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【超能力捜査】失踪?霊視で解決アメリカ妻殺人事件

2002年5月31日、アメリカ・ルイジアナ州。大学院生のマレー・ペース22歳は、結婚式出席のためにアシスタントの仕事を早退する。

その2時間後、マレーが無残に殺害されているのが帰宅したルームメイトによって発見される。彼女は性的暴行を受け、80回以上刺されていた。

その後2か月の間にさらに3人の女性が殺害される。警察は、そのうち2人はマレーの殺害のDNAと関連があると発表。犯人は、1990年代から続く性的暴行及び殺人と関与している可能性もあった。

町は恐怖で大パニック。親は娘を心配し、女性達は護身術を受けたがり、ペッパースプレーがたくさん売れた。

FBIが他の警察各署と協力し、タスクフォースが設けられる。タスクフォースとは対策本部のことで、緊急性の高い、特定の任務のために編成される部隊。

地元のデビッド・マクデビッド刑事部長は、第一容疑者は何年にもわたり覗き見をしている男ではないかと提案する。しかしFBIによると、覗き魔の男は連続殺人犯のプロファイリングと一致しないと言う。

FBIの犯人のプロファイリングは、30代半ばの白人男性で、母親と住んでいるか一匹狼、というような一般的なもの。地元警察が見立てた容疑者は無視される。FBIには彼らのプロファイリングを裏付ける目撃情報もあった。

一つは、助手席に裸の女性を乗せてピックアップトラックを運転する白人男性の目撃情報。別の女性の遺体発見現場近くで目撃されており、女性は死んでいるように見えたという。

もう一つも同じく、遺体発見現場近くで怪しげな白人男性が、お墓参りに来た人物によって目撃されている。

その年の年末までに、さらに二人の女性が連続殺人犯によって殺害された。そのうちの一人の遺体近くで白人男性が目撃されている。

タスクフォースは数千人の白人男性からDNAサンプルの採集を開始。事件が起きた近隣に何らかの繋がりがある人や白いトラックを運転していた人、ある特定の年齢層の男性が対象だった。

そして犯人の合成似顔絵を発表。犯人は25~35歳の白人男性で、明らかに体力があり、女性に対して不器用という。しかし半年経っても容疑者は浮かばない。

法医学コンサルタントのアン・ウィリアムズは元弁護士で、大学で法医学捜査を教えている。彼女は数多くの未解決事件に取り組んでおり、この事件を手伝いたいと思った。

アンは、超能力者のジーニー・ボーゲンに電話をする。彼女とはこれまで一緒にいくつかの事件を担当していた。マレーの母親にも連絡を取り、マレーの出生情報を入手。これはジーニーが超能力者として事件に取り組むのに必要だった。

マリーの母親はアンの法医学の授業に出席することにする。娘のために・・。誕生した時はその場にいたのに、娘が亡くなる一番大変な時に一緒にいてあげられなかったからだ。

超能力者のジーニーは言う。

「アンから電話があって、殺害された女性の母親が彼女の授業に出ていることを聞きました。マリーの名前や生年月日は、サイコメトリーの手法として使います。つまり、触って名前を吟味して、それからビジョンが見えてきます。精神的にビジョンを求めているような感覚です。」

アンの授業では、法医学専門家に電話をかけ、生徒たちが取り組んできた事件についてスピーカーフォンで話をさせることがよくある。彼女はこの件についてジーニーへとのカンファレンスコールを設定。

スピーカーフォン越しにジーニーが言う。

「最初に見えるのは家です。きれいな家で、芝生もきちんと手入れされてる。とても静か。通りの角からアパートを見ている男がいます。マレーは彼と知り合いじゃなかった。でも見たことはあって馴染みはあった。だから途方にくれたり怖がったりはしてません。男はとても人懐っこいけど、突然暴力的になり攻撃してきました。マレーはあらゆる打撃に反撃しています。 彼女は男に一撃を食わしてる。でも彼はナイフを持っていて、それは残忍な戦いでした。 私は映像の中から抜け出すことができません。 彼女が最後の瞬間を迎えることが分かっていました。喉の何かで死ぬことを。喉を切ったのは彼です。恐怖でした。 その時点でマレーと私は一つになったようでした。 そして私はただ座って彼女が死ぬのを見るしかなかった。その後、男は背筋を伸ばして私を見つめました。彼と目が合ったようだった。私は心の中で震え始めました。緊張しました。そして彼はいなくなった・・。男は180㎝前後。黒髪、茶色の目にライトスキンの黒人。丸顔で小し顎ひげがあり、口ひげも生やしていました。でも口ひげがなかったときもありました。」

