見出し画像

【超能力捜査】アメリカ男子高校生誘拐事件【ゆっくり解説】



アメリカ、アーカンソー州。

タイソン・イフォード 17歳は、バスケットボールと愛車のピックアップトラックをこよなく愛する高校生。夜は地元のスーパーでアルバイトをしていた。

1991年11月14日。その日も彼はバイトをしていて、普段と変わらない夜だった。ある男が近づいてくるまでは。男はタイソンに、駐車場に停めてある彼のピックアップトラックがぶつけられたと告げた。

タイソンはマネージャーにすぐに戻ると言って、その男の後について店を出る。彼が店に戻ってくることはなかった。30分後、不思議に思ったマネージャーが駐車場を確認すると、タイソンのトラックだけが残されていた。彼は警察へ通報する。

警察からタイソンの両親へも連絡がいく。タイソンの父親ヘンリーは地元保安官で、母親アニータは保護観察官である。

父親ヘンリーが当時を振り返る。

「私達が駐車場へ行くと、教科書などがまだトラックの中にありました。何かあったんだとすぐ分かりました。息子は世界中の何よりもトラックをこよなく愛しているからです。」

翌朝、アーカンソー州において史上最大級の捜索が開始される。警察関係者すべてがタイソンを探した。

捜査責任者のヘフナー警官は言う。

「私達は捜査において、家族とはある程度の距離を保たなければいけません。でも彼の父親を捜査から遠ざけることはしませんでした。行方不明になっているのは彼の家族であり、彼は捜査に参加したい。そして彼は警察官だからです。」

しかし捜査ではほとんど手がかりが得られなかった。あの夜、店のマネージャーが見た男の似顔絵と描写、そして駐車場での揉み合いを見たという目撃者の証言以外は。

ヘンリーは言う。

「警察は捜査していました。探していました。でも反応はない。誰かが来て息子を地球上から連れ去ったかのようでした。」

2日が経過する。警察は新たな手がかりを一つも見つけられないでいた。タイソンの誘拐は完全に謎である。

母親アニータが言う。

「警察でさえも身代金要求の電話があると思っていたと思います。でもありませんでした。」

しかしヘンリーはそう思っていなかった。

「私は最初から身代金目的の誘拐とは思わなかった。私に対する復習なのではと感じていました。実際、心の奥底では、遺体になった姿の息子を見つけるのが分かっていました。」

ヘフナー警官が言う。

「私達は常に生きている姿の子供を探します。それが私達が探している形だから。他の形で見つけることは望んでいません。変わり果てた姿の子供は探さない、何かそちらに導く証拠がない限りは。でも何もなかったから、どこかで生きているタイソンを探し続けました。」

メディアのインタビューで、アニータは犯人にこう呼びかけている。

「息子を家に帰してください。もしくはどこにいるか教えてください。どこにでも迎えに行きます。望むことなら何でもします。一人息子をとても愛しているのです。」

しかし何の手がかりもなく、生きているタイソンを見つける可能性は時間が経つにつれ低くなっていく。

当時を振り返り、ヘンリーは言う。

「あの時、親は警察以上だった。息子を取り戻すためなら何だってしたからです。」

絶望の中、アニータの弟がある提案をする。キャロル・ペイトの力を借りたらどうかと言うのだ。彼女が「キャロル・ペイトって誰?」と聞くと弟は、彼女は超能力者で、自分もお願いしたことがあると言う。アニータは、「分かった、やるべきことはなんでもやる。彼女をここに連れてきて。」と言った。

アニータの弟から話を聞いた超能力者、キャロルは、

「もちろん力になります。でも彼に触れるために必要なものがあります。何が起こっているかを知るために。」

と言った。

超能力者キャロル・ペイトは、幼い頃から自分には行方不明の人を探す能力があることを知っていた。彼女は100件単位の捜査に関わっている。

彼女は、サイコメトリーを使う。サイコメトリーとは人間や物体に触れることにより、それに関する情報を読み取る特殊能力だ。

「その人の写真や場所、手書きのものなどに触れると、ラジオの周波数を合わせるように、彼らが見たものが見え、彼らが感じていることを感じます。そして彼らが思っている主要なことも分かります。」

タイソン行方不明から3日後、キャロル・ペイトは、イフォード夫妻の住む町へと向かう。

キャロルはタイソンの個人的な持ち物が必要だと言った。他の人が着用したり触ったりなどしていないものが。アニータが、それなら靴があると言うと、キャロルは、「はい、それでフォーカスできます。彼の最近の写真はありますか?」と聞いた。

