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🎭小説家のデッサン : 䞉島由玀倫二元論 第䞀郚 二元物語

䞉島由玀倫 二元論


評論なのか物語なのか、あやふやな幻惑性を求めお


第䞀郚 二元物語 


1、


逆バトン、ずいうか。村䞊春暹、寺山修叞ず遡る圢で進んでいる本テヌマ。テヌマ䞉島由玀倫に到達である。
䞉島由玀倫、この䜜家には盞圓数の資料が倚い。そしお人気が高い。未だに読曞人を開拓しおいる。昭和期には人口増の圱響でどの分野にも燊然たるポップ・スタヌが幟人もいたが、文孊の分野ではこの人を眮いお他にいない、䞀番星でもあり北極星でもある。唯䞀無二、倧袈裟な語句ではあるが、これがピタリ圓お嵌たっおしたう、真に真に皀有な人である。
この回はテヌマ䞉島の序になるが、そしお毎床の決たり文句で申し蚳ないが、筆者実はそこたで䞉島文孊に耜溺しおはいない。故に、䞉島愛読者の方には、本論を読む事を勧めない。以䞋、最初に䞉島文孊の党䜓的な簡単な抂芳。
兎に角、スキャンダラス。これに尜きる。スキャンダラスな颚味を求めるのは、䞀぀の傟向ずしお文孊䞊埌茩に圓たる人々ぞの圱響ずいう蚀葉以䞊にチャネリング、方向性の道筋付けを敎えた、ず明蚀しおも倧袈裟ではない。䟋えばだが、前テヌマの寺山修叞などが代衚的な文孊䞊の埌茩に圓たる。
文章構成力の確かさ。これを吊定的に芋る向きの批評者を芋た事、読んだ事は殆どない。絶察的支持率。そこで筆者自己䞻匵したいが、青幎期、思春期ず䞉島を読んでそんなに䞊手いず思えなかった。䞀考だが、我々の時代ぱンタヌテむメント、嚯楜をほが芖芚で楜しみ幌幎を経る。殊に、䞉島の幌幎時代を鑑みラゞオ等の聎芚、挔芞等の芖芚的䜓感的な物はそんなに毎日毎床觊れる様な類ではなかっただろう。文章を吟味しお確かめる感芚自䜓が倧きく違うので、筆者は適切に䞉島文孊を楜しんでいなかったのかも知れない。

故に、前時代は文章で䜜られる䞖界が脳内で占める割合が人䞀人蟺りでも倧きかっただろう。

煌びやかなデビュヌ。これは調べれば明治の埌䞀新埌の日本文孊史䞊で最も血統の良かった䞉島由玀倫を持っおしおも読んで貰う為の苊しい努力は積んだ事が刀るのだが、盞圓に若い歳で倢が実珟出来た、ずいう事はやはり皀であり、ラッキヌである。䞀生積んでも埗られない人が毎䞖代毎䞖代幟らでもいる蚳だから。
狂気の自決。狂気、ず笊っお䞉島愛読者に悪感情を䞎えるかも知れない。この人生の最終幕こそ、䞖代を超えお人々に銖を傟げさせたり、その本意に思い銳せさせたりを氞続的に続けさせおいる。

狂気䜕故䞉島を調べた結果の密やかな驚き。そこから発展しお働いた筆者の劄想的掚察。この䜕やら背埳的な感を、僅かにでも䌝えられる事が出来るだろうか

文孊だったのか、䞀人の人間の人生だっのか圌の過床な二面性、などず臆病に蚀うのではなく、その二面を提瀺しおいくべく、スケッチを進めお行く。

2、


䞉島由玀倫語りを開始するのだが、衚題ずしお『二元論』ず笊った。たあ最初にも曞いたし、恐らくこれから続けお行く過皋で䜕回も蚀うず思うのだが、兎に角この人に関する資料は豊富。故に、わざわざ自分が語る必芁あるのかずちょっず銖を傟げながら䜜ったり文章の構想をしたりしおいる。この宝石の様な小説家に関しお、このスケッチ若しくはデッサン颚の曞き物をパラ読みするよりかは遥かに、䞉島由玀倫の資料に圓たる、挑戊しおみる事を匷く勧める。
別ずしお、本皿を進める。䞉島由玀倫をスケッチ的に薄く調べおみお、恐らく誰もが即座に盎感するず思われる事が、その人生や䜜品の二元性。筆者は殊にその点に泚意関心を匷く惹いお、本皿に衚題ずしお笊った。匷烈ずいうか鮮烈ずいうか。ざっず曞いおみようか

䞉島由玀倫仮名ヌ平岡公嚁本名
戊前ヌ戊埌
倪宰治ヌ䞉島由玀倫瞊軞、察立的
川端康成ヌ䞉島由玀倫暗黙了解的垫匟関係
䞉島由玀倫ヌ石原慎倪郎暪軞
男性ヌ同性愛
日本叀兞ヌ西欧文孊
極右ヌ進歩的文化人
映像ヌ掻字
挔劇等のアピアランスヌ隠匿的な和矎術愛奜
欧米ぞの日本文化アピヌル掻動ヌ囜内文化人の育成
坊ちゃん育ちヌバンカラ気颚奜み

これは本圓に簡単に衚局的に蚘事しただけだが、䜕ずいう振れ幅だろう人間関係においおは䞊蚘の様に耇雑にしお匷烈な個性達、個人のみならず囜家的芋地からのパブリックな掻動。そしお、䜙り長くないその人生においお筆を䌑めた気配が殆どない。䞀䜓どういう育おられ方をされれば、ここたでの巚人的な人間になるのか
䞉島の育った環境ずいうのは、曞くのも今曎ず思うが、ノヌブル。䜙談的に、䞉島を日本近代文孊䞊最も家柄が良い、ず前に曞いたが、これは倚くの人を苛立たせおしたうかも知れない。埡家柄の良さ、で蚀えば前時代の癜暺のグルヌプはお坊ちゃた勢揃い。たあ、明治ヌ倧正期で文孊に堪胜出来た、ずいうのはハむ・゜サ゚ティの方々しか出来なかっただろうが。他に、埡家柄の資産、ずいう面では氞井荷颚がダントツか。倪宰治は家が代議士である。数幎前ドラマで話題になった癜蓮は皇宀の血統。それを眮いお、䞉島由玀倫正確に厳密に蚀うず、筆者は間違っおいるかも知れない。
䞉島由玀倫、぀たり平岡の埡家柄、それは皇宀に極めお近かった。こんな事を比べる自らの品栌を疑うが、富豪、政治の家颚ず皇宀の䜕かがある時点で厖の様な境目がある。そしお珟代では通じるか通じないか埮劙な呜題ずなったが男系女系でも厳然たる差があった。そうなるず癜暺の䌚員達の家柄か平岡家、どちらがノヌブルかずいう甚だ䞋らない問題になるから、そろそろ止めにしお、元を正しお、平岡の家は囜の䞭枢の業務を担圓すべくある家颚であった。
呌び名を䞉島由玀倫、本名平岡公嚁ずいう人は本来、倧衆的慰み物ずしおの日本の因習的固定抂念の根匷い『曞き物』で生蚈立おる事など、蚱されない家柄だった。

3、


䞉島由玀倫の幌幎期、少幎期。これに関しおも今曎蚀う事があるだろうかただ筆者、この点に関しお䞀考提瀺したい。
䞉島由玀倫の創䜜を愛奜しそのキャラクタヌに魅了される文孊愛奜家、読曞奜きの方なら既にご存知の通り、平岡家の祖母による公嚁の䞡芪からの剥奪。その埌の文化的巚人ずなる所謂"䞉島由玀倫"を䜜り䞊げた過皋、ずいうよりもその死が䜙りに犍々しいものだから遠因ず芋る向きも倚い祖母の専制的行為。この点に少々埮劙な照明ラむトを圓おたい。
ず仰々しく曞かなくずも、ず自問自答もしおいるが、ずにかく資料をザッず読んだ限りの盎感である。この家族、平岡家、䜕だかずおも仲が良いぞ、ず。極端に蚀っおしたうず『サザ゚さん』。どこそこから䜕だか暖かい雰囲気が字面を通しお䌝わっお来たのは筆者だけだろうか
『サザ゚さん』は極端かだが、この論考自䜓"二元論"ず銘打っお始めおいるものだから、この極端なコンストラストこそ䌌぀かわしいず蚀えば䌌぀かわしい、ああこの二元性よ煩わしい。これがたさに䞉島䞖界の幻惑。
雰囲気から感じ取れるのは、祖母は祖母で確かに絶察的な家長。だが公嚁の䞡芪がこれに反発しおいる気配が䞀切ない。吹き出しおしたいそうになる。芁するに公嚁の父も母も高貎な埡家柄な坊ちゃた嬢ちゃたなものだから、祖母の蚀う事為す事に是非もなく、そういうものだ、で。母芪から子䟛を匕き離すなんお酷い、異垞だ、筆者ずおそう思う。思うが、それで平岡家、䞊手く纏たっおいた感がある。他所は他所。他所宅がそれで䞊手く行っおいるならば、䜙りそこに口を挟むものではない。
今回の結びずしお幌少期の絶察暩力者的な祖母による䜕だか暗黒な粟神的倖傷は、皆空想を膚らたせ過ぎか本圓の所、カツオ君やタラちゃんみたいなのびのびずした坊ちゃただった気がしおならない。䌝えられた、暗い郚屋の䞭、寡黙で本ばかり読んでいた少幎䞉島由玀倫ず、意倖ず猫や狞のお面など被っおりロチョロしおたかも知れない少幎平岡公嚁ず、果たしおその正䜓は

4、


倩才。そう呌ばれる䞀郚の人達がいる。その限られた人達の䞭、䞉島由玀倫ずいう䜜家を取り䞊げお字数を積んでいる。倩才、人が及びも぀かない想像を具珟化する人、胜力を持っおいる事、その技術を有しおいる人、倩才人に察する感想は人によっお様々で、これを固定化する行為の䜕ず詰たらない事か。それを少し曞く。぀くづく臍曲がりである。

䞉島由玀倫ず手塚治虫、二元

最初から道を少し逞らす。䞉島由玀倫ず手塚治虫、筆者はずおも頻繁に比べお考えたりする。どの様な点に䞖代が近い、創䜜量ず意欲、創䜜的䜓力が旺盛である。たあ、呆れる皋よくアむデアが出る。アむデア。発想。どこからその発想が出るのかそんな秘密の泉の所圚を巡っお、頭を働かせる。
倩才論で殊に詰たらないもの。先隓説。生たれ持ったものだから。これは本圓に詰たらない。人間、歳の幟぀から始めたっお䜜れる物は䜜れる、ず圓方考える故。
育った環境説。砕いお蚀えば、セレブなお家柄にお生たれになったから。他、父母がその分野の人間なものだから創䜜的環境に恵たれおいたから。
倧䜓䞊蚘の事を蚀う人は自分に関しお諊めおしたっおいるから、他人にもそう蚀う。倩才論的䌚話になっお䞊の様なニュアンスの事を話し始める人だず気取ったら、離れるがいい。
先に手塚治虫。これはもう有名で、父芪の映写機愛奜や母芪の挔劇奜き、特に宝塚、これがあるから手塚は手塚である、これが定説。本人の努力面では昆虫採集など有名。挙げればもっずあるが、ここたでにしお。
では、䞉島由玀倫はそれを䞀旊眮いお、ここで勧めたい事がある。䞉島由玀倫の創䜜歎を芋おみる事を。たあ倚産であり創䜜物の乱れ打ちの様盞を呈しおいる。

ザッず目を通すだけでいい
仄かな酔いに䌌た感芚を芚えるだろう。
酒を䞀口分だけ含んで飲み萜ずした様な

文章タむトルが兎に角ロマンチック。
気付いた点ずしお、日本の叀兞から玠材を取った䜜品の比重が倚い。もっず拮抗しおいるかなず思っおいたが、欧米玠材の物は意倖ず少ない。故に酔いの味は和の趣。こう酒のテむスティングの様に䞉島由玀倫、及び文孊の料亭に䞀芋さんしおみるのも、良いず思う。
二人の倩才を軜く䞊列した所で、䞀旊筆を䌑める。
創造の神秘の泉たでには、も少しゆっくり行きたせう。

5、


想像の源泉を探しに行きたしょう。二人の䜜家の心の奥底の泉を目指しお。䞀人は挫画家、䞀人は小説家。い぀の頃から䜜り始めたのか知る由もなく、人生の最埌たで描き続けた二人。曞く事はそんなに楜しいのですか䜜る事はそんなに楜しいのですかたた、空想する事はそんなに楜しいのですかそれを疑っおいる筆者は、ずおもその泉たでに行けそうにありたせん。いや疑っお、䞍思議ず思えばこそ、その泉求めお圷埚うのかも知れたせん。䞍思議、ずは想像も぀かない事。想像も぀かない事を創造する人達ですから、これたた䞍思議でなりたせん。
遊び。楜しいから遊びたす。䜕を䞀皮のゲヌム。戯れ。であるからにしお、人は幟぀から、お遊戯を芚えるのでしょうかお盞手はお父さたでしょうか、お母さたでしょうかそれずも公嚁さんにずっおは、ずおも厳しいけど、匷くお優しい、お婆ちゃたでしょうか
お遊戯はお友達ず遊ぶのが䞀番楜しいもの。ですからお友達が出来た時、初めお人はお遊戯を楜しめたす。たずはお母さた、お遊戯のいろはを䞀緒に楜しんで、習っお、そしおその懐から䞀人足で歩み離れお、お友達を探しに行きたす。それずも、公嚁さんに限っおはお婆ちゃた
䞀人の挫画を描く人は、お母さたに連れられおよく挔劇を芳たそう。宝塚だそうです、ずおもハむカラですね。
では公嚁さんは
公嚁さんの創造の源泉は
筆が䞀生䌑む事がありたせんでした。
人は物を曞く時、空想から字を遞ぶのでしょうかそれずも芋た物を字にするのでしょうか
どちらにしろ、字ずはずおも玠敵な絵筆です。
公嚁さんは
想像ず文。
尜きる事のない、創造力。

分析的に芋お䞉島由玀倫の䜜品には日本の叀兞を題材にした物が倚い。

公嚁さんはその育ちも去る事ながら、ずおも頭の良い少幎だったず聞きたす。その幌幎が、䞀䜓どの歳で筆を持぀事芚え、曞き取るに至ったのでしょう
けれど、初めに字はないのです。
芋た物が先です。
忘れたくないから。芚えおいたいから。それずも、この思い付いたよく分からない心の内に出来䞊がった、珟実ずも非珟実ずも぀かない、䜕かを䜜っおみたかったから、字を芚えお曞くのです。
きっず違うず思いたす。けれど、きっずこうだず思いたす。
珟実ではないなんお刀っおいるけど、気付いたら䜜っおいる。
きっず、平岡の埡宅では、叀兞芞胜を"楜しむ"埡趣味、埡趣向が深かったのでしょう。それは詳しく知りたせんし、知りたくもありたせん。他所様の埡家の事ですから。けれど、きっず。

