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「栃木県庁」をめぐる旅(下)

2代目・3代目県庁舎

栃木県庁は明治17年、都賀郡栃木(現在の栃木市)から河内郡宇都宮(同・宇都宮市)に移転される。

栃木市から宇都宮市は、東武宇都宮線を使えば1本で行けてしまう。時間も普通列車に乗って30分程度と、そこまで遠くない。

東武宇都宮線

宇都宮に置かれた2代目栃木県庁は中央に4階建て、六角形の塔がある、なかなか奇天烈な建築だ。

二代目 栃木県庁舎(出典:栃木県HP)

県庁移転を進め、この二代目県庁舎を建てた県令・三島通庸は前任地の山形県でも、このような奇怪な和洋折衷建築(建築史的には擬洋風建築という)を建てており、現存例もある。
そのうちの一つ旧済生館本館(現・山形市郷土館)は近代的な病院として建てられた建物だが、これまた特異なデザインである。多角形の塔屋などは二代目県庁舎に似ていなくもない。

旧済生館本館(現・山形市郷土館、2019年撮影)

二代目栃木県庁も残っていれば、その不思議なデザインを楽しませてくれただろうが、残念ながら明治21年に火災によって焼失してしまった。

明治23年には片山東熊の設計で三代目栃木県庁舎が建てられているが、こちらも後に火災で焼失してしまった。

三代目 栃木県庁舎(出典:栃木県HP)

設計した片山東熊(かたやま とうくま)は、東京駅や日銀本館の設計で知られる辰野金吾、日本橋や横浜赤レンガ倉庫などを手掛けた妻木頼黄(つまき よりなか)と並び、明治建築界の三大巨匠と称される人物だ。代表作には、赤坂の迎賓館や上野の東京国立博物館表慶館、京都国立博物館明治館などがある。
現存する片山東熊建築で三代目県庁舎と外観デザインが近そうなのは、仁風閣(鳥取市)だろうか。

仁風閣(鳥取県鳥取市、2019年撮影)

4代目栃木県庁舎

3代目県庁舎の焼失を受け、昭和13年に建てられたのが4代目となる栃木県庁舎である。県庁舎として平成15年まで使用され、現在は県庁正面部分が5代目県庁舎の脇に移築され「昭和館」という名で公開されている。

現在の栃木県庁の模型、中央が5代目県庁舎で左が4代目県庁舎の昭和館(出典:栃木県庁)
移築された4代目県庁舎「昭和館」
正面より

なかなか威厳のある姿だ。
なお、昭和館は内部も見学できるので入ってみる。

正面玄関
玄関から入ると玄関ホール、この階段を上ると2階に至る
まっすぐ階段を進むと目に入るステンドグラス
階段部も風格がある
最上階にある「正庁」、ここで式典などを行った
正庁天井の豪華な装飾もまた特別な空間を演出している
廊下の様子、タイル張りだ
館内には復元された貴賓室もある

もはや説明は特に要しない、素晴らしい建築だ。ただ、それにもかかわらず、GW真っ只中の午後4時台というのに見学者は私1人だった。やや心配になるレベルだが穴場スポットとしては最高だ。十分、一見の価値がある。

5代目栃木県庁舎

さて、栃木県庁をめぐる旅も最後だ。現役の県庁である5代目栃木県庁に向かう。とはいっても、昭和館の隣(昭和館が県庁敷地内にあるというべきか)なので、すぐだ。
5代目栃木県庁の本館は、地上15階、地下2階で高さは81.8mだ。特に高いとまでは言えないが、県庁の前が広場となっており、この高さがダイレクトに伝わってくる。

5代目栃木県庁(下は指の映り込みです・・・)

訪れたのは祝日なので業務はもちろんしていないが、展望台が解放されているので、中には入れる。

玄関ホール

ここからエレベーターで最上階の15階に向かう。

展望台へ向かうエレベーター内にて、栃木県は「とちおとめ」などでも有名なイチゴの一大産地だ

エレベーター内で思わずクスッと笑っていると展望台に着く。展望台からは宇都宮市内を一望できる。

展望台から南側を望む、左手の森は宇都宮二荒山神社
展望台から西側を望む。逆光かつ霞んでいるが皇海山や男体山など栃木の名山が一望できる。
栃木県庁 左から県議会議事堂と本館、栃木県庁の銘板は県の形となっている

こんなニッチなテーマの旅ではあったが、わりと面白かった。なお、この後は、市内のサウナで有名な温浴移設で疲れを癒し、宇都宮餃子を頬張り家路についた。

帰り際にパチリ、やはり餃子像は拝んでおかねば

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