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中国で日本のレトロアニメやキャラクターが流行?越境で行う「IPビジネス」

中国では近年、キャラクターや作品などのIP(Intellectual Properties)市場が拡大しています。日本のアニメや漫画も人気がありますが、中には昔の日本作品が、今中国で流行っているということも。

unbotは2021年4月に、新規事業としてIPエンターテインメント事業をスタート。主に「今は日本より中国で知名度が高い、日本のIP」の中国進出を支援しています。その中にはアニメ「キャッツ・アイ」や特撮「ビーロボカブタック」など、1980〜90年代の作品も。なぜ中国で人気があるのか、どのように中国で展開するのか、事業について話を聞きました。

◆Piro
大学卒業後、音楽業界へ。アーティストのマネジメントやイベント制作、ディレクターなど音楽業務全般に携わる。その後、中国市場に興味を持ちunbotに転職。IPエンターテイメント事業部に配属。
◆Nozomi
香港でデザインやマーケティング関連の仕事を経験したのち、unbotに入社。IPエンターテイメント事業部の立ち上げに携わり、現在は中国でのクライアント対応からSNS運用まで幅広く担当。

中国で「日本のIPを育てる」新規事業、強みは?

──なぜIPの越境支援を行っているのでしょうか?

Piro:日本のIPを中国で広げる企業は既に何社もありますが、日本で今流行っているIPを活用しているケースが多い。unbotはそうではなく、日本では埋もれてしまっているIPを活かす方向で市場を広げたいと考えています。中国市場を見ていると、昔の作品でも中国では今も人気があるものがたくさんあります。

当社ではこれまで中国国内のEコマースやウェブマーケティングを行ってきたので、そこで培った知識やリソースを活かせるというのも強みです。

Nozomi:unbotが持つリソースを活用するという点では、昨年、EC店舗の運用をしているスマートフォンカバーブランドのHameeとクリエイターGraflexのコラボを実施しました。こうしたコラボ支援のようなものから、中国のSNSアカウント運用まで、現在は12〜13件のIP支援を行っています。単発の案件もありますし、コラボ商品などで中国で実績を作ってからSNS運用を始めるという段階を踏んだ支援もあります。

Hamee × Graflexコラボ

Piro:そのほかにも中国プラットフォームでの漫画やアニメの配信、オンライン・オフラインでのPRなどの版権代行、自社IPや協同IPの創出など、幅広くIPの越境をサポートしています。

80〜90年代の作品・キャラクターがなぜ今、中国で人気に?

──1990年代の特撮「ビーロボカブタック」の中国展開は、どのように始まったんですか?

unbotが日本IPの越境を支援!東映特撮「ビーロボカブタック」の中国展開をスタート(prtimes)

Piro:Nozomiさんが中国のフィギュアサプライヤーとコンタクトを取る中で「ビーロボカブタックの物を作りたい」と持ちかけられたのがきっかけ。1997年にテレビで放送されていたのですが僕はカブタックの存在を知らなくて。けれど調べたら中国では当時から現在に至るまで何度も再放送されるような作品で、本当に人気があったんです。

Nozomi:私は子どもの頃テレビで見ていた作品で、同年代の中国人はみんな知っていますよ!

Piro:版元の東映さんも、中国で人気であることは知っていたそうです。ただ人気があったとしても、中国市場と聞くと、規模が大きい分リスクも大きいのではないか…と考える日本企業は多いはず。だからこそ我々のような会社が間に入ることで、安心して中国市場でIPを展開することができるのではないかと考えています。

Joocyee×キャッツ・アイ

──中国コスメ「Joocyee」とコラボした「キャッツ・アイ」はさらに昔の、1980年代の作品ですよね

Nozomi:子どものころテレビで見ていた懐かしい作品です。最近では画像を再加工したものを、一般ユーザーがSNSスタンプのように使い、拡散しているんです。

「キャッツ・アイ」は以前から別件で支援していた経緯があり、今回「Joocyee」からのオファーで、再び支援させていただくことに。このコラボがきっかけで、単発の取り組みだけでなく、キャッツ・アイ」の中国展開を支援することになりました。

今回のような化粧品だけでなく、フィギュア会社や飲料メーカーやショッピングモールなど、さまざまな業種の企業が日本のIPに関心を持っています。

Piro:現状は中国企業からオファーを貰い、僕たちが日本の版元さんに提案することが多いですが、日本の版元さんから「中国進出したい」というお声がけがあれば支援したいと思っています。

漫画「キャッツ・アイ」と中国コスメブランド「Joocyee」が中国でコラボ!(prtimes)

──中国市場ではどのようにIPの認知を拡大していくのでしょうか?

