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日本ジオパーク全国大会で発見した、ユースの活躍と地域の魅力

【参加の背景・参加したセッションの概要】
日本ジオパーク全国大会は、年に一度、ジオパークプログラムの理念と取組を広く周知するとともに、各ジオパーク地域相互の情報や意見交換をより一層促進することを目的に実施されています。2022年に白山手取川ジオパーク主催で開催された第 12回大会では、高校生や大学生を対象にしたユースセッションが全国大会の歴史の中で初めて実施されると聞き、セッションのサポートとジオパークに関わるユースと交流するために参加してきました。

ユースセッションでは、古い街並みが残る白川市・鶴来町の街歩きを通して、地域の特徴や自分が住む地域との違いを発見し、参加者同士が対話することで地域資源の持続可能な活用のありかたを学ぶことが目的とされていました。実際の街歩きでは、鶴来地域の学生リードの元、京都や島根県、山口県等でジオパーク活動に関わる約30名の参加者が与えられたお題に沿いながら自由に街を散策していました。街歩きの後は鶴来高校にて参加者同士が議論する時間があり、チームごとにお題に対する答えを共有しただけでなく、自分が住む地域との類似点や相違点を踏まえながら、鶴来地域での発見を発表し合いました。最後には主催の大野先生から鶴来地域に関する解説もあり、街歩きで得た情報をより深く理解することができました。


【参加したユースのコメント】
「街歩きをしながら、鶴来地域ならではの魅力を探したり、自分たちのジオパークと比較したりしました。すごく楽しかったです。私の地域は高齢化が進んでおり、それを改善するためには魅力的な情報発信が必要かなと感じています。SNSなどを活用することで若い人たちを呼んで、高齢化の抑止や街の活性化をしていきたいと思いました。」

「いろんな地域の方とお話をさせていただいて、自分たちの地域にない場所などを巡って意見交換して、こういう場所は自分たちだったらこう活かせるなとか、いろんなことを考えるいい機会でした。」

「他のジオパークから参加している学生と街歩きをしながら一緒にミッションをクリアしていく体験が楽しかったです。」

「全国各地の学生メンバーに地元の良さを共有し、ワークショップの中で仲良くなれました。ゴミ拾いなどを通してジオパークを守る活動を行いながら、もっと魅力を発信していきたいです。」


【鳥海山・飛鳥ジオパーク推進協議会 大野希一さんへのインタビュー】

鳥海山・飛島ジオパーク推進協議会 主任研究員の大野先生

日本において、ジオパークにおけるユース世代の関わりは現在どのような状況なのでしょうか?

各ジオパークにおいてはそれぞれユース世代に向けた事業が展開されており、ユースの参画は増えてきているとは思います。一方、それらユースの参画がユネスコ活動の活性化にどのように貢献しているのか見えていない印象を持っています。また、他地域との交流が少ないため、自身の地域と他地域を比較する機会がなかなか得られないことを課題に感じています。

そうした課題感を踏まえて、今回ユースセッションを開催した狙いを教えてください。

ユースセッションを開催した狙いは、全国のユース間のネットワークをつくることです。日本全国でジオパーク関連の活動を行っている高校生や大学生が多くいることは認識していますが、そこで展開されている活動は「調べ学習」のレベルに留まっていることが多く、地域資源の価値の深掘りがなかなかできていないこと、また、素晴らしい活動を実践しているにもかかわらず、それが全国に発信されていない事に課題を感じていました。自分たちが暮らしている地域の良さを(再)認識するためには、他地域との比較が手っ取り早いので、ユース間でネットワークをつくって互いの活動を共有し、自分の地域の魅力に改めて気づいてもらう機会をつくりたいと思っています。

今後、どのようにユースの活動を促進していきたいですか?

まずは、既に活動しているユース間の連携やネットワークを強化していきたいです。例えば、各学校で実施されるジオパーク関連の研究・学習発表会の場に他地域のユースを招待し、他地域で展開されている活動を認識する機会を増やすことで、地域の魅力を再発見するだけでなく、自身の個性や価値観に影響を及ぼすような教育機会を作り上げることができればと考えています。


【日本ジオパーク全国大会に参加した次世代ユネスコ国内委員の感想】

小林:ユースセッションの中で行われた街歩きとその後の意見交換では、鶴来地域の高校生が自分の言葉で自分の地域の良さをしっかり発信しており、高校生たちが自分の地域を愛して、それをしっかり伝えようとする姿に感心しました。また、他のジオパークから参加した高校生の話を聞き、参加者同士が自分の地域との違いや魅力を再認識しただけでなく、自分の地域がどのようにしたらさらに良くなるのかといった点についても議論する姿を見て、自分自身も地元の魅力について振り返るいい機会になりました。こういった取組を、現在ジオパークに関わる学生だけでなく、まだジオパークを知らない、または関心を抱いていない学生たちにも広め、ジオパークの楽しさや地域の自然・文化の美しさに親しんでくれる機会を増やして行きたいと感じました。今回の経験や参加者へのインタビューを参考に次世代ユネスコ国内委員会が今後できることを考えていきたいです。

細谷:様々な地域から集まる中高生が主体的に関わるユースセッションに参加し、鶴来地域で街歩きをしながら参加者同士で知恵を出し合って与えられたお題をクリアしていく楽しい旅でした。街歩き終了後の議論では、参加者と地域の魅力や自分たちの地域との違い、そして個人が感じた街の「たからもの」を守っていくためdに自分たちに何ができるのか、といった点について共有するなかで、若い世代の積極的な姿勢に明るい未来を感じました。今後、次世代ユネスコ国内委員会として、さらに多くのジオパークや地域の魅力について若い世代が感じ、発信し、関係人口が増えていく機会をつくっていきたいです。

吉川:ユースセッションでは、鶴来の高校生に案内いただき、街歩きをするという貴重な経験をし、鶴来の高校生たちが自分の地域の魅力をキラキラした目で説明してくれた姿にとても感銘を受けました。また、ポスターセッションでは、他のジオパークによる地域の魅力発信や地域資源の保全等に関する様々な取組について知ることができ、またユースの参画に関心を抱くジオパークが数多く存在することがわかりました。閉会式では、ユースセッションの様子やジオパークに関わるユース世代の参画促進、さらには効果的な情報発信のありかたについて簡単に報告をさせていただきました。こうした課題についてジオパークのみなさんと協働しながら次世代ユネスコ国内委員もさらに活発に活動していきたいです。

沖田:ユースセッションと同時並行で開かれた市町村長セッションに参加し、全国の市町村長やジオパーク担当者とユース世代の関わり促進について意見交換をする機会をいただきました。ジオパークに関わるユース世代は既に一定数いるものの、行政側とうまく連携ができていないという課題を参加者の多くが認識していました。また、その後のポスターセッションにおいても、ユース世代のジオパークへの参画促進に向けた次世代ユネスコ国内委員会の発表に対し、多くの問い合わせやコメントをいただき、改めてユース世代との協働に係る関心の高さと参画促進に向けた課題を認識できました。次世代ユネスコ国内委員会として、ユース側とジオパーク側両方を繋ぎ、こうした課題を解決できるように支援していきたいです。


【DATA】
日 時   2022年10月 22日(土)~ 23日(日)
場 所   石川県白山市松任文化会館など
話し手   大野希一さん
 (鳥海山・飛島ジオパーク推進協議会 主任研究員
  /ユースセッションコーディネーター)
     全国大会に参加したユース
聞き手   次世代ユネスコ国内委員会
  小林・細谷・吉川・沖田(2022年10月現在)