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【前世の記憶】日本人の生まれ変わりだと言う子供



アメリカ・アリゾナ州。ヘザーとダリルは二人とも画家で3人の子供がいる。

ダリアは常に笑っていて、転んでも汚れを払いのけて何事もなかったかのようにふるまうような子だった。言葉を覚えるのもトイレトレーニングも早く、すべての発達において早かった。

ダリアが1歳の時、家族はコスタリカに移住し、ビーチにサンドイッチ店をオープンする。

初めてダリアが不思議なことを言ったのは3歳の時。座ったまま静かに泣いているダリアにどうしたのかと聞くと、

「あのおばあさん可哀想。でも助けられない。あの人には助けが必要なの。」

と言うものの詳しく説明しようとしない。

過去にも現在にもダリアが言っているような女性は家族にいない。しかしこのようなことが数日ごとに起こるようになる。

ダリアは優しい子で、特に他人の痛みに関しては敏感な子だった。誰かにトゲか何かが刺さったことをきっかけにダリアは、「こんな時のためにキットを用意しておいた方がいいよね」と言い、消毒液や絆創膏、綿棒などを集め、小さなビーチチェアの後ろのポケットに入れた。

その2週間後、ダリルが乾燥機を修理していた時のこと。彼の「痛っ、ケガしたよ」という声を聞くやいなや、ダリアが医療キットを入れたビーチチェアを持って飛んでくる。彼女は父親のけがの手当てをすると絆創膏を貼った。

またある時、ダリルが庭を掃いていた時のこと。パティオの角に立っているダリアの姿が視野に入る。ダリルはそのまま作業を続けるがダリアは動かない。歩み寄って大丈夫かと聞くと、遠方をじっと見つめたまま今までに見たことのないような表情で言った。

「私たちが日本人だった時のこと覚えてる?」

ショックを受けつつも、ダリルが最初に思ったのは、この考えはどこから来ているのかと言うこと。可哀そうなおばあさんの時もそうだったが、再び同じようなことを言っている。

そこで何を覚えているのかと聞くと彼女は、

「ええと、だから今悲しいの。あの小さな女の子のこと考えてた」

と言う。

「小さな女の子って?」

「あの亡くなった子よ。覚えてる?働いて働いて働いた挙句に亡くなったの。悲しい出来事だった。そのことを考えてたの。」

ヘザーもまた、子供が他の子が病気になるまで働くことを話すなんて重要な意味があると感じていた。

手を広げて自分を見上げるダリアを抱きあげてダリルは言う。

「その女の子は今は楽になってると思うよ。」

「え、知ってるよ。あの子のことを考えてたら悲しくなっちゃっただけ。彼女はもうかなり良くなっててあんなに疲れてないよ。」

そうダリアは答えた。

この時のダリアは、完璧な文で大人のような言葉遣いをした。まるで年配の人が何かを思い出して伝えるように、言葉を発する前に完全に考えがまとまっている。

このことは衝撃的で何週間もダリルの頭から離れなかった。

家族が住んでいるコスタリカの村はとても田舎で、テレビさえもなかった。日本文化をはじめ他の文化に触れる機会もない。日本人という発想がどこからくるのか理解できなかった。

ある日ダリルが古い新聞に絵を描き始めた時のこと。ダリアが自分が描いてもいいかと聞いてくる。絵具をつけて筆を渡すと彼女は何かの記号を書き出す。そして2文字の漢字を書き終えると筆を置いて立ち去った。

とても上手く書かれたその漢字の意味を調べると、「Home」という意味を持つことが分かる。「Love」と「Home」。ダリル曰く「House」ではなく「Home」だと言う。

ダリアは元々字がうまい子だったが、特に日本の漢字は素晴らしいものだった。ダリルは娘が何か自分にメッセージを送っているように感じた。ダリルが絵を描いているのは、経済的プレッシャーから気を紛らわすため。そこへ娘がリラックスするようにと伝えているような気がしたのだ。「私達は家にいる。家庭がここにあるよ」と。

コスタリカで収入を得ることに困難を感じた家族がアメリカ本土に戻ったのは、ダリアが6歳の頃。

ある日ダリアが言う。

「ダディ、覚えてる?私が日本人だったって言ったこと。」

もちろん覚えているとダリルが答えると、思い出したことがあると言い、一つのシンボルを描く。ダリルはその葉っぱのようなシンボルを興味深く見つめていた。家紋のようにも見える。そして彼女が日本語を書いたときにそれがメッセージだと思えたように、これもそうなのでは?と思ったダリルは調べてみる。

家紋を見つけるサイトでよく似たものを見つけるがダリルは日本語が読めない。ダリアのケガした人に対する優しさ、日本人だった記憶、病気の子供と大人、そして家紋、これらに接点があるのでは?と考える。過去に何かが起こってそれを伝えようとしているのでは?と。

ダリアは大きい建物が怖いと訴えるようになる。ヘザーが航空博物館へ連れて行った時、ダリアは中へ入るやいなや震えてしがみつく。そして恐怖でとても耐えられないようで泣き出した。「ノーノー、落ちる!」と言いながら。彼女は建物が崩壊すると信じていた。

また、テレビで原爆のドキュメンタリーをやっていた時、ダリアは一言も喋らずただ画面にくぎ付けになっていた。普通の子供にとっては興味のある内容ではないだろう。

ダリルは聞いた。

「これ全部、関係しているかもしれないね。ケガした人への優しさ、おばあさん、少女、ビルが壊れる怖さ・・。第二次世界大戦末期の原爆が落とされた日本にいたと思う?」

すると彼女は少し考えた後立ち上がるとダリルの両肩をゆすって言った。

「それで、つじつまが合う!」

ヘザーもダリルも彼女から前世の話を聞くことは大事だと考えていた。

10歳のダリアは言う。

「過去に自分のことに興味があるの。終止符を打って普通に暮らしたい。」

ダリルはロサンゼルスの日本の家紋の専門家スーに連絡を取り、ダリアを連れて彼女のもとを訪れる。ダリアの描いた家紋を見たスーは興味をかき立てられたと話す。

親子はスーからヒイラギの家紋を見せられる。ダリアが描いたものとよく似ていたからだ。ダリアも自分が描いたものだとよく似ていると強く同意する。ヒイラギは日本ではとても神聖なものとされるとスーは言う。

彼女はこの家紋が使われる名字のリストを見せて聞く。この中で何かピンと感じるものはあるかと。ダリアは「草野」になじみがある気がすると言う。草野姓が多い一つのエリアは鳥取。原爆が落とされた広島に鳥取からの医療従事者たち派遣されたことがはっきり記録に残っている。原爆後の広島では建物が崩壊し、長いこと多くの人々が苦しんだ。

ダリアの記憶にある、建物の崩壊、おばあさんと少女、医療従事者との関連も否定できないことから、スーはこのあたりの手がかりも可能性として見てみるのもいいのではないかと助言する。

ダリアは調査の方向性が見えてきたことをうれしく感じていた。彼女は父親と一緒に日本に旅行することを楽しみにしている。

「日本に行って前世の家族を見つけられたらいいなと思ってる。そしたら終止符が打てて、ダリアとして生きられるようになるから。前世に封じ込められなくてよくなるから。」

ダリルは言う。

「スーが自分たちがフォーカスするべき方向性と場所を示してくれた。日本にはいつか絶対行くよ。行きたいからね。」

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