小説『ヴァルキーザ』1章
1.序章
風に乗せて祈りを届けよう
若草の野を飛ぶそよ風に乗せて
朝の空から光を届けよう
しじまの川を照らす彼方の朝の空から
これはフォロス族の勇者グラファーンの物語
われ、詩人のイプハーンが物語る
たて琴の音に合わせて物語る
聞く人よ、ここに集い給へ
われは想う
始成の紀より命編まれしわれらの中なる祖
アプスの胎の中に、われらは呼吸するを
始成の紀より時紡がれしわれらの天なる父
セレンの手の上に、われらは労働するを
始成の紀より夢紡がれしわれらの地なる母
アルヌの足の下に、われらは休息するを
それらの法によって、また元なる五つの種族の
盟約によって守られし美しき世のために
われは歌わん
そしてこの時代に選ばれこの世を司る星の女神
エイルのために
われは語らん
アプスとセレンとアルヌにより生まれ
エイルにより鍛えられた
このヴァルキーザの、その中に
ひとたび兆した闇と混沌から人々を解き放った
グラファーンたち七人の旅人の仕事を
その標しと証しを祈りと光に託して
われ、イプハーンがここに詩吟する
聞く人よ、ここに集い給へ
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?