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【超能力捜査】失踪?霊視で解決・妻殺人事件

1986年3月31日、アメリカ・オレゴン州ポートランド郊外の警察署に1本の電話が入る。

28歳のジョン・バークによると、夜遅くに夫婦喧嘩をした後、妻アレキサスが夫婦の車で出て行って以来、3日も戻っていないと言う。

地元の刑事、ロバート・リーはこの件の担当となる。

リー刑事は言う。

「その時点では犯罪が関与しているのか分かりませんでした。夫婦が別れるのはよくあることです。夫婦喧嘩をしてどちらかが車で出ていくことも。」

しかしその仮説はこの状況に当てはまらなかった。

リー刑事は続ける。

「このケースでは1歳半のダウン症の子供がいました。母親がそんな子供を置いていくのはかなり稀な例と言えます。アレキサスは数時間以上外出することはありませんでした。」

警察はまず夫のジョンが真実を話しているかを疑う。3日前に何が起こったのか。

リー刑事は言う。

「ジョンは白々しい嘘をついていました。彼の態度は本当に酷かった。生理的な反応と言ってることが一致していない。アレキサスに何があったにせよ、彼が関与している印象を持ちました。」

聞き込みのため、警察は彼のアパートに行き、鑑識が入る了解を得る。鑑識が中に入っている間、外で聞き込みを行う。

鑑識の結果、疑わしい証拠は見つからなかった。そのため、妻が乗っていったという車を探すことに集中する。リー刑事は、車が見つかればアレキサスも見つかると思っていた。

懸念が高まり、捜査に進展がないことに苛立ちを覚えるなか、アレキサスの母親は変わった行動に出る。友人に超能力者ローリー・マクワリーへ電話するように勧められたのだ。

ローリーは言う。

「写真なしでアレキサスの名前を聞いただけで真っ先に感じたのは、彼女はもうこの世にいないということ。それをとても強く感じました。まるで胸の真ん中に重りを感じるように。彼女の性格を描写しました。少し気まぐれでとても激しい性格。ジョンは怠慢だと思いました。目的もなく生きている。そしてそれを変える気も全くない。」

リー刑事は言う。

「ジョンは自分の父親以外の誰からも雇用不能な男です。彼の職場での行動は酷いものでした。仕事に行く気がしなければ職場に現れないのです。」

ローリーには夫婦が口論しているのが見えていた。彼女のビジョンはジョンの言うアレキサスが家を出た時の状況とマッチしていた。しかしローリーにはそれ以上のことも見えていた。

ローリーは言う。

「夫婦の口論のビジョンで感じたのは経済的な一面でした。経済面で喧嘩をする夫婦はたくさんいます。結婚生活の一部と言ってもいいくらい。でもこのケースは薬物とアルコール依存症の誰かによって加速されていました。もちろんそれはアレキサスではありません。実際、彼女の母親に一つ指摘したのは、この女性は最近人生を好転させたということ。母親は『はい、その通りです』と言いました。そして私は言いました。でも夫はそうじゃなかった、彼はとても弱い男でいまだに薬物を使用している。そのこと自体が結婚生活に問題を起こしている、と。自宅で恐ろしい喧嘩があったのを感じました。でももう彼女はそこにはいない。」

4日後、警察に大きなチャンスが到来する。夫婦の車が休憩所で放棄されていた。リー刑事はそれが全く意味のない手がかりでいっぱいであることに気づく。

リー刑事は言う。

「アレキサスは身長155センチくらいで、体重は52キロくらい。ハンドルは体に近かったはずでペダルにも届かなければおかしい。ところがシートはかなり後ろの位置にありました。私と同じくらいかそれ以上の人が運転していたかのようにね。鍵はイグニッションに刺さったままでドアはロックされていました。誰かがわざと鍵を残し、盗難防止のためロックしたのかもしれない。中には広げられた地図があって、ワシントンにある市に〇がつけられていました。困惑しました。はめられたと感じたからです。」

近くに遺体がある可能性も考え、警察犬も導入したが何も見つからなかった。

そんな時、超能力者に連絡を取ったというアレキサスの母親から電話を受けたリー刑事。懐疑的だったものの話を聞くことにする。

リー刑事は言う。

「捜査官は情報をとても大切にします。変わった情報源であっても役に立つかもしれないし、別の方向から裏付けられるかもしれない。私は左脳思考なので、見て触って感じたものを合理的に理解します。だから超能力者に電話をしました。やや軽んじていたことは認めざるを得ませんが。」

ローリーが言う。

「リー刑事が電話をしてきた時のことはよく覚えています。このケースを担当しているのでランチに行きましょうと言われました。私が何者かチェックしたかったんでしょう。釈然としませんでした。」

