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奥伊豆のパワースポットで太鼓を打つ

今年のツーリング始め。
半日で西伊豆をグイっと走ることにした。調子が良ければ石廊崎経由で伊豆半島南部を反時計回りに走って、河津から中伊豆に北進して帰途につくコース。

まずは新東名から伊豆縦貫道を一気に走る。
気温は0℃から5℃程度。昨年から導入した電熱グラブの効果が絶大で、寒風が全く苦にならない。

真冬の長時間にわたる高速走行は重ね着ができない指先への負担が半端ない。
冷たい→痛い→こわばる→感覚がない→動かなくなる…の順に症状が悪化し、指先の変調が拡がり、全身の動きが鈍り、集中力が低下するなど、徐々に影響が深刻になってゆく。
いつだか、あまりの寒さにSAで休憩をとった時、蝋細工のようになった手を熱くなったクラッチカバーに鉄板焼きよろしく押し付けたものの、しばらく感覚が戻らなかった経験があり、QOR(Quality of riding)を上げるため、ようやく電熱グラブの購入に至ったものだ。

さて、年末年始、その後の三連休も過ぎ、週末の割りには道路が空いている。
わたしのバイクは渋滞のノロノロ低速走行があまり得意ではないため、空いている分には大助かりだ。

湯ヶ島から土肥に降り、西伊豆沿岸を走るあたりから海風が強まってきた。
晴天ではあるが、駿河湾を観ると一面に白波が立って、気持ちがザワザワする景色だ。

横風を受けると、車体がスリコギのような挙動を見せる。
ドンと強風を受ければ、車線半分ぐらいは平気で持っていかれてしまう。
コーナリング中にくらうと、ハンドリングが切れ込んだり、はらんだり、
ラインが乱され、非常に落ち着かない。

松崎まで南下したあたりで、これ以上の南進をあきらめ、河津へショートカットすることにした。

真冬のツーリングは冷える。真冬でなくても冷える。
本日もバイクに乗っているんだか、トイレをさがし回っているんだか、よくわからない状況。

「そういえば、花の三聖苑」というシブい道の駅があったはず。

道の駅はオフシーズンということもあって、広い駐車場に車が数台止まっているのみ。人影もちらほら。
「ゾワー」と木立の間から強風の音が響いている。

用を済ませたところで、バイクに戻ろうとすると

「奥伊豆のパワースポット 山神社はコチラ」

手書きの立て札が手招きしているではないか。

以前であれば、パワースポットの言葉にうさん臭いものを感じ、あえて興味も湧かなかったが、昨年、わたしを取り巻く環境がガラリとかわり、「ご縁」や「時の運」などをひしひしと感じることがあり、人智を越えた何かに心惹かれているわたしなのだ。

「是非もあるまい」

山神社は道の駅の裏手に建立されている。ほぼ隣接だ。
本殿は小ぶりだが、非常にしっかりした造り。
参拝者が入るたび、中から太鼓を打つ音が聞こえる。

よく整備され、地域に大事にされていることがわかる
映画「世界の中心で、愛を叫ぶ」のロケ地でもあったらしい

区が制作したらしいパンフレットによると、
ご祭神は大山祇命(オオヤマツミノミコト/山神)、仁徳天皇(若宮権現)、猿田彦命(金剛童子)。1640年、当地に遷されたとのこと。

大正期の本殿造営に関わった功労者、依田佐二平 翁の人物が非常に興味深い。
依田家のルーツは甲州武田氏の重臣。天目山での武田氏滅亡を経て、伊豆の松崎に落ち延び、江戸時代は庄屋の家系であったらしい。
明治には国策に従って養蚕業をこの地で興すため、翁は技術導入や生産体制の整備を自ら主導し、松崎を早場繭の一大生産地に育て上げた。
代議士、航路設立、道路開通、学校設立など地域振興に尽力したほか、
弟の勉三 翁は北海道の十勝開拓に身を投じ「開拓の祖」と称えられたとある。

「山神社のご加護は松崎にとどまらず、北海道まで至ったのか」

なかなかに本格的なしつらえ

土日祝に開扉される本殿内に進むと、ご祭神が仲良く鎮座している。
ご神徳は五穀豊穣、家内繁栄、殖産興業、開運、道開き…
なるほど、人生という道を開く願いも聞き入れてくれそうだ。

自分で8回打ち鳴らすのだぞ

祭壇の横には太鼓が置いてあり、厄払い開運を祈願することもできる。
参拝客が入るたびに鳴っていた太鼓はこれだったのか。
「トントントン…」
迷惑にならぬよう、でも想いを込めて、わたしも厳かに神妙に太鼓を打ち鳴らした。

その後は、新しく開通した伊豆縦貫道で河津までショートカットし、午後、さらに強まった横風にも山神社のご加護を受け、乗り初めを大過なく帰宅した。

簡単に手入れをして、カーポートに仕舞う直前、バイクを眺めてみた。
手に入れて35年、わたしの相棒であり、旧くからの恋人。
彼女を道路と熱いキスを交わさせないよう、今年も無転倒・無事故で楽しみたいと思っている。

寒い時、暑い時、バイク移動は体感でクルマの3倍疲れる

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