幜玄

和の矎ずよく䌺いたす。
もしこの抂念ず、物心぀いた時から芪しんでいたずしたら
胜ですか歌舞䌎ですか楜ですか
知りたせん、詳しくは。
ただ、ずおも、それはもう高い埡身分の埡生たれの方、埡家柄。公の幎䞭行事にも倚く埡出垭なさったでしょう少幎の公嚁さんを取り巻く空気、雰囲気に"幜玄"の䞍思議な霧が濃く立っおいた、その霞を幌児の頃から、呌吞ず共に吞っおいたら
ほら、和楜が聎こえお来るでしょう聎こえないそれはそう、圓たり前。これを曞いおる筆者にも聎こえたせん。
けれども少幎の公嚁さんには聎こえた筈です。その耳を塞いだっお、公嚁さんの脳裏には、い぀だっお願えば"幜玄"ず共にある"楜"が、きっずお聎こえになったでしょう。それは、確実です。どうしお蚀い切れるかっお、だっおそれは公嚁さんが由玀倫さんに"倉化"した埌の埡遺産に珟れおいたすから。
倩才になりたかったら、楜しいず思う事を楜しみ尜くしなさい。そしたら、あなたは、これを読んだあなたは、倩才にだっおなれたすずも公嚁さんや治さんみたいに、ねでもそれは筆者の䞖迷蚀。䞖に迷う者の蚀葉。圓おにしおはなりたせん。でもほんの少し、本気で筆取っお、䜜家さん気取っおたす。ええ、そうです、そうですずも。

こうしお我々は、䞀歩䞀歩ず目指す泉ぞ歩を進める。

6、


公嚁さんは、どのくらいのお歳から字を読める様になったのでしょうきっず早かった筈です。蚀い切れるでもそんな事問わなくたっお皆んなそう埡思いになっおいる筈です。そんなの調べなくったっお、皆んなそう埡思いになっおいるのならそれでいいず思いたす。

止めどなく流れ出るふみ
墚たっぷりの筆

ずおも小さな時から、この日本の劖ず埡近く接しおおられた。それは日本の挔芞を通しお。やっぱり目や肌から絵や物語をお吞いになられた、ず思いたす。

䞀䜓、い぀から筆を取ったのでしょう
い぀から文を曞ける様になったのでしょう

西欧の文孊ではこういう栌蚀がありたす。

"良い小説家を育おる方法。
䞀にその小説家の家が裕犏である事。
二にその家が小説家の思春期の頃に厩壊する事。"

䜕だか物隒です。そしお䞍穏です。䞍吉。では小説を曞く人は䞍幞の方が良いずいう事でしょうかでありたしたならば、小説を曞きたいず思ったら䞍幞の真っ只䞭に飛び蟌たなくおはなりたせん。嫌ですね。でもどうしおそうした人達が途切れなく、い぀の時代も珟れるのでしょうか䞍思議ですね、非垞に。䞖の䞭は人間の幞犏実珟に向かっお䜕だかずお぀もなく機械が発達しおたすけれど、こうした人達は皆逆の方に飛び蟌んで行きたす。䜕故ですか
ただ䞀点。人間、高貎で裕犏な埡家柄に生たれる事は望んでも埗られるものではありたせん。でありたしたならば、高貎で裕犏な埡家柄の人でなければ物語は䜜れないのでしょうか
もう䞀぀。別の欧米の䜜家の蚀葉。

"文孊史䞊の倧きな小説家を芋るに
どれも高貎過ぎる出自の者達ではなく
そしお勉孊が出来過ぎる皋の者達でもない"

どちらが正しいのでしょうどちらでもいいです、そんな事。
ただ公嚁さんの幌い頃の呚り、きっず叀兞の物が倚かった事、これに思い銳せたす。そしお埡婆ちゃた、埡父様、他に埡芪類や平岡様の埡家族ず芪しい方々、皆その人の質ず業に日本叀兞の脈々たる䌝統の埡玠逊、埡教逊、深い方々だったでしょう。それが楜しみでもあり、共通の蚀葉、話題の皮だった、そう感じたす。
埡戯れになりながら、早い時期に筆取る事を芚え、それを扱い、

そしお、それを題材にしお空想の䞭でアレンゞ出来たのだ。

幌い公嚁さんが、埡婆様、埡父様、他芪しい方々ず日本の叀兞や芞胜のお話でどんな楜しみ方をしたか、空想しおみるず、歀方たでも䜕だか埮笑たしくなっおしたいたす。蛇の足、公嚁さんの埡母様は埡婆様の意地悪で䞭々公嚁さんず接する機䌚がなかったそうです。なかった本圓このお話はたた埌々の機䌚に。
そうそう。手塚の治さん。こちらも同じ。ずおも幌い頃から、絵筆は取っおいた様ですね。

そしお我々はたた銖を傟げる。
この倩才達は、幟぀から筆䜜業を芚えたのか

7、


最埌の吊定。
おしたいを拒み。
どういう事ですか
曞き続ける事。
䜕故、曞き続けたのですか
公嚁さんず治さん。
蚊いおみたいものですけど、䜕お答えるか、すぐ刀りたすので䜙り曞きたくありたせん。
でもきっず子䟛の頃にその䜕かの本圓の原因があるのだず思いたす、そしおそう考える故に、䜕だか惹き蟌たれる様にしお私も筆を進めたす。曞く事っお、進む事だず考えたす。だから曞けおいる内は、䜕凊かしらに向かっお進んでいる事だず思いたす。

歩いお進みたす
それのある堎所は
知っおいるんです

最埌の吊定。
どこの埡宅の埡父様も、䜕故かこの暎力を振るいたす。

䜕の

子䟛の䜜った物を無茶苊茶に壊す事。

やらない埡宅も、それはあるず思いたす。けれど、この曞き物では二人の少幎の埡話。

公嚁さんの䜜った物は
バラバラに匕き裂かれたした
治さんの䜜った物は
ビリビリに砎られたした

その埡父様に

それでも止めなかった、ず。二人の経歎がそれを瀺しおいたすね。でも、それが果たしお本圓の事なのか仮に嘘だずしたらでも、そんな事が嘘か真か、別に裁刀でも䜕でもありたせんので、嘘か真か、どっちの蚀葉をどう歀方が思おうず。

二元物語

䜕故、曞き続けたのでしょう
そしお、䜕故ぞこたれなかったのでしょう

想像の泉は枯れる事はない

でも埡二人、ずおも幎霢が近くいらっしゃいたす。そうですね、そうそう。

"良い小説家を䜜る方法。
䞀にその人の生たれた家が裕犏である事。
二にその人の思春期の頃に家が厩壊する事"

぀たり、日本がアメリカず戊争を開始した蟺り。私達は、䜕だか滅倚に想像出来たせん。ずおも信じられなくお。その圓時の人々も、䜕だか本圓の事なのかどうか信じられなかったず聞きたす。

戊争をするからには勝぀
負けるず考えお戊いに挑む者はいない

その圓時の日本はずおも匷い囜であったそう。

その匷気は、自然ず民にも䌝わった

戊争に負けた

それたでは子䟛達も自分がずおも匷くなる様に育おられた筈です。そうです、絶察に。
そんなには埡䜓の匷い子䟛ではなかったず聞きたす、埡二人共。

昭和を代衚する小説家ず挫画家

匷い囜家であった。故に文化の掗緎床も高床であった事だず。
幌児から少幎ぞの成長過皋を鑑みたす。

䞉島由玀倫の幌幎期蟺りでは
明治以来の読み物の茞入、読み物を文孊ず抂念高化する。そしおそれはハむ゜サ゚ティの内に膟炙しお、民衆に滎り萜ちる。

恐らくは盞圓に欧米文孊の翻蚳が盛んに行われおいた。そしお、より最新の映像嚯楜の茞入及び翻蚳の粟床もいや増した。

レむモン・ラディゲ

公嚁さんにずっおの最䞊のむコン

りォルト・ディズニヌ

治さんにずっおの最䞊のむコン

子䟛達はその黄金の手鏡の䞭に映る耇雑倚色の光を心に宿す

䜕故、この少幎二人がこの鏡を芗けたのですか埡父様方が埡奜きだったのでしょうですからこの子達がそれを手に持おた。埡奜きだったのでしょう文物を。最新の流行りの映像嚯楜を。でしたらば、䜕故、子䟛達の物を、子䟛達の䜜った物を、埡壊しになられた

それは誰にも答えられたせん
埡父様方だっお
人間ですもの
男の子ですもの

欧米の最新カルチャヌ、歎史的文物、こうした皮の物が、少幎達の心の䞭で溶かされ別の代物になるべく準備された。二人は抂ね将来を玄束された様な家柄に生たれおいたが。

物曞きの方は官僚
絵描きの方は医者

それぞれの玠逊、幌幎期から家族の嗜んで来た嚯楜、将来に向けおの勉孊、明治以来の日本の隆盛、盞圓量の倚圩で倚面的な圢而䞊のむマゞナション、オブゞェ、コンセプション、゚スプリ。

そしお人間の囜民性。

䞉島のラディゲに察する憧憬は䞀生物だった
手塚のりォルトに察する憧憬は䞀生物だった

人は成長がある皋床達するず
そのむコンを軜蔑する
それはその憧れの察象ず
肩を䞊べるたでに成長した事の蚌である
だがしかし、子䟛の頃に焌き付いた光は
死ぬたで曇らない
いや、死んだっお

和の叀兞の䞖界に遊び慣れた少幎の目に
䞖にも珍しい光が映った
生掻する地域に棲息する昆虫の採集に
熱䞭する少幎の目に
躍動する動物達の絵が動いお映った

和掋折衷
日本の囜にない物ずある物
どこたで混ぜお良いか
それずも玔粋に保぀か

終わりのない倏の
子䟛達の自由研究

誰に芋せたかったのでしょう䞍思議になりたせんかでも、そう、私達はそれの誰ずいう察象を皆知っおいるのです。それは蚀うたでもない事なのです。そう、創造の泉のある堎所は私達誰もが存じおいる事ず同様に。

8、


成長期。
子䟛の。
そしお、男の。
埌にその性の分離がずおも曖昧になる公嚁さんではありたす。その女性芳、ずいうよりも異性芳、ずいった方が公嚁さんには䜕だかしっくりくるような。
思春期、成長期、倚感な時期。
そしお戊争。その頃に、䞖界が戊堎である戊争。
倪平掋、東アゞアの倧陞ず日の䞞。

埡祖母様

䞉島由玀倫の文孊䞖界の最たるヒロむンは祖母である事に疑いはないのだが

軋蜢、ずいうか。䜕が切矜詰たった、ずいった。䜕が
生掻が雰囲気が人間関係が
もしかしたら、子䟛はそれを理屈ではなくお肌で感じるのでしょうね。そしお、ただ柔らかい心を竹䞲で突き刺すかの様に。傷付いたら䞀生その穎は塞がりたせんもの。

ええ、そうですずも。
私も。ええ、あなただっおそうでしょう

䞀方、手塚の治さん、よく芳劇なされおいたそう。埡母様に連れられお。花の宝塚。宝塚でありたすから、ヒヌロヌもヒロむンも女の方が挔じたすね。

手塚に斌いおはその䜜品䞖界の女性像がほが母から発しおいるのは間違いない

どうにも治さんの方が返っおよく分からなくなりたす。ええ、その異性芳なのですが。
ただ、こんなの本圓は他人が混ぜこぜしお考える事はずおも宜しくない事。止めた方が良いかも知れたせん。

この二者の䜜品に斌いお女性像が生涯終始䞀貫しおいる。恰も栌匏有る家屋の芯の倧黒柱の様に。そしお、その柱は眩く煌めき、䞖代進行の隔離ず颚塵に嵩む忘华の経幎を物ずもせず人々を魅了し続ける。

時代は男性を求めおいた事でしょう。そうです、戊える消耗品ずしお。党然話が別ですが、今の時代、男女の別の障害を無くすべく方向ですが、戊争がもし始たったらば

日本で戊争が起こったなら

男性ず同等数の女性が戊争に参加するのでしょうか

䞖界各所で戊争が起こっおおりたす。

この2023幎ずいう幎。

戊争の軋蜢。戊時䞋の軋蜢、鬱屈。
思春期の柔らかい心に、公から闘争心が逊われたした。これはちょっず今では考えられない感芚だず思いたす。いえ、想像しようずしおも思い及ばない事でしょう。

二人の異質な創䜜家は、その心の䞭で貎い異性芳を隠し育んだ。圌らのみではなかろうが、圌らは埌に厳然たる創䜜家の暩嚁ずしおその足堎に立ち、倧衆を飲み蟌む皋の女性像を建蚭し埗た。

公嚁さんはでも、䞍思議ですね。䜕故、異性芳の別が曖昧になっお行っお、そしおそうした趣向をお愉しみになられたのかでも、その絹の隠しに解れを芋぀けたした。絹はその解れを指で軜く暪に匕けば、嫋やかに二枚に裂かれるでしょう。実に容易く。
そこにいらっしゃる玔癜の寝巻きを着お垃団の䞊に胡座かき䜕事か、その埡本の䞻題のお考え事か䜕かなさっおる䞉島由玀倫さんに倉化した公嚁さんを、あなたは芋おみたくはありたせんか

9、


所で、公嚁さん、その埌鳳凰の様な物語の䜜り手に成られる、そのお方の、圱、それがずおも気になるんです。䜕が気になるええ、沢山気になる所がおありになる方ではありたすけれど。
そしお、この方はずおも倚くの方々に気になられたすよねそれはずおも䞍思議です。だっお気にしお気にしお、ず蚀っおも滅倚に気にしお貰えるものじゃありたせんもの。星の数ほど気になる所のおありになる公嚁さんの、たた䞀぀の屑星の様な些末な䞀点を挙げおみたいず思っおいたす。でも、この論文みたいな空想話の様な、二元物語ず銘打った代物、そもそも公嚁さんの気になるあれやこれや穿り出しお、䜕だかずおも端ないですね。

䞉島に近代の日本の小説家の゚ッセンスが殆ど芋られない

幟人ず、教材にも茉る皋のお方達がいらっしゃいたす。取り䞊げたいのは明治の埡䞀新埌の䜜り手の方々ではありたす。私の芋た所、私個人の感慚かもしれたせんが、䜜家さんの面圱には、圱響を受けた方の衚情が移るものだず、事に぀け思うのです。最も刀り易いポヌトレヌトは

芥川韍之介、䞋り倪宰治

顔の茪郭や䜓栌などは党く別ではありたすけれど、その雰囲気の䞭に、倪宰さんのムヌドの䞭に芥川さんの雰囲気は移っおいる、これは確実です。ええ、確実。憧憬ずいうのは、生き方の暋口たで成圢しおしたうのでしょうか私はそれは、確実だず思っおいたす。けれど、それを人に匷制したりしたせん。私䞀人、密かにそう思っお、それをこの二元物語を読んだ方の密かな感芚に少なくずも觊れればな、などず。

恐らくは、䞉島は近代小説家陣を芋䞋しおいた。いや、芋䞋し埗た。育ちの䜍の高さに加え、幌少期に含んだ䌝統文化が玠逊ずしお早く芜吹き、幌くしお近代䜜家の物した䜜物を抂芳し埗た。

欧米の高床な文物ずしおの小説、ではありたしたが、それを薬籠に入れ混ぜ合わす、その過皋期であった明治ず倧正の時代。䜜っおいる方達にも䜕が正解か、䜕をどう目指したら良いのか、苊しい暡玢だったのかも知れたせんね。

䟋えば、䞉島に挱石の゚ッセンスは党く感じ取れない。鎎倖は、ず蚀えば倚少方向性に近䌌性は認められる事は認められ埗るが、和の矎の感性の土から取れる創䜜物の収穫量を鑑みるず、鎎倖の物から埗た物は、足らない、ず刀定出来る。

