古代ギリシャ・ローマが面白い

人としての倫理観がねえバカ共が賢者面して人気というのが最近のクソみたいなSNS界隈であると自分は評価しておりますが、「そもそも倫理観ってなんだ?」という疑問が湧きまして、そういや現代の倫理観って大体キリスト教やイスラム教などの宗教が元となってンだよなと思い、さらにそれらはギリシャやローマの考え方の影響も受けてるんだっけナと歴史の教科書で読んだので、とりあえず色々読んだり見たりしてました。

古代ギリシャ

ソクラテスの弁明

光文社古典新訳文庫版、岩波文庫版を読みました。
紀元前4世紀、アテナイ一のクソ厄介論駁おじさんことソクラテスが論破活動のせいで有力者に裁判を吹っかけられた時の弁明を弟子(ソクラテスはそういう認識はなかったとか)プラトンが後に文章にしたもの。

知を愛する人間としての探求やあり方が簡潔に表されており、2000年以上経った現代を生きる自分も共感を覚えた。そうした哲学的な部分以外にも、訳版の古代ギリシャ世界(アテナイ)の解説も面白かった。都市国家や民主制や裁判など複雑なシステムがすでに構築されているとあり、自分の中にあった王と国民の所謂君主制のような古代のイメージが覆った。

光文社古典新訳文庫版は文章が現代的な感覚で読みやすくページも少ないので遅読な自分でもスッと読めた。その後岩波文庫版は続編のクリトン目当てで読んだけど単語や言い回しが古くニュアンスが掴みづらい。単語をググりまくる作業・・・

クリトン、パイドン

「クリトン」は「ソクラテスの弁明」後、死刑を宣告されたがなんやかんやで延期となったソクラテスと、面会に来た弟子クリトンとの対話篇。正義と国家と法について語っているが、ソクラテス(あるいはプラトン)の「国家はおれたちの親みたいなもんで絶対なんや、やから納得いかん判決でも逃げたらアカンねん」という保守的な感覚と、自分の持つ現代的な、一種のシステムとしての国家観とどうもコンフリクトを起こし、違和感をバリバリに感じるので好きじゃない。

「パイドン」クリトンの続編。哲学者パイドンが死刑となったソクラテスの臨終に立ち会えなかった哲学者エケクラテスにその時の様子を話す所から始まる対話篇。テーマが「魂の不滅について」や「死後の世界」なので、現代人からしたら「いやなに言ってんねん」となる事請け合い。実際そうなった。これがイデア論の初出らしい。

プロタゴラス、メノン

2つともプラトンの対話篇でソクラテスが主人公の「ソクラテス物」。

「プロタゴラス」は40代頃のソクラテスが60代の自称賢者の職業ソフィスト(弁論家。当時は胡散臭いと言われて嫌われてたらしい。ソクラテスも嫌っていたが、多くの市民からは同じようにみられていたとか。)プロタゴラスに対話を挑み、「メノン」は血気盛んな20代の弟子メノンが60代終わり頃のソクラテスに対話を挑む話。アテナイ一のクソ厄介論駁おじさんが生き生きと映し出されている。現在「メノン」のみ途中までしか読んでいない。どちらもアレテー(徳)をテーマとしている。

ニコマコス倫理学

プラトンの弟子アリストテレスの息子ニコマコスが親父の講義ノートをまとめた物。アレテー(徳)やイデアなどのプラトン哲学に出てくる言葉の定義(概念)を理解していないとかなりキツイ。頑張って半分読んでギブアップした。とりあえずプラトンのイデア論やアレテーの話周りを掘っていってからトライしようと思っている。

古代ローマ

キケロー弁論集(岩波文庫)

紀元前1世紀半ばのローマ(共和制末期)の政治家キケローの弁論を本人が出版した物。中には他の本で引用された断片しか残っていない編も有り。

14世紀ルネサンス期よりラテン文学の規範とされた物・・・らしいが、ローマを揺るがす陰謀を暴いた際の弁論「カティリーナ弾劾」、政敵ピーソーを中傷する「ピーソー弾劾」のあんまりにもあんまりな自画自賛と誹謗中傷の嵐を見ると疑問に思う。たぶんラテン語が出来たらその辺の評価が分かるのかもしれない。

