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お仕事用サンプル1ー前編

 ゲームシナリオライターなんだからシナリオ載せないと、って言われた気がするのです。

 以下はポートフォリオ用に掲載します、架空のアニメ用のシナリオです(2年ほど前の『Project ANIMA ロボット部門』に応募、一次選考も通りませんでした)。

 長いので前後編に分けますが、よろしければお目通しください。

機巧少女蒼姫(前編)

登場人物:篁陣(たかむら・じん)/蒼姫(あおひめ)/菊池圭介(きくち・けいすけ)/一ノ瀬メイ(いちのせ・めい)/フリフラウ/他

○ 月面基地の青空
 ドーム型の月面基地。人工の青空が広がっている。
蒼姫M「ずっと探していたの」

○ 青空から格納庫へ
 青空から広いドーム内へ。
 戦闘機や戦闘用機巧(人型ロボット)が出入りする格納庫が見えてくる。
蒼姫M「ひとりぼっちだった私に光を見せてくれる人を」

○ 格納庫から校舎へ
 格納庫の傍にある、やや古い校舎へ。
 校舎の窓に寄ると、窓の外を見て頬杖をついている陣の姿が。
 陣がいるのは教室。授業中。
蒼姫M「早く、迎えに来て。ねえ――」
 陣、はっとしたように空を見上げる。と、
恵「篁くん、篁陣くん!」

○教室・中
 陣、慌てて席から立つ。教室からくすくすと笑い声が起こる。
 隣の席の圭介が陣の肘を突き、
圭介「(小声で)陣、教科書82ページ」
陣「(小声で)サンキュ」
 陣、慌てて教科書をめくる。恵、黒板を叩いて、
恵「この国、月面国家にとって一番大事な歴史です。いいですか、アポロ十一号が月面着陸を果たし、大国に続けと各国の企業が先導して、宇宙へと進出しはじめました」
 陣、うなずく。
恵「宇宙ステーションを経て、出来上がったのが、今、私たちが住む月面ドームです。その間に見つかった月の二大エネルギーはなんですか?」
陣「月鉱石と生体エネルギーです」
圭介「(小声で)何だ、聞いてたのかよ」
陣「(小声で)このくらい常識だろ」
恵「私語は禁止ですよ。篁くんは座って」
 陣、着席する。恵は黒板に大きく「生体ネルギー」と書く。
恵「生体エネルギーは統計上、15歳から発生しはじめ、20歳で大きく減少、23歳にはなくなります。そのため、月鉱石で動かせない軍用品などは皆さんの活動が必要になります」
 そこでメイが手を挙げる。
メイ「桜井先生」
恵「一ノ瀬さん、なんですか?」
メイ「軍事利用以外には使えないんですか? あたしは戦争なんて嫌です」
 恵、大きなため息をつく。圭介が陣をつつく。
圭介「(小声で)お前の幼馴染、また言ってるぞ。なんとかしろよ」
陣「(小声で)メイのことなんか知らないよ。黙ってればいいのに」
恵「菊池くん、篁くん、私語は禁止ですよ。一ノ瀬さんの質問に関しては、軍事訓練座学で何度も回答していると、連絡が入っています」
メイ「でも」
 そこで、授業終了のチャイムが鳴る。
恵「仕方ないわね。そこの二人と一ノ瀬さんは放課後、私のところまで来るように。あと、今のところ、次のテストに出ますからね」
圭介「えっ」
陣「(小声で)圭介は実技だけだからなあ」
圭介「(小声で)うるせえな、お前だって文系科目だけだろ!?」
 恵、再度大きなため息をつく。窓の外を機巧が飛び立っていく。

