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アニメ『犬王』を哲学する

先日、アニメ『犬王』を事前知識ゼロで視聴しました。

◯◯を哲学するシリーズでは、アニメ・映画・お笑い等のエンタメ作品を通じて毎回自分なりにその作品から何かしらテーマを抽出して哲学していこうかなと思ってます。かっこつけて「哲学」という言葉を使うだけで実際はそんな堅苦しいものではなく単に「考えてみる」程度なもので単なる考察とも言えます。

本件は、ネタバレを含みますのでご注意ください。



あらすじ・解説

あらすじ:室町の京の都、猿楽の一座に生まれた異形の子、犬王。周囲に疎まれ、その顔は瓢箪の面で隠された。

ある日犬王は、平家の呪いで盲目になった琵琶法師の少年・友魚と出会う。名よりも先に、歌と舞を交わす二人。 友魚は琵琶の弦を弾き、犬王は足を踏み鳴らす。一瞬にして拡がる、二人だけの呼吸、二人だけの世界。

「ここから始まるんだ俺たちは!」

壮絶な運命すら楽しみ、力強い舞で自らの人生を切り拓く犬王。呪いの真相を求め、琵琶を掻き鳴らし異界と共振する友魚。乱世を生き抜くためのバディとなった二人は、お互いの才能を開花させ、唯一無二のエンターテイナーとして人々を熱狂させていく。頂点を極めた二人を待ち受けるものとは――?

歴史に隠された実在の能楽師=ポップスター・犬王と友魚から生まれた、時を超えた友情の物語。

https://inuoh-anime.com/

解説:監督は『マインド・ゲーム』『四畳半神話大系』『夜は短し歩けよ乙女』「映像研には手を出すな!」の湯浅政明さん。アニメーション表現の可能性を拡張し続ける湯浅監督が挑むのは、世界最古の舞台芸術《能楽》。

https://inuoh-anime.com/

本作の中でテーマを抽出していく(メモ
- 名前
- 存在の証明、物語
- 呪い、死後


名前とは何か

作中で主人公は、何度も名前を変えている

  • 友魚(ともな):父親につけられた名、死ぬ直前に名乗った名

  • 友一(ともいち):琵琶法師となり所属した「覚一座」でつけられた名

  • 友有(ともあり):「覚一座」を出て「友有座」旗揚げ自らでつけた名

スターに成り上がった「犬王」と「友有」だが、友有が首を来られる直前に名乗った名は父がつけた名、最初の名の「友魚」だった。これにはどういう意味があるのだろうか。死ぬ直前の「友有」は「犬王」と離れ、もはや「友有」ではなくなったということだろうかー。

名前の変化は、その存在の変化を表す。父の息子「友魚」、琵琶法師「覚一座」の「友一」、犬王と共に有る「友有」。

名前というものは誰しもの身近にある。しかし「名前とは何か」今まであまり考えたことはなかった。

私にも親につけられた名前があるのに、ネットではハンドルネームを使う。各SNSで名前が違ったりもする。それは自身の存在の変化というよりは自身を存在の分散化とも言える。世の中には本名で活動する人もいる。


名前を失う感覚

名前を失う感覚を味わったことがあるだろうか。私はある。
婚姻届を提出する際、男と女のどちらの名字を姓とするか選ぶ欄がある。男の姓を選び、私は結婚して自分の名字を失った。

いまだに私の中で、自分の本名は旧姓であり、今の戸籍上の名前は本名ではなく芸名か偽名という感覚がある。この感覚は姓を失った人にしかわからないかもしれない。

法に訴えてまで本名を取り戻そうとも思わないが地味にアイデンティティを傷つけられたと感じる。失って初めて名前というものが、それなりに自分を形作っていたと感じた。

結婚後も旧姓を名乗り続けたり都合に合わせて便利に名前を使いわけている。



【感想】ミュージカルの印象を変えた

本作はミュージカルアニメーションである。
ミュージカルアニメと言えば代表格はディズニーだろう。国産のアニメで今までミュージカルアニメってあったのだろうか、私の中で印象があまりない。本作を事前知識ゼロでみた私は「あ、これは、ミュージカルなのね」と驚かされた。

映画『竜とそばかすの姫』、TVアニメ『マクロス』などで歌姫のような存在が歌ったりするものはあったが、それらを観て「ミュージカル」だと感じたことはない。だがこの作品は完全にミュージカルだった。

私はミュージカルが苦手だがこの作品はそのライブ感が凄くて「いや、この時代にこんなに大勢の観客がいてもマイクがなかったら後ろに声届かないだろ」とか「いや、エレキギターみたいな音してるけど」みたいに細々と気になる点はあったけど、そんなことは全然無視できるくらいに引き込まれた。その時代には存在しえない、でも、もしかしたら存在したのかもしれないと思えるくらいに想像を掻き立てた。本作は配信ではなく音響設備の整った映画館で観たかったかも。


まとまりのないノートになってしまったが、一旦これで。

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