お仕事用サンプル1ー後編

機巧少女蒼姫あらすじ

 月面着陸した時から歴史が分岐した未来。各国企業はこぞって宇宙を目指し、月面にドームがいくつも出来て、そこで暮らす人もでてきた。

 そんな月で暮らす少年、篁陣は第十一月面高校へ通う高校二年生。高校生は新しく発見された「生体エネルギー」を豊富に使えるということで、生体エネルギーを膨大に使う人型ロボット「機巧」を整備したり操縦したりして、月近辺の戦争に参加していた。

 ひょんなことから友人たちと喋る機巧・蒼姫を任された陣は、蒼姫と共に宇宙を駆けることになる。

 高校の授業の一環として蒼姫を整備し、出撃命令が出れば戦士として蒼姫と活躍する陣たち。当たり前の高校生活の横で地球外生命体や大人たちの陰謀が渦巻いていた。

 敵にあたる地球外生命体は地球人に自分たちの進化の可能性を賭けて、実験材料として機巧を攫っていた。そのうちの一人、フリフラウは陣のライバルとなり、やがてもっと地球人を知りたいという欲から自分から事故を装い月に落下、陣たちに匿ってもらって互いを理解していく。

 そして生体エネルギーは脳が肉体の稼働限界を超えたときに生まれるエネルギーであることが判明。蒼姫は肉体の稼働限界を大幅に超え、肉体を破壊してしまったため、機巧という体をもらったのだと言う。他の機巧も同じ原理だった。

 最終的に手を組んだ陣たちとフリフラウは戦争推進派の大人たちを言いくるめるために大きな戦闘を演出し、フリフラウたちが月の近辺にワープしてくるワープトンネルを破壊して戦争を終わらせる。結果、フリフラウたちと生物学者たちが手を組み、蒼姫の体を再生する。普通の少女に戻った蒼姫と陣は互いの想いを告げる。

機巧少女蒼姫(後編)

(承前)

○蒼姫コクピット内・中
陣「授業では観てたけど、相手は迫力ある形してるな……」
蒼姫「ご存知の通り、敵方の攻撃理由はわかりません。ただ、こちらの機巧を無力化し、光の中で押しつぶす姿が何度も目撃されてます」
陣「うん。とりあえず、諦めて帰ってもらうようにするしかないんだよな」
蒼姫「そうですね……あっ」
 蒼姫のディスプレイに遠方の光景がズームアップされる。まさに機巧が無力化された瞬間。武器を手から落とし、パイロットは気を失ったのか、機巧は動かない。敵ロボットはその機巧を担ぎ上げる。
陣「……あれ、殺される! 蒼、なんとか出来ないか!?」
蒼姫「あそこまでの距離を全力飛行して……途中の敵の武力介入を排除して……私の機体性能をフル稼働すれば、ぎりぎり行けるかどうか……」
陣「シンクロ率が勝負か。迷ってる暇はないな、蒼、飛ぶぞ!」

○宇宙
 凄まじい速さで敵へと向かって飛ぶ蒼姫。戦闘の混乱の中を突っ切る。
 敵ロボットが蒼姫に気づき、追ってくるが間に合わない。

○蒼姫コクピット・中
陣「蒼、念の為、何か武器持ってる?」
蒼姫「腰に生体エネルギーで出力を調整するサーベルがあります。銃器はまだ積んでいません」
陣「それで十分。助けるだけだから!」

○宇宙
 蒼姫、飛行しながら腰のサーベルを抜く。光の粒子が飛び散り、巨大なサーベルが出現する。

○蒼姫コクピット・中
蒼姫「この生体エネルギーは……いったい……?」
陣「うっわ、これは大きすぎるな。調整、調整、イメージを……」

○宇宙
 蒼姫の巨大サーベルがナイフくらいの大きさになる。敵の攻撃や銃弾をかいくぐり、左右に飛び跳ねながら、目標に向かって飛ぶ。

○敵ロボットコクピット・中
 同じようなコクピット内。敵方地球外生命体である少女、フリフラウがディスプレイで目を見張る。
フリフラウ「これを実験体として持ち帰ればいいが……あの青いラインの敵影のほうが面白いな。あれはいい実験体になる」
 フリフラウ、にやりと笑う。
フリフラウ「目標変更。あの機体に興味がある!」

