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小説『ヴァルキーザ』 13章(4)

テミ・ドーラを訪問したその日の夜、冒険者ぼうけんしゃたちは酋長しゅうちょうバラゴのすすめで、集落より少し上った所の尾根へ、星を見に出た。

んだ夜の空にらばりかがやく銀河の星々は、静かに、冷え冷えとした光を放っている。

星の光は、常に透明とうめいで冷たい空気によって、さえぎられることなく、空をる者たちのひとみにちらちらとえている。

皆、ただじっと静かに星をながめている。

つと、冒険者たちの間から2人の人影ひとかげが前へ進み出る。司祭しさいアム=ガルンと女魔導士おんなまどうしゼラだ。

アム=ガルンとゼラは天を見上げ、星のそうを読んで、自分と仲間たちの運勢うんせいを見定めようとこころみた。

アム=ガルンがゼラにたずねる。
「今のところ、星の並びは大きく乱れてはいないようですが、南天の果てに見慣れない星が一つあります。このきざしを、どうごらんになりますか」

「私の観るかぎり、これは凶兆きょうちょうです。あの星は、時と所を選んで、人々に不和や戦乱の災いをもたらす凶星です。これを見ている私たちも気をつけなければなりません。ただ、あの星はまた、その試練しれんに耐えた者に幸いをもたらす星でもありますから、きっと…」
ゼラはそこまで答え、口をつぐんだ。

アム=ガルンはつぶやく。
「イニシャル・オーダー(最初の世界)の時代、メディアス(魔法)が乱用され、人々の心に不和や争いが満ちた際にも、その前に、天の空にきょうの兆が見られたと聞いています。この時代に、下界をおおっている魔の雲も、つきつめれば、誰かのメディアスの乱用が原因、ということになるのかも知れません」

冒険者たちは、じっと星を見つめ、天の星の神に、旅の無事をいのった。

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