ローリーはただ家族のためにアレキサスの遺体を発見したかった。

彼女は15という数字がずっと見えているとリー刑事に話す。アレキサスの車が発見されたのは自宅から15マイルの場所。そのことと関係しているのか。

ローリーにはアレキサスの遺体を運ぶのに使った車が一瞬見えていた。

「大きめで古い車です。後ろのトランクが開いているのが見えます。大きなトランクです。」

アレキサスの車はツードアの小さいトランクの車。ローリーが描写している車とは違う。

リー刑事は言う。

「ハイウェイに5分間いれば、大きい車なら何百台も走っています。」

ローリーの次の情報がさらにリー刑事を懐疑的にさせた。

リー刑事は当時を振り返って言う。

「彼女は、夫ジョンの弟ケリーが犯罪に関与していると言います。ケリーには既に事情聴取していますが、通ってる大学でスポーツをしていました。アレキサスが失踪した時、南カリフォルニアにいたんです。」

しかしローリーの見解は違っていた。

「弟が彼女の遺体を運ぶのを手伝っているのが見えます。シャベルが使われたのも見えます。家族の繋がりが見えます。」

リー刑事は言った。

「ケリーが当時何千マイルも離れた土地にいたことは大学に確認済みです。ということは、他にローリーが言ったことのうち8から10は真実ではないということになります。単に弟の関与はあり得ないですから。」

リー刑事の捜査とローリーが言うことの多くが矛盾していた。しかしローリーは信念を曲げなかった。もし彼女が正しければ、リー刑事は重要な証拠を見逃していることになる。

ローリーはリー刑事に

「想像していることと違う結果になりますよ。それが証明される時が来ます。」

と言った。

彼女は危険な橋を渡ることを決断する。犯人だと信じる男に接触し、自ら捜査をすることにしたのだ。

アレキサスの夫は引っ越しに備え、荷造りをしていた。

ローリーは言う。

「ただ、会わずにはいられませんでした。彼と会った瞬間に目を見て分かりました。握手をしたらもしかしたらもっと感触がつかめるかも・・ともね。」

警察はアパートからは何も見つけられなかった。次はローリーの番だった。

「呼び鈴を鳴らすとジョンが出てきました。とてものんびりした感じの男です。薬をやっていたのかどうかは知らないけど、とても落ち着いていました。もちろん入居希望者のフリをしましたよ。中に入っていくと、超能力者としてだけではなく、ただ一人の人間として、妻の写真はどこ?と思いました。1枚もないの?って。何もなかったんです、彼女のものは何一つ。彼女が行方不明になってからまだ2、3ヶ月ですよ。なのに何もなかったんです。」

ローリーには恐ろしいものが見えた。

「最後に礼を言って握手を交わしました。手に触れた瞬間、その手が彼女の首の周りにあるのを感じました。そうやって彼女を殺害したのだと分かりました。」

これをローリーから聞いたリー刑事は動揺する。

「全く信じられませんでした。彼女自身も犯人だと信じている男ですよ。彼女は自ら犯人のところへ行って接触したんです。」

ローリーはアパートに行ってから、彼女がどこに埋められているのか、そのビジョンがどんどん強くなっていく。

一方、見えるものや証明できるものを信じるリー刑事はまだ懐疑的だった。しかし聞く耳はまだ持っていた。

二人は週に1、2度会い、ローリーがあちこちで見えたものやリー刑事が信じることに対してお互い仮説を立てる。

ローリーが真っ先に頭に浮かんだことの一つが15という数字。高速 I-5のことか、1.5マイルのことか、重要な意味があるのか分からなかった。この件では、殺人が起きたと二人が考えている場所が15マイル離れたところにあり、その可能性もある。

ローリーは言う。

「苛立ちを覚えることもあります。手がかりが見える時もあれば象徴的にしか見えない時もあって、それを適切に解釈するのは私にかかってる。いつもテレタイプみたいには行かないんです。そうだったらよかったけど。」

アレキサスが住んでいたエリアに、二人で何度か一緒に捜査に行ったこともある。リー刑事は努力していた。少なくともオープンで協力的だった。

ローリーは彼女の遺体は浅い場所に埋められたとはっきり言い切った。

「彼女の頭は小さな小川からわずか数インチしか離れていません。ジョンは彼女を自分が観察できる場所に埋めたのも感じました。」

警察にとって有益な情報だった。しかし具体的にどういう意味なのか、彼の職場から見える場所なのか、自宅の近くなのかは分からない。

ローリーは言う。

「原野のある場所に建物があります。簡単に入っていける普通の建物じゃありません。」

ローリーと接すれば接するほどリー刑事は彼女のビジョンを信用するようになる。それは彼のジョンに対する第六感とマッチしていた。リー刑事曰く、彼女には人の内面や場所、物事への洞察力があると言う。