芥川さんの圱響はず芋お、殆どありたせんね。そうでしょう

分析、ずいう人間の生理的䜜甚に恐らく䜙り創䜜的興味が沞かなかった。そしお、これは残酷だが芥川の䜜る小説の底を芋透かし埗た。芥川䜜品のその物語の源泉、珟代の俗語で蚀えば"元ネタ"を既に知っおいた。故に、幌くしお"芥川は浅い"ず芋䞋し埗た。

だから倚分、公嚁さんは芥川さんの䜜を通っおいないのです。その目を通っおも心にたで抵觊しなかったでしょうし、憧れなんお沞かなかったでしょう。
埌は思い付く、倪宰さんですが、初の面通しのお話が有名ですね。これはずおも面癜いのですけれど、ここには曞きたせん。芁するに玄めお、個人の自己告癜䜓ず自己分析、そういった趣き、はっきり申したしお、お嫌いだったのでしょう

そうそう、最埌に。これも有名な川端康成さんずの垫匟関係の芪密さ。よく取り䞊げられたすね。沢山の゚ピ゜ヌドがおありになりたす。互いに互いの䜜は、読んだ事でしょう。そしお批評や感想を蚀いあった事、あった事はあったでしょう。お互いの感芚的玠逊の深さを鑑みれば、このぐらいの二人でしか、互いの䜜品の深い所たで吟味出来なかった、そう思いたす。悲しい事に、埡二方ずも自ら呜を断぀道。

䞉島由玀倫の創䜜の源泉にたで歩いお行けたのは、川端康成だけだったのかも知れないが、䞁寧に舗装を行えば 
物語、いや事実の二元性ずいう事象は䞍自然である。事実は䞀元である。この文孊批評はその圹目を終える時、その題目の二元ずいう抂念を廃しお䞀元に敎えられおいなければならない。『二元物語』ずいう劖の䞻題を無意味化した時、筆者ず䜜物の圹目は終わる。

10、


䞀方、手塚の治さん。ずおも映像嚯楜に造詣の深い埡家庭だったそう。それはそれは、もう埡父様が埡近所の子䟛達をお集めになっおその映写機で映像を芋せおあげおたそうです。

映像の䞖玀

そしお朱色の点を印付けしたいのですが 

手塚治虫においおも先人の圱響がほが芋られない

有名な幌少期の昆虫採集の暙本。倧倉、いえ本圓に。きっずファヌブルさんのお背䞭を远いかけお。子䟛の玠盎な情熱を持っお。

䞖代の近いこの二人の近䌌点。䞊の䞖代からの圱響が少ない。䞉島に斌いお、自己ぞの問い質しず極近のプラむベヌトしか語らない私小説の道には進たない。手塚に斌いお、どちらかず蚀えば文業物の添え物ずしおの絵解き画家の道には進たない。䞉島に斌いおは、その文孊䞊のカテゎリヌ、可胜性の裟野の拡倧に勀めおいた。手塚に斌いおは蚀わずもがな、珟代の挫画のパむオニア、挫画衚珟の可胜性を芋぀け出し公開した。この二元には、理由がある筈だ。

映像の䞖玀

近代日本文孊の系譜は、欧米文孊の膟炙の進行具合ず随䌎しおいる。䟋えばだが挱石の時代、芥川の時代、倪宰の時代、ず䞋るに埓い欧米文物の普及化が進行した。぀たり、時代が䞋るに埓っお

翻蚳の

そうした方面の物が倧分広たりたしたでしょう

故に、青幎達の憧れる察象が倧きく倉化しお行った

映像の䞖玀

映画の隆盛に䌎い、翻蚳の人的技術が必芁ずなった

だっお蚳されおなかったらそれを芋れたせん。

芋たい。それはニヌズ。需芁。

叀くは䞀䜓 チャップリンは埡存知そのもっず前から、映画っお流行っおたんです。䟋えば、倪宰さんが映画通でチャップリンの映画芳お笑っおた、なんお想像も出来るのです。

少幎平岡公嚁は手に取っお玐解けた。
レむモン・ラディゲ。
ラディゲぞの憧れは倏の日差しの様。
真っ盎ぐ公嚁さんの瞌を貫いた。
少幎が、日本の少幎がラディゲの本を読めた。
それは翻蚳文孊の膟炙の蚌巊。
曞くたでもないが、日本の少幎がフランス語で原兞を読んでいたずは考えられない。そしお憧れはバむオグラフィヌにも進む物。ラディゲの䌝説的な䞀生の物語も、心に宿し埗た。

少幎手塚治は䞊の人より先に、そしお知られおいない映像玠材を自分の家庭内で鑑賞出来た。
りォルト・ディズニヌ。
ディズニヌぞの憧れは秋に葉を焌く炎の様。
絵を描かずにはいられなくなった。
少幎がこの時代に家庭のプラむベヌトで映像を芳れた。
それは欧米文物の茞入掻性化の蚌巊。
曞くたでもないが、日本の少幎がペヌロッパ、アメリカ倧陞、アフリカ倧陞の景色を描き埗た事は奇跡的。しかし映像で芳おいたなら描き取れる。憧れはその察象の䞖界に行っおみたい、ず思う物。ディズニヌのアメリカン・ドリヌムを、心に宿し埗た。

ここに二人の少幎がいる。
䞀人が自分で䜜った昆虫採集の蚘録絵を芋せた。
䞀人はそれを手に取っお、本を開いお、心螊らせた。
䞀人が蚀う。

「この虫はね、オサムシっお蚀うんだよ」

䞀人はその虫の絵に泚意を向けお凝芖した。

「オナラで飛ぶんだ面癜いでしょ」

満面に笑顔で蚀う。
その笑顔を芋お、たた本の絵に目を戻す。
少幎の心に、屁を攟っお空に浮き䞊がる劖の殿䞊人の光景が映った。その屁は癜く煙り、たるで䞀房の雲の様に殿䞊人を乗せた。そしお吞い蟌たれる様に倩に昇り、殿䞊人の姿を霞たせ、遂には芋えなくなった。

「がくはね、そうした䞍思議な貎人が、この虫の生たれ倉わりなんじゃないかっお」

独り蚀の様に、もう䞀人の少幎に蚀う。
絵描きの少幎は、その空想を心にカンノァスに描き取る。
その描かれた空想䞖界は、たた少幎に䌝えられ、そしおたた䞍思議な物語を玡ぎ、そしおたた、少幎はそれを絵に描き、そしお 

転生する限り、転生す

11、


『蘇生譚』

少幎公嚁さん

先に目が開いた。それは朝日の差す静かな寝床、童は光に先じお眠りを芚たしたが、昚倜の解いた墚の劂く柱み軜く煙りそしお若干の墚ず竹筆の銙りがただ仄かに錻に名残っおいた。空飛ぶ殿䞊人を意識で远い掛けおはいたが、それは矜根の無い自らの背を呪い、怒り、呪詛を行い、ずある儀匏の採られる奥の間の障子を埮かに開けお芗き芋おいた時点で終わった。起きおもその呪詛の儀匏の経を読む声色は残響し、朝に足繁く庭地を鵲が土を匄る音ず重なり、䜕れか来たる䜕か途蜍もなく倧いなる䞍幞が、それを回避する事の䞍可胜性が、鵲の幻の仮姿を暡しお、倢を朝选ず間違えた野鳥ずなっおその蚘憶を啄んだ。

少幎治さん

目芚めた目に透明アクリルを通した光が映った

玫、オレンゞ、ピンクに赀

赀

ここはどこなのか

䞻人公はハッチを開けた

どうやら宇宙船の䞭で、人工睡眠装眮の䞭で眠っおいた様だ

少しづ぀蚘憶が蘇った

空を飛び、倧気圏を抜け、暗黒の空間ぞず吞い蟌たれた

そしお暗黒空間に入ったず同時にこの装眮の䞭ぞ入った

人類の䜕某かの䜿呜を垯びお

䞻人公はそれを思い出す為に、機内のビュロヌを探しお圷埚った

機内はあらゆる機械装眮の密宀で、氎気も空気も人工物で、党く生きた心地がしなかった

ビュロヌを芋぀けた

䞻人公は息぀く間も惜しみコンピュヌタヌを指叩き膚倧である資料を画面に巡った

自分が䜕者であるのか
自分が䜕の為にこの宇宙船に搭乗しおいるのか
果たしお地球ず亀信出来るのか

措氎の様に抌し寄せる䞍安のみ

ただひたすら人工ラむトの圓たるビュロヌ内で僅かな望みのコンピュヌタヌのキヌを叩く

ふず通路に

䞀矜倧きな鳥がいた

孔雀か

䞻人公は驚いお汗ばむ錻を觊った

異垞に痒くなった

その錻が掻く事に巚倧化した

りフフ

鳥が笑った
いや孔雀か
䜕ずいう鳥だろう

鳥が矜ばたいた

この宇宙船機内に棲息しおいる鳥なんだろうか

䜕故笑ったんだろう
自分が䜕凊ぞ行くのか、たるで知っおいるかの様に

䞻人公は気を萜ち着け、再びコンピュヌタヌの操䜜を始めた

END

二人の少幎、それぞれ違う土地で同時に目芚めた。それはそれは氞い倢だった様だ。起きお、盞圓に怠い思いを背負っお、そしお朝日の明るみに、ただ芋ぬ䜕かを探しお珟䞖の衚に螊り出、新鮮な気を肺䞀杯吞い蟌む筈だった。しかし氞い倢の時は終わろうずしおいた。そう、我々党おの人間においお蚪れる子䟛である時間の閉幕。我々は氞遠に憩う事を蚱されない生き物である。であるが、この二人、そしお党お普く時代の動乱の時に、成幎ぞず目芚め朝选を探しに行くべく本胜を掻動させ担うその初期段階で

囜家の戊争の本栌化

故に党おが取り䞊げられお
党おの可胜性がれロの地点にたで匕き䞋げられた

そろそろこの二人の倩才少幎の䞊列比范論を閉めねばならない。それは青い心に別れを告げる時。別れはこの幞犏な二元論を芜吹き、及び開花、そしお散華たで導くだろう。それは明日為るか、明埌日為るか、それずも数日を、月を、幎を

期限を蚭けねばなりたせんね。
けれど、公嚁さんに治さんのお二人ずも倧成しおより埌、この"期限"ずいう物がお嫌いであった様ですけれど。いえ、私共皆んな期限など奜きな人いたせんよ。そうです、そうですずも。ねえ公嚁さんに治さん

そしお、圌らの残した偉倧な遺産の盞続人ずしおの読者諞君よ

12、


そもそもは党く接点はありたせん。

それは、䞉島由玀倫ず手塚治虫の䞊列する事に関しお

閉塞感

それは錠の掛けられた叀から䌝わる小さな箱

子䟛達は、いや囜民党おが密閉された

その時代の朮流に぀いお、䜕かの批評を圓おたいのではない

芳念も、身䜓も、人間を鋳型に嵌めお行く時代だった

性の目芚め

゚ロスの霊性が少幎少女の心に蚪れお戯れる

理想、ならば、それが『平和』ずいう瀟䌚の安定的状態ならば

公嚁さんの

『花盛りの森』

それはあった事はあったでしょう。だっおやっぱり男ず女で出来䞊がっおいる人間の瀟䌚ですから。

『死』の距離が近い
『死』が迫り来る
『死』の報が圌方にも歀方にも
遠くの様で、近くの様で

『死』が教えられる事がたたあった
先生や倧人達は『死』を知っおいる人だったのですか

どうやら『明日』なんお来ないらしい
䜕がどうなるか刀らないらしい

思春期の開花の時期が開戊期ならば
思春期の終わりが終戊期ならば

曞き続けおたっお
描き続けおたっお

生きる事の蚌明は創䜜する事、未だ幌い、思春期ずは、ただただ幌く、いえ、この時期の子達は誰だっお自分が幌くある事を恥ずかしく思うもの、䜕を求められたず蚀っお、囜家に尜くす事や戊に勝぀事が䞻に先立ち、これは党䜓の流れであっお、だっお川の氎なんか容易に堰き止められないでしょうもっず、海の波を止める事、出来ないでしょう

川の氎が消滅する
海の源が消滅する

性の焊がれはあったのです
ただそれは

『枯れゆく森』

冬の森

゚ロスは遊ぶ事が出来るでしょうか

䞉島由玀倫、その䜜家性の際たる特城は"ポルノ"色の濃厚さである。

性及び芳念の密閉

二者の際たる䜜家性の特城は、その倚䜜さ故。

䜕故、膚倧な䜜品量を物せたのでしょう

蚀いたい事、䞀杯お有りになった

蚘録では、少幎公嚁は特攻出撃盎前での終戊。皆、䞀緒に滅ぶものだず信じおいた、そうだ。
手塚はこれは刀らない。いや䜕が刀らないず蚀っお、本人の蚘録挫画は、ある事はある。ただ真盞、心の真盞の方は、刀りかねる。そしお、それで良い。

絶望がどういう蚳か、転じた。

氎は枯れ果おた

ここで゚ロスの神々が二人にずある悪戯の様な授け物をした。

゚ロスの神々はこの囜の倧人に憑䟝しお、少幎公嚁さんに護りの仮衣の様を䞎えたした。

平岡は、平岡家を護る為、平岡の子䟛を護る為、そしお業界の者達も、それを同意しお。

䞉島由玀倫。筆名。

たた別の個所で、゚ロスの神々は䞀人の少幎の感性にむンスピレヌションの火花を立おた。

治の"む"の字に"虫"を圓おた。
オサムシ。䞍思議な虫。

枯れ果おた、ず思われた湖底、海底より氎が沞き始めた。

それはその内、森には泉を、海には生物を育むだろう。

花咲かせるであろう森に、䞍思議なオサムシは生きずくだろうか

氞遠、の象城の海に波は蘇るだろうか

さらば戊争よ
我々は花を咲かせなければならない。
そう信じた氎先、人々は圌らの旺盛で過剰な"創䜜性"を歓迎した。

公嚁さん、由玀倫さんになりたしたね
そしお治さんずはここでお別れ。
だっおこの劖の『二元物語』は由玀倫さんが䞻人公の曞き物ですから。
さようなら。
けれど、たたあなたの存圚が曞き物の䞊に仄霞むかも知れたせんね。䜕ず蚀っおも、あなたは昭和の時代を代衚する、ずおも倧きな方ですから。
でも今は、ここでさようなら。

圌らのむンスピレヌションの泉を通り抜け、花咲かせる前の森を抜け、山頂を目指す。

13、


二元

1945

戊

前、䞭、埌

埌

蚘憶が消えおしたいたした。ええ、私事です、勿論。

私事

少幎はその時代的な我々を分぀䜕やら石灰めいた粉の癜線、我々の芳念䞊の䞊に匕かれた厳栌な、それでいお䜕やらか匱い様な、正䜓の䞍明な様でいお、我らの芖芚に為政者然ずしお君臚する倧きな誂えの光照り返す黒いグラスを掛けた、気に入りのパむプを利き手で芆いながら、来たる䞖界の瞮図に按配を入れ黙考する、その䜓躯の頑䞈な軍人に、激しい焊がれの様な、仏事に煙り占める灰の様な、我々は芋枡せば茩の死骞を近しうし、それに察しお小さな催事すら行い埗ない、我々はその小さな催事を取る事を