生徒の一人が犯人は何を着ているかと聞くと、ジーニーは、今は青いDickiesを履いていると言う。

*Dickiesはアメリカのワークカジュアルブランド

マレーの母親から殺害の詳細を聞かされた生徒達は、心霊的なビジョンの現実性に唖然とする。しかしアンは違っていた。

「ジーニーが犯人は黒人だと言った時、彼女は間違ってると思っていました。 統計的に犯人が白人だということは分かっていたから信じなかったのです。警察も白人を探していましたし。」

ジーニーの見立てが大きくずれているのであれば、捜査の力になり得るのか・・?

しかし、前にもジーニーと仕事をしたことがあったアンは、その正確性から、簡単に諦めてはいけないことも知っていた。

そしてジーニーは、犯人のビジョンを継続的に見るようになる。彼女は毎晩犯人に波長を合わせていたが、彼は車の中にいることが多かった。犯人は、最初の方の被害者2人の遺体発見現場近くにいた。ジーニーは更に遺体があることを確信する。

アンは友人で写真家のチップと一緒に、ジーニーがビジョンで見る場所を見つけようとする。もし別の遺体が見つかったら、犯人にたどり着くかもしれない。アン達は類似した場所の写真を撮ってはジーニーに送る。

ジーニーはアン達を電話で案内しようとする。しかし特定の木を見なければならず、双方が同じ風景を見ていなければいけないため、非常に困難だった。とはいえ、ジーニーが言ったとおりの風景を目にしたアン達は驚きを隠せなかった。

この広大な荒野で遺体を見つけるには大規模な捜索が必要で、時間は残りわずか。ジーニーは犯人が再び攻撃するのを感じ始めていた。

ジーニーは言う。

「彼は本当に女性が嫌いね。特に精神的に自分より上だったり、自分よりも優れていると感じている女性が。」

被害者達は皆プロフェッショナルな女性だった。

「女性に対するヘイトクライムのような状況です。標的の女性を数週間ほど観察しているうちに、彼の中にエネルギーが蓄積されていくのです。それが強くなった時、彼は実行に移しました。私はこの男が、殺さなければ気が済まない人物だと分かりました。」

彼は多くの時間をストーカー行為に費やし、女性達を観察した 。彼は被害者達の動きを知っていた。 彼女達が外に出る時のことも、誰が家にいるのかも。

「新たな被害者が出たと思いました。そしたら彼女は生きていることに気が付いたんです。もう、オーマイガーッド!彼女生きてるわ!って。彼女が未来の被害者だと気づいて、彼女はどこ?ここからどこに行けばいい?と焦りました。」

犯人は既に次の標的をストーキングしていたのだ。

ジーニーがどこで攻撃が起こるかを必死に探ろうとすると、ビジョンの風景がより認識できるようになる。

「彼はある晩、水面を眺めて立っていました。美しい白い鳥が水の上を飛んでいるのが見えます。あれはスタンフォード・アベニューのふもとだったと思います。」

被害者のうち2人はスタンフォード・アベニューに住んでいた。新たな被害者もこの通りに住んでいるのか・・。時間はあまりない。アン達はそのあたりを捜索していた。

「次に見えたのが家です。グリーンの家で、木が2本両側にある、こんな風に。家の前には茂みがあります。彼女はそこに住んでいるに違いないんだけど、それがどこなのかさっぱり分かりません。」

そこでついにアン達がジーニーのビジョンの一つを見つける。

「犯人は小さなレストランに行っていました。大きなテレビがある場所です。この建物の写真を見た時、ついに見つけたんだと嬉しくなりました。犯人がそこの常連に違いないと思ったからです。」

しかし遅すぎた。2003年3月13日、26歳のキャリー・ヨーダーの遺体が見つかる。犯人はまたしても指紋一つ残していない。しかし遺体にDNAが残っていた。DNAからマレーを殺害した犯人と同一人物だと特定。