○ 学校廊下・中
 メイ、背を伸ばして職員室へと歩いている。その後ろから面倒くさそうに陣と圭介が並んで歩いている。
圭介「メイ、月に来た以上、何度戦争は嫌だって言っても無理だってわかってるだろ」
メイ「……あたし、来たくて月に来たわけじゃないわ。親の仕事で仕方なく」
圭介「ここにいる奴ら、みんな親の都合で来てるんだよ。ガキじゃないんだから、そのくらいわかれよ」
メイ「だって、地球はまだ戦争反対派だっているのよ。陣、なんとか言いなさいよ。あんたは叔父さんの都合でしょ」
陣「んー……戦争は嫌だけどさ、誰か死ぬのも嫌だな」
メイ「そういう態度の奴が一番嫌い」
 メイ、ツンとそっぽを向く。陣、困ったように頭をかく。
陣M「俺の両親は、月で生体エネルギーの研究をしていたという。俺が生まれてすぐ、二人とも相次いで亡くなり、俺は祖父に育てられた。その祖父も数年前に亡くなり、今度は月で食料研究をしている叔父に引き取られた」
 陣、廊下の窓から外を眺める。機巧が着陸体勢を取った後、ゆっくり着陸する。
陣M「叔父は戦争反対派だ。けれども、月にいる高校生は皆、軍事高校に入ることになっている。実際、高校のエリートたちはみんな、機巧で出撃し、戦争に参加している」
圭介「俺も、機巧の整備してえなあ……」
 陣が隣を見ると、圭介も窓の外を見ている。メイ、ため息をついてやはり窓の外を見る。
メイ「圭の趣味ってわかんない」
圭介「俺もメイの考えはわからねえよ」
陣M「機巧は生体エネルギーで動いている代表的な軍用品だ。月面ドーム内でもさほど多くない機巧は、俺たちにとって憧れではあった」
メイ「戦闘機だって、宇宙人殺せるんでしょ。だいたい敵がどんな存在かもわからないのに、戦争なんておかしいわ」
圭介「あー、もうメイとこの話はしたくねえな。陣、なんか面白い話ないのか?」
陣「……うーん、じいちゃんから聞いた話なんだけどさ、あるところに真っ白な犬がいて」
圭介「しっぽも白いとか言ったら殺す」
陣「命だけはお助けを」
メイ「陣って本っ当に緊張感ないわよね」

○ 職員室・中
 恵、机でノートに資料をまとめている。コンピュータやワープロはない。机の上には黒電話。
 戸を開けて、陣、圭介、メイが入ってくる。
メイ「失礼します。桜井先生いらっしゃいますか」
恵「ん、ようやく来たわね。三人ともこっち来て」
 恵、三人を手招き。三人、恵の近くに寄る。恵は三通の茶封筒を見せる。
恵「辞令です。三人に一台の機巧を任せます」
圭介「やった!」
 圭介、ぐっと握りこぶし。メイは驚いたように身を乗り出す。
メイ「待ってください。陣も圭も整備希望だったはずです。あたしは、一応オペレータでしたけど……パイロットは誰ですか?」
恵「篁くんです」
陣「俺!?」
恵「これは国からの命令だから、断れません。それを前提として聞いてほしいの。三人に任せるのは、この第十一月面高校で今までパイロット適応者がいなかった【AOI-01】型、通称蒼姫になります」
圭介「え、蒼姫って言ったら……」
陣「あの幽霊格納庫に置いてあるっていう……」
メイ「夜な夜な歌声が聞こえるとか……」
 陣、圭介、メイ、顔を見合わせる。三人同時に首を振る。
三人「辞退させてください!」
恵「駄目です。国からの命令と言ったでしょ? 断ったら退学よ?」
圭介「最悪だ……」
 圭介、がっくりと項垂れる。陣は困ったように頭をかきながら、
陣「で、どうして俺がパイロットなんですか?」
恵「この高校のパイロット志望者ではどうしても蒼姫とのシンクロ率が悪くてね。それで、全校生徒を対象に蒼姫のパイロットを探したのよ。その中で最高のシンクロ率を出したのが篁くんだったの」
陣「なんで俺?」
恵「さあ。まだ機巧はシステム自体わからないところが多いわ。だから、説明できないことも多いのよ」
 恵、茶封筒を三人に差し出す。
恵「困ったことがあったら相談しなさい。一応、私があなたたちの担任だから。で、 なるべく早く蒼姫を可動できるようにしなさい。戦地では一台でも多くの機巧を必要としているわ」
 メイ、不服そうに茶封筒を受け取る。圭介、陣も続いて受け取る。
恵「整備担当はサブにもう何人かつける予定よ。菊池くんは整備班長として蒼姫を大事に整備してね。篁くんは……」
 恵、陣をまっすぐに見る。
恵「卒業まで、必ず生き残りなさい」
 陣、うなずく。メイは茶封筒を見ながら、
メイ「卒業まで二年近くあるじゃないですか……」