キャロルがその時のことを振り返る。

「タイソンの写真と靴を持ってきてもらいました。私はテーブルに座り、静かにその両方に触れました。最初に私が得た感覚は、彼は生きているということです。嬉しいニュースでした。」

キャロルは、この誘拐の全貌がタイソンが経験したのと同じ目線で見えていることも話した。

「すぐに全貌が見えました。男が見えます。迷彩服を着た男です。トラックも見えます。誘拐はあっという間に行われました。」

キャロルはアニータに事件現場へ連れて行くように頼む。アニータは捜査中の夫ヘンリーに連絡し、誘拐現場となった駐車場で落ち合う。

ヘンリーの自制心は引き裂かれていた。警察官としては確実な証拠にしか対処しないが、父親としてのヘンリーは何でもした。

キャロルのビジョンはこうだ。

「タイソンが店の前から駐車場に出てくるのが見えます。誘拐犯が前より詳細に見えました。彼らが出てきた時のビジョンもより詳しく見えます。タイソンをどんな風に掴んで、どんな風にトラックに押し込んだのかも。タイソンを掴む男がいて、それが彼のトラックが当てられたと言いにきた男です。男は彼をトラックの中へ投げ入れた。そして車は出発しました。あちら方面に向かって。彼らは裏側を通って左側へ向かいました。」

ヘンリーは言った。

「私は自分でまともな捜査官だと思っています。私達は他の誰もが知らない情報を得ていました。捜査では息子がどの方向に行ったのかさえ分かっていなかった。駐車場の裏側から出て行ったこと以外には。彼女は、私が何やらRidgeを見ることになる、と言いました。私は彼女が山の背とか丘のことを言ってるのだと思いました。(Ridgeとは、山の背、頂上部、尾根などの意味)でも彼女は、違います、道路です、と言うのです。私は、Ridge Roadという道路があると言いました。」

するとキャロルは言った。

「そう、それです。誘拐犯は彼をRidge Roadに連れて行きました。彼らはRidge Roadからそう遠くに住んではいません。彼らはタイソンを家に連れて行きました。」

ヘンリーはキャロルに、その場所へ案内してくれるように頼んだ。

キャロルは言う。

「エネルギーの痕跡を辿っていくような感じでした。その家の詳細が見えてきます。小さくて白い家。」

彼女はヘンリーと共にその家の方向へ向かう。アスファルトの終わりへ。そして砂利道へと。そこでキャロルに変化が起こる。

「エネルギーが止まりました。どちらへ行ったらいいのか分かりませんでした。まるでそこに壁があるかのようでした。それ以上は行けないのです。行ってはいけないというか。」

キャロルの超能力の行き詰まりにもかかわらず、ヘンリーとアニータは、彼女がタイソンを発見するキーだと確信していた。これが彼らが得た初の情報で、警察も手がかりを掴めていなかったからだ。ヘンリーがキャロルと話すことにより、その情報を警察に提供していた。警察は、彼からの情報は全て調べた。

期待できる手がかりの一つは、 キャロルの言う小さな白い家と砂利道だが、この辺りの田舎では珍しくない。

ヘンリーが言う。

「彼女は、タイソンが建物の中にいるのが見えると言います。ディア・キャンプのような建物だと。捜査はその情報にフォーカスして、あらゆる場所を探しました。
言い換えれば、捜査は彼女の言ったことに振り回されていました。他には何の手がかりもなかったんです。」

ヘンリーは地元で尊敬される警官だが、超能力者の手を借りることを支援する警官ばかりではなかった。

「警官の一人に言われました。悪魔と仕事をしていると。まぁ、それは彼の信念です。私も捜査官ですが、事件の真相を解明するためには、手に入った情報は何でも受け入れます。」

キャロルは毎日タイソンへのコンタクトを試み、彼女が見たことや感じたことを毎日イフォード夫妻に報告する。タイソンは確実に生きているとのキャロルの言葉を両親は信じた。しかし彼女のいくつかのビジョンは不穏なものだった。

タイソンはとてつもない恐怖を感じていた。虐待を受けているのが分かる。犯人達はロシアン・ルーレットのようなことをしていて、銃を彼の頭に突きつけていた。

キャロルは言う。

「銃を私の頭に感じました。もしくはタイソンの頭に。奇妙な感覚です。」

彼女のビジョンによると、タイソンを誘拐したのは二人の男。一人はカウボーイブーツを履いていて、個性的なベルトバックルをしていた。しかし彼はビジョンから消えてしまう。