警察は犯人は白人だと言うが、ジーニーのビジョンではライトスキンの黒人。

アンはマレーのルームメイトとの会話で、ある発見をする。マレーが殺害された朝、道を隔てた向かいから、怪しい男がマレーの家を覗いているのが隣人二人によって目撃されている。隣人はお互いが男を目撃したことは知らず、その日別々に警察に行っているが、警察は犯人は白人だとプロファイリングしていたため、隣人達の通報は無視される形となる。

そこで隣人達はその証言を有名なウェブサイトに載せた。

アンは言う。

「そこには、この男は青いDickiesを着て、顎ひげを生やしたライトスキンの黒人だと書かれていました。私は冗談でしょ!と言いました。警察は似顔絵作成には来ないのでどうしようかと思い、警察が使用しているソフトウェアを注文することにしました。マレーの隣人とともに、彼女が殺害された日にマレーの家を見ていた男性の合成似顔絵を作成しました。」

アンは、これがジーニーがビジョンで見た男性であることを確認し、それをタスクフォースに送る。

ジーニーは言う。

「アンと私は、犯人は白人じゃなく黒人だと気付いてもらうにはどうしたらいいか常に話してました。しかし、私達が知る限り、彼らは送った書類を見ていなかったようです。」

アンが言う。

「似顔絵と他の情報に加えて本文を作成し、この男についての目撃者の証言を添付しました。最も重要なことだからです。そして、この目撃者達の連絡先と、彼らが実際に法執行機関と話し、できれば専門家に似顔絵を作成してもらいたいと考えていることも記しました。そして私はそれを速達で知事に送りました。タスクフォースへも。でも返事はありませんでした。」

地元警察のマクデビッド刑事部長は言う。

「アンがその似顔絵をタスクフォースに提出しようとしたところ、拒否されました。 彼らは聞きたくなかったんです。 彼らが探していたのは白人男性でした。」

警察は目撃者全員が同じ男を見たことには同意しているが、アンが似顔絵を公開することを許可しなかった。

アンは言う。

「彼らは、『すでに似顔絵があるのは知ってますよね?別の似顔絵を出してほしくない、あなたはプロの似顔絵アーティストではない』と言います。私は『知ってます。でも警察のスケッチは誰がやったんですか?』と聞きました。すると、プロの似顔絵アーティスト」と言います。私は、その似顔絵は地球上の誰にも似ていないと言いました。」

1か月後の2003年4月、地元警察は、以前に2人の女性が性的暴行され殺害された地域で、のぞき見に関する新たな苦情を受ける。

マクデビッド刑事部長はその覗きについて説明する。

「この通りの向かいの隣人が電話をかけてきて、黒人男性がここに立ってこの窓を覗いていると言いました。 住人の女性は学校の先生でシングルマザーです。 窓辺にいくつかの足跡が見えました。足跡を追ったところ、彼はこのフェンスから近所へ逃げています。」

地元警察は、数年前に墓地でティーンエイジャー2人がナタで襲われた事件と同一人物だと考えた。

稲妻が走る嵐の夜、二人のティーンエイジャーが墓地に駐車していた。巡回中の警官が室内灯が点灯しているのを見て車内を確認すると、そこには血まみれの十代の若者二人がいた。彼らは叫び始め、黒人男性が来て、彼らに切り付け始めたと言う。犯人は警官が車で近づいてくるのを見ると車に戻り、現場から逃走した。

地元警察は被害者らと協力し、襲撃犯の似顔絵を作成する。それは覗き魔にそっくりだった。彼の名前はデリック・トッド・リー。 地元警察はこの男をタスクフォースに推薦する。 しかし彼らは黒人の覗き魔には興味がない。 彼らは連続殺人犯が白人だと信じていた。

もし彼らが同僚や信頼できる証人、経験豊富な超能力者の話に耳を傾けなかったら、殺人犯が捕まるまでにあと何人の女性が死ぬことになるのだろうか。

地元警察は、連続殺人犯は、何年にもわたりのぞき見をしている男の可能性があると考えていた。

のぞき見の新たな苦情により、地元警察は第一容疑者デリック・トッド・リーのファイルを再開する。リーはのぞき見の犯罪とは別に、さまざまな強盗やガールフレンドへの暴行の罪で投獄されている。