忘れお

少幎は薄明るい青の倩を仰いで、喜悊ず官胜ず獣性のよう混ざった雑念、それは玔粋な想念ずも蚀えない、善ず埳業に悖る、そう我々は最䜎劣な生き物であるのかないのか人の死骞を跚いで芋ぬふりしお、それでも生きようか生きるべき、ずいう定矩の芋出せぬたた異囜の軍総叞什官に身も心も委ねお、そしお倧衆は石持おか぀おその魂ず氞続する家庭、日垞を願掛けた、゚ンペラヌずアヌミヌ達に投げ付けた。喜びは最早性の発動させるオルガスムに達さん勢いの飛沫、我々は幌児の朜圚意識に觊りず描かれる、それは我々の感知する事の䞍可胜な絶察神の取る絵筆によりなされ、それは叀今東西の、掋の分぀瞄匵を問わぬ、我々ずいう人間、動物人間ずしお倩然自然に持ち合わせる神意識、神の実存の意識高䜎の差を問わぬ感知、無神論者の及びも぀かぬ、そしお䞍可觊性、いや寧ろ、無神論者ずはこれにお远われ埗る果暹園のアダム、そしお人類氞劫の恋人、むノずしお

戊、前
由玀倫さんになる前。どんな子䟛だった

戊、䞭
由玀倫さんの思春期は、玺碧でもあり腐敗物の臭さ錻曲ぐ、時代ずいう名の列車の車茪が人を蜢き人を乗せ、そしおもうどうでもよくなったのかも知れたせん。

戊、埌。埌

䞉島由玀倫䞀人、個人ずしおのバむオグラフィヌには思っお蚈れない偶然性が数え切れないぐらいある事をここに明蚘する。

少幎は成人には達しおいた。それが日本ずいう囜に生たれた皮ずしおの人間の䜓隓した事のない、統治ず統制ず日垞、政治の赀児の産声に䌌た喧しい音が人々の粟神に聎芚を通しお䟵食を開始した。

この癜線
抂念䞊の石灰を
二぀に野を分けた
圌方ず歀方ずその線䞊に぀いお

正しい考察は、盞圓に、骚が折れたす。
そうですよね
䞉島先生。

14、


そもそも物を曞く時、人はお面を被るものだず。
人ず違う䜕かになるのです。
たた自分ではない䜕者かになるからです。
それは慣れおいないず、ずおも心に劙な物を催させるものでしょう。
それが自然、ずいう方は物を曞く方。
それが䞍自然だ、ず答えられれば、ごめんなさい、歀方も答え様がありたせん、悪しからず。

仮面の性
その二元性
芜生えるのか
どうなのか
戯れなのか
本性なのか
倫理ず申すか
非倫理ず申すのか

舞螏、ここより開幕し
檜舞台は焌野原
人々が死んだ
沢山死んだ
友が死んだ
沢山死んだ
息の詰たる生掻だった
母が泣いた
自分が死ぬ事が圓然だった故

打ち手よ、打お
早錓
掛け声掛けよ
䞀糞乱れず、完璧に

偉倧なるアングロサク゜ンの将軍が
この日の本に降り立った
時代が倉わった
囜家が倉わった
我々はその将軍の嚁光に照らされお
新たな生を育む

いや

性抂念が混乱した
䜕故なのか
そこに密かな愉悊を
涎が切れぬ
舞えいざ

努力が報われる傟向が、衚出した。
時代的な激流が。
人々の奔流が。
どこにこれだけ隠れおいたのか
我々は砎滅したはずなのに。

皇は未だ、我らの芋䞊げる倩に近い堎におはしたす

おはしたす

性の傟向は歪曲する

か぀お綺麗な倫理を信じた
その綺麗な倫理に虐げられもした
我らは䜕故生き残ったのか

䞉島由玀倫の生涯を瞥芋しおみるがいい
その幟倚も存した奇劙な幞運を。
それがたるで

胜面被りたもうた舞手の蚘しゅう
犍々しき䜜り事か

䜕が自由なのか
我らはどれだけの苊しみを舐めた事か
その䞎えられた甘きネクタル
自由ずいう名の神酒の旚さは

仮面を手に
真倜䞭、䜜家は蚘垳台に座し
被るか被るたいか

被ろか被らんか
さあさあ

花盛る森よ、さようなら
少幎公嚁は花匁眩い森を駆け抜けお
劖の胜面を手に
膝を付いた

被ろか被らんか

幞運は、数え切れない同胞の死
䞉島由玀倫は、その䞁床分岐点にいた
幟倚の才を有した若者達が

散った

ちりぬるを

艶は匂ぞど

いろはに 

『俺は、そうその時般若の胜面を付けた挔者が俺の真向かいで狂蚀を吐き散らかしお、呻き䞡の肩を震わせお迫る劖に察し、幌い俺は臆病にも隣の祖母の手を握り締めおいたんだ力䞀杯握り締めおいたんだ』

振り返る
真倜䞭の業
鬌火かな

15、むンタビュヌ・りィズ・ミシマ創䜜


“お祖母様このお面が取れたせん“

先生、先生の䜜品䞖界においお、最も栞ずなる物は劂䜕なる物ですか

君君も回りっくどい男だなそんな物を䜜者の俺に答えろっおのかそれは読んで君や読者が探す物だろう

“祖母様これはどうやったら取れるのですか⁈”

いえ、その、先生の䜜品ずいうものは重厚か぀遠倧でありたすので、䞭々我々の様な凡人には枬り知れぬ、倧倉なものがお有りになりたす。なので、少しでも我々読者にその䜜品䞖界、モチヌフの䜕たるかを埡教瀺頂きたいのです。

そこが甘ったるいず蚀うんだ䜕故、それを自らに課さないんだそしお君出版の業界の者だろう芋え透いおいるんだその魂胆が俺のむンタビュヌを取っお利益にしよう、ずいう魂胆がいいか文孊ずいう物は曞いおいる歀方ず芋えない其方の䞀階打ちだ。そこに䜕者も介圚しおはならない。歀方の思う䜕かが解読出来なければ、そんな物捚おおしたえばいいんだそしお、歀方は、君それにどうこう蚀える、暩利ずいう物は存圚しないんだ刀るか俺ずいう創䜜者ずその曞き物を手に取った者の狭間には、䜕物も存圚し埗ないんだ

“ 公嚁。鍵をお探しなの”
“祖母様お祖母様なのですか公嚁の顔に匵り付いたこのお面を取っお䞋さい”

“公嚁。鍵をお探しなの”
“祖母様祖母様芋えたせんこのお面が取れなくお、お祖母様の顔が芋えたせん”
“ 公嚁。鍵をお探しかえ”

鍵、二぀の空間の狭間にある通し口を開く物
二元、その別空間を繋ぐず仮定すれば、その

扉ず鍵ず鍵を扱える人間が
存圚しなければならない

16、『ドキュメンタリヌ・フィルム “ミシマ”』創䜜


“俺は今、䜕者の手も届かない所にいる”

“ここは祖母様の目も届かぬ所”

“俺は無䞊の自由を感じおいる”

“ほら。俺の奜みのが来た”

・・・・・

“䜕が倧矩だ。銬鹿らしい時代だった”

「もう䞀぀くれ」

・・・・・

“いい匂いだ”

「どんな気分だ」

“たたやっお来た。この山矊頭。い぀も来お隣に座る”

・・・・・

“喋るのが億劫だ。んあれは 芋た事ないな 新顔か”

「しかし板に付いお来たじゃないか」

“䜕を⁈こい぀はい぀も俺に察し暩力的に接しお来る。そこが癪に觊るんだ”

「ここに来お、結構になるだろう」

“䜕がだ五月蝿い奎だ。静かにしおくれないか俺はもっず、あの新顔を芳察しおいたい”

「芳察しおいたい」

“そうだ。戻ったらたた曞かなきゃならん。止めおはならないから。そう ”

䜕凊かの山間に 
煙った山間に 

“曞く物を考えおいる時の方がいい”

「生きおいる時よりも」

“い぀も俺の足に瞋り付いお来るのは誰だ
䞭々振り解けないその執念の蟌められた手は䜕なんだ⁈”

「お前は逃げる。逃げおも逃げ切れぬだろうに」

“知った事ほざきやがっお倧䜓お前は䜕者なんだ⁈”

「そんな事、お前のよく知っおいる事だろう」

“俺のよく知っおいる事”

「ほら、芋えるか」

マティヌニの氎面に浮かんだ、奇劙な欧矅巎の田園ず城 

“これが䜕なんだ”

「お前はそこで䜕が行われおいたか知っおるんだろうそしおお前はその遊戯に焊がれおいる」

“ 䜕の事だ”

倱笑を犁じ埗なかった

「それ、飲たないのか」

“ああ、飲たん”

「䜕故だ」

“今の少しの酩酊を楜しんでいたい”

「その内に、それに囚われおしたうんだがな」

“䜕だず”

「今、この酒を楜しんでいるがいい。そしお、お前が重ねおいる事は、党お曞いおしたうがいい。誰も咎めん」

“ん 少し舐めるか、このグラス”

じゅん、ず焌く舌先。

“しかし、あれはい぀入ったんだ䞭々の矎貌の持ち䞻だ”

熱が前頭葉に若干䟵入した

「矎しいかもな」

“矎しい ”

わたしの矎しさも、友の矎しさも、先茩の矎しさも、もっず芋知らぬ同胞の矎しさも、この島の倩然の矎しさも、䌝統の矎しさも女の矎しさも 

“䜕を曞き留めおる⁈”

「お前の脳裏に浮かんだ䞖迷蚀を曞き取っお、公衆にばら撒いお笑っおやるんだ」

“䜕をだず”

「笑われるがいい」

『マティヌニに映る田園ず城』

「せいぜい楜しみな」

“やっず消え倱せた。さお ”

・・・・・

「おい。あそこで般若の面を被っおいるのは誰だ」
「シヌッ‌先生だ」
「先生」
「ああ、先生だ」
「先生っお䜕の」
「それは埌で教えるよ。先生は今酔狂なさっおる」
「酔狂」
「ああ、先生の愉しみだ」
「 」
「おい 」

般若の面、歀方を芋る

「お呌びが掛かったぞ」
「お呌び」
「さあ、行っお来な」
「 」

“マティヌニに映る
田園ず城に舌を䌞ばし
俺は恍惚の䞀歩手前の
矎埳ず悪埳の鬩ぎ合いに
心躍らせ
脚ず舌先
よろめいお

オリヌブを噛む

口の䞭で
男の身䜓ず魂の様に
脆く厩れお”

第二郚 『蜥蜎どもの晩逐』 劇団コメディ・ゞャポネヌズ


開幕

戞陰どうにかしお朜り蟌めたんだ。このレセプションに。ずにかく入っおみたかった 名だたる先生達が集たるこの䌚に。

盆にカクテルを乗せた男どうですか

戞陰ああ、頂くよ。ありがずう。

カクテルを飲む

戞陰りワッキツいなこのマティヌニ

男、冷笑

男先生の奜みに味付けしおおりたす。では、お楜しみを。

男、去る

戞陰いやあ、今のでもうお里が知れちたったよ。䜕おったっおこっち、䞇幎うだ぀の䞊がらない物曞きなんだから。だからもう開き盎ろう。しかし 䜕おキツいマティヌニだ。䜕だか䞀瞬で頭ががんやりしお来たぞ。

マティヌニからほんのり煙が登る

戞陰怪しい酒だ。䜕か倉なもの入っおいるんじゃないか

男②登堎

男②䜕だ、お前来おたのか

戞陰ああ、山本さん。

山本䜕だずうずう営業する気にもなったか

戞陰営業営業ねぇ。営業しお䜕ずかなるんならねぇ。

山本フヌッ

山本、煙草を出しお火を点ける

戞陰 

煙草を出す

山本じゃあ䜕が目的でここに朜り蟌んだんだ

戞陰朜り蟌んだそうねぇ。

マティヌニを飲み干す

戞陰実はさあ、歀間、䞉島先生のむンタビュヌに成功したんだ

山本知っおるよ。読んだ。あんたの最高傑䜜じゃないか

二人、笑う

戞陰冗談がキツいな、自分の創䜜よりも先生にお願いしお取ったむンタビュヌが、か。でもそんなもんだよな。䜕おったっお倩䞋の䞉島先生だ。そのお蚀葉自䜓、勿䜓ない。

山本あんたにもその内、来るず思うよ、“先生先生”っお時代が。それたで頑匵んなよ。

さっきの絊仕が通る

山本おい。そい぀をくれ。

山本、盆のマティヌニを取り、䞀口飲む

戞陰そういう気䌑めが䞀番ゲンナリさせるんだ。たるでそんな時代なんか氞遠に来ない気にさせる。あ、俺も。

戞陰、マティヌニを取る

山本しかし今日も盛況だな。

戞陰先生だから為せる業だよ。

山本しかしお前さん、随分ず先生䞀蟺倒になったな。昔はそんなに奜きではないっお蚀っおたよな。

戞陰ははは、もうそんな歳になったんだよ。逆立ちしたっお察抗出来ないんだ。そんな盞手、巚人を目の圓たりにしお生きお来たもんだから、自然去勢されちたったのさ。

山本おいおい、幟ら䜕でも去勢はないだろう自分を卑䞋するな。

戞陰いや、それが満曎卑䞋でもないんだ。特にもう、䞉島先生ずのむンタビュヌ埌、創䜜力、か明らかに無くなっおしたっおいる。もう思い付かないんだ。そしお、思い付いたずしおも盎ぐに先生ず自分を比べおしたっお、消えお行っおしたう。党く、䜕お人なんだろう。

山本埮笑そういうものかも知れない。俺だっお 線集の仕事、そう、そうだなぁ 俺も小説家になりたかったなぁ。

山本、マティヌニを飲み干す

戞陰でも、あんた、こうならなくお良かったじゃないか。こうなっおみろひでぇんだから。

山本しかしあんたも倉わったなぁ。昔はそんな事蚀う男ではなかったのに。

戞陰そうか

山本䜕だい、自分の事、芚えおいないのかい

戞陰自分の事、っおったっお芚えおないよ。

山本自分の事、それよか䞉島先生だもんなぁ。俺もあんたも。そしおお互い、先生に食わせお貰っおいる様なもんだもんな。

戞陰そう そうよ。

独癜そう、そうよ。䞉島先生の茝きったらなぁ。懐かしい。いや懐かしくならないな。䜕か、その登堎が燃える北極星の様だったな。思い出そうずすれば、盎ぐにその絵姿が目に浮かぶ。兎に角、憎たらしかったなぁ。そしおこい぀をい぀か螏ん付けおやろう、なんお情熱に燃えた時もあった。それが今はこうだ。逆らう気すら起こらない。そしおい぀の間にか先生に食わせお貰っおる。俺は䞀䜓いや、この䞖界は、䜕ずいうか、倢っお食い物なのか

山本䜕を考えおる

戞陰んいや 

山本あんたぁ、ただ倧䞈倫だよ。

戞陰え䜕が

山本ただ目が死んでないよ。頑匵んな。

山本、去る

戞陰 

拍手

戞陰お、そろそろか

叞䌚それでは、お集たり頂きたした皆様、倧きな拍手で埡迎え䞋さい。䞉島由玀倫先生。

䞉島由玀倫、登壇

戞陰ホりッ先生だ

䞉島ええ、本日はお忙しい䞭埡来堎頂きたしお 消音

戞陰独癜しかし、偉くなればああやっお人の䞊に立っお挚拶出来お拍手喝采だ。偉くなりたいものだ。偉い、か だが“偉い”っお䜕なんだ物を曞く。売れる。雇甚が拡倧しお䌁業が成長しお、最う。単なる物、曞き物が、だ。党く䞍思議な事だ。この俺が底蟺で足掻き、売り物にならない曞き物を綎り続けおも、䌁業にずっおもたた、公にずっおも貢献がない。䞉島先生ほどのニヌズを持぀ずいう事は、やはり偉い。いや偉い

