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【前世の記憶】妻への手紙を書き終えていない無念に苦しむ娘


アメリカ、インディアナ州のインディアナポリス。

レベッカにはジャスティンという第一子がいたが、遺伝性疾患でわずか3才にして亡くなってしまう。

そのため第二子を妊娠した時のレベッカはとても心配していた。医師からはジャスティンと同じ病気の子供が生まれる確率は10%だと言われていた。

そんな心配にもかかわらず、生まれた第二子は健康な赤ちゃん。テイラーは予定日1ヶ月前のベビーシャワーの日に生まれた。

レベッカは、その時の気持ちを語る。

「健康な赤ちゃんを持てたことをとても嬉しく思いました。希望を感じ、新しい人生の始まりのような気がしました。」

テイラーは歩ける、話せる、だけでなく、何をやらせても進んでいた。トイレトレーニングに要した時間は1週間のみ。鉛筆の持ち方やフォークの使い方を教える必要もなかった。教えなくても知っていたのだ。

ステップファザーのマイケルが言う。

「テイラーが小学生の頃、彼女の母親と出会って、彼女たちは私の人生の一部となりました。テイラーとはとても良い関係を保っています。継娘というより実の娘の感覚です。非常に上手くいっています。」

テイラーにおかしいと思える兆候が見え始めたのは4歳の頃。聴力がとても過敏な子だった。花火の時は家の中にいることを余儀なくされた。雷は最悪で、雷が来るのが何億マイルから聞こえるかのよう。レベッカは恐怖を感じるようになる。しかしそれは始まりにしか過ぎなかった。

ある晩レベッカは本を読んでいて、テイラーは両手を動かしていた。彼女が手をゆらゆらさせて天井を見つめることはよくあり、何度も見たことがあった。ただその時は、彼女が喋っていたのでとても明確だった。

レベッカが誰と話しているのかと聞くと、彼女は「ジャスティン」と言う。血が凍った。テイラーはジャスティンのことは何も知らなかったからだ。
レベッカは言う。

「彼女がジャスティンのことを知っていることはあり得ません。私にとってとても耐え難い体験で、そのことを話すことさえ辛かったのです。それにジャスティンのことを話したとしても、それを理解できる年齢ではありませんでした。だからその瞬間、心配になった反面、慰められました。ジャスティンは今幸せで、妹と話しているんだと信じることができました。」

テイラーは自分が生まれる5年前に亡くなった兄とコミュニケーションをとっている。レベッカは娘に何が起こっているのか、知りたいと思っていた。
テイラーが5歳になると家族はインディアナ州に引っ越す。その頃だった。不安発作が始まったのは。彼女は眠らなくなり、毎晩悪夢を見るようになる。

レベッカは真夜中に叫び声を聞いたこともある。が、叫んでいたのはテイラーではなく夫マイケル。マイケルがキッチンに行くと、そこにいるはずのない誰かが立っていて、強盗が侵入したのだと思ったのだ。しかしそこにいたのはテイラー。何をするわけでもなく立っていて、ガス台を見つめていた。

彼女が眠らなくなって1週間が経過。その間彼女は繰り返し恐怖に脅かされていた。眠ることさえできないなんて、これはただの悪夢ではないと感じたレベッカ。

しかし限界に達したのはある夜、彼女が部屋に来て、

「ママ、私の部屋に幽霊がいる」

と言った時だった。

マイケルは死後の世界やホラー話を信じない。

「テイラーの睡眠不足が、妄想や実際には存在しないものを見たりする引き金になっているのだと思いました。いつか治ると思っていました。」

レベッカは言う。

「私は娘が精神的な問題を抱えていると思いました。幽霊を見たり、夜中に夢遊病のように歩いたり、恐怖で毎晩毎晩苦しみ、眠れないのですから。そんな娘を救うこともできませんでした。彼女は毎日疲れ果て、学校で居眠りをしていました。」

医者に連れて行くと、全般性不安障害と診断される。

不安を原因として起こる障害のことで、トラウマに基づくものでも虐待に基づくものでもない。原因となるものがないのだ。

「娘の不安レベルは、今までそんな人を見たことがないというレベルのものでした。」

その後成長するにつれ悪夢はさらにひどくなっていき、不安と恐怖は続く。学校での勉強にも影響を及ぼし、生活全体に影響を与えた。テイラーは常に落ち込んでいた。

「状況はどんどん悪くなっていきました。そんな娘の姿を見るのは耐え難いものでした。我が子の痛みをなんとかしてあげたくても何もできないんです。娘に何が起こっているのか教えてくれる人は誰もいなかった。ある日彼女が私のところに来て、あることを話すまでは。そして私はその答えがありました。」