マクデビッド刑事部長は言う。

「私達はタイムラインを作り、彼がどこで仕事をしていたか、いつ仕事がなかったかを確認しました。彼が刑務所にいた時は殺人事件は起こらなかったのに、出所すると地域で問題が起こり始めていました。」

一方、タスクフォースは、被害者ケリー・ヨーダーが連れ去られた時の目撃者から新たな証言を得る。

彼らは今回、連続殺人犯の2枚目のスケッチを公開し、実際には必ずしも白人とは限らず、あらゆる人種の可能性があると発表した。

これを受けてマクデビッド刑事部長は言う。

「彼らの所へ行って、ほら言ったじゃないか!と言ってやりたかった。」

それは黒人男性の似顔絵で、アン・ウィリアムズによって作成された似顔絵にも似ていた。

この時点でジーニーは、犯人が再び攻撃する恐ろしい予感を感じていた。彼がチャンスがあれば殺すのが分かっていたのだ。しかし手がかりはあまりにも曖昧で、アンもそれを防ぐには無力だと感じていた。

アンは言う。

「ジーニーは、アラバマで行方不明の女性が見えると言いました、栗色の髪の女性だとも。私は、アラバマ州の女性については何も聞いてないし、分からなかった。」

その後、メリンダ・マッギーという女性がアラバマ州の自宅から姿を消す。家の中には血痕と暴力的な争いの痕跡があった。彼女の遺体は発見されていない。

2003年5月、ついにマクデビッド刑事部長はデリック・トッド・リーからDNAを採取するよう指示を受ける。DNA採集の後、リーは妻と二人の子供を連れて逃亡した。

数日後、マクデビッド刑事部長はタスクフォースに呼ばれる。

彼はその時のことを語る。

「私が中に入ると皆が私に注目していました。 そして、『あなた方は連続殺人事件を解決しました』と言われました。嬉しかった、興奮しました。涙が溢れてきました。」

タスクフォースは、連続殺人犯をデリック・トッド・リーだと正式に特定した。警察はリーをアトランタの安モーテルまで追跡するが、タッチの差で見逃してしまう。その後密告を受けて、タイヤ店の外で彼を逮捕。

マクデビッド刑事部長は言う。

「リーは私が車から降りるのを見ると取り乱し始め、帰れ!と言いました。 彼は私が追いかけていることを知っていました。1998年、私は殺人の容疑でーにインタビューしています。取り調べの後、彼の顔をじっと見ました。本当に生意気だったからです。そして私は言いました。お前が何をしたか知っている、いつか捕まえてやる、と。」

ジーニーはこの時の気持ちを語る。

「彼の名前を聞いた瞬間、彼だ、彼が捕まった!と思いました。ただ純粋な高揚感でしたね。」

2004年10月12日、陪審員はわずか80分でデリック・トッド・リーに、マレー・ペイスに対する第一級殺人の有罪判決を下した。リーは自白をしていないが、少なくとも7人の女性殺害が確認されている。

これには遺体が見つかっていない女性や一命を取り留めた女性は入っていない。また、この地域で起きた他の未解決殺人事件との関連も示唆されているが、それを証明するDNA証拠が不足している。

アンは、こうした連続殺人事件では超能力者が大いに役立つと言う。しかし多くの警察機関では、この種の未知の殺人事件に対処する十分な訓練や設備が整っていない。

ジーニーは言う。

「このケースは非常に困難でした。一つのケースじゃなくなく、15 のケースに取り組んでいるようなものだったからです。 私はとても苛立っていて、十分な早さで捕まるのに至りませんでした。」

マクデビッド刑事部長は言う。

「肩の荷が下りました。 1992年以来、一連の殺人事件と闘ってきました。そして私は退職する前にこれらの殺人事件を解決すると心に誓っていたのです。これは法執行機関の勝利であり、町の勝利でもあります。 我が町は、ドアに鍵をかけずに放置できるような安全な町なのをご存じでしょう。ビクビクして暮らさなくてもいい。そして再びそんな町になりました。 皆が自由に外に出て歩くことができ、身の危険を心配する必要はありません。」

リー被告には死刑が宣告され処刑を待っていたが、2016年1月21日、心臓病のため死亡した。


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