10."Sorry"は「ごめん」ではなく「残念」

これはボクが今までに経験した英会話の中で一番印象に残っている話の一つです。
 
“Sorry”という言葉は、我々はつい「ゴメンなさい」とか「失礼」という意味だと思って良く使いますが、元来は「残念です」、「遺憾です」と言う意味です。
つまり日本語で「ゴメンなさい」と訳される場合でも、自分の非を認めて謝るというよりは、起きてしまった事象に対して(第三者的に)残念だと言うニュアンスが強いわけです。
 
もう30年以上前の話になりますが、US支社から来日しているメンバーと打ち合わせをしている期間に母方の祖母が亡くなったことがあります。
80歳をかなり過ぎた年齢で、もともと長い間入退院を繰り返しており、その前に帰省したときに実質的なお別れはしていたものの、葬儀のため週末に帰省することにしていました。
 
金曜の夕方、ミーティングが終わって向こうも帰り支度をしながら、
“Any plan for weekend ?“
(週末はどうするの)
と聞かれた時に、
“I shall be back to home since my grand mother has passed away.“
(祖母の葬儀で帰省する)
と答えたら、
 
“Oh, I’m sorry.”
と言われたのです。
 
一瞬、なんで君が謝るの?と大変違和感を持ったのですが、良く考えたら向こうは「ご愁傷様です」と言ってた訳です。
 
つまり、”I’m sorry”は我々は「ゴメンなさい」(場合によっては「失礼」程度の意味合いで)の意味で割りと頻繁に使ってしまいますが、本来は「遺憾です」、「それは残念」というニュアンスなのです。
 
例えば混んでいる場所で道をあけてもらう時に、つい“Sorry.”と言ってしまいがちですが、”Excuse me (us).”の方が適切な言い方です。
 
本当に謝罪する場合は”Apologize”を使いますが、ボクも歌詞では見たことがあるものの、実際に会話では耳にしたことがないですね。
 
そういえば、別の時にUS支社の人たちとミーティングの後テニスをしたときのこと。
ゲームの前のストロークをやっている時にこちらの打ったボールが長すぎたり短すぎたりして、つい日本語の「ゴメン!」とか「失礼!」というのと同じ感じで” Sorry !“と言ってたのですが、こっちが向こうの短いのを拾ってあげると“Thanks !“と返ってきました。
 
「失態」とまではいかない程度のこちらの不備を謝るとか、謙遜するとかいうことは非常に日本的で、その感覚が我々に”Sorry”を頻発させている訳ですが、この『謙遜』というのは多分西洋の人からするとなかなか理解しがたい考え方なんですね。
 
この場合もちょっと大げさですが、こちらは自分のミス(といっても大したことではないのですが)を詫び、相手は助けてくれたことを感謝するという違いです。
しょっちゅう”Sorry”と言うことは海外の人からは違和感を持たれると思います。
 
ボクもこの経験があってから、できるだけ日本語では「ゴメン!」という場面を”Thank you.“というように意識するようになりました。
 
西洋的な表現、考え方は基本的にストレートなので、日本的な奥ゆかしさというのは分かりづらい事なのだと思います。
 
もちろんこの「謙譲の美徳」が丁寧さや相手を思いやる言動にもつながるのですが、そのバランスが大事で、遠慮などの度が過ぎると何を考えているのか分からないと誤解される事にもなりかねません。

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