🎭小説家のデッサン : 三島由紀夫 二元物語 21、コメディ・ジャポネーズ　“蜥蜴どもの晩餐”⑤

21、コメディ・ジャポネーズ　“蜥蜴どもの晩餐”⑤

三島：お前！いい加減にしろ！

（三島、高笑い）

戸陰：何か夢でも見ているんだろうか？

三島：夢だと？

戸陰：聞こえてる⁈

三島：ああ！よっく聞こえてるぞ！

（戸陰、口を手で覆い絶句）

三島：本当に臆病な奴だな！何だ、何も言えないのか⁈

（三島、再び哄笑）

（戸陰、辺りを見回す）

戸陰：せ、先生？（おずおずと）

三島：何だ⁈（ニヤッと）

戸陰：これは一体…

（周囲の人間、固まった様に静止している）

三島：はっきりしない奴だ！何が聞きたい⁈

戸陰：状況が掴めません‼︎（混乱して）

ハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッ
（三島の哄笑）

戸陰：私は一体？そして、先生⁈

三島：お前！何を躊躇っている？俺とお前、それだけの事じゃないか！

戸陰：先生と俺ですか？

（三島、暫し沈黙。戸陰、絶句）

三島：お前、今日は何しに来た？（ニヤッと）

戸陰：自分がですか？それは…

戸陰、独白：俺が何しに来た？ええ、ええっと…何か答えねば…

三島：どこまで臆病なんだ、お前は‼︎ハッハッハッ！いいか？

（三島、壇上から降りて来る）

戸陰、独白：ウワッ！まずい！先生が…降りて来る！何だ何だ⁈一体俺はどうすればいいんだ⁈

三島：おい！マティーニ！

（三島が袖に呼び掛けると、男がマティーニを持って来る。三島はそれを取る。そして男に小さく囁く）

三島：有難う

（男、三島の隣りに控える）

戸陰：…

三島：戸陰とやら！

戸陰：はい！でも先生！何で俺の名前を知っているんですか⁈

（三島、じっと戸陰を見る）

三島：おい！マティーニだ！もう１つ！こいつに振舞う！

（男、下がる）

三島：何でお前の名を知ってるかだと⁈お前、俺を誰だと思ってる⁈作家が自分の作品の登場人物を知らぬなど、お前、それじゃあまるで馬鹿じゃないか‼︎

ハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッ

戸陰：作品ですか？えっ⁈一体どういう事ですか⁈

三島：お前はジョークも判らんのか⁈ハッハッ、まあいい。

（男、マティーニを持って来る）