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休職日記 #36 無いものねだり

先日、大河ドラマを見ていて「土いじりなんてして、バチが怖くないのか」というセリフが出てきた。どういう意味か分からなかったので調べてみると、どうも「土用の禁」ではないかということだった。

土用の禁というのは、土用の時期(季節と季節の変わり目、年に4回ある)に土いじりをしてはいけないという伝承だ。流石に土用の丑の日は知っていたが、土用の期間中に土いじりをしてはいけないという慣習は、恥ずかしながら、知らなかった。ただ、とても理に適っているなとは思った。

土用は約18日間で、土いじりをすることは忌み嫌われる。これで困るのは農家だ。いかんせん、土いじりが生業なのであるから、それができないということになる。一応、土用であっても数日だけ土いじりをしてもいい日があるが、基本的には作業ができない。ある意味、強制的に半月休みになるわけだ。
実際には、土を触らない作業をすることもあったらしいが、それでも季節の変わり目という体調を崩しやすい時期にまとまった休み(あるいは減速モードの作業のみ)を強制的に作り出すということになるので、あながちこの手の伝承もバカにできないと感心した。

現代人が半月まとまって休むということは、ほぼないに等しい。GWだって、どんなに長くしても1週間強であろうし、年末年始も1週間あるかないか程度と短い。もちろん、業種によってはそれすらないこともあるだろう。カレンダー通りに動くことが多い私の職場も、事実上盆休みがなかった。ようは、今を生きる私たちにとって1週間以上の休みというのは完全にレアケースであり、半月の休みともなれば、もはやあり得ない話なのだ。

このほど(意図せずして)およそ2か月半の休みを経験した私にとってもそうであったようで、復職してまだ数週間だが、平日の5日間働き続けていると、これが普通であるかのように思えてくる。さも、休職期間が夢でもあったかのように、あの時間を思うと「はて、あれは現実だったのだろうか」という感覚になる。不思議なものである。

また、意図せずして休みたいとは微塵も思わないが、まとまった休みから離れてしまった今、少し休みが欲しいと思わなくもない。今度また、まとまった自由な時間を得られる時はいつなんだろうか。土用の禁が今もあればいいのに、と無いものねだりをしたくなる。

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