○ 校庭~格納庫
 広い校庭。陸上部がトラック競技をしている横を通って、陣と圭介、メイが歩いていく。
 校庭の隅に小型オートバイが止まっている。陣とメイ、自分の小型オートバイを出してくる。
圭介「陣、後ろ乗せてくれ」
陣「自転車で着いてくればいいじゃん」
圭介「殺す気か」
陣「冗談だよ」
 メイ、さっさとバイクにまたがり走り出す。陣、圭介が後ろに乗ったのを確認してからメイを追いかける。二人とものろのろ運転。
 グラウンドの脇を通り抜けると、プレハブの格納庫がいくつも並ぶ。
陣「圭介、蒼姫の噂って他にもあったっけ」
圭介「格納庫から歌声が聞こえるっていうのが一番有名だろ。すすり泣きが聞こえるってのも聞いたなあ」
陣「俺たちが入学してからずっとパイロット決まってなかったんだよな」
圭介「違う違う。お前が初めてのパイロットのはず。蒼姫がこの学校に配置されてからずっとシンクロできる奴いなかったんだよ」
陣「……えー」
圭介「埃ずいぶんかぶってるはずだぜ。誰も近づかなかったからな」
陣「掃除からってことか」
圭介「その前にお前、本当にシンクロできるのかよ」
陣「自信ないなあ」
圭介「お前がシンクロできなきゃ、俺もメイもお役御免だろ。それが一番いいよなあ」
陣「でもさ、パイロットのいない機巧ってのも可哀想じゃないか?」
圭介「はあ?」
陣「花形ロボットですよーって作られて埃かぶってるってのも可哀想だと思ってさ」
圭介「陣って意外なところでロマンティストだよな。このバイクも捨ててあったのが可哀想だとか言って、修理して乗ってるし」
陣「雨に濡れた野良猫と同じ感覚」
圭介「野良猫でも十分ロマンティストだろ」
陣「そうかー?」
圭介「機巧もバイクも機械だろ。かっこいいいならわかるけどさ、可哀想はねえわ」
陣「うーん。俺のじいちゃんはよくテレビに話しかけてたぞ。映らなきゃ殴るぞって」
圭介「テレビは殴りゃ動くもんだよ」
陣「斜め45度で手刀を叩き込むんだってさ」
圭介「陣、カセットデッキは殴るなよ? 白黒テレビと金額が違うからな」
陣「ああ、それで叔父さん怒ったのか」
圭介「蒼姫も殴るなよ? たぶん、陣の手のほうが怪我するからな」
メイ「(遠くから)早く来なさいよ! あたし一人であんな幽霊格納庫入りたくないんだから!」
圭介「一番端の格納庫って、あれか。校舎から遠いなあ」
 陣、ぽつんと建っているプレハブを眺める。

○ 格納庫・中
 圭介、格納庫の扉を開ける。中に光が差し込む。
 メイ、スイッチを押して、格納庫の蛍光灯を点ける。
 格納庫の隅に青のラインが印象的な機巧が立っている。陣、機巧を見上げる。
陣「これが、蒼姫……」
メイ「へえ、意外と綺麗にされているじゃない」
圭介「あれが整備用のコンピュータか。でかいな」
 圭介、整備用のコンピュータに近づく。ボタンを押すと緑のランプが点く。
圭介「もう事前準備はできてるみたいだな。陣、本当にシンクロできるかやってみろよ」
陣「え、もう?」
メイ「シンクロできなかったら、蒼姫の担当から外れられるのよね? こういうのはさっさと白黒つけるべきだわ」
陣「いや、心の準備とかそういうものが」
圭介「必要ない」
メイ「ほら、さっさと準備して」
 陣、格納庫の隅にある細い階段を昇り、格納庫の二階へ。蒼姫の胸部分にあるコクピットを眺める。
陣「(呟くように)シンクロすりゃ、ここが開くんだよな……」
 陣、手を何度か握って開いて、手をズボンでこすって、それから両手でコクピットにふれる。
 かすかな音がして、コクピットが開く。
圭介「開いた!? マジか!」
メイ「うわ、本当にシンクロしたんだ。陣、せっかくだから、中入って動かしてみてよ」
陣「滅茶苦茶言うなよ。動かすなんて簡単にできるか」
 言いながらも、コクピットの中に滑り込む陣。

○ 蒼姫コクピット・中
 コクピットの椅子に座る陣。外の音は聞こえず、静か。眼の前には生体認証用のディスプレイがあるだけ。
 陣、ディスプレイに触れる