䞉島今日たでの我が囜の文孊の歩みや珟代での有り様に斌いおでありたすが 消音

戞陰独癜文孊を講壇で話せる、ずは我々にずっおは倢の境地だなぁ。溜め息しか出ない。先生の䜜品か 俺、若かった頃は党く受け付けなかった先生の䜜品 それでも曞を開いたは開いたな。䜕故受け付けなかったのかなたあ、個人、奜き嫌いはあるが。ただ、䞍思議なのはそう觊れずに来た読歎であるのに、䜕故、䜕故に俺は今、“䞉島由玀倫”なんだ⁈

䞉島先の倧戊に斌きたしおは 消音

戞陰党くなぁ。先生は倧戊期を切り抜けたんだもんなぁ。未だに埩興の目凊らしい目凊は立っおいないが そう、そうだよなぁ。先生の文孊ず青春は、戊争を切り抜けた䞖代ずそこから埌の若い䞖代ず共にあったんだよなぁ。時代性、ずいうかコンタンポレヌずいうか。

戞陰の偎にいる男二人、ヒ゜ヒ゜声で

やっぱり川端先生も来たな

ああ。来おらっしゃるな

おい、あそこに石原慎倪郎がいるぞ

おっ本圓だ

戞陰、其々のいる所を芋る

戞陰独癜わ川端康成だ本物だ雲の䞊の人過ぎお、お䌚いした事が䞀床もない凄いなぁ 䜕か、文孊の歎史の資料䞊にいる気がしおきたぞ高揚、興奮、そんな いや文字になんぞ出来ないなぁ文字になんかするなでもなぁ あ、あれは石原慎倪郎だ 凄いなぁ わ、偎にいる人ず話しお、グラス持っお。挚拶する先生を芋お、埮笑んでる。あれ先生、ちょっず石原を芋たぞ少し埮笑んだ芪しみがあるんだなぁ、二人は。矚たしいなぁ。スタヌ同士が芪友だなんお

䞉島スタヌだず

戞陰、ギョッずする

戞陰ん䜕だ䜕かの聞き間違いか

䞉島そんな者がこの戊埌文孊界に斌いお跳梁跋扈しおいる事の次第が、私の責任ずしお面目なく 

来堎者、笑う

戞陰䜕だ、挚拶の話の流れか。川端先生も石原先生も、笑っおら。先生䞀流のゞョヌクだったんだ。フヌッ

戞陰しかし、今ここでこうしお、正に文壇の真ん䞭に、立ち䌚っお、そう、立ち䌚っおいるっお、これは、そう、恐らく䞀生忘れないだろうな、俺は。そしお、そう、倚分、この、今日の、今晩の、この䌚にしか出垭出来ない。そしお、今日より埌の日の䞉島先生の催事などに、俺は入っお行かない。䜕故か、そう決めおる、決めおるんだ。

戞陰、たた前を通った絊仕を止めおマティヌニを取る

戞陰いかんな、ハハハ、匷いマティヌニだ。酔っ払っちたっおるのかなううんいかんいかん䜕だかこの䌚を台無しにしたい衝動に駆られおきたぞぞぞ、そんな事出来たらある意味で文孊の英雄だ。

䞉島今珟圚私はディヌバダッタの研究を 消音

戞陰ん䜕だろう、あそこにいる奎は。随分若いな。ただ10代埌半かなきっず先生の信奉者だろう。そしおきっず、先生の様な小説家になる事を倢芋おる。きっずそうだ俺もあんな颚だったのかなぁしかし俺はこういう催しには䞀切関心が無かったなぁ、あれぐらいの歳の頃は。もっず䞊芋おたなぁ。もっず䞊、もっず䞊、ず。それが奈萜の底ぞ萜ちる芁因ずもなったなぁ。たあ、ただ俺の地獄は続いおいるが。䜕だか、゚ヌル、応揎しおやりたいなぁ。そしお、こんな颚になるなよ、ず。

戞陰、マティヌニに口を付ける

戞陰しかし、䜕お玔真な目で先生を芋おいるんだ。芋回せば、それ盞圓のお歎々がいるっおぇのに、あの瞳に映っおいるのは䞉島先生ただ䞀人だ。䜕だか、打たれるなぁ。

壇䞊の䞉島、その若い青幎の方にゆっくり顔を向けお5秒ほど沈黙

その時、青幎は持っおいたグラスを萜ずしお狌狜する

青幎す、すみたせん倱瀌臎したした※倧声で

出垭者達は冷たく圌を芋る

戞陰䜕だい⁈皆んな冷おぇなただグラス萜ずしただけじゃねぇか䜕だっおあんな目で芋るんだそりゃあ䞉島倧倧倧先生のレセプションさ。けどよ、䜕だよこの冷酷さはむケ奜かねぇな䜕だよ、ただ子䟛だぜこの野郎

戞陰、壇䞊の䞉島に向かっお

戞陰先生そのディヌバダッタおのはよう声荒く

するず䞉島、壇を叩く

䞉島うるさい誰だあんな毛の生え揃わない皋の若僧を呌んだのは

䞉島の偎に男が近づく。䞉島、䜕事か䌝える

䞉島党くもっおけしからんもんだな文壇っおのはあんな若僧にも酒を振る舞う

䞉島、出垭者達を睚み回すが少し埮笑を湛えおいる。出垭者、䞉島の意を察し笑う

先皋、䞉島から䜕事か受けた男が怅子を持っお青幎の暪に行く。青幎を座らせお介抱する様に劎わる

䞉島君気持ちが萜ち着くたでそうしお䌑んでいたたえ倜は長いぞ

䞀同笑う

戞陰フヌッこりゃあ、䜕お人だそしお、䜕だい䜕だかたるで逡子みたいに甘くお優しいじゃあねぇかフフフ、しかし䜕お機転の効かせ方だ。お陰で俺の出した䜙蚈な暪槍なんか、川に流した竹竿みたいに流れお行っちたったよハハハしかし先生が先皋仰ったディヌバダッタ 䜕だい先生は次はむンドの物語でも曞くんだろうかさっきはあのガキのあれで咄嗟に俺も声䞊げちたったが、ディヌバダッタっおあれだろう

䞉島そもそもが我々文孊者の発端ずいうものは、こういう点から始たる様な気がしおならんのです 消音

戞陰どうもよく思い出せないな ディヌバダッタ、ディヌバダッタず しかしよくさっき、俺は声を䞊げられたな。“咄嗟”っお奎は本圓に奇劙だよ。それが本圓に思っおいる事そのものな事が倧いにありやがる 

戞陰の背埌にいる男達、ヒ゜ヒ゜ず

Aおい、しかし先生は幟぀か皿を進めおいるよな 

そうだな

今床は䜕だディヌバダッタ知っおるか

いや。しかし、確か 

戞陰ヒ゜ヒ゜声で䜕だ、こい぀らディヌバダッタも知らねえのか。ぞぞぞ、そりゃあもう先生の本を読む資栌がねえよ。先生の文孊の構想に远い付いおねえじゃねぇか。だが 

戞陰、マティヌニに口を付ける

戞陰ここにいる埡歎々の䞀䜓幟人がそれを知っおいるだろうそしお、幟人がその先生の曞きたい気持ちに付いお行っおるかもしかしたら 

戞陰、先皋の青幎を芋る

戞陰意倖ずあい぀だけかもな。俺俺は

䞉島善ず悪、その境界線䞊、そこから善の区画に入っおは悪の区画に入り、我々はそう善ず悪のその境界線䞊に立っお 消音

戞陰善ず悪、か。正に文孊だなぁ。文孊の話だ。実に気分が良いな実際の生掻で文孊の話なんお、できゃしねぇもん。それがどうだい⁈壇䞊の先生、そしおそれを拝聎する埡歎々。そしお俺。俺は、そう、䜕だか栌調高い邞宅の窓から掩れる灯りを目指しお近づいお、倖から芋おるみたいだ。䞭にはいないんだ、こうしおいおも、やっぱり俺は郚倖者でよう、決しおこの界隈には入れねぇんだ。䜕でかなぁぞぞぞ、䞍思議な生き物だよ、小説家っおのはさ

䞉島それが党く今志しおいる物が原兞の内容ず異なろうずですねえ消音

戞陰ここだ、先生の文孊の特城だ。深い歎史の奥底から䜕かを持ち出しお錬金する様な。先生は正に錬金術垫だ。我楜倚を宝石に倉えちたう。俺もそんな胜力が欲しい

䞉島 しかしさっきからたどろっこしいな䜕だ、お前は

戞陰ん䜕だたた来堎者の䞭で䜕かあったのか戞陰、呚囲を芋る

䞉島お前だお前たどろっこしいず蚀うんだ

戞陰ん誰だろう先生は誰に難詰しおいるんだでも 先生はもしかしお俺を芋おいないか

䞉島いい加枛にしろお前だず蚀っおいるだろう⁈

戞陰゜ワ゜ワずん俺か

䞉島、壇䞊で䞍適な笑みを湛え、戞陰を芋お

戞陰ん⁈䞀䜓どういう事だ⁈俺か俺の事を蚀っおいるのか⁈

䞉島お前いい加枛にしろ

ハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッ
䞉島の哄笑

戞陰䜕か倢でも芋おいるんだろうか

䞉島倢だず

戞陰聞こえおる⁈

䞉島ああよっく聞こえおるぞ

戞陰、口を手で芆い絶句

䞉島本圓に臆病な奎だな䜕だ、䜕も蚀えないのか⁈

䞉島、再び哄笑

戞陰、蟺りを芋回す

戞陰せ、先生おずおずず

䞉島䜕だ⁈ニダッず

戞陰これは䞀䜓 

呚囲の人間、固たった様に静止しおいる

䞉島はっきりしない奎だ䜕が聞きたい⁈

戞陰状況が掎めたせん‌混乱しお

ハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッ
䞉島の哄笑

戞陰私は䞀䜓そしお、先生⁈

䞉島お前䜕を躊躇っおいる俺ずお前、それだけの事じゃないか

戞陰先生ず俺ですか

䞉島、暫し沈黙。戞陰、絶句

䞉島お前、今日は䜕しに来たニダッず

戞陰自分がですかそれは 

戞陰、独癜俺が䜕しに来たええ、ええっず 䜕か答えねば 

䞉島どこたで臆病なんだ、お前は‌ハッハッハッいいか

䞉島、壇䞊から降りお来る

戞陰、独癜りワッたずい先生が 降りお来る䜕だ䜕だ⁈䞀䜓俺はどうすればいいんだ⁈

䞉島おいマティヌニ

䞉島が袖に呌び掛けるず、男がマティヌニを持っお来る。䞉島はそれを取る。そしお男に小さく囁く

䞉島有難う

男、䞉島の隣りに控える

戞陰 

䞉島戞陰ずやら

戞陰はいでも先生䜕で俺の名前を知っおいるんですか⁈

䞉島、じっず戞陰を芋る

䞉島おいマティヌニだもう぀こい぀に振舞う

男、䞋がる

䞉島䜕でお前の名を知っおるかだず⁈お前、俺を誰だず思っおる⁈䜜家が自分の䜜品の登堎人物を知らぬなど、お前、それじゃあたるで銬鹿じゃないか‌

ハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッ

戞陰䜜品ですかえっ⁈䞀䜓どういう事ですか⁈

䞉島お前はゞョヌクも刀らんのか⁈ハッハッ、たあいい。

男、マティヌニを持っお来る

䞉島お前、物を曞いおるらしいじゃないか

男、マティヌニを持っお来る。戞陰、それをおずおずず取る

戞陰曞いおるなんお 䜕も答えられない

䞉島はっきりしろ俺は蚊ねおるんだお前に䜕をもじもじしおる⁈お前は果たしお、男なのか

ハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッ

戞陰か 曞いおたす

䞉島しかし玠人の手合いだな、お前の物は䜕だ、文孊に぀いおの勉匷が党く足らんな

戞陰す、すみたせん 

䞉島お前、プラむドはあるのか※䞉島、深く疑う様に戞陰を芋る

戞陰すみたせん 

䞉島 もういい。お前はもう䜕も蚀うな。話し掛けおも無駄だずいう事がよく刀ったぞ。

䞉島、舞台䞊を圷埚う様に歩く

䞉島おい、戞陰ずやら。お前、この者達がどう芋える

戞陰、独癜先生はさっき、もう䜕も蚀うなっお仰ったから、䜕も蚀わない方がいいのか 

䞉島、クルッず戞陰の方を向く

䞉島戞陰お前に蚊いおいるんだぞ

䞉島、ニダリず笑う

戞陰しかし先生、さっきからたるで これは珟実ですか皆、マネキンみたいに固たっお動かない。時間が止たっおる

䞉島戞陰よ、俺の質問に答えろ。たず䜕より、俺の質問に答えろ。戞陰よ、お前、どう思う

戞陰、独癜䜕をどう答えろっおんだ、ちくしょう

戞陰先生、俺は本圓はあなたの䜜品など、党くたずもに読んでないんだ

䞉島、静止する

ハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッ

䞉島、哄笑

䞉島そんな事十二分に承知だハッハッハッさあ、戞陰よ、いい加枛に質問に答えろ。マティヌニが足りないかおい

䞉島、男を呌ぶ

戞陰これはただ間に合っおたす飲んでたせん

䞉島だったらずっずず飲み干せさっきの若僧じゃあるたいし

戞陰、独癜党く先生の、いや䞉島のペヌスだ、腹立だしい䜕か䞀矢報いりたくなっお来た

䞉島その“䞀矢”、早く撃お

戞陰、呆然

䞉島俺は、埅っおるんだぞその“䞀矢”をいいか、戞陰

䞉島、再び舞台䞊を歩き回る

䞉島ここにいる䞀䜓䜕人が文孊の事を真剣に考えおる

戞陰そ それは、皆 

䞉島銬鹿野郎䜕故、自分を欺く⁈

戞陰自分を 欺く

䞉島誰䞀人、いやしない

戞陰は

䞉島戞陰よ、小説を曞くずは、孀独な生業だなぁ

䞉島、固たった男の顎を觊れる

戞陰先生

䞉島この間、お前の䜜物を読んだぞ

戞陰私の䜜品をですか⁈

䞉島ああ

戞陰、絶句

䞉島嬉しいか

戞陰それはもう‌

䞉島、戞陰の方を向き埮笑む

䞉島そうか 

戞陰、独癜䜕だっおんだ⁈この倉なマティヌニのせいなのか酔いも異垞だぞ先生が俺の本を読んだそんな事あり埗る蚳ないじゃないか先生の戯蚀だ幻惑されるなしかし、怒鳎り声の狭間にバニラのアむスみたいな甘い笑顔を芋せる 䞀䜓どういう人なんだ、この“䞉島由玀倫”ずいう人は俺はこの人の小説をろくすっぜ読んでいない。そんな俺が䜕故、この䞉島の幜玄に匕き蟌たれおいるんだろうこれは 四の五の考えない方がいい。チッキショヌ

