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うまくいけばホタルの幼虫みつかるよ

わたしとまことくんは、土曜日の朝に散歩をする。散歩といっても10kmを歩くので大体2時間くらいはかかる長い散歩。家の近くの多摩川の支流の土手を歩きながら、髪の毛を1000円カットで切るのはオシャレじゃないよとか、次に洋服を買うなら絶対XLサイズがいいと思うんだよねとか、思っていることを何でもかんでもポンポン話して歩いている。今日は土手のコースから少し外れて、小さな湧水や水路のある公園を横切りながら歩いていると、まことくんが「おれそこらへんのおじいちゃんとかと話したいなあ」と言った。水路の脇のベンチに腰掛けるおじいちゃんと、立って水の中を一生懸命覗き込むおばあちゃんがいた。おじいちゃんはおばあちゃんに「こういうところだったら、うまくいけばホタルの幼虫が見つかるよ」と楽しそうに言って、おばあちゃんは半信半疑で、でも嬉しそうに水の中を探している。ホタルの幼虫がどんな風かも知らないし、本当にこんな季節にホタルの幼虫がいるのかも、わたしは知らない。でも、いるかもしれない。もしかしたらこの水の中に、見つけられるかもしれない。人間以外のちいさな生き物に思いを寄せて、本当に見つけられたときには「やった」と心から喜ぶであろうあのおじいちゃんと、まことくんは確かにきっと気が合うんだろう。

ところで本当に、この時期にホタルの幼虫はいるのかい?

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