○蒼姫コクピット・中
蒼姫「敵機、抱えていた機巧を捨てました……こちらに迫ってきます!」
陣「え? 向こうの機巧は大丈夫そうか?」
蒼姫「まだパイロットは気を失っているようです。動きません……陣、接敵します!」
陣「蒼、向こうの相手をしてる場合じゃない、機巧を庇いながら、離脱する!」

○宇宙
 フリフラウのロボットがサーベルを構え、蒼姫に迫る。蒼姫、サーベルをかわし、横へ飛ぶ。そのまま動かない機巧へと向かう。

○敵ロボットコクピット・中
フリフラウ「私のことは無視か? フン、面白い。どこまで逃げられるかな」

○蒼姫コクピット・中
蒼姫「敵機、追ってきます!」
陣「蒼、気絶しているパイロットと回線って開ける? なんとかして逃さないと」
蒼姫「やってみます。陣は回避をお願いします!」
陣「わかった、蒼に傷をつけないようにする」

○宇宙
 フリフラウの機体、蒼姫に再度迫る。蒼姫、気絶している機巧を背に庇う。サーベルの出力が大きくなり、フリフラウの剣と同じくらいの長さに。斬り結ぶ。

○敵ロボットコクピット・中
フリフラウ「なかなかの腕前らしいな。久し振りに楽しい。だが」
 フリフラウ、ハンドルをぐっと引く。
フリフラウ「私は他人を庇いながら戦えるほど、たやすくはないぞ」

○宇宙
 切り結んだサーベル、次第にフリフラウの出力が大きくなっていき、蒼姫が押され始める。

○蒼姫コクピット・中
陣「ぐっ……」
蒼姫「陣!? 大丈夫ですか!」
陣「大丈夫、蒼は回線のほう頼む。ちょっとここは不利だ。動く!」

○宇宙
 蒼姫、横へと飛ぶ。フリフラウの機体がこちらを向いたことを確認して、蒼姫、素早い動きで飛び回り、少しずつ気絶している機巧と距離を取っていく。

○敵ロボットコクピット・中
フリフラウ「面白いほど素早いな! このタイプの戦い方は始めて見る……スピード重視か!」
 フリフラウ、微笑みながら蒼姫を追う。

○蒼姫コクピット・中
蒼姫「陣、あまり無理をすると、あの」
陣「まだ大丈夫。回線は?」
蒼姫「繋がりました。呼びかけをお願いします。私が呼びかけるわけにはいかないので」
陣「了解。おーい! しっかりしろ!」

○宇宙
 気絶していた機巧が体勢を戻す。その間もフリフラウの攻撃は続く。蒼姫、かわしては逃げ、切り結んでは逃げる。
 次第に蒼姫とフリフラウの一騎打ちは戦場の中心へもつれ込んでいく。

○蒼姫コクピット・中
 蒼姫のディスプレイに少年の顔が表示される。
少年「こちら、【ASAGI-01】パイロット。救出感謝する。これよりそちらの援護に入る」
陣「いや、俺、これで逃げる。この相手しつこそうだ。そっちも逃げて」
少年「だが、まだ撤退命令は出てないぞ」
陣「う、じゃあ、戦うふりして逃げるから援護してもらえるか?」
少年「構わないが……殺さないのか?」
陣「……」
 陣、ハンドルをきつく握りしめる。
少年「臆病者だな」
 ディスプレイから少年の顔が消える。
蒼姫「回線切りました。あんな人、放っておきましょう」
陣「……うん」

○宇宙
 逃げる蒼姫を追うフリフラウの機体。時折斬り結び、また蒼姫は逃げる。

○敵ロボットコクピット・中
フリフラウ「逃げてばかりか、臆病者が!」
 フリフラウ、レバーをぐっと下げる。
フリフラウ「逃げられないようにしてやる」

○宇宙
 フリフラウの機体、一気にスピードをあげる。蒼姫と並走し、そのままサーベルを振り下ろす。寸前で避ける蒼姫。畳み掛けるようにサーベルを振るうフリフラウの機体。
 蒼姫、それをさらに避ける。