戞陰、マティヌニを䞀気に飲み干す

䞉島いい飲みっぷりだおいもう䞀぀持っお来い

戞陰先生 勘匁しお䞋さい狌狜

䞉島䜕俺の酒が飲めないっおのかニダッず

戞陰 頂きたす

䞉島アッハッハッハッハッハッハッハッハッ

男、たず䞉島にマティヌニを。次、戞陰に

䞉島ハッハッハッ、なあ戞陰よマティヌニのグラスに口を぀け

戞陰はっはい

䞉島芋おみろさっきの若僧を

戞陰はぁ

䞉島、固たった若者に近づき

䞉島おいこれは、誰かに䌌おるず思わないか⁈

戞陰誰か誰か 

戞陰、独癜たずいな、䜕か答えねば たた先生に䞍快な思いをさせおしたう。しかし、誰か誰か 寺山修叞いや 野坂昭劂違うな 誰だろう䞞山明宏うヌん 

䞉島ハッハ、考えるな、戞陰よ。そんなに考えるな。パッず思った事蚀えばいいんだ

䞉島、固たった若者の顔を小さく右、巊ず動かす

戞陰ハハハ、先生駄目です降参です

戞陰、独癜䜕だろう俺。初めお笑えたぞ 

䞉島、戞陰を芋るそしお

䞉島ハッハッハッハッハッハッハッハッハッ

䞉島、グラスを傍らのテヌブルに眮き、煙草を出す

䞉島戞陰よ、正解はな

䞉島、煙草に火を点ける

䞉島これは俺だ

戞陰は⁈

䞉島、フフフず含み笑い

䞉島刀らん奎だこれは俺だず蚀っおいる

ハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッ

戞陰先生、仰っおいる意味が 

䞉島銬鹿野郎刀らん奎だこれは俺だず蚀っおいるならばこれは俺なんだ䜕故それが刀らない⁈口から煙を吐きながら

戞陰はあ

戞陰、独癜たるっきり解らん。どういう意味だしかし これが、“倧䜜家”先生なのかもな 䜕だか出鱈目で奇劙で、そしお 

戞陰先生出鱈目だそしお奇劙だそしお 

するず䞉島、口角を右䞊に少し䞊げおニダリ。目も右䞊に

戞陰、独癜えっお茶目

䞉島出鱈目で奇劙で、それで䜕だ⁈

戞陰それで それで 

䞉島本圓に優柔䞍断な奎だ男らしさのぞったくれもないないいか‌

戞陰はい

䞉島思った事ははっきり蚀えその時、その堎ではっきりずなさもなければ、時を逞しおしたう。そしお、それが本圓に奜機かどうかなんお考えるなそれは埌から考えろ倱った奜機は二床ず、二床ずは 

䞉島、衚情から笑みを倱くし

䞉島戞陰よ いいか。取った機䌚が悪い物だったずしよう。しかし、お前が悪い物を取った、お前は嫌な思いをし、そしおそれはお前にずっお凡ゆる立堎を危うくさせる物かも知れん、だがな、戞陰よ、お前はそれを、凡ゆる䞍運ず䞍況を匟き返せ。闘いずはそういう物だ

戞陰、独癜小説っお闘いなのかな

䞉島䜕か蚀ったか⁈はっきり蚀え‌

戞陰いえ、先生果たしお小説ずは闘い喧嘩なんですか声を絞り出す様に

䞉島、あらぬ方を芋る

䞉島戞陰よ、聞きたいか

戞陰䜕をですか

䞉島この、鈍臭い牛みたいな奎め聞きたいのか聞きたくないのか

戞陰、独癜䜕お我が儘なんだろう䜕か、五歳ぐらいの男の子ず喋っおるみたいだ

戞陰聞きたいです

䞉島フフフ、乗っけから玠盎になれ。玠盎になっおろお前はこの俺ず話しおるんだぞいいか

戞陰はい

戞陰、独癜五歳児に“先生”か これはこれでコメディ、喜劇だな 

䞉島物を曞くのが闘いかどうかなんお蚊いたなこの俺に向かっお

戞陰はい

䞉島ではそれが闘いでなかったずせば、それはどうなる

戞陰 

䞉島戞陰よ、お前は迷っおいる。だからいかんのだ倱った俺の 

䞉島、蚀葉が詰たる

戞陰、独癜ん

その時、䞉島付きの男が少し䞉島の背に手を

䞉島觊るな倧䞈倫だお前はもう䞀䞁マティヌニを持っお来い

䞉島付きの男、驚きパッず手を䞉島から離しお袖ぞ

䞉島戞陰、お前、䞀䜓俺に䜕が聞きたい

戞陰、独癜ンな事蚀ったっお、俺はあんたが䜕か蚀うのを埅っおんだよ 

戞陰先生。少し䌑たれた方が 

䞉島銬鹿野郎‌

戞陰、黙る

䞉島䌑むだずお前はどこたでトりヘンボクなんだ䌑むこの俺に察しお二床ずその蚀葉を蚀うな絶察だぞ吐き気がする䌑む䌑むだず

BGM軍靎の音。戞陰にも聞こえる。戞陰、狌狜しお蟺りを芋回す

䞉島いかんたただたた俺を呌びやがる党く持っおいかんそう、俺はここに居おはならんのだ 

戞陰先生、これは䞀䜓

䞉島、仰倩しお戞陰を芋る

䞉島 お前にも聞こえるのか

戞陰いやぁ 絶句

䞉島初めおだ貎様、䞀䜓⁈

戞陰えっ⁈えっ⁈困惑

BGM飛行機の音、銃の音等付加

䞉島早くマティヌニを持っお来い

男、急いで䞉島にマティヌニを枡す。それを䞉島は䞡手で持っお飲み干す。BGM消音

䞉島いかんな、フヌッしかし戞陰、少し貎様の正䜓が刀ったぞ これは時間が足らんな。だが

䞉島、額を腕で拭う

戞陰先生もうやめにしようや䜕だかよく刀らねぇや叫ぶ様に

䞉島埅぀んだ戞陰聞け俺はお前に䌝えねばならん様だ

戞陰えっ䜕を 

䞉島時間に䜙裕を芋過ぎだこれは思った皋時間がないしかし戞陰よ、俺に聞きたい事があるず蚀ったな

戞陰、独癜あったっけか⁈もうよく刀らん

䞉島曞き物が闘いかず。たずな、戞陰よ。これは闘いだ。もう埌は四の五の蚀うな。俺の蚀った事を黙っお聞け。そしおこれから蚀う事にも。戞陰、しかしお前、その本性、ク゜ッ俺ずした事がだがたあ これは 俺ずしおはこれは奜機なのかも知れん

戞陰、独癜奜機

䞉島、少し平静に戻る

䞉島だから戞陰よ、闘うんだ。䜕も蚀うな。これは闘いなのだから、お前は闘うんだ。闘いずしお認知出来なければ、今からそれを闘いず認めろ。逆らったり意芋する事は蚱さん。お前、さっき蚀ったじゃないか俺に䞀矢報いたい、ず。この俺に向かっお矢を攟぀んだ。俺を射止めろ。殺す気でな。そう、殺す気で攟お俺はお前に殺されるのを埅っおいるぞ

戞陰先生よう そうじゃねえだろうよ

䞉島戞陰、黙れ いえ、䜕も蚀わないで䞋さい

戞陰えっ⁈先生 

戞陰独癜䜕か先生、蟛そうだぞ 

䞉島少し、静かさが必芁だな マティヌニのグラスに口を圓おる

・・・・・

䞉島しかし戞陰、そんなに時間もない。いえ、時間もないのです。いや違う戞陰さん いやいやいや違う違うちくしょう額を手で芆う

戞陰先生 

䞉島兎角、時間がない戞陰よいいか

戞陰はい

戞陰独癜先生は䜕か、俺に䌝えようずなさっおるこんな俺なんかに

䞉島これを芋ろ芋るがいい

䞉島、若者の方ぞ近寄る

䞉島いいか、戞陰こい぀は“俺”なんだ刀るか⁈“俺”なんだこの島囜に䜕人も䜕人も蔓延っおる“俺”なんだ

戞陰 

䞉島䜕人もの“俺”が“俺”を远いかけお、“俺”の灯り目指しお這い回っおやがる、この囜にそれをお前どんなに胞のむか぀くものか刀るか⁈いいか戞陰俺が䞀䜓どれ皋の者かお前は䜕故か違う様だ。それがさっき、ふず俺に感じられた 貎様は䞀䜓 いや恐らくそうだろう。しかし、䜕ずいう悪倢だ俺はそれに苛たされお 倜ず昌ず眠れやしない戞陰さん いや戞陰俺は“俺”に苛たせられおるそれが倧矀ず、俺の幻圱目掛けお近寄っお来やがる四六時䞭だぞそしお、いいか、戞陰さんん 戞陰そしお俺は、こい぀らを 䞀人䞀人を、蚈り知れない皋愛しおいるんだ

戞陰、絶句

䞉島その愛を断おば良い、俺は片方の耳からその忠告を聞く。その䞀方で、俺は湧き䞊がるこい぀らぞの愛を止める事が出来んのだ この背反をお前、どう解釈する⁈俺の心は、いっ぀もこうなんだ䞀぀の方向に進もうずする意思が生たれた時、党くその正反察ぞ向かおうずする力匷い意思が、党く正反察の方に突っ走っお行きやがるたるで銃匟ず銃匟が真逆に撃たれお空を切る様にな俺の心は裂けそうになるんだ俺は俺をどう統䞀したらいいか刀らなくなるんだこれはきっず祖母様のせいなんだいや 祖母様 

䞉島、目を手で抌さえる

䞉島どうしお俺は 俺ず同じ時、同じ囜家の詊緎を共にした“俺”、俺達は 皆んな俺を眮いお行っおしたった 残された俺は、䞀生、卑怯者だ。卑怯者なんだだのに戞陰さん

戞陰はい

䞉島私は私の次のこの囜に生を受けた次の䞖代䞖代に党おの“心”を捧げお、繋がなければならないず私よりほんの少し前に生を受けただけで、皆んな滅んだ 皆んなの“心”を、俺は背負っおおい戞陰俺は背負っおいるんだなたじっかなもんじゃないそれを背負っおるんだそしお、こい぀にそれをこの子達に教えおあげなければならない、ならないのです 

䞉島、穏やかな笑みを讃えお若者の頭を優しく撫でる。するず突劂憎しみを衚情に出しお、手に持぀グラスを逆さたに、マティヌニを若者の頭の䞊からかける

䞉島おい。拭いおおけ

男、舞台に珟れお若者の頭や衣服を拭く。䞉島、舞台䞊を移動

䞉島おい戞陰よ芋おみろ

戞陰はい

䞉島お前、刀るよなぁ、これが

戞陰勿論。石原先生で

䞉島先生

䞉島、プッず吹き出しお手で口を芆う

戞陰な、䜕か

䞉島いやいい、いい。気にするな。しかしな、戞陰さん いや戞陰よこの石原先生、芋おみるがいい。

戞陰はあ

䞉島䜕を気の抜けた返事をしおる党く、この腑抜けが䞀々喝を入れられねば、真っ圓に思う所も述べられないのか

戞陰、独癜䞀々喝も䜕も、蚀っおる意味が靄で芆われお、䜕答えおいいんだか でも、先生の曞き物っおこうだよなぁ

戞陰はすみたせんでしたはい芋たした

䞉島芋たしたお前、䞀䜓どんな目をしおいるそんな事を倧声出しお答えろずは䞀蚀も、いいか䞀っ蚀も蚀っおないぞお前達から芋お、これは先生だず蚀う。それはそう、先生だよなぁハッハッハッ

䞉島、固たった石原慎倪郎の肩に銎れ銎れしく腕を回す

戞陰、独癜嫌な予感がする

䞉島しかし䜕ずも芋映えの良い奎だそう思うだろうそしおその䜜物。海や青幎、そしお女 成功に挫折。そう 

䞉島、パチッず指を鳎らす。男、袖からマティヌニを運んで来る。䞉島、男は芋ずにたじたじず石原を芋ながらマティヌニを取り、飲む

䞉島戞陰よ、お前にずっお、これは䜕だ

戞陰、独癜始たった 䜕を蚀っおも喝入れられるんだろう

戞陰はそれは、その石原先生ずいうお方は、戊埌日本を代衚する 

䞉島銬鹿野郎‌

戞陰、絶句

䞉島貎様は俺を䞀䜓どこたで小銬鹿にする぀もりだお前にずっおの石原だ戊埌の腑抜けお斜めに萎びた列島の事など誰も問うおないぞお前個人にずっおの石原だそしおお前らにずっおの石原だ

戞陰、独癜蚀っおる事が滅茶苊茶だくそっ

戞陰は、はい石原先生は 石原先生は その、私達にずっおの目暙でありたす石原先生の様になりたいず石原先生の様に、文孊で成功したいずそしお、䞉島先生の様に 

戞陰、口を手で芆う

䞉島、口角を急角床に右䞊に䞊げる

䞉島枇望か いいな

䞉島、俯き口を尖らせる

戞陰せ、先生

しばらく沈黙。するず、䞉島、足で䞀回地を蹎る。そしお、もう䞀回、もう䞀回、それが激しくなる

䞉島チッ チッ 畜生畜生畜生ヌ‌

戞陰先生萜ち着いお䞋さい

戞陰、䞉島に近寄り䜓を抑える

䞉島畜生ヌ‌畜生ヌ‌攟せ攟せお前に䜕が刀る⁈䜕が刀るんだ‌畜生この、このう やいオタンコナスこのスケコマシ青っ癜い茄子ヒョロヒョロの唐倉朚朚偶の坊このうこのう

䞉島、石原の胞ぐらを掎み眵倒する。その目からは涙が出お、口もダラリず半開き

戞陰やめお䞋さい先生おいお前も手䌝えよ

戞陰、袖に向かっお呌ぶが男は来ない

䞉島お前、矚たしいっおこい぀がこんな奎が矚たしいそんなの、お前らなんかよりももっずもっず、僕の方が矚たしく思っおるんだもん

戞陰えっ

䞉島芋おみろこい぀のこの顔を衚情をこのう䜕お、䜕お良い顔付をしおるんだ、䜕お良い䜓躯をしおるんだ、䜕お颯爜ずした青幎らしい雰囲気を纏っおいるんだ、君は

䞉島、尚も石原を揺さぶる

戞陰 

䞉島芋おみろ芋おみろず蚀うんだこの野郎海ずいう海に愛されおなぁ空ずいう空に愛されおなぁ人ずいう人に愛されおなぁ僕なんか僕なんかなぁ

䞉島、石原の胞ぐらを掎んで揺さぶる

戞陰先生もうやめなさいよ

䞉島うるさいうるさいお前なんかに䜕が刀るんだこんなに容姿に恵たれおなぁ先茩達の寵愛を䞀身に受けおなぁ囜民の支持を埗おなぁこの野郎この野郎

䞉島、石原を蹎る

戞陰やめろっおんだおら

戞陰、䞉島を石原から匕き離す。䞉島、息を切る

ハ ハハハ、ハハハハハハ、ハハハハハハ‌
䞉島の哄笑

そしお、手に持぀マティヌニを石原に向かっおビシャッず掛ける

戞陰やめろっおんだ䞉島さんあんた、子䟛か⁈

戞陰、グラスを䞉島から取り䞊げる

䞉島䜕だず貎様はこの俺に向かっおこの䞉文小説家がいいか、貎様などこの文壇に斌いお䜕の䟡倀もない曞くだけ無駄だやめちたえやめちたえ小説家だっお聞いお呆れるアッハッハッハッハッハッ

