龍世選手の頭文字を取った名称です。

長岡選手は八千代松陰高校で、武岡選手は八戸学院光星高校で、高校時代はともに遊撃手として名を馳せた選手でした。同期のライバルとしてチーム内で切磋琢磨し将来の燕のセンターラインを担ってほしい、そんな指名の意図が透けて見える2019ドラフトは個人的に素晴らしいものだったと思っています。

さて、指名から2年が経過しました。長岡選手・武岡選手の二人は現在どのような進化を遂げているのか。打撃、守備、そしてこれからの展望の3つの観点で見ていきたいと思います。

0. 「長武コンビ」のプロフィール

・長岡秀樹選手

画像7

出身:八千代松陰高校
生年月日:2001年9月26日
身長/体重:174cm74kg
投打:右投左打
背番号:58
目標とする選手:今宮健太(入団会見時)
ドラフト会議後の一言コメント:走攻守、三拍子そろった遊撃手。今夏(※2019年)千葉大会では準優勝の原動力となった。シュアで一発を秘めた打撃と、球際に強い堅実な守備で勝負する。次世代のレギュラー候補として期待。

・武岡龍世選手

画像8

出身:八戸学院光星高校
生年月日:2001年5月28日
身長/体重:178cm/77kg
投打:右投左打
背番号:60
目標とする選手:川端慎吾(入団会見時)
ドラフト会議後の一言コメント:強打、堅守の遊撃手。力強さを付けた打撃は今夏甲子園でも成長を見せた。U-18日本代表ではユーティリティープレイヤーとしての可能性も広げた。攻守においてセンス溢れる将来のレギュラー候補。

1. 2年目で個性が出てきた「長武コンビ」の打撃

まずは長岡選手と武岡選手の打撃ですが、この2年間で大いに成長したと断言できます。特に高卒2年目イヤーとなった2021年は「長打の長岡選手」「出塁の武岡選手」という個性が打撃面で顕在化してきました。

その変化を辿っていきましょう。

最初に高卒1年目、2020年の二人の主要な成績は次のようになります。

画像1

少ないですが二人とも一軍の土を踏んでおり、特に武岡選手は初出場の10/30ジャイアンツ戦でエース菅野投手から初打席初ヒットを放つ鮮烈デビューを果たしました。

二人が主戦場とした2020年スワローズ二軍は全79試合を開催しましたが、長岡選手が71試合、武岡選手が72試合に出場。揃って多くの出場機会を与えられ、大きな怪我をすることなく完走しました。高卒1年目の選手としては二軍の試合に出場し続けられた体力を持っていたことがポジれますね。

二人の1年目の打撃成績は非常によく似ています。打率は1厘差の.219と.218。出塁率・長打率も1分程度の差で、二つの和で求められるOPSは.585と.591。“長武コンビ”と括られるぐらいにはシンクロした成績で一年目を終えました。ホームランの数はともに2本で仲良しすぎます。

ただ成績をリーグで見ると、OPSはイースタンリーグ規定到達者27人中25位・26位。ドラフト5位・6位という下位指名からするとある意味妥当な結果だったという形に落ち着きました。

それから1年が経過し2021年、長武コンビの成績は次のようになりました。

画像2

二軍での成績が二人とも大きく上がっています!

スワローズは一軍でリーグ優勝を果たし、最後まで競ったペナントレースだったことも影響して一軍出場機会は1年目より減りました。二軍では全104試合のうち80試合以上に出場、2年続けて大きな怪我無く完走しています。

二軍での成績だけを比較したのがこちらです。

画像3

ともに打席数を増やしていながらOPSは1割近くUP。打率は.261と.263でやはり仲良しなのですが、長武コンビの打者としての違いも少しずつ見えてきています。

長岡選手は、出塁率に関しては1年目と変わらない.290ですが長打率は.295から.410に大幅アップ。本塁打だけを見ても21年は7本放っており、イ・リーグ9位の本塁打数となりました。二軍での初ホームランは2020年9月と遅かった長岡選手ですが、この秋のフェニックスリーグでは3試合連続ホームランも記録するなどパワーツールをぐんぐん伸ばしています。

打球方向の意識も変わったのか、2020年引っ張り方向に飛んだ打球は31%でしたが、2021年は44%まで跳ね上がり、パンチ力のあるプルヒッターとしての姿を現してきています。

一方、武岡選手出塁率が.305から.327長打率が.286から.365と両方の数字を上げており、本塁打は2本に留まるも二塁打の数が8本から22本へ約3倍増。イ・リーグ規定到達者16人の中で出塁率は7位につけています。

