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「美味しい食事」の正体

先日、とあるテレビ番組で「舌が肥える」という話題がありました。出演者は、高級なお店で食べてきた経験とか、粗末なものも美味しいと感じられる方が幸せかもとか、色々な意見が交わされていて、なるほどなぁと思いつつ、飲食店経営を11年やってきた経験から、私にも一つ思うところがあるので、ちょっと語ってみたいと思います。

シンプルに「美味い」が分かること

飲食業という商売において、特に低価格で売れる料理に必要な要素は、料理名や見た目(写真)から美味しいということを第一印象で的確に伝えることです。

ですから、お客様がメニュー表や店外の看板を見た瞬間、味の想像ができるものであるべきです。ということは、低価格業態店では、すでに馴染みのある料理、顧客層に浸透している日常食であることが必須になります。

例えば、牛丼やラーメン、トンカツ、うどん、そば、カレーなどです。これらは価格競争にさらされている業態ですが、気をてらった特徴を前面に出すのではなく、とにかく美味しさの伝わるメニュー名と写真が、売上に大きく左右します。

価格競争から、少しでも抜け出すためには、美味しさの裏付けにこだわる必要があります。地鶏の親子丼や、国産豚を使ったトンカツであれば、鶏や豚の産地についてお客様に伝わるようアピールしなければなりませんし、スープや出汁にこだわったラーメンやうどんであれば、スープに使用している食材や煮込み時間などをアピールします。

しかし、このようなこだわりをお客様が知るためには、美味しいと明確に分かる料理名とビジュアルで惹きつけて来店してもらわなければなりません。

安全と信頼

外食以外にも、自炊や家族の手料理が美味しいということは、大事なことです。これにはどんな要素が関係しているでしょうか。

私が思うのは、安全と信頼です。自炊だと、自分で買ってきた食材で自分で調理するのですから、たまに報道される飲食店の産地偽装や迷惑客のイタズラ、異物混入などはありません。

自分で食べるものを自分で作るのですから、髪の毛などの異物混入はあるかもしれませんが、多少のことであれば異物を取り除いて食べますよね(笑) 美味しく料理できるかどうかは個人の技量によりますが、安心して食べることはできるのではないでしょうか。

家族の手料理についても、作り手の技量によるところは大きいですが、「おふくろの味」と言われるものの正体は、小さい頃から慣れ親しんだ信頼の味だといえるでしょう。配偶者が愛情込めて作った料理も、作ってくれたことへの感謝を忘れなければ、安心して美味しく食べられると思います。

美味しさを知るには知識が必要

さらに、美味しさにバイアスをかけるものとして、知識があります。冒頭述べたテレビ番組の「舌が肥える」の正体は、知識だと私は思いました。

私が若い頃、まだ地方の居酒屋で店長をしていたのですが、一流の味を知るために、東京の有名店で2万円の会席料理をカウンターで予約して食べに行きました。なぜカウンターだったのかというと、どのように提供されるかを見たかったからです。

入店して席に着くなり「今日は勉強させてもらいます」と板長に一言あいさつしたら、先付け(懐石料理の中に組み込まれている一番最初の料理)から、調理法や食材についてとても丁寧に優しく教えてくださいました。すると、食感や味わい、風味についての意味がわかり、これが「美味しい」というものなのだと気付かされました。

そのあと、当時はスマホなんてありませんでしたから、手に持った地図と路線図を見ながら、事前に調べていた銀座の有名なBARに行って、これまた一流のジントニックやマティーニをいただいて感動したのを覚えています。

そこのバーテンダーは超有名な方で、何冊か著書やレシピを事前にインプットして臨んだので、知識バイアスが十分かかっていました。カクテルなんて、容量を測って混ぜるだけと思うかもしれませんが、一つ一つの所作が芸術的で、ステアの回数や氷の配置、グラスの冷やし方などなど、シンプルだからこそ、細部にこだわることにより味が磨かれているのだと感動しました。

何が言いたいのかというと、知識がなければ味の違いは理解できないと、私は思うのです。「舌が肥えた」グルメな著名人は、例外なく食が好きで、知識が豊富だからこそ視聴者に「美味しさ」を伝えられるわけで、私たちは知識と共に料理を味わい「美味しい」と感じているのです。

SNSで「美味しい」を擬似体験

インスタやTikTokで映える料理は魅力的ですよね。最初に書いたように、シンプルに美味しさが伝わることは、飲食店にとって非常に重要です。

行きたいお店を見つけたら、少し詳細を調べてどんな料理なのか事前に想像します。ここで予備知識を入れてから、より一層お店で美味しい料理を味わう準備を整えます。デリバリーであれば、サイトの料理写真一覧を見て、メニューを選びます。

日本は世界一!?

ここで、もう一つ重要な知識があります。それは、多くの飲食店では添加物がめちゃくちゃ使用されているということです。

例えばトンカツですと、豚肉の産地に気をつけても意味がありません。

パン粉をつける際には、多くの場合バッター粉が使われています。トンカツのパン粉を付けるには、まず小麦粉を豚肉にまぶして、卵をくぐらせ、パン粉をつけます。これは3行程です。しかしバッター粉を使うと、豚肉をバッター液にくぐらせて、パン粉を付けるという2行程で済みます。さらにバッター液にはパン粉が剥がれにくくするための添加物が多く含まれます。


一般的にフランチャイズや大手チェーン店には、基本の調味料(いわゆる「さしすせそ」)はありません。塩や醤油でさえ無いのです。

すべて加工されたタレのみで味付けします。そうでないと、アルバイトが調理スタッフとして機能しないからです。そのタレすべてに添加物が入っています。

日本は、食品添加物に世界一寛容な国ですから、このような知識も美味しさのためには必要でしょう。

とはいえ、私もUberEatsで注文することはありますし、チェーン店で外食することもあります。ただ、安さや利便性の裏には何があるのかを、知っているのと知らないのとでは、違いがあるのではないでしょうか。

正しい知識を身につけて、これ以上太らないよう気をつけている毎日です(笑)

ちなみに、ヘッダー写真の餃子は、上石神井駅近くにある『一圓』さんのジャンボ餃子です。肉まんみたいな餃子で皮も餡も手作りされている街中華です。

↓こちらで詳しく紹介されています!

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