戞陰、歯を噛み締める

䞉島ほらどうだ悔しいか悔しいだろハッハッハックズカスもう䞀床蚀っおやる貎様なんぞに䜕の䟡倀もないんだ死んじたえ

戞陰 すみたせん

するず䞉島、今床は戞陰の胞ぐらを掎んだ。戞陰、ただ俯く

䞉島銬鹿野郎銬鹿野郎䜕で謝っおるんだ⁈この銬鹿野郎銬鹿野郎

䞉島、目に涙を湛える。そしお戞陰を突き攟す

䞉島戞陰さんいや、戞陰よ貎様は本圓の朚偶の坊だ䜕だっお、そう間抜けなんだいいか貎様は 

その時戞陰、ハッず顔を䞊げる

戞陰䞉島さんいや 䞉島先生俺は いや私は、芋届けたした芋届けたしたよ

戞陰、䞡手の拳を握り締める

戞陰あなたは、芋せおくれたんだそうそうなんだ倧袈裟で芝居っ臭くお䜕だか刀らなかった、ですが、きっずそうなんだ私は芋届けたしたよだっお 私は そんなに あなたの石原先生に、今し方なさった様な 私は そこたで あなたが石原先生に察しお攟った皋の憎しみを 持ち合わせた経隓が党くありたせんでしたそうです私は人に察しお、かの様に 事皋 

戞陰、声を现める。するず䞉島、涙混じりだが掗われた様な笑顔になる

戞陰先生あれ怒らないんですか

戞陰、䞉島の笑顔を芋おキョトンず

䞉島戞陰よ、そうだ。俺を芋習え。俺を芋お孊べ。俺の蚀った通りにしろ。貎様、少し顔が晎れたな。

戞陰えっ顔を摩る

䞉島少し俺ずいう人間が刀ったかフフフ、たあいい。䞉島、少し目の涙を指で拭う戞陰よ、認めろ。いいか

䞉島、再び固たった石原に察する

䞉島石原君しかし君ず俺だ他ならぬ、君ず俺。それは 蚈り知れたい、戞陰よ、なぁ、そうだろう䜕が文壇の寵児だ、銬鹿銬鹿しい。そうじゃない、そうじゃないんだ。俺ずこい぀が埡手手繋いで文壇に掛かる虹の橋を枡る絵でも欲しいのかお前らはそんな絵は違う、違うだろう戞陰よ、認めろ。俺がこい぀に吐き捚おた物ず同じ感情を、こい぀ いや。石原君だっお持っおる、そう、持っおるんだ。そうだよ、戞陰さん。そうそう。さっきあなたが認めた様に、いや戞陰お前の目に焌き付けおやった様に石原こい぀はこい぀で、心の奥底で煮えたぎる様な俺ぞの憎しみを おい戞陰刀るか⁈人は自分の持っおる人の矚む䟡倀ずいう物に自分では気付かない、気付かない、気付かない内に、人から、殺したい、ず思われる。

戞陰そんな 

䞉島戞陰、黙っお認めろ。そしお疑うな、俺の蚀っおいる事を。石原は俺を憎む。憎んでいる。それは俺にだっお蚈り知れない皋だ。䜕故、そんな無音空間䞊の殺し合いをしなければならないのか、俺にだっお理解に苊しむ。それでいお、俺もこい぀を殺したい、殺したい皋憎んでいる。そうやっお俺達は、内面での果し合いを行い、い぀の間にか、党く同じ様な立堎に立っお、そしお 理解し埗ないだろう、貎様、それでいお、俺達は俺達だけの、友情がある 

戞陰 

䞉島今俺がこい぀にやった様な呪詛を、きっず石原君 いやこい぀も人知れず、倜な倜な、やっおいる事だろう。この、氎の滎るむむ男が。

䞉島、石原の顎を掎み揺さぶっお乱暎に攟す

䞉島おい、戞陰。付いお来い。

䞉島、顎でしゃくる

戞陰はい

戞陰、独癜次は䞀䜓どんな奇行をおっ始めるんだ

䞉島䜕か蚀ったか

戞陰いえいえ䜕も

䞉島、戞陰を芋る。しばらく沈黙

䞉島戞陰

戞陰はい

䞉島貎様も飲め

䞉島、指を鳎らしお袖の男に合図

戞陰はい了解臎したした

戞陰、独癜党く同じ酒ばっかり よっぜどマティヌニが奜きなんだなぁ そろそろ口盎しに梅を朰した焌酎の氎割りでも飲みたい

䞉島きっさた、ブツブツブツブツず 䜕だ蚀いたい事があれば蚀えよ

䞉島、怒らず。寧ろニダニダず

戞陰いえいえずんでも埡座いたせんええ、頂かせお貰いたす、はい私も、はい、酒は奜きなんで

戞陰、倧袈裟に笑顔を䜜る

䞉島 たあ、いい

男、䞉島ず戞陰にマティヌニを運ぶ

䞉島戞陰よ。お前、奜きな䜜家は奜きな小説は

䞉島、歩き出す

戞陰えええっず 

䞉島戞陰、たどろっこしい態床は蚱さん。即答しろ。

䞉島、煙草の箱を出す

戞陰えええっず はい芥川の『矅生門』です

䞉島 芥川

䞉島、手を埌ろに組みほくそ笑む

戞陰 

䞉島ふヌん

䞉島、再び歩き出す。袖から男、急いで石原に近づいお濡れた顔、頭、䞊着を拭く。䞉島、止たる

䞉島戞陰よ、これを芋ろ

戞陰はい

䞉島誰か刀るよな

戞陰そ、それはもう 川端先生で 

戞陰、独癜いやぁ こんな倧先生をこんなに間近で芋るなんお 

䞉島そうか 

䞉島、固たった川端康成の和服の䞊着を敎える様に指を滑らす

䞉島貎様、先生ず拝謁した事はあるか

戞陰いえいえいえないですないです党く雲の䞊の人で 

䞉島䜕だでは俺は䜕なんだ雲の䞋の人なのか貎様ず今、こうしお話しおいる俺は

䞉島、ニダッず

戞陰そ、それは 

䞉島ふん、そうか。俺は雲の䞋なんだなそれが貎様の答えなんだな刀った。よく感埗しおおく

䞉島、煙草を吞う

戞陰先生それは違いたすこちらが雲の䞊ならば、貎方は、え、え、倩䞊の 

䞉島うるさい黙れ

戞陰 

䞉島フッフッフ 

䞉島、プカァず煙を吐き、フヌッず癜い息を川端の顔に吹き掛ける。戞陰、絶句

䞉島フッフッフ ハッハッハッアヌッハッハッハ

䞉島、しばらく笑い続ける

䞉島ハッハッハッおかしな話だ本圓にな こい぀が えっこい぀が 俺の垫匠だっお銬鹿銬鹿しい

䞉島、煙草を匟く

䞉島戞陰よ、お前、芥川が奜きだっお蚀ったな。どうもこい぀は芥川ずは昵懇だったそうだぞ

戞陰それは 

䞉島耳が凝結する皋聞かされたぞ。こい぀から

戞陰 

䞉島フッフッフ アヌッハッハッハ

戞陰、嫌な顔をする

戞陰、独癜䜕かもうどうでもよくなっお来た。小説曞くのなんおやめちたおうかな

䞉島戞陰戞陰聞けよおい戞陰䞖間では俺はこい぀の匟子、ずいう事になっおいるだろう

戞陰はい

䞉島ハッハッハッそうだ、戞陰よ俺がこい぀に口きいおやろうかお前の䞀文の倀打ちもない駄文の小説を宣䌝しおくれ、ず

戞陰ちょっずちょっず先生それはずんでもない䜕だっおそんなそりゃあ、そうなっおくれたら 

䞉島ハッハッハッなあ戞陰嬉しいかそれじゃあ頌んでおいおやる喜べ

戞陰ちょっず埅っおくれよ先生そんなに揶揄わないで頂きたい

䞉島ハッハッハッ冗談に決たっおいるだろう⁈信じるなタワケ倧䜓䜕で俺がお前のゎミ屑小説を斡旋しおやらねばならんそしお䜕で川端先生 いや、こい぀がそんな掚薊文を匕き受けねばならないお前のゎミ屑をだぞハッハッしかしそれも䞀興かもな䞖間に晒したら倧笑いが取れるぞ出鱈目の屑文の、物を曞く事の基本などたるで刀っおない痎れ者の文に、こい぀が、掚薊文

アヌッハッハッハッハッハッハッハッハッハッ‌

しかしな、戞陰よ聞けこい぀の掚薊文、そりゃあ神業だぞたるで熟緎ペテン垫の匠だないけしゃあしゃあず流暢か぀栌調高い矎文䜓でお前のゎミ屑を色付けおくれるぞハッハッハッ腹が痛いハッハッハッ

戞陰 

䞉島ハッハッハッ 実に笑わせおくれるな戞陰よ貎様は面癜いぞハッハッハッしかしな俺ずこい぀、どうだどう思うどう考えおいる

䞉島、煙草に火を点ける

戞陰日本文孊史䞊、最も矎しい垫匟の圢の䞀぀かず

䞉島、煙草を戞陰に投げ付ける

䞉島きっさたは 䜕だこい぀の真䌌でもしお吐いた蚀葉か今のは撀回しろ今すぐに

戞陰撀回したす

䞉島こい぀ず俺が日本文孊史䞊最も矎しい垫匟の圢こい぀ず俺が

䞉島、固たった川端康成を睚み付ける

䞉島先生聞きたしたかこうですよ文孊語っお我こそは文孊なり、ず厚顔無恥にも宣う有象無象は抌し䞊べおこうですよ聞きたしたか先生我々の間に、矎しい垫匟愛よくも よくもそんな 腐った宣䌝だ商業䞻矩だねえ先生我々の曞き物を䞊手く停装しお、いや䞊手く䜕お蚀葉を俺は吐いちたったんだねえ先生蚱しお䞋さいね公嚁は、ずっおも汚い蚀葉を蚀っおしたいたしたごめんなさい蚱しお䞋さい先生

戞陰 

䞉島先生ねえ、先生聞いお䞋さい公嚁はね、今、ずっおも良い物語を思い付いおね、䜜っおるの䜜り終わったらね、絶察に先生読んで䞋さいね僕は䜕よりもたず先生の所に持っお行くからね玄束だよ先生ず僕のおい戞陰

戞陰はい

䞉島お前じゃないおい

䞉島、指を鳎らす。男、マティヌニを

䞉島戞陰呌んでいるんだぞ返事をしろ

戞陰、独癜及び台詞党く倩井ず廊䞋がひっくり返っちたっおるよ はヌい

䞉島貎様、文は読めるよな先生の、いや、こい぀の䜜物を読んだ事はあるのか

戞陰はいありたす

䞉島䜕をだ

戞陰はい『䌊豆の螊り子』などを

䞉島銬鹿野郎それしか読んでないのか⁈

戞陰独癜及び台詞え、ええっず 思い付かん、はい読んでたせん泣きそうだぜ 

䞉島そうかそうなのかフフフ、本圓にこの屑野郎め。こい぀の䜜物をそれしか読んでないのに僕は小説家です、だずハッハッハッ実に面癜い奎だぞ戞陰

戞陰、独癜及び台詞はいありがずうございたす っおでも䜕か呌吞掎めお来たな 

䞉島぀たりは虚構だ

戞陰 

䞉島戞陰よ、貎様耳はあるのか

戞陰いえ、虚構ずは぀たり、先生ず 

䞉島だが矎しい䜜り物だよなぁ実によく捉えたものだ。こんな売り文句を。なあ、戞陰。貎様はそんな矎しい垫匟がこの䞖にあった所で、貎様らには䜕の関わりもないよなぁ。そしお、そんな垫匟愛があった所で、俺ずこい぀の䜜物に䜕があるっお䜕にもありゃしない。いや しかしたあ、金にはなるか。䜕事も金だからなぁ、戞陰よ

戞陰はい

䞉島貎様、金ずは䜕だ

戞陰は 生掻の糧で

䞉島、目を现めお戞陰を芋る

䞉島貧しいんだな 

戞陰はい

䞉島しかし貎様、戞陰よ、聞けよ、䜕か䞀時、矚たしく思うぞ

戞陰は

䞉島、クルッず背を向けお

䞉島戞陰芋ろこの売文家の倧家を貎様らが熱望しお止たない、この島の最も頂点にいるであろう、この狂蚀垫を

戞陰 

䞉島戞陰、貎様には芋えないのかこの暡造品の圫像が

戞陰、独癜及び台詞䜕が暡造品だ っお、はい芋えたす しかし、そんなに矚たしがらせたいのかな

䞉島戞陰よ、貎様、こんなのになりたいか

戞陰いいえなりたくありたせん

戞陰、わざずらしく音を立おお盎立。䞉島、䞍思議がった面持ち

䞉島戞陰、貎様、刀っおいるじゃないか

戞陰はい有難う埡座いたす

䞉島 ふヌん うん たあいい。いいか、戞陰

戞陰はい

䞉島そう そうだなぁ この人に初めおお䌚いした、その時だな 思い出すな、貎様を芋おるず 戞陰、貎様こんなのになりたくないっお蚀ったな

戞陰はい

䞉島 本圓か

戞陰はっ実は嘘です

䞉島銬鹿野郎アッハッハッハ

䞉島、哄笑。若干穏やかな

䞉島戞陰よ、そう 俺はな、先生にな、玠晎らしい文を頂いた事があるんだぞこの公嚁の小説にな

戞陰はい

䞉島それから俺はな、初春の鶯だった。陜気暖かく、青い空に攟぀様に、歌う様に、物を曞くずいう事に粟進した

戞陰はい

䞉島そしお俺も䞀角の者になっおな、䜕ず先生の物に察しおの文を莈れる迄になった

戞陰 

䞉島しかしな、戞陰よ。䞊んだ時から、そう、先生ず立ち䜍眮が䞊んだ時から、始たっおしたった。いやそうかもしかしたら、俺ずいう存圚自䜓が先生の芋える範疇に入った時からもう 

䞉島、銖を捻り歩き出す

䞉島たあいい。戞陰よ、ざっくばらんにな俺が先生の為に曞いた文章ずいうのは頭っから党お停造品だ

戞陰はい

䞉島そしお 先生が公嚁に曞き送っおくれた党おは停造品なのだ

戞陰 

䞉島戞陰、刀っおいる様だな

䞉島、動くのを止める

戞陰結局、刀り合えない先生ず石原先生の様に。そしお どこか地獄の底の様な赀い地䞋では、刀り合っお 

䞉島、顎に芪指ず人差し指を圓おる

䞉島戞陰よ、続けろ

戞陰えっ

䞉島続けろず蚀うんだ

戞陰぀、぀、続けるしかし、これで党郚です

䞉島党郚いやある筈だ絞り出せ

戞陰う、う、぀たりですね先生はそうやっお、人を憎みながら愛しおいるんだ憎めば憎む皋、その人を愛しおしたう、そんな性分なんです

䞉島ほう

䞉島、ニダッず笑う

戞陰そ、そ、そうなんだ私はその はっきり蚀っおあんたの小説が嫌いなんだ川端だっおそうなんだ感芚が受け぀かないから、読めないんだけれど、先生は違うもしかしお川端先生も お互いの読み物を、お互いの容積で枬っお、そしおその技巧、文の䞭に配されたお互いしか芋出せない様な埮小な点たで読み取っお、そしお、互いを軜蔑し合っおるんだだから、本圓に理解しおいるのは 自分の䜜品の本質を刀っおいるのは 先生あんた達垫匟だけなんだろう我々䞀般の人間はきっずそこたであんた方の䜜品の本質を理解出来ないよけれど、その奥深さや厚い䞋地がある事は、感じられるんだ、䞍思議ず。そんなあんた方に 私達は きっず 憧れおいるんだ だから、あんた達は矎しいんだ。絵になる垫匟なんだ。憎み合う䜕を川端䜜品の䞀番の理解者であるあなたが

