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小説『ヴァルキーザ』7章(2)
そしてユニオン・シップは然るべき手続きを経てイリスタリア王宮に入り、王に拝謁することになった。
「陛下の御前では、どうか、ご注意をお願いします」
謁見の間の目前で、ライクスは一行に対して、真顔になった。
王族に対して失礼な言動の無い様に、という意味だと分かり、冒険者たちは顔を引き締め、緊張してうなずいた。
拝謁にあたって、一行は予め、王国から貸与されていた礼服に着替えていたが、その他の私物は何も持たず、当然、武具も携えてはいない。
そして一行、とくにイオリィは、慣れない上品な服にやや戸惑いながらも、気を緩めずに、謁見の間に、一列をなして入っていった。
典礼官たちが扉を開く。
列の先頭のライクスが奏上する。
「栄光のイリスタリア王国の偉大なる君主、エルタンファレスⅦ世国王陛下、フィリス国王妃殿下、また、列席されている貴き方々に申し上げます。わが国教会司祭のアム=ガルンと、国より参内を許可されし組合『ユニオン・シップ』の一行を連れて参りました。」
そして衛士長のライクスは、臨席する国王たちの前で、自ら引率してきた一行を横一列に並ぶよう導いた。
そこは目も眩むような明るい大広間だった。窓から採った太陽の光を充分に利用し、たいまつで補った照明で、広間にもかかわらず、部屋全体が十分によく見渡せた。
宮廷の楽士隊が、オーケストラで荘厳なイリスタリア国歌を演奏する。その曲はやわらかく気品があったが、同時にとても気高く威厳があり、とても印象に残る響きだった。
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