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贅沢な名

 暇でくだらないことを考えてた。
 「贅沢な名」という言葉がある。
 出典は「千と千尋の神隠し」の湯婆婆のセリフ。

湯婆婆「千尋というのかい?」

千尋「はい。」

湯婆婆「贅沢な名だね。」

湯婆婆「今からお前の名前は千だ。いいかい、千だよ。分かったら返事をするんだ、千!」
ニコニコ大百科(仮)

 使い勝手がいいからかネットミームにもなってるけれど、本当に「贅沢な名前」とはなんなのだろう。

 湯婆婆理論でいくと、「千尋」は贅沢な名前。「千」はそうじゃない。湯婆婆が「千尋」のどこを贅沢と判断したかは分からないけれど、まあ「尋」って字はなんとなくカッコよくて贅沢感があるかもしれない。それか単に「千尋」2文字じゃ贅沢、1文字にしろってことかもしれない。

 そもそも、贅沢ってなんだ?食べ放題でお腹いっぱい食べるのは贅沢だろうか。いや、食べ放題っていうのは「一定時間、無制限に食べて良い権利」を買っているのだ。むしろその権利を持ちながら行使しないのが究極の贅沢ではないか?ホテルの朝で食べ放題なのに、ご飯に味付け海苔で済ませる。これは贅沢だ。

 名前でも、いくらでもカッコいいのは付けられる。つい親の思いが入って子どもに「寿限無寿限無五劫のすりきれ……」と長い名前を付けてしまったというのは有名な前座ばなし。名付けは自由。お役所が認める範囲内ならばお腹いっぱいになるような名前を付けることだってできる。

 しかし、お腹いっぱいになるような名前も付けられるところで、あえて簡素で短い名前を付ける。ご飯に味付け海苔の贅沢のように、これもまた贅沢だって言えるだろう。春に生まれたから、春。空の青い日に生まれたから、青。贅沢な名前である。

 さて、ともかく短くても贅沢な名前ということはあるのだ。

 それでいうと、私が思ういちばん「贅沢な名前」だと思うやつがいる。

 「蚊」だ。「か」。

 日本語には五十音しかない。それなのに、その日本語の1/50を「か」は独占してやがる。夏になると、「あ、『か』だ!か!か!か!」と「か」が連呼される。みなさんは、あんなのに日本語の1/50を独占されて不快じゃないのでしょうか?

 蚊は「血吸い虫」くらいに名前を改めて良いと思う。

 蚊というのかい?贅沢な名だね。今からお前の名前は血吸い虫だ。いいかい、血吸い虫だよ。分かったら返事をするんだ、血吸い虫!

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