ローリーは自分のビジョンをこう説明する。

「シナリオは実行されます。私には人や状況が見えます。かすんで見える時もあります。いつもはっきり見えるわけじゃないんです。見えたり見えなかったりすることもある。でもまさにテレビを見ているような感覚なんです。」

さらに彼女は犯人のビジョンを続けて語る。

「犯人がランチを食べているのが見えます。外で風景を見ながら食べている。その風景は彼の領域内。邪魔が入らない限り面倒なことにはならないことを彼は知っています。」

ジョンは殺人罪から逃れられるかのように見えた。しかしローリーの洞察力が、彼は重大なミスを犯していると告げていた。

ローリーはこう指摘する。

「それは多くの人が彼が妻に何をしたのかを知っていることです。」

ローリーはジョンが殺人を誰かに話したと確信していた。リー刑事は捜査の新しい取り組み方を再考する。

リー刑事は言う。

「私達はジョンの行動分析をしていました。それによると、ジョンに圧力をかければ誰かに話すことが示唆されていた。しかしあまり多くの圧力はかけたくありません。ミランダに従って彼は権利を行使するかもしれないからです。」

*ミランダとは、逮捕時に告げられる「ミランダ・ライツ」の四つの権利のこと

1.あなたには黙秘する権利がある。
2.あなたの供述は、法廷であなたに不利な証拠として用いられる事がある。
3.あなたには尋問されている間弁護士の立会いを求める権利がある。
4.もし経済的に自分で弁護士を立てる力がなければ、公選弁護人が付けられる。

彼がこれを行使すると、弁護士抜きで直接話すことはできなくなる。

ローリーは言う。

「世界で最高の犯罪は、犯人に捨てられた元彼女によって解決されることがあると私は常に思っていました。ジョンには彼女がいたことも知っていました。」

そしてローリーの見解どおりのことが起こる。

ジョンの元彼女は女子大生達と同居していた。元彼女はそのうちの一人に、元彼が妻を殺したことを話す。その友達は別の友達に話し、友達がまたその友達に話し、6人の女友達を経由し、ある女性が父親に連絡をする。その父親が警察に連絡してきたのだ。

その父親の協力により、警察はジョンの元彼女ジュリーを特定。捜査協力に同意した彼女をポートランドに連れて来る。

ジョン兄弟が働いていた金属加工工場の側を運転していた時、そこを通る度にジョンの様子がおかしくなったとジュリーが言う。ジョンは妻を絞め殺したと言っていた。

しかし元彼女によるジョンの告白だけでは十分ではなく、遺体発見が必要になる。ローリーはジョンが監視できる場所に遺体を埋めたと感じており、職場近くなら辻褄が合う。

自分の勘とローリーからのヒントに従い、リー刑事は工場近くの15エーカーの土地を捜索する。もしかしたらローリーが見続けている15という数字はこれかもしれない。

*15エーカーとは約6万平方メートル

リー刑事は言う。

「その金属加工工場はかなり大きい建物です。植生がほとんどない。15エーカーの土地はそのすぐ横にあって理想的な場所です。木や茂みで覆われ隠滅できるうえに、アクセスも制限されているからです。警察犬をそこに導入しましたが、何も見つからなかった。がっかりしましたね。」

その後も1年を通してリー刑事とローリーはたまに事件のことを話した。その間、リー刑事はジョンが口を割ると感じたこともある。ローリーは自分の思想も常に共有した。物事は起こるべき時に起こるのだと。

アレキサスの遺体なしではジョンを殺人罪で起訴できない。しかしローリーはジョンの弟ケリーの固いアリバイにもかかわらず、彼が犯罪に関与していると確信していた。

ローリーは言う。

「弟はたまたまそこに居合わせたのだと思います。そして遺体遺棄を手伝うことになった。」

リー刑事は言う。

「ケリーはアレキサスが失踪した特定の時間帯に南カリフォルニアにいました。普通の人はケリーが犯罪に関与できたわけがないと思うでしょう。単純に、その時間帯に何千マイルも離れた場所にいたという理由で。」