䞉島フン

䞉島、少し川端から離れる

䞉島戞陰よ、お前、評論文でもやっおみるか

戞陰えっ

䞉島冗談だ冗談貎様なんぞに評論など しかしな 貎様にしおはいい線行っおいるな だが、根本が違うな そこが浅はかだず蚀うんだ。いいか憎しみ、ずいうのはだな、決しお合い入れないものだ。それぐらいは貎様でも理解出来るよな故に、そこに愛などずいう抂念は存圚し埗ないのだ。貎様はやはり䜎俗な凡人だ。高床な抂念を理解するにほずほず足らん。愛を信じるなどずいう茩がいるから、デコレヌトした愛の圢をした玛い物を小説だず錯芚するんだ。いいか戞陰よ

䞉島、マティヌニのグラスを川端の顔に軜く投げる

戞陰わっ䜕お事を

戞陰、血盞を倉えお川端に近づこうずする

䞉島動くな戞陰俺は今、貎様ず話しおいる動くなそしお俺の話を聞け

戞陰、止たる。同時に袖から男、飛んで来お川端を拭きに来る

䞉島戞陰よ、憎め。俺を憎め。川端倧先生ならば今埌は、倧先生ず倧局な埡冠付いた奎を憎め今埌ないいか、これは呜什だぞ埓え、戞陰。それに逆らったら蚱さん

戞陰、独癜及び台詞䜕を䞖迷蚀を ああ 倩䞋の川端先生に酒匕っ掛けちゃったよ 信じられねぇな っお、はい刀りたした今埌、人ずいう人を憎みたす 返事しずかないずたた怒鳎られる

䞉島 いいんだ、ゆっくりでも。俺の蚀った事を蚀った通りにな

戞陰はあ キョトンず

䞉島確かに貎様の蚀った事、思った事、圓たらない点が無くもない。ただな、戞陰よ、俺はきっず本圓に、先生の事を憎んでいるんだろうな。そしお、先生にずっお誰よりも理解者であるずいう評、それは俺自身も自負しおいながら、やはり そしお先生もそれを芋抜いおいらっしゃる。俺はな、戞陰、鏡子の 

䞉島、ハッずしお口籠る

䞉島いかんなハッハッハッしかし戞陰よ、䜕だか楜しいなぁ

戞陰、独癜及び台詞そりゃあ 党く酔っ払っおんなちくしょう んでも はい楜しいです うん 楜しいかな 

䞉島再び川端に近づき、たた䞊着の襟等に指を滑らす。男、川端を拭き続ける

䞉島なあ 本圓に 川端康成 先生 僕は貎方に憧れおいた 時もあった 今はもう その感情が毛頭ありたせん だから 圌らの様な連䞭が 矚たしい ねぇ、先生 そうですよね 遠く、明るい灯台、倜半の海から芋える 矎しい 先生、私達はもう、灯台を芋る偎ではなく、灯台守ですもんね フフフ 憎む事ぐらい蚱しお欲しい 私達はもっず創䜜の源泉である“憧れ”、“憧れる”ずいう事を、奪われおしたいたしたもんね

戞陰 

䞉島さあ、戞陰よ、いよいよ時間が抌しお来た楜しいこんな束の間が終わろうずしおいる。もっずもっず話を続けおよい時間、句点を打たなくおも良い小説の様な、そんな物、そう 

䞉島、瞠目する

䞉島時に戞陰よ貎様、䞀䜓䜕者だ

戞陰えっ

䞉島自癜する時間を䞎えおやる。答えろ

戞陰えっえっ私はただの䞉文物曞きの戞陰杜倫ずいいたす

䞉島、溜め息を吐く

䞉島やはり自癜せんか。それずも 憑䟝しおいる事を気付かせない様に暗瀺が掛かっおいるのか刀らんが たあいい。おい、ディヌバダッタよ。正䜓を芋せろ

戞陰は

䞉島、䜎く戞陰を芋る

䞉島、独癜及び台詞甚心深い どうしたらこい぀の本性を暎けるのか おい、ディヌバダッタよう今なら倧䞈倫だろう早い所、本性を出せ。

戞陰 

䞉島、独癜及び台詞出んか たあおいそれず出んずは思ったが 俺の勘違いか いや確かにこい぀は 

戞陰あのう 先生

䞉島、独癜及び台詞 どうすれば出るうヌん しかし おい、戞陰よ

戞陰はい

䞉島貎様、芋えるよなぁ

戞陰は䜕がですか

䞉島おう、この止たった連䞭がだ

戞陰はい 

䞉島貎様は物を曞いおる、それは俺も知った。しかしな、お前、自分で曞いた物、芚えおいるのか

戞陰えっ

䞉島䜕でもいい、自分で曞いた物の筋を、喋っおみろ

戞陰、独癜及び台詞えっええっず 急いで答えねば そうですね、はい、䞻人公が絶望しお自殺する物なんか曞いおみたした

䞉島それはい぀

戞陰えっええっず 二十歳かそこらで

䞉島それは出版出来たのか

戞陰えっええ、䜕ずか自費で しかし売れ行きは無しの瀫でした

䞉島 戞陰、俺がこれから曞こうずしおいる物は䜕だ

戞陰、独癜及び台詞えっそれは確か ディ、ディ ん蚀えん䜕だおかしいな ディ、ディ、ん

䞉島、刮目

䞉島やはりおい出おこんかディヌバダッタ俺は今、貎様ず話したいのだ

戞陰んんどういう事ですか

䞉島うヌんここたでか時間もないな ク゜ッ少し呚遊し過ぎたなだがたあ いいだろう。お前が“お前”だずいう事は刀ったからな。ああ、戞陰、戞陰よ

戞陰はい

䞉島貎様はこの䌚に参加したのはどういう理由だ

戞陰それは 以前、先生ぞのむンタビュヌをしお 

䞉島、独癜及び台詞そうか、そうだったな。よくこの䌚に朜り蟌めたものだな。しかし、それはある者の䜜為だ。たあ、こんな事蚀っおも刀るたいが 運の良かった事は、良かったな。そしお 俺も若干、楜しかったぞ うむ、ディヌバダッタの䜜為によるものなのだろう こい぀を俺にけしかけお、䜕が真意だったのか 

戞陰、独癜及び台詞では ああ、そろそろ時間なんだな 終わりなんだ では 

䞉島この意気地の腐ったのがではではでは、ず。貎様、䜕か俺に察しおないのか

戞陰う、う 私も楜しかったです

䞉島、ニコッず

䞉島ではな 

䞉島、背を向ける

戞陰先生、それではもう 

䞉島んああ、そう そうだ

䞉島、振り返る

䞉島戞陰よ、貎様、このディヌバダッタの小説、今俺が構想しおいる物だが、やめだ。貎様が曞け

戞陰えっ

䞉島え、じゃない党く成長せん奎だ俺の呜什だ、埓え

戞陰えっずそれは、えっ

䞉島この俺の構想をそのたた貎様にくれおやる、ず蚀っおるんだ

戞陰は、はい刀りたしたヌ

戞陰、気を぀けをする

䞉島いいな、貎様。曞けよ。曞かない事は蚱さんからな聞けよ、戞陰。俺がやめるんだ、貎様、俺の、この䞉島由玀倫の䞀䜜をだぞ貎様が俺の文歎を倉えた様なものだ。責任を感じろ。いいか軜くない呜什だぞ心しお曞け

戞陰、独癜及び台詞は、はいヌ っお無理も䌑み䌑み蚀えっおんだ 䜕であんたのディヌバダッタを俺が曞かにゃあならんの 倧䜓俺はむンドの文化なんおサラサラ知らねぇんだよ どうやっお ナポレオンなら曞けるのにな 

䞉島おい

戞陰はいヌ

䞉島曞けよニダッず

戞陰はいヌ了解臎したしたヌ

䞉島フフフ

䞉島、戞陰に背を向ける。そしお歩き出す。戞陰、少し呆然。だがハッずしおすぐ近くにいた固たったカメラマンからカメラを取る

戞陰先生

䞉島ん䞉島、立ち止たり振り返る

バシャッ※シャッタヌ音

䞉島䜕だ䜕の真䌌だ

䞉島、フラッシュの光の眩さを手で䞀瞬隠す。戞陰、ゆっくりカメラを腹の䜍眮たで䞋ろす

戞陰先生、どうもこのよく刀らない䞀時を 䜕ずも説明しようがありたせんが 有難う埡座いたす しかし、いえ、その 

戞陰、恥ずかしげに頭を曞く

䞉島䜕だ戞陰君

戞陰その 私は党く貎方の呜什に埓う気はありたせん

䞉島䜕だず

戞陰それは粟神の自由だ。創䜜の自由だ。創䜜する事ぞの干枉だ。そしおあんたの呜什は俺の創䜜性を駄目にしおしたう 恐らく 先生あんたの呜什通り、そのテヌマの本を曞けば俺、いや私はもしかしお こんな霊性を垯びた䞍思議な空間にいるんだ、霊性が䌎っお俺、いや私は倧した䜜品を物せるかも知れたせん。ただ、曞きたせん絶察に

䞉島 戞陰を睚む

戞陰だから俺は䞀生䞉文物曞きでしょう。けど 

戞陰、カメラを胞たで䞊げる

戞陰俺は今、この䞍思議な瞬間を写真に撮りたしたそれは 先生このカメラマンは垰っおから、自分の撮った蚘憶のないネガを芋お䞍思議がるでしょうそれは この䞀瞬、出垭者の誰も知らない䞀瞬、先生俺は䞀生名䜜を曞けたせん曞けたせんが、この䞍可思議な写真は、埌䞖に残る事でしょう䜕せ“䞉島由玀倫”の写真なんですから私は䜜品を残せない、けれど私の今撮ったこの写真は 歎史に残る。䞉島由玀倫を綎る歎史曞に付される。それを思うず 私は小説以䞊の䜜品を今、䜜っおしたいたした

戞陰、カメラをカメラマンに戻す

䞉島 

䞉島、戞陰の偎たで戻り、気を぀けした戞陰の呚りをしげしげ芋ながら歩く

䞉島貎様、埮かにそれは 

䞉島、戞陰の目の前で立ち止たる

䞉島士道であるな 埮かにだが

䞉島、ニダッず笑う

䞉島では別れだ。もう䌚う事もない。こうした時を過ごす事も二床ずはない。貎様の事だ、二床ず俺のレセプションなどには参加しないだろう。元気でやれよ

䞉島、壇䞊ぞ向かっお歩き出す。戞陰、それを芋送る。壇䞊すぐ近くで䞉島、振り返る

䞉島戞陰さん

戞陰はい

䞉島小さな声で曞かなきゃ駄目だよ、ディヌバダッタ。僕の曞こうずしおた、䞍思議な 

䞉島、幌児の様に口を窄める。そしお講壇ぞ、ゆっくりず進み講壇に立぀

䞉島しかし、私はこの構想をです。䜜り䞊げる事に些かの疑問、これを感じたしお、実はもう断念しようずさえ考えおおりたす。ずいうのも、他にもっず進めねばならん䜜品がありたしお、どうやらこちらを進めねばならん状況に 消音

䞉島が挔説を始めた同時に舞台䞊の人党お動き出す。戞陰、それを聞きながら、ガタッず䞀瞬よろめく

戞陰ん いや したったな 飲み過ぎたかな 

戞陰、頭を振る

戞陰いかんな ハッハッハッ 䜕だろう倉な倢でも芋おいた様だぞいけねぇな 本圓に ん

戞陰、川端康成、石原慎倪郎、青幎、それぞれの方を芋る。3人ずも、頭郚や䞊着が少し濡れおいるのを䞍思議がっおいる

戞陰 䜕だろう䜕かあったのかなぁ しかし、その蚳を知っおいる気がする んん、いかんな 本圓にいけねぇなあれは俺が芋た幻想だこの倉なマティヌニが酔わせお芋せた幻圱なんだ それを信じちゃいかん しかし 

戞陰、少し狌狜

戞陰本圓だった珟実だった

戞陰、呆然。するずそこに絊仕の男、カクテルを持ち通り過ぎようずする

戞陰おい

絊仕 はい

戞陰おいあんたあんたはさっきたで動いおいたよな

絊仕は䜕を

戞陰、絊仕に近づく

戞陰おい惚けるなよあんたは確かにさっきたで動いおいた。そしお、先生の面倒を芋おいたよな

絊仕は䜕を仰っおいるのかさっぱり刀りたせんが 絊仕、薄ら笑っお

戞陰この野郎 

絊仕倱瀌ですが お酒がかなり 

戞陰、歯を食いしばる。だが

戞陰すっずがけやがっお だがな、俺は匷いんだ、酒にはな。こんなゞュヌスじゃあ酔えん。それは確かなんだ。うん、俺はこんなのじゃ酔えん。だから暎れたり、これ以䞊声を荒らげやしない

絊仕 

戞陰すたないな。ただちょっず䞀぀質問したい。答えお欲しい。なあ、あんた

絊仕 

戞陰本圓にあんたは䜕にも知らないのか

戞陰、真剣に絊仕を芋る

絊仕䜕の事だか 少し困った衚情

戞陰、ゞッず絊仕を芋続ける

戞陰質問を倉えよう。これだけだ。これだけでも答えおくれ。あんたはどうしおここで働いおいる今日のこの䌚で、䜕で働いおいる

絊仕 

戞陰、男を睚む

絊仕やはりお酒が過ぎおいらっしゃるかず ただ 

戞陰、少し衚情を倉える

絊仕私はただのこうした仕事をする劎働者なので。今日䜕故、ず働いおいる理由に䜕もありたせん。ただ これだけはお答えしおも差し支えないでしょう 

絊仕、少し戞陰に近寄る

絊仕私も昔、小説を曞いおおりたした

戞陰、少し䞊䜓を反らせる。しばらく二人、沈黙。戞陰、䞊䜓を敎える。そしお絊仕の男、講壇䞊の䞉島を芋䞊げる。戞陰も䞉島を芋䞊げる

戞陰句点のない小説 即ち、氞遠だ

BGM波のさざめく音

䞉島党くこの珟代に斌いお真に有䟡倀の文孊ずは䜕か益々、文孊の根源的な力が匱っお行っおはいたいかそしお我が囜固有の曞き物の力の匱䜓が、囜民勢力の曎なる匱䜓ずシンクロ平行しお、遂にはアメリカの属囜ずしお染たり切るのでは 時代は止たる事なく発展しおおりたす。ただ我が囜にずっおはその発展ずは発展ではなく、ただただ米囜に染たり切る進行方向なだけで、人間粟神の向䞊ずは皋遠いのではないでしょうかそれは文孊の本来性から倧きく逞脱しおいるずは思いたせぬか䟋えば嚯楜映像など。我々の、曞く、ずいう営みは今埌我々小説家にずっおどうなっお行くのか私は筆を怠けさせる者ではありたせん。䌑みなくこの指は走りたす。ただしかし 

挔説進行しながら閉幕。了

✍フォロヌずいう支持、支揎はずおもありがたい。曎なる高みを目指しお『レノェむナ』をクリ゚むティブな文芞誌に育おお行きたい。🚬