もう一人の男はずっとそこにいて、常に銃を手にしていた。決してタイソンから目を離すことはない。しかしキャロルが両親にあえて話さないビジョンがあった。タイソンは繰り返し性的暴行を受けていて、あまりにも残忍すぎたのだ。

タイソンが行方不明になってから5日が経過。キャロルのビジョンに新しい手がかりはなかった。

ヘンリーが当時を振り返る。

「私は疲れ切っていました。まともに考えられないところまで来ていた。どこかでもう、区切りをつけなくてはと思いました。息子は死んでいると思ったから。妻に心の準備をした方がいいと話しました。」

しかしアニータは違った。

「夫は心の準備をするべきだと言いましたが、私は、『心の準備なんてしないわよ、タイソンはまだ生きているんだから見つけなきゃ』と言いました。」

通常は 24 ~ 36 時間ほど経つと遺体を探すことになる。

それから突然、キャロルのビジョンに変化が起こる。

「タイソンには24時間しかないかもしれない。この男は何かをする。」

キャロルのビジョンでは、タイソンは野外に引きずられて3つのお墓を見せられていた。その中の一つにひざまづかされ、男が彼の頭に銃を当てていた。

その夜、キャロルはサイキック・ビジリアをした。

ビジリアは、献身的な見守りなどの目的のため夜を徹することで、キリスト教では、夜通し祈りを捧げることとしても使われる。

パワフルな超能力でのビジリアにより、タイソンが殺されることを止められると彼女は信じていた。

「私は自分の超能力は神からのギフトだと思っています。私は神に助けを求めて祈ります。神は私を一度も見捨てたことはありません、一度も。」

キャロルは仲間達と輪になって、タイソンが危害を加えられることなく、安全に両親の元へ戻ってくるように、またこれに関わった人の誰にも危害が加えられないようにと夜通し祈った。

その夜、深夜2時ごろ。地元警察は予期せぬ電話を受ける。

祈りの結果は出た。

「僕は自分の名前はタイソン・イフォードで、解放されたと伝えました。」

と当時を振り返るのはタイソン本人。

あらゆる予想に反して、彼は人里離れた高速道路で開放されたのだ。自宅からはわずか1マイルの場所だった。

「男が僕に手を伸ばして、俺たち、友達になれるか?と聞きました。僕は、『もちろん』と言って、握手をして車から降りました。そして走れる限りの速さで最寄りの家に向かって走りました。」

ヘンリーが当時を振り返る。

「道路に停まらず、車で庭を直接横切って玄関に直行しました。」

アニータも当時のことを語る。

「夫がタイソンを抱きしめ、私も息子を抱きしめ、もちろん私は泣いていました。私のベイビーが帰ってきたのですから。」

両親はタイソンをすぐに病院へ連れて行った。途中、彼は誘拐について語る。その話はゾッとするほど残忍で、息子が生きてその話をできていることに感謝をした。

しかしとても奇妙なこの話は、警察には信じ難いものだった。FBIも介入した大がかりな捜査は、州警察、地元警察に加え、百人単位のボランティア達も必死に探した。それでも見つからなかったタイソンが、誘拐6日目の深夜に突然、自宅近くで解放されたというのだから。

タイソンが当時のことを説明する。

「ここハイウェイ9で僕は解放されました。そしてこの道の最寄りの家めがけて走りました。」

家族同様、警察はタイソンが生きて戻ってきたことに安堵していたが、タイソンの話はあまりにも残忍で、FBIと彼とのインタビューは5時間にも及んだ。彼が話している内容に耐え、生き延びたなんてあり得ないと。しかし、その内容はキャロルのビジョンと完全に一致していた。

アニータがタイソンに銃があったかと聞くと、銃を頭に突きつけられ、弾を入れた状態で犯人は引き金を引き続けたと言う。

キャロルにもそのロシアン・ルーレットのようなことが見えていたことを話すとタイソンは驚いた。

「なんで彼女が知っているのか分かりません。僕しか知らないはず。経験したのは僕しかいないから。」

キャロルが言う。

「タイソンが経験したことは、私も経験しました。程度としてはタイソンの経験には及びません。それでも物理的に経験しているのです。その感触もまだ残っています。だから私は切断されたんです。それはあまりにも・・辛いことでした。」

アニータはタイソンに、男の一人がカウボーイブーツを履いていたかと聞くと、彼はYesと言う。話を聞いていくと、キャロルが見たビジョンは、タイソンの目から見たもののようだった。

