よくある恋愛話の焼き増し

朝家に帰ると母が顰めて赤い顔で

「もう辞めるって言っていたんじゃないの?自分をどうして大事にしないの?」

と言い、涙目で私の前から去っていく夢を見た。今日も私は何かを失っている。実際、母はそのような態度を取らないと分かっているが。

Jは一年半後には居なくなる。その頃までに結婚相手も見つけるだろうし、私は東京での苦しい日々の中で彼に与える一粒の娯楽の一つに過ぎない。彼が東京にいる理由、地元を忘れて幸せを感じる存在にはなれない。私もまた、彼という娯楽を満喫して利用している!そう思い込むが、寝るときに例えば背を向けられるだとか、家から出ると手も握ってくれないだとか、好きとかいう言葉を口にしないところに少しずつ傷付いている。食卓に出されたものは隅々まで食べて欲しいものだ。私も慣れた味になり、箸がそろそろ進まなくなってきた頃合いだろうか。

成瀬を過ぎた頃、電波は届いているのに全く反応しなくなる。聴いている曲まで止まり、世界から隔離された気持ちになる。いつもと同じ時間帯に反対方向の電車に乗ると日常を鏡越しに見ているようで酔いそうだ。また淵野辺で曲が止まる。このスマホはいい加減寿命なのだろう。

これは誰に対しても犯す過ちなのだが、いつも言おうと思っていたことを、対峙して会話しているうち忘れてしまって口に出せない。私は大事なことを言葉にするのに躊躇い過ぎる。その瞬間を見過ごして今更というタイミングで言ってしまって後悔するのだ。

しかしながら、こうやって自ら選択した結果に苦しむのは愚かだとつくづく思う。悔やみはしないが、何をやっているのだろうと茫然とする。自分ばかり夢中になっているのが認識でき、立ちすくむ。今日もLINEの通知が来ないかとスマホの画面を見つめ続けている。

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