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21.Frankfurt(フランクフルト)でのご飯あれこれ(その4:著名ミュージシャンとカップラーメン)

ある年のことですが、Musik MESSEの我社のブースでは展示している新製品よりもブース内でのデモ演が大人気でした。
 
通常楽器メーカーのデモ演は腕達者ですが無名のミュージシャン(例えばまだ売れる前、Dream TheaterのJordan RudesはNAMMなどでデモ演をしていました)による新製品の特長を紹介するための演奏が多いのですが、その年は元Santanaのキーボード奏者のTom Coster率いるスペシャルバンド。
 
Tom以下、ギターがFrank Gambale(元Chick Corea Electric band等)、ドラムがSteve Smith(元Journey等)ベースがAlphonso Johnson(元Weather Report等)という通常メーカーのデモ演などでは考えられない超豪華メンバーです。
 
しかも演奏のラストはドイツ開催のショーに敬意を表してのSantanaの名曲の「Europe(哀愁のヨーロッパ)」。
これをFrank Gambaleが演奏するので、デモ演は毎回黒山の人だかり、ブースの方はうちだけでなく近隣他社まですっからかんという状態でした。

Musik MESSE会場


顔見知りになっていた競合メーカーの社員たちが何度もやってくるので、
“Guys, the show is not for you.”
(これって、アナタ達のためにやってるんじゃないんですけど)
とイヤミを言うと、
“While they are playing, no one is in our booth.”
(だって、彼らの演奏中はうちのブースには誰もいないんだもん)
 
ある意味、やりすぎでしたかもね。
 
大体のメンバーは一日3回の演奏時以外は雑誌のインタビューを受けたり、会場内の他のブースを見学したりする以外は控室でくつろいでいたのですが、
ドラムのSteve SmithはHorner社のデモの掛け持ちで、つまり一日中ドラムを叩いていたのでした。
 
広い会場ですが、こちらは他社の視察で歩き回っていた時に急ぎ足で次の現場に向かうのを良く見かけたので、そのタフさには恐れ入りましたねぇ。


通常デモ演はこんな感じです


そんな大御所の方々とは最初はこちらも遠慮がちに接していたのですが、実際はとてもフレンドリーな人たちなので、何日かするとすっかり仲良くなることができました。
 
中には初心者なのにFrank Gambaleにスゥイープ奏法(ギターの速弾きの超絶技巧奏法)を習おうとする人まで。
 
まあ常識的には考えられない、ど厚かましい話ですよね。
初心者だから相手がどんなすごい人だかを良く理解していないので、逆にそんなことを頼めたんでしょうけどね。
“Show me how to play SWEEP.”
(スウィープってどうやるか見せてよ。)
 
しぇー、よく言うよ、とアキれていたところが、有り得ないことにご本尊が目の前でゆっくりめに実演してくれながら、
“Swee…p…”
 
マネしてやろうとしても、当然できるはずがなく、
「えー、もっとちゃんと教えてよ!」
「アイ ウオント プレイ ライク ユー !」
 
“Ha Ha Ha, Just practice.”
(( ̄∇ ̄😉ハッハッハ。練習しな。)
 
ファンが見たら卒倒しかねない状態が、彼らの次の出番までしばらくの間繰り広げられた控室でした。
 
バンドのメンバーは大体お昼も我々と一緒に控室でお弁当かサンドイッチを食べていたのですが、ある時誰かが食べていたカップ麺を見て(当時はまだ海外では珍しかったんだと思います)、それが食べたいと言うベースのアルフォンソ。
ええぇ、こんな著名なお方にカップ麺なんて…。とは思いましたが、意外にも、
 
“Not bad. I like it.”
(悪くないね。これ好きだよ)
と、慣れない手つきで箸を操りながらもニッコリ笑って、シーフードヌードルを食べてましたねぇ。
どうやらお気に入りになったようで、その後何回かカップヌードルを食べてました。
 
その時にバンド全員のサインをもらったスタッフジャンパーは今でも記念にとってあります。


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