Piro:基本的にはSNS運用がメイン。SNSで認知を拡大して、コラボなどの仕事を取ってこれるような流れを考えています。もちろん、並行して社内リソースを駆使したクライアントへの直接営業も行います。

Nozomi:SNS運用では中国語で、作品やキャラクターの世界観をより深く理解してもらうコンテンツを配信しています。例えば中国語版の漫画を作ったり、中国語でIPの制作背景などのインタビューを配信したり、または中国SNSのトレンドに乗っかることもあります。

「キャッツ・アイ」と「Joocyee」のコラボ商品では契約や製品制作の間を繋ぐだけでなく、SNSプロモーションも実施しました。コラボ商品を知らせるだけでなく、話題になるタイミングで「キャッツ・アイ」自体の認知拡大を狙ったプロモーションも進行しました。

ーーどういった経緯でコスメとのコラボに至ったんでしょうか?

Nozomi:今回のコラボは「Joocyee」の世界観とマッチしているということでオファーがありました。「Joocyee」は女性の成熟した一面、クールで自立したイメージのブランドで、そういった世界観で知られている「キャッツ・アイ」をコラボ相手に選んだようです。

Piro:「キャッツ・アイ」の版元であるコアミックスさんとは、一度別案件の支援を行ってからコンスタントに連絡をとらせていただき、「Joocyee」から来たオファーを提案しました。昨年3月からプロジェクトを開始して、コロナの影響もあって今年7月に発売に至りました。

ボックスには「キャッツ・アイ(中国名:猫眼三姐妹)」のロゴだけでなく、unbotの名前も

知っておくべき「成功するIP」のポイントは?

ーー中国に進出する上で、日本企業のハードルとなるところは?

Nozomi:より伝統的なIPは、稼ぐことよりもIPの世界観を重視し、オリジナル作品のコンセプトやキャラクター性を守ることを求めています。そのため、私たちが挟まってルールを定めることで、コラボの中でも作品やキャラクターの世界観を体現していけるようにしています。

Piro:ちょっとしたことかもしれないですが、我々は日中どちらにも会社がある。版元さんとも中国企業とも直接対話できるので、一人一人との関係値を作り、信頼を持ってもらえるように取り組むことを意識しています。例えば実務的な部分だと、中国と日本ではビジネスの進め方やスピードが違うので、そこに寄り添うことができるのは一つの強みです。

Nozomi:ビジネスの進め方の違いでいうと、契約交渉でも文化の違いがあります。例え、日本では「キャッツ・アイ」の版元がコアミックスであるということは誰でもわかると思いますが、中国側では本当に版元であるのかを証明して欲しいと言うんですね。日本の感覚では、なぜ証明書が必要なの?と思われるのですが…中国側は書類を求める傾向が強いですね。そういった調整やすり合わせもしています。

Piro:苦労して中国に進出するので、版元さんは日本とは違う結果を期待されていると思います。版権の稼ぐ金額は日本と同等、もしくはそれ以上を目指すことになりますが、それが実現できるのが中国市場だと思います。

ーー中国に進出したい版元さん、IPが知っておくべきことはありますか?

Piro:まず、市場で既にそのIPが認知されていることが重要です。この点は、僕たちの方でどのくらい人気があるかを調査することができます。その上で、進出してIPの認知を拡大する中では、中国の文化の壁にぶつかることがあると思います。先ほどお伝えしたように進行スピードもそうですし、進め方も違えば、決まったことが変わることもあります。そういった心構えは必要かもしれないです。

Nozomi:私たちは版元さんに寄り添って、作品のコンセプト、世界観を守ろうとルール作りをしていきます。一方で、ある程度自由にできる部分があるといいと感じています。近年流行っているIPは世界観を大事にしつつも、中国の話題やトレンドネタに合わせて新しいデザインやコンテンツを発信しています。ちょっとふざけてみたりとか。そういったことをできるようになれば、より色々なビジネスや発展につながると思います。


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