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小説『ヴァルキーザ』7章(1)
7. イリスタリア
ユニオン・シップの冒険者たちは、イリスタリアにいる。星の女神エイルを守護神に崇め奉る、このイリスタリア王国の都は、ウルス・バーン大陸東部において最大の都市である。
この都市は比較的新しく造られたものであり、まだ二百年以上の歴史を持っていない。
中には王宮をはじめ、大聖堂、教会、商店、住居など数々の建物が立っており、威容を誇りつつも華やかである。
本拠の教会に帰った後、アム=ガルンは、巡礼団を代表して、巡礼に関する報告をするため王宮に参内する運びとなった。巡礼団自体は解散したため、彼はメレルたち他の巡礼者とは別れた。
グラファーンたちは、アム=ガルンに頼まれたため、王宮への報告に同行することになった。
荘厳な王宮の正門前まで着いたとき、冒険者たちに生じていた不安を表すようにイオリィが、ぽろりと呟く。
「私たちみたいな身分の者が、中に入れてもらえるかしら」
「大丈夫ですよ」
アム=ガルンが優しく微笑んで、そのとき冒険者たちに近づいてきていた一人の人物に皆の注意を向けさせた。
「使いの者がやって参りました」
「アム=ガルン殿」
若いその男は声をかけてくる。様子からみて、王城の勤め人のようだ。皆がその男に注目した。
「ライクス殿」
アム=ガルンは呼びかけに応えて、男に歩み寄った。
「ご無事で何よりです」
「ご心配をおかけしました」
ひとこと言葉を交わしたあと、ライクスと呼ばれたその使者は、冒険者たちの皆をちらっと見てから、アム=ガルンに聞いた。
「この方々が、ユニオン・シップのご一行ですか?」
「はい、私の生命の恩人です」
グラファーンは驚いてアム=ガルンに尋ねた。
「アム=ガルン、あなたは王宮の方と、かなりのお知り合いのようですが、これは…」
「はい。前にも申しましたとおり、私は国教会に仕える司祭ですから。それに申し遅れましたが、私は王宮に直属の身分でもありますので」
アム=ガルンはグラファーンを落ち着かせるように、さらっと答えた。
そして、ライクスが
「ここで立ち話をしていても、どうかと思います。皆様には、宮殿の中にて、詳しいお話をこちらから致しましょう」
と言い、
「どうぞお通り下さい」
門番に合図をした。
すると門番の衛士たちが、太陽をかたどった紋章の飾りのついた正面の大門を開けてくれ、一行は許可されて門を通り、中に入っていった。
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