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牙の抜かれた若者たち《短文》

若い君たちへ。
いいかい。
よく聴いてほしい。

君たちは野生の動物だ。
逞しい身体と、若さと、鋭利な牙を持っている。

それがあればどんなところでも生きていける。
本来ならば。

しかし、その牙の鋭さを恐れる人たちもいる。
他人を傷つけてしまうからと言い、
知らぬ間に、勝手に、
まんまるな形に研磨されてしまっている。

それで良いのだろうか。
この牙は「判断能力」と呼ばれている。

君たちが、この社会で生きていくための武器だ。

それが、都合よく成形されたり、
最悪の場合は抜かれたりしている。
人間社会を傷つけないためという名目の下でだ。

この牙は比喩的な表現なので、
現実のものとは違い、丸くされてもまた尖らせることができるし、抜かれても新しく生やすことができる。

私が何を言いたいか、まだ分からないかもしれないね。

君たちの純粋さを大切に見守ることができる社会なら、それが一番なんだけれども、現実はそうはいかない。

君たちは立派な社会の成員とみなされていて、
それでいて若く、青いから、如何様にも染めることができる。

そこにつけ込み、君たちの純粋さを利用しようとする人間も、悲しいことに沢山いる。

問う。それで良いのか。
君たちはとっくに闘える。
その方法を知らないだけだ。

何を見るべきか、何を疑うべきか。
その判断能力は自力で強くしていくしかない。
申し訳ないが現状はそうなんだ。
そういう風に、君たちに任せるしかないシステムの中に私たちは生きている。

私からは願うことしかできない。
君たちの牙は、易々と抜かれてしまっていいものではない。
どうか、強く、逞しく、その足で立っていくための力を身につけてほしい。

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