打球の方向はレフト~ライトまで3方向に大きな偏りのないスプレーヒッターに近づいています。

長武コンビの素晴らしいところは打撃面の細かい数値にも表れています。三振の割合を表すK%に着目してみましょう。今年と昨年で次のようになります。

長武コンビの三振率推移
長岡選手 17.9K%→11.9K%
武岡選手 20.2K%→14.2K%

ともに三振の割合を6%近く減らすことに成功しました。これを下支えしているのがボールへのコンタクト率です。

ストライクゾーンのボールへのコンタクト率ですが、長岡選手は89%から93%に、武岡選手は92%から95%に上がっています。長岡選手・武岡選手とも一年試合に出続けた結果プロのボールに慣れ、二年目にはゾーン内であれば9割以上の高い確率でボールにコンタクトできるようになりました。

やはり2年続けて二軍の試合に怪我無く出場し続けたこと、これが長武コンビの成長に大きくつながっているように思います。

2. 戸田の二遊間レギュラー争いから見る「長武コンビ」の守備

スワローズの二軍首脳陣は長武コンビの入団以降、両選手に多くの守備機会を割いてきました。こちらはセカンドとショートに就いた選手の守備イニング数を棒グラフ化したものです。

画像4

画像5

この2年、二塁では長岡選手が全体の42%のイニングで守備に就き、遊撃では武岡選手が全体の62%のイニングで守備に就いています。長武コンビを二遊間で育て、将来の一軍のセンターラインを担わせる。そんな意図を強く感じる起用法です。ただ2人の起用法は似ているようで若干の違いが出てきました。

こちらは長岡選手と武岡選手の守備位置別イニング数とUZRです。

画像6

長岡選手はセカンドを主戦場としつつ、21年はサード・ショートの守備位置にも多く入りユーティリティー的な側面を強めています。逆に武岡選手は20年・21年とショートの守備位置を専門分野として深め、次代の正遊撃手に控える側面を見せています。

二軍のUZRがどれぐらい信頼できる数値なのかという所は頭に置いておく必要があるものの、武岡選手は遊撃手として1年目-4.9から2年目+0.5と良化しています。エラーは2つ増えていますが、UZRは前年より+5.6も上げており、実際の試合を観ても守備範囲が広くなったように見えます。長岡選手に関しては2021年守った3つのポジションすべてでUZR0.0以上を出せており、長武コンビは守備の面でも2年間で成長を遂げていると言えるでしょう。

3. 「長武コンビ」にとっての2022シーズン

これまで長岡選手と武岡選手の「長武コンビ」について、打撃/守備の2つの面で2年間の成長を見てきました。二人の内、どちらが一軍の座に近いか。現状、長岡選手が一歩リードしていると考えています。

スワローズ一軍は5年ぶりのリーグ優勝、20年ぶりの日本一に輝きましたが、長岡選手は優勝争い佳境の10月23日に一軍昇格

この日、スワローズはマジック3で2位阪神と熾烈な首位争いの真っ只中でしたが、同23日と29日にはスタメン出場。10月中旬開催のフェニックスリーグで3試合連続本塁打の猛アピールをすると、試合中に負傷交代した宮本丈選手に代わり日本シリーズでも一軍帯同。試合に出場したのは昇格後3試合8打席のみですが、優勝争いと日本一の瞬間をベンチという間近で経験したことは大きな財産となったに違いありません。

一方、武岡選手はフェニックスリーグで汗を流しましたが終盤の一軍昇格は無く、二人の今年のポストシーズンには差が生まれています。

スワローズの一軍の内野は既に3つのポジションが埋まっています。

一塁:オスナ選手(3年契約締結)
二塁:山田哲人選手(7年契約の2年目)
三塁:村上宗隆選手

21年に関しては遊撃の1ポジションのみ流動的で、西浦直亨選手とルーキー元山飛優選手の2人を中心にレギュラー争いを繰り広げました。

2022年、「長武コンビ」は高卒3年目の年を迎え、一軍の土を本格的に踏まなければならない段階に来ています。23年になれば同級生の進学組がドラフトにかかるのですから。

既にスワローズは21年ドラフトで右打遊撃手の高校生小森航大郎選手を獲得。二軍の内野1枠を小森選手に割くということは、「長武コンビ」は上に行かないと出場機会を奪われていくことを意味し、球団として二人に更なる進化の発破をかけてきています。

一軍レギュラー陣の不調・怪我は「長武コンビ」にとってのチャンスであり、代打でも守備固めでも一軍に出場できる位置(=一軍帯同)を掴み取ることが2022シーズンに求められることです。チームとしても西浦選手がFA権取得イヤーとなるので、リスクヘッジの観点からも長武コンビのどちらかが遊撃の位置に入り始めることを望んでいるでしょう。

2年間、二軍で学んだことを発揮する時が来ます。大いに暴れられるよう、キャンプ・オープン戦から猛アピールを!がんばれ!

■出典



この記事が参加している募集

私のイチオシ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?