ある晩のこと、テイラーは真夜中にレベッカの元へ来ると言った。

「ママ、悪夢を見たの。」

いつもの彼女ではなく、顔面蒼白で汗をかいていた。

「夢を見てたんだけど、自分が見えたの。私は痩せて目鼻立ちがハッキリした白人の男の人だった。そして手紙を書いてた。」

レベッカは言う。

「その時です、前世の記憶だと直感したのは。心から100%前世だと信じます。実際に彼女に起こったことだと分かりました。」

一方、警察官のマイケルは、証拠がないものは信じない。

その夜、話せば話すほどテイラーの記憶は明確になっていく。彼女は男性で、大きめの白いシャツを着ていた。そのシャツは何世紀も前のもの。彼女は羽根ペンで手紙を書いていた。文字は長くて細い。書いている紙は現代で使っている紙より布に近い。唯一の明かりはキャンドル。

しかし特に印象深いのは、彼女は男として手紙を書いていることと、手紙を書き終えて送ることを阻止されていることへの動揺だった。

彼女は「Matthew Kopple」という名前を思い出す。

「ママ、それが私の名前だった。Matthew Kopple だった。」

すると彼女はひどく取り乱して泣き出した。その手紙は非常に大切なもので、妻宛に書いていたものだったと言う。

自分は椅子から立ち上がって椅子の後ろにいた。後ろを振り向く。大きな音がした。そして殺された、と。 

レベッカが言う。

「テイラーから前世で殺されたことを聞いて怖いとか悲しいとか思いませんでした。むしろ安堵しました。彼女の大きな音への恐怖とつながったんです。前世、それがずっと私が疑問に思ってたこと全てへの答えでした。あまりにも長い間、彼女は恐怖と不安の中で生きてきました。そしてやっとうまく収まり始めたのです。 」 

テイラーは16歳になっていた。

「眠れなくなったのは2、3歳の頃からで、いつも鮮明な悪夢を見ていました。夢にしてはリアル過ぎて、夜中に冷や汗をかいて目覚めるんです。最初に前世の記憶を思い出した時、彼が感じていた感覚全部を感じました。立ち上がったのを覚えていて、すごく動揺していました。そこに大きな音が。そこで目覚めました。その時分かったんです。そうだ、私はこの男性だったんだ、って。そしてもっと知りたい気がしました。」

その後レベッカはインターネットで Matthew Kopple の情報を見つける。彼は1700年代に自宅で殺されていた。また、Henry M. Koppleという人物の情報も見つける。

彼女はその二人の人物をテイラーに見せ、何か感じるものがあるか確かめることにする。

テイラーが言う。

「前世の記憶が私の生活に影響を与え始めたと感じます。まだ自分の中にいて、同じ怖さと同じ感情を持っているんです。」

レベッカが言う。

「娘の不安と恐怖の理由は、手紙を書き終える前に殺されてしまったからだと思っています。Matthew Kopple が誰であれ、現在も彼女の一部になっていて、その部分は手放す必要があると思います。全ての出来事とトラウマ、不安、痛み、睡眠障害は、テイラーがやり残した仕事があるから。そう心から思えます。彼女は手紙を書き終えて、解放される必要があると思います。」

テイラーは言う。

「やり残した仕事があると自分でも思います。手紙を描き終えなければいけないと。このことにもう抑制されたくないんです。」

レベッカはテイラーの前世かもしれないと思われる二人の人物の情報を見せながら伝える。

「Matthew Kopple という名前の人物を二人見つけたわ。でも決めなきゃいけないとかプレッシャーを感じないでほしいの。何かピンとくることがあったら教えてほしいだけ。あなたを救うためにね。これが一人目のMatthew Kopple。1708年に生まれてる。これが彼に起きた出来事。」

テイラーは「ワオ・・」と言い、もう一人の方を先に見てもいいかと聞く。

レベッカが

「もちろんよ。これが二人目で、Henry M. Kopple。彼は内戦で戦った。これが実際の記録よ。手紙を書いていたのはこの時代って言ってたけど、何か身近に感じるものはある?」

と聞くとテイラーは、

「間違いなくすごく馴染みがあると思う。この手書きの文字は夢で見たのと同じスタイルだわ。」

と答えた。そして、

「この人があなたの前世で夢で見てる人だと思う?」

と聞くと、テイラーは感傷的な表情を見せて母親に抱きついた。

レベッカが言う。

「現在起こっていること全てへの引き金となっているその記憶が、全てを手放す解決になると信じています。手紙を書き終えることがキーだと思います。これらが起こったという十分な事実がある。娘は他の誰かでした。彼女がやるべきだったこと・・手紙を書き終えれば全てを手放し、安らげると思います。」

テイラーは言う。

「前世にすごく近づいた気がします。手紙を書き終える必要があると思います。いわゆるさよならの一筆です。自分の人生を生きていけるように。手紙を書き終えることで平和が訪れるといいなと思っています。」

テイラーは書き終えた手紙を風船にして飛ばした。それと同時に彼女の不安もなくなるようにレベッカは願う。

最後にテイラーは言った。

「安堵を感じました。嬉しさも感じます。自由になった気がします。すごくいい気分です。」

手紙を書き終えて以来、テイラーの不安障害は減少した。彼女は、美術学校に行きたいと思っている。


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