しかしローリーは自分の見解を変える気はないとリー刑事に言った。

アレキサスが失踪してから1年が経過する。迷宮入りしそうな事件を前に、リー刑事はローリーの実績を踏まえて、弟ケリーの件を見直すことにする。

リー刑事は言う。

「ジョンには自分の友達は誰もいません。親友は弟ケリー。弟が何かを知っているなら親友も知っているということになります。」

ケリーの当時の友達や元ルームメイトは皆法学部の学生で、彼らはアレキサスの失踪時に一度事情聴取を受けている。

リー刑事は再度事情聴取を行う。出廷命令書を手に。そして協力を断るならば懲役もあり得ると一人一人を脅した。

友人たちの発言から、ケリーが何かを知っていることが明らかになる。彼は尋問のために連行されるが、協力するよう説得される。

リー刑事は言う。

「ケリーは私が知りたかったことの全てを話しました。彼がスポーツの試合で南カリフォルニアにいたのは事実です。しかし雨天のため実際は予定より24時間前にオレゴンに戻っていたのです。」

捜査にとっては転機である。ローリーのビジョンがなければ、弟ケリーに再度事情聴取を行うことはなかっただろう。そして彼の自供こそが犯人逮捕の決め手となる。

ローリーは言う。

「リー刑事は人を簡単に褒める人ではありません。でも、『ええと、あなたが正しかったようですね』と申し出るように言ってきました。その時点で私は変化を感じましたね。」

リー刑事は言う。

「ケリーとの取引はシンプルなものでした。私達は遺体が長いこと埋められているため、公式に身元確認ができなくなることを懸念していました。歯の治療記録は何年も前のものですし、指紋も出ないことも分かっていました。公式に遺体がアレキサス・バークであり、他の人物ではないという証拠は何もなかったのです。弁護人にとっては抜け道となるでしょう。そこでケリーと取引をしました。アレキサスの遺体の場所を教えることを含め、全面的に協力するならば、いかなる形であっても彼を起訴をしないと。」

ケリーはローリーのビジョンどおり絞殺だったと言い、夫婦喧嘩がどのように殺人に発展したかの全貌を語る。

アレキサスは玄関のドアをガチャンと締めて出ていったものの、車に乗ってから車の鍵を持っていないことに気付く。彼女はナイトガウン姿だった。部屋に戻ってきた彼女はジョンに怒鳴り続けた。

ジョンは彼女に歩み寄り、首に手をかけると「黙れ」と言う。そして電気コードをもぎ取って彼女の首を縛った。確実に息の根を止めるために。

遺体はカーペットに巻かれ、少なくとも36時間はカウチの後ろに放置されていた。その時間帯には、彼の家族や彼女の家族、少なくとも12人が訪れていたと言う。

その後ケリーが現れて、遺体を運ぶのを手伝う。彼らは遺体を父親の車のトランクに入れて運んだ。その車こそがリンカーンという大きい車。真夜中に彼らが働く建物の角から約70メートの場所に遺体を埋めた。

リー刑事は言う。

「遺体は小さな小川の側にありました。頭部が一番近く、水は数歩先にあった。埋められていたのも浅い場所でした。」

ローリーのビジョンは重要な詳細まで全て当たっていた。

弟の関与、遺体遺棄に使われた大きい車、浅い位置に埋められていること、水の側にあること、ジョンが監視できる場所に埋めたこと・・・。

ジョンは遺体の状況を監視することが可能だった。そこには毎日仕事で通っていたのだから。

しかしジョンはまだ拘留されていなかった。彼は遺体発見を恐れて町を離れていたのだ。

リー刑事は言う。

「翌日ジョンは戻ってきましたが、全く状況が分からないでいました。私は彼に、『妻殺害の容疑で逮捕する』と言いました。そして新品の手錠をかけてやりました。最高に気分がよかった。」

ジョン・バークは妻殺害の罪で懲役13年。弟ケリーは司法取引により罪に問われることはなかった。

この事件解決により、リー刑事がローリーの超能力を軽視することはなくなっていた。

リー刑事は言う。

「ローリーに連絡して事件の全てを話しました。そして彼女の見解がいかに素晴らしく正確だったかを伝えました。この時点で、彼女の言ったこと30のうち28は正確でしたから。」

ローリーが言う。

「自分の正当性が証明されたと感じているかは分かりません。ただ、イエス!これは機能する!と感じます。自分の予測があたることは大事なことでした。自分だけでなく、被害者にとっても重要なことだと思うから。」

ローリーは未来の予測は得意かもしれないが、自分のことに関してはそうではなかった。

彼女の能力にとても感動したリー刑事は、彼女にプロポーズをした。

最後のローリーの言葉だ。

「彼に会った時、結婚することになるとは一瞬たりとも思いませんでした。」

リー刑事は最期を締める。

「結婚してもう18年以上になります。私達は良いチームですよ。」


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