○蒼姫コクピット・中
蒼姫「早く撤退命令出ないのかしら……このままじゃ陣が……」
 その言葉にふと陣が顔を上げる。
陣「……そうか、気絶させればいいのか」
蒼姫「え?」
陣「じいちゃんに教えてもらったんだ。峰打ちってものがあるって!」

○宇宙
 フリフラウの機体、執拗に蒼姫に畳み掛ける。避けてばかりだった蒼姫、またスピードをあげて距離を取ろうとする。

○敵ロボットコクピット・中
フリフラウ「逃げても無駄だ!」
 フリフラウ、一気に加速する。

○宇宙
 蒼姫を追うフリフラウの機体。途端、蒼姫がサーベルを抜き、振り返る。
 そのまま一気にフリフラウの機体へと距離を逆に詰めていく。

○蒼姫コクピット・中
蒼姫「陣!」
陣「蒼、傷つけたらごめん!」

○宇宙
 フリフラウの機体と蒼姫が高速ですれ違う。そのすれ違いざま、蒼姫のサーベルがフリフラウの機体の背中を思い切り叩く。

○敵ロボットコクピット・中
フリフラウ「ぐっ」
 仰け反るフリフラウ。そのまま前へ崩れ落ちそうになる。コクピット内が赤く明滅する。
 フリフラウ、レバーに手を置き、なんとか上体を起こす。
フリフラウ「この機体が破損だと……? くっ、あはは! こんな楽しい戦いは今までなかった」
 フリフラウ、さっぱりと笑うといくつかのボタンを操作する。
フリフラウ「今回は私の負けだ。次は貴様をさらって、実験体にしてやるからな、青の」

○宇宙
 フリフラウの機体、光に包まれて消える。他の敵機体も次々と消えていく。

○蒼姫コクピット・中
 蒼姫のディスプレイに敵機が消えていく姿が映しだされる。
蒼姫「敵機、消えていきます。同時に撤退命令も出たようです。機巧、月へ帰還します」
陣「そっか……よかった。緊張してたせいかな、ちょっと頭痛いや」
蒼姫「陣……」
陣「帰ろう、蒼。圭介やメイが心配してる」
蒼姫「はい」
 陣、コクピットの椅子に深く座り、頭を押さえる。コクピットが心配そうに明滅する。
 陣、コクピットの壁をそっと撫でる。
陣「心配しなくて大丈夫だから、蒼。それより、色々ありがとう」
蒼姫「いえ、私はその……不謹慎ですが、幸せでした」
陣「え?」
蒼姫「陣と一緒にいられたから」
 陣、鼻の頭をかいて、少し困った顔をする。

○格納庫・中
 第一格納庫。蒼姫が収まり、陣がコクピットから出てくる。
圭介「陣!」
メイ「【AOI-01】帰還しました。陣、おかえりなさい!」
 陣、コクピット前の通路でよろめく。圭介が一段抜かしで階段を駆け上がり、格納庫二階へ。陣に肩を貸す。
圭介「味方機巧を助けて、敵を退けてきたとか、お前、どれだけ目立ってるんだよ。後で大変だぞ」
陣「はは、そんなつもりないんだけど」
 メイ、一階で陣を見上げて、
メイ「バカ! 目立つよりも隠れてやり過ごしなさいよ! 心配したじゃないの!」
陣「ごめんごめん。それよりさ、紹介したい子がいるんだけど、いいかな」
圭介「は? 何、地球外生命体でも拾ってきたのか?」
陣「いや、えっと……蒼、そろそろ自己紹介して」
 陣、コクピットを叩く。しばらくの沈黙の後、
蒼姫「あの……【AOI-01】通称蒼姫の制御部、です」
圭介「え? 何、これ?」
メイ「制御部ってどこに隠れてるの?」
蒼姫「いえ……この機巧、蒼姫そのものだと思っていただければ」
圭介「機巧って……」
メイ「喋ったっけ……?」
蒼姫「普通は喋りません。でも、あの、私、陣に一目惚れして、それで」
二人「はあ!?」
 陣、困ったように蒼姫を見上げる。

(第一話 完)

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