とある移民詩人の市民権を弁護する「アルキアース弁護」の「この学問(文学)は、青年の精神を研ぎ、老年を喜ばせ、順境を飾り、逆境には避難所と慰めを提供し、家庭にあっては娯楽となり、外にあっても荷物とならず、夜を過ごすにも、旅行のおりにも、バカンスにも伴となる」という一節が凄く印象に残った。時代を超えた至言だと思う。

政治の駆け引きの最中という事もあり、ローマの政治制度や宗教や慣習が色濃く映し出されていて勉強になる。しかしローマの人って名前に先祖やお父さんの名前を付けるのでこんがらがりますね。(大カトーとか小カトーとかスキピオとか)読み終わった後、人の存在がごちゃごちゃしてたので、もっと身近に出来る物はないかと思った所、2007年のドラマ「ROME」の舞台がこれらの弁論と近い時代であると知ったので見ることに。

ROME(ローマ)

英BBCと米HBOの共同製作でシーズン2まであり。自分はこの記事書いてる時にシーズン1まで観ました。

カエサル「ガリア戦記」にちょっとだけ言及されてる(らしい)軍人として堅物で人望熱いが人として不器用な面を持つ百人隊長ヴォレヌスと、バカで陽気で粗暴だけど時折やさしさを見せる部下プッロが主役。兵士、あるいは平民代表としての彼らと、ユリウス・カエサルやポンペイウス、ブルトゥスなどの歴史の表舞台に立つこととなる政治家(貴族)たちの対比を通して末期共和制ローマを描く。

どっかで見たことあんな~と思ってたプッロ役が3代目実写版パニッシャー役(ドルフ・ラングレンを初代とする)のレイ・スティーブンソンでびっくり。寡黙なキリングマシーンパニッシャーとのギャップ・・・(マイティ・ソーで演じてたヴォルスタッグを思い出せばそこまで驚きはないのだけど)

それはさておき中身は結構ハードで、人や動物は死ぬわ頭に穴開けるわ男も女も異性同性構わずセックスセックスで当時の倫理観を再現。シェイクスピアの舞台的な感じはなくひたすら泥臭い。再現性的には初期のタイムスクープハンターをかなりハードにした感じの方向性といったらよいかも。

策謀以外の人間ドラマ以外にも、どの回でもキリスト以前の多数の神への祈りなどの習慣やそれぞれの階級の考え方(特に平民プッロと思いを寄せる奴隷エイレネのすれ違い)などが丁寧に描かれていて面白い。また、上に挙げたキケローは活躍も少なく(劇中では英語読み?なのかシセロという発音)弁論から想像する勇ましさとは反対の日和見主義者の小物的に描かれている。

カエサルは個人的にガルパンのカエサルのリスペクト元とかブルータスお前もかとか来た見た勝ったぐらいの印象しかなかったが、国民人気が強い上に権力を自分に集中させたから貴族中心の元老院派から嫌われてたんだな~とか色々複雑な面があったんだな~というのが分かり、ガリア戦記やローマの記述家プルタルコス(プルターク)の「英雄伝」が読んでみたくなった。他にもいろいろ史実と異なる部分があるらしいので、当時の書物なども探して間違い探しをしてみたいものだ。

(あとコレを書いてて、ガルパンで大洗女子のカエサルとアンツィオ高校[イタリアをモチーフにしている]のカルパッチョが幼馴染なのはイタリア繋がりという事だったのかという事に気づく)

最後に

中学生ぐらいまでは歴史の授業が好きだったけども深く追ってなかったので、古代ギリシャとローマって同じ枠に入ってて凄い昔・・・みたいなイメージを持っていたのだが、当時の人の文献やそれを基にした作品を見る事により、”ギリシャとローマは別の国だが文化の影響が強い”とか、”カエサルとソクラテスは300年以上違う時代の人”など、自分の中で詳細なディテールを持って認識されるというのが、今まであまりやって来なかったので新鮮な体験だった。あと、ローマは巨大で長く続いた国家だからか建国から衰退までの歴史をまとめた記述がすぐ見つかるけども、それよりも古く他の国であるギリシャの物はあまり見ないような気がする。あくまで地元の図書館で探した範囲なので漏れはあるでしょうが・・・

あと倫理観というのはなんなのか結局まだ分かってないのでもっと掘っていきたいと思います。目指せ倫理観マスター。

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