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【前世の記憶】誘拐されたと言い回る幼稚園児


アメリカ・ジョージア州

メドリーにはライリーという娘がいる。困難な出産を経て生まれてきたライリーはグレーヘアー。家族は驚き、医者もその理由を説明できなかった。

生後6ヶ月になると髪の色も変化し始め、メドリーは安心する。

ライリーは小さい頃から年齢よりも大人びた行動をし、話し方も明確で大人が喋るように話した。

行く先々で見知らぬ人たちと話し始め、小さな子供との会話が完璧に成り立っていることに周囲は驚いた。

ライリーは予測不可能の行動をするタイプの子だが、いくつかの出来事がメドリーを混乱させる。

映画「タイタニック」が公開された時、ライリーはわずか3歳。義姉たちが映画について話している時、ライリーはタイタニックについて多くのことを知っていて、姉たちにタイタニックに何が起こったのかを語り始める。

それは映画についてではなく、実際のタイタニックに起こったことだった。波止場に戻ってくる人たちのことや、死亡者名簿に自分の家族の名前がないか探す人々について語った。

娘がそのような情報を知っていることにショックを覚えるメドリー。ライリーは映画タイタニックを観たことすらなかったのだ。

ある夜、姉たちが満月を見せようとライリーを外に連れ出すとライリーは歌い出す。メドリーも聴いたことがない歌で、テレビからのものでもない。幼稚園に聞いてみても誰もその歌を知っている人はいない。

「I see the moon. The moon sees me. Please, Mr.Moon, don’t you tell on me.」

その歌は古さを感じさせるメロディーで、かなり昔の年代のものに聞こえた。メドリーはこの歌が何なのか数年にわたって調べ、ついに1930年代初期の「Please, Mr.Moon, don’t you tell on me」という曲だと分かる。

が、残りの歌詞を聞いたメドリーはショックを受ける。大人の描写が多くあり、とても3歳児が聴くようなものではなかったのだ。

なぜ3歳児がタイタニックについて話し、1930年代の曲を歌えるのか。

家族のバケーションでさらに予期せぬことが起こる。家族はジェキル島に行くことにした。

家族が住んでいるジョージア州の沖合にある小さな島で、たくさんの自然や動物に恵まれ、歴史的な場所でもある。

1920年代は、北部の人々が所有するバケーションホームがたくさんあった。

第一日目の朝、家族がビーチを歩いているときのこと。ライリーは前にここに来たことがあると言う。

「ハニー、あなたはここに来たことはないわよ」

他の場所と勘違いしていると思ったメドリーが正すと、ライリーは言った。

「違うの。ママが生きてる時じゃなくて、ママがここにいる時じゃなくて、私のママじゃなかった時のこと。」

娘から母親じゃないと言われた気がしたメドリーは混乱する。

ライリーはこのビーチに来たことがあると断固として主張するが、彼女はジェキル島に来たのはこれが初めて。

家族は歴史ツアーに参加する。最初に訪れた家はロックフェラー・コテージ。元オーナーのウィリアム・ロックフェラーは実業家であり金融家である。

ライリーは階段を駆け上がり走って中へ入っていき、ベルベットのロープを越えようとしてツアーディレクターに止められる。嬉しそうに走り回るライリーをメドリーは落ち着かせようとした。

ライリーが何処かへ行ってこれほど嬉しそうにしたり興奮したりするのを見たことはなく、こんなにはしゃぐこともなかった。

ライリーは、ここに座ってた、あそこで食べてた、と説明する。

そして置いてある家具が違う、お皿が違う、と言い出す。

ツアーディレクターは、前にこのツアーに来たことがあるのかな?と笑い出す。

過去に来たこともないライリーが何故、家具やお皿が違うと言うのか。普通、3歳児はそんなことすら考えないはず。

時間になり、ライリーに行こうと促すと

「行かない。ここが私の場所だから。」

と帰ろうとしない。腕を引っ張り全力で拒否する娘を無理やり抱きかかえなければいけなかった。

「帰らなきゃ!私の家なの。あそこに住んでたの。本当の家族がいるの。」

とライリーは叫ぶ。

メドリーは、娘のおかしな言動に加え、無理やり抱き上げて帰らなければいけないことが恥ずかしかった。過去にこんな聞き分けのない言動は一度もなかったのに。

ジェキル島から帰ってきた後のライリーは、友達と遊ぼうともせず、動揺しているのがはっきり分かった。

ある日幼稚園の廊下でメドリーは先生に呼び止められる。

「ライリーに何か起こってます?彼女が言うんです。実の両親と本当の家から連れ去られたと。」

実の娘から誘拐したと訴えられたことがメドリーは信じられなかった。周囲の人たちに自分が彼女を連れ去ったと言っているのだから。

メドリーは周囲の人々に説明して回る。まさかお腹を痛めて産んだ娘を自分の娘であると証明しなくてはならないとは思いもしなかった。メドリーは心配し始める。

家族をよく知る友人は言う。メドリーはとても愛情深く優しい母親で、家庭で異変が起こっているとは思えない。前世の記憶ではないかと思ったと言う。

自分の家で自分の娘にこんなことが起こっていて、娘はとても辛い状況にいることに困惑し、合理化しようとするメドリー。

しかし小さい頃から厳格な宗教で育ったメドリーは、なかなか我が子が経験していることを信じることができない。

友人から前世の記憶の可能性もあると言われたメドリーは、初めてそこで前世や輪廻転生について考慮し始める。この状況がどこからきてるのか分からないけれど、実際に起こっていることなのだと認識し始めた。

一方で、このことを全て箱にしまい、忘れてしまいたいと思う自分もまだいた。

この時点から状況は奇妙な方向へと動き出す。

ライリーは姉たちに、ベッドルームに男が現れると言うようになる。男はクローゼットからドアまで歩くこともあると。

姉たちにもメドリーにもその姿は見えないが、ライリーは見えると頑なに信じている。かと言ってそれと戦うわけではなく、過去に知っていた人物だと感じていた。

彼女が戦っていた相手は夢だった。

ライリーは木製の階段を描写し、階下で待っている男性を見ながら降りていくのを覚えていると言う。その夢の意味は分からないが、ただその男性の元に行かなければいけないと感じていたと言う。夢はいつもそこで終わる。

夢から目覚めるとライリーは震えながら涙を流し、話したがらなかった。

我が子に何が起こっているのか分からず、助ける術もない。

ライリーは18歳になっていた。

「ジェキル島に行って以来、悪夢を見てる。階段の下で待っている帽子をかぶった男性の元へ降りていく夢。そこで夢は終わってその男性の元にたどり着くことはないの。この夢の意味はもしかしたら前世でこの男性と何かを成し遂げることができずに死んだか、予期せぬ死に方をしたのかもしれないと思う。」

彼女はそれを達成しなければいけないような気がしていた。

メドリーは娘の前世でトラウマが起こったのではないかという恐れを抱いていた。誰かに傷つけられたのか。もし前世があるなら彼女は誰だったのか。

あれ以来ライリーをジェキル島に連れて行くことは2度となかった。問題が起こると考えていたからだ。

成長したライリーから、その答えを探すのをなぜ手伝ってくれなかったのかと言われたメドリーは、そうするべきだったと後悔する。

メドリーは娘を守っているつもりだったのだが、答えを探す機会を失ってないことを願った。娘はその答えをとても欲しがっている。

ライリーは高校を卒業し、またジェキル島に行きたいと強く思っていたため、母娘で再度行く計画を立てた。

ジェキル島や夢のことを話したりするとライリーは動揺する。泣いたり幸せな気分になったりと感情的になる。

それでもジェキル島へ行き、前世で何が起こったのかを探る必要があると感じていた。前に進むことへの手助けになるかもしれないから。

一方で前世の良くないことを知ることにナーバスになったりと、どういうわけか気持ちは変化する。さまざまなことが起こり得ることは恐怖でもあった。

メドリーもこの旅が大きな間違いでないことを望みながら、母娘はジェキル島へと向かう。

ライリー母娘はジェキル島のエキスパートにロックフェラー・コテージで会う手配をしていた。

コテージに近づくにつれ、母娘共にナーバスになる。ライリーはこれまでの人生で何かが欠けていると感じてきたが、それが何なのか見つけ、あるいは何かを成し遂げたという気持ちになりたいと思っていた。

エキスパートと合流したライリーたちは中へ入る。

「あそこにある帽子、夢に出てくる帽子に似てる。でも浅めの帽子だったと思う。」

とライリーが言うと、浅めだったのならもう少し丸い山高帽の可能性がある、とエキスパート。

ライリーはここに住んだことがあると確信していた。ベッドを見ると、そのベッドで寝起きしていたランダムな記憶も蘇った。エキスパート曰く、そのベッドは当時そのままのものだと言う。

コテージを見て回るライリーは、家具の多くが違った場所に配置されていることに感情的になっていた。いろんな違った波動をいろんな部屋で感じる。ある部屋で幸せな気分と思う一方で、家の中のものがあちこち移動したことに怒りを覚えたり。いろんなことが一気に起こって気持ちを処理できない。

「この階段は夢の中で現れるものと同じだと思う。ステンドグラスの窓と形が同じだから。」

ステンドグラスの窓に近寄った時が一番感情的になった瞬間だった。とても詳細に覚えているメインのシーンで、階下で待っている男性の元へ行こうとする中いつも絨毯を見下ろしていたから。

メドリーが「上に行ける?」と聞くと、上を見上げたライリーは覚悟を決めたように「うん、行けると思う。」そう言って階段を上がるライリー。

何かがその階段で起こったということを確信した。階段の手すりの感触さえ夢と同じだ。そこで死んだのか、転落して負傷したのか分からないけど、前世で階段を降りきれなかったのだと感じた。そのことが分かって嬉しくも感じる。

一回りコテージを見て回った後、ライリー母娘はエキスパートと座って話した。

エキスパートは言う。

ジェキル島クラブのピークは1920年から1930年代の間。このコテージはウィリアム・ロックフェラーによって購入された。孫やひ孫全員を一度に連れてきて滞在するのに十分な大きさの家というのが購入の目的だ。

1917年から彼が亡くなる1922年まで家族は毎年冬になるとここを訪れた。

ライリーは、自分がいつも1920年代の服を描いているのは、そのせいかもしれないと言う。ライリーが3歳の時から歌っていた歌も1920年から1930年代のもの。タイタニックが沈んだことを知っているのも大人の表現の歌を歌うのも理に叶う。

エキスパートがロックフェラー家の写真を見せる。最初の写真はウィリアム・ロックフェラーと妻のアルマイラ・ロックフェラー。

次の写真はウィリアムと彼の娘エマが写っているものだ。ライリーはエマの写真を見て知っているような気がした。エマという名前にも何か感じるものがあった。そして写真でウィリアムがかぶっている帽子は、夢の中で階下で待っている男性がかぶっているものに似ている。

次は孫たちの写真だ。ウィリアムの孫でエマの娘ジェラルディーンの顔にとても見覚えがあり、直感的な何かを感じた。名前も聞き覚えがある。自分の前世にジェラルディーンが強い影響を与えていたと感じた。

記憶の中で特別なものを感じたエマとジェラルディーンが母娘だということもライリーにとって興味深い。

そこでロックフェラー家の中でコテージで亡くなった人はいるかと尋ねると、アルマイラがこの家で1920年に亡くなったと言う。ウィリアムは2年後に亡くなった。家族はその後コテージを売却している。

前世の家族の名前を知り写真を見たことによって、ライリーはより深く繋がったように感じていた。

階段を降り切ったという事実はライリーにとって大きな意味を持つ。もしかしたらそれが前世で成し遂げられなかったことかもしれないからだ。それを成し遂げた今、肩の大きな荷物が降りた気がしている。

自分の中で折り合いがつき前進できそうだと感じるライリーは、夢の続きを見て何が起こるか見たいと言う。

夢の中で階下で待っている男性は誰なのかいまだに見当がつかない。ライリーはまたジェキル島を訪れたいと思っている。

  

 

 

 


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