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今いちばん楽しみな映画。

すっごくすっごく久しぶりになりましたが、春なので投稿します!
U-NEXT映画部の宮嶋です。

去年劇場公開が延期になった映画がやっと上映スタートしたり、難しい状況の中でいろいろな衛生対策を取りながらも新しくて面白い作品がぽこぽこと誕生していたりして、やっぱり私たち映画ファンにとって「映画なんか、観てる場合だ。」と強く確信する今日この頃です。

※「映画なんか~」は、昨年末からU-NEXT映画ジャンルが標榜しているキャッチコピーです。「いいコピーでしょうそうでしょう?」と自慢したい。私が考えたわけじゃないのですが笑

とりわけ今年に入って、劇場でかかっている邦画の勢いには目を瞠るものがあると思いませんか。

『新聞記者』の藤井道人監督がより深く人間に踏み込んだ『ヤクザと家族』や、坂元裕二さんによるセリフが刺さりまくる『花束みたいな恋をした』。西川美和監督の最高傑作との呼び声高い『すばらしき世界』は私たちU-NEXTも製作委員会に入れていただいているのですが、そのことを誇りに思う、せつなくて、でも優しい、素晴らしい作品。

2月に公開した作品ですが、まだまだ劇場で上映されているので、ぜひ!私、公私含めて3回観ましたが、また観たいくらいです。

さらにもう少し最近公開された作品ですと、岨手由貴子監督が山内マリコさんの原作を映画化した『あのこは貴族』、前田弘二監督と高田亮さん(脚本)コンビの『まともじゃないのは君も一緒』も観るべき作品かと!ちょっと変わったところではストップモーションアニメ『JUNK HEAD』、私まだ観られていなくて…早く観に行かねば!

そしてそして、何をさておいても私がとっても楽しみにしているのが、『街の上で』です。新作は必ずチェックしている大好きな今泉力哉監督の作品が今週末公開なのです。

この「街」は、東京・下北沢。たくさんの小劇場やライブハウスと、本屋や古着屋と、小さいけれどおいしいお店が迷路のように並んでいて、多くの文化人に愛される街。この街で日々を過ごす人たちのお話です。

私がこの作品の公開を“楽しみにしている”というのは、実は観るのを楽しみにしているのではないのです。訳あってお先に拝見しておりまして、とっても惚れ込んでいるので、早く多くのかたが観られる状況になってほしくて!公開されるのが楽しみで!!

この作品、毎年下北沢で開催されている「下北沢映画祭」の10周年記念企画から生まれて、11周年の映画祭でプレミア上映された映画なのですが(この出自もすごく新しい!)、私、たまたま11周年目から下北沢映画祭に携わらせて頂いていて、幸運にもいち早く拝見できたというわけなのです。

で。すっごくすっごく、面白かったんです!その作品が、やっと全国でロードショー!そういう意味ですごく楽しみなんです。

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特に何も起こらない映画なんですけれど。いやいや、「何も起こらない映画ってなんだよ!」と言われちゃいそうですが。でも、大きなことは起こらないのに作品の中にどっぷり入り込んでしまって、観終わった後になんだかおおきな多幸感に包まれるような作品なのです。

私たち日常的に、なんとなく恋愛がうまくいかなかったり、言っちゃいけないことをついぽろっと言ってしまったり言われてしまったり、思わぬ場所で思わぬ人を見かけて「ひゃあ!」ってなったり、ちょっとだけズレてる人と出会って「おぉ?」と思ったり、逆に「もしかして自分ってズレてんのかもなぁアハハ」なんて思ったり、小さなことで心にさざ波を立てたり、あるいは誰かとの関係性がちょっぴり変容したり。日常の中でそんな感じで生きているわけですよね。あるいは、たとえば自分が何かを言った時に、相手がどんな顔で笑ってくれるかによって、ふたりの距離感はすごく縮まったり、すごく遠ざかったりしますよね。

この映画は、そういう「何も起こらないけどそこにある何か」、たとえば心に起こるさざ波とか、関係性の小さな変容とか、セリフの外のなにか曖昧なものを、たくさん内包しているのです。

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それがとても人間らしくて、息づかいが感じられて、なんとも豊か。

だからかなのかなぁ、演者さんたちもみんな自然体に見えて、それがなんとも魅力的なんですよね。

私が今泉監督の作品が大好きで必ず観てしまうのは、多くの過去作にも脈々と見られる、そういう描き方に惹かれているから。

もし『街の上で』で初めて今泉監督の作品興味を持たれたら、過去の作品もぜひ観ていただきたい!個人的には特に『愛がなんだ』と『サッドティー』を特に観ていただきたいなぁ。(逆にこれらの作品が大好きな方は、『街の上で』必見ですよ!)

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いずれも、何か大きな特別なことが起きる映画じゃないんです。私の、あなたの、あるいは隣にいる誰かの、日々の中にある心のさざ波や関係性の微妙な変容を掬いあげるような、それでいてクスッと笑えてしまうような、でもちょっとの毒もあるような、そんな映画です。

今泉監督の作品には、もちろん「出来事」が起こる作品もあるし、ちゃんと伏線が拾われていたりもします。けれど、その描き方はやっぱり、出来事そのものよりも、もうちょっと曖昧で豊かな「何も起こらなさ」を大切にしている気がします。どの作品も。

もちろん好き嫌いはあると思いますし(そういう意味では今回は完全に私の偏愛映画を紹介したいだけの投稿です!笑)、しっかりお金をかけたハリウッドのたとえばSF映画なんかにも面白い映画はたくさんあって、でも今泉監督の作品に感じる「曖昧だけど豊かな感じ」って、映画というものが持つ包容力そのもの、のような気がしています。

ぜひ、ぜひ!体験してみてください。

★U-NEXTで配信中の今泉力哉監督(&出演も!)作品はコチラ 



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