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詩 「雨あがりのそらに」

「雨あがりのそらに」


ただ 砂の丘に立ち
ながれる星をみあげて生きていたなら

ただひとり
水のみちた夜のそらにゆらいで
息をしていたなら

だれのいかりにも
だれのかなしみにもふれずに

もう なみだもなく
むねをさくことも
はらをさくこともなく

こころをとざすこともなく


ああ それでも
ひとのなかに生まれ
ひとのあいだに生きることをのぞむのは

あなたが
ひとのなかに生まれ
ひとのあいだに生きたから

くちてゆくことばを
そっと りょうてでやさしくつつみ
息をふきかけた

もういちど もういちど
そらの風にのって飛べるように

そのようにあなたは息をそそいだから

うばってゆくひとにも
うらぎるひとにも

くちてゆく花にも
ほろびゆく大地にも
息をそそぐから


もういちど つぼみをひらかせ
もういちど 雨をうけて
あなたのほほえみは
雨あがりのそらに




2022年5月30日 さより


朗読:


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