さらにキャロルは言う。

「私にはカウボーイブーツも、迷彩服も、ベルトバックルも見えました。でも警察官の息子だからなのか、タイソンは自分の周囲全てのことに注意を払っていました。」

タイソンの話を裏付けるためには、そして犯人に裁きを受けさせるためには、その男達を見つける必要がある。

タイソンは先導する。手紙の宛先にあった名前を覚えていたのだ。数時間以内に逮捕されたのは、カール・ミーニーという35歳の男。

ミーニーの家は、Ridge Roadから近く、わずか500メートル弱しか離れていない。彼の家は小さく白い家で田舎にあった。誘拐後に通ったルートもキャロルが案内したルートと同じ。

これにはタイソンも驚く。

「2通りの行き方があります。でもどっちの道を通ったかを彼女がなぜ知っているのでしょう。市内を通ってくることもできたはずです。ただ・・驚きです。」

彼は続ける。

「ここはRidge Roadと交わる道路で、キャロルが手がかりをなくした場所です。彼女は右側か左側か、どっちに行っていいか分からなかった。でも左側に進んだ。もし右側に進んでいたら僕がいた家に行っていました。」

犯人の住所がキャロルの超能力を証明したが、タイソンが死を免れない危険な状況にあったことも当たっていた。そして彼女はぎりぎりの状況で彼の命を救った。

誘拐されて5日後、タイソンはミーニーが自分の手を縛り、町へ出ていったことを覚えている。戻ってきた彼はひどく動揺していて、タイソンに言った。

「お前の写真が至る所にあるぞ。俺が行く店、行く店で貼られてた。皆がお前を探してることは間違いない。」

彼はその日のうちになんとかしなくてはいけないと言った。

キャロルが言う。

「犯人はタイソンを殺すつもりでした。それが私が感じたことです。犯人が彼にお墓を見せたことは両親に話しました。その夜、私は何か行動を起こさなければと思いました。何かしなければと。」

タイソンは証言する。

「その日の夜遅く、犯人は僕を連れ出して、銃を持っていました。掘った穴が3つありました。それまでそんなに祈ったことはなかったけど、どうか殺されませんようにと神に祈りました。どうか、お願いです、と。犯人は『お前を殺さなきゃいけない』と言いました。」

時を同じくして、キャロルは仲間たちと夜を徹して超能力的な祈りを捧げていた。

「僕は、どこに居たか誰にも言わないと約束するから、どうか解放してくれるように頼みました。」

夜を徹したキャロル達の祈りは続く。神よ、タイソンを解放してくださいと。

「何かが鍵となって犯人は良心の呵責を感じたようでした。開放してやる、と言ったんです。」

タイソンは、当時のことを説明する。

「ここはカール・ミーニーの家の前の道路です。開放される前、僕はあそこの牧草地の3つの穴が掘られた場所に連れて行かれました。僕を殺す意図があったんだと思います。でも何かがきっかけとなって・・僕が思うには、神が彼に殺さないように言ったんだと思います。」

犯人が殺すのをやめた理由はなんであれ、家族は超能力者の祈りのおかげでタイソンの命は助かったのだと信じている。

家族がキャロルのビジョンの精密さを称賛する一方で、警察はタイソンの話にまだ懐疑的だった。もう一つのサプライズが現れるまでは。二人目の誘拐犯、ケヴィン・スコットが自首してきたのだ。

それはミーニーによる奇妙な落とし入れだった。ミーニーはスコットに、タイソンが彼の敷地を荒らしているから懲らしめないといけないと嘘をついていた。彼はタイソンだけでなく、友人さえも策略として利用したのだ。

スコットの自白により、タイソンの話は全て裏付けられる。彼にナイフを当てて拉致したのはスコットで、運転したのはミーニー。彼は田舎の小さな白い家に連れて行かれ、男達はロシアンルーレットをした。

しかしスコットが去った後、タイソンが誘拐された本当の目的が明らかになる。性的暴力だった。

タイソンとスコットの証言により、カール・ミーニーは、強姦罪で終身刑3回、重罪殺人未遂罪で30年、誘拐罪で20年の判決を受ける。

現在タイソンは地元で結婚し、仕事でフォークリフトを運転している。あのおぞましい6日間のことは忘れることはないと言う。もちろん、キャロルが超能力で自分を救ってくれたことも。

最後にタイソンはこう述べた。

「超能力についてはよく分かりません。でも彼女が両親に僕がまだ生きているという希望を与えてくれました。」


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?