数々のミュージックビデオに登場、リカルド・ボフィルのレトロな建築
スペインは近年バレンシア出身のサンティアゴ・カラトラバなど何人かの世界で活躍する建築家を輩出しています。その一人がバルセロナ出身のリカルド・ボフィル。2022年にコロナで亡くなるまで1,000以上ものプロジェクトを手掛けたといいます。
日本では東京銀座資生堂ビル、川崎ラゾーナ、ユナイテッドアローズ原宿本店、明治安田生命青山パラシオなどの建物があります。
2000年代の彼の作品は、バルセロナにあるWホテルに代表されるような総ガラス張りのシンプルでモダンな造り。
これに反して彼の初期の作品が窓が小さく、カラフルでしかも複雑な構造でそのコントラストが面白いです。
レウスにあるボフィルの初期の作品
バルセロナから南西に110キロほど行ったところにあるレウスのBarri Gaudi(ガウディ地区)にボフィルの初期の作品があるというので訪れてみることにしました。レウスはあの建築家ガウディの生まれ育った町で、ガウディ地区という名前はボフィルのこのプロジェクトにつけられた名前です。
グーグルサテライトビューで見てみるとその複雑な構造が分かります。
1968年に建てられたこの建物は、いわゆる公営住宅。バルセロナなどもそうであったように、1960年代の大量の移民の流入により住宅不足となったレウス。住宅公団が低所得者のための団地を建設したいということで、ボフィルが設計を担いました。ボフィルにとっては初めての大規模プロジェクトだったそうです。
団地と言えば低予算で建設するため四角くシンプルな造りが多いですが、ボフィルは敢えて複雑な構造に。
8階建てで積木のブロックを積み上げたような作りで、棟によって色が統一されています。こちらはグリーン。コンクリートの基礎にレンガの壁。公営住宅のため建設費を抑えるためとのことですが、今のスペインの普通の新築もコンクリートの基礎にレンガ造りが多いです。
遠くに行かずとも生活ができるよう「町の中の町」を作ろうと、バル、スーパー、学校などの公共施設のスペースを設けたそう。
間近で見ると生活感を感じやはり低所得向け住宅の面持ち。
全部で500戸あり、北向きの部分は通路を主に、南側はできるだけ住宅にし日当たりが良いようにできており、2LDK から4LDKまであります。
中央の吹き抜け部分など一番の見どころは残念ながらゲート内。1階にはバルや小さな商店などがあります。
1階だけ見るとなんの変哲もない普通の公営住宅に見えます。
中には入れませんでしたが外から中部の吹き抜けの様子を伺うことができました。いかにも「THE 昭和」な雰囲気。日本でもこういう感じの建物がたくさんあったような気がします。
緑の棟の建物にも。
ベランダは正直使い勝手はあまり良くなさそうです。ベランダがない公営団地も多いのであるだけ良いのかもしれません。
外からだと内部の様子が良く分かりませんが、内部を撮った写真を見ると廊下や階段はこのように圧巻!
個々の住宅の内部はどうなってる?
調べてみるとこの団地から何戸か売りに出ていました。日本のように古い建物でもそれほど価格が落ちないスペインでも破格の値段に見えます。こちらは比較的お値段高めの6階の物件で4万8千ユーロ(およそ800万円)。3万5千や4万ユーロの物件もありました。
やはり公団住宅だけあり、寝室3部屋で66㎡とかなり狭いです。
薄暗くて古めかしく設備も古いのでやはり価格相応な気もします。これより安い物件はやはりこの物件より酷くそれ相応でした。
内装はどの程度までボフィルが設計したのか分かりませんが、そもそも公営団地を賞を取った建築家に依頼するということ自体が珍しいと思うので、ある程度の妥協はあったのでしょう。
ミュージックビデオのロケ地として人気
内部はちょっと残念ですが、最近の数々のミュージックビデオにもこの団地の外観が登場します。
スペインのインディロックバンドのHindsのミュージックビデオにもボフィルのバルセロナ郊外にある「Walden 7」と共にこの団地の吹き抜け部分が登場し、ボフィルの建築の魅力が前面に引き出された作品となっています。
そして最近スペイン国内外で人気らしいBad Gyalのミュージックビデオにも。34秒入ったくらいから何度か登場します。(子供の前での閲覧注意)
更にはイタリア人デュオ、Colapesce Dimartino (ft. Rigoberta Bandini)のPVにも。
ボフィルの初期の作品はバルセロナ市内や郊外にもいくつかあるのでまた機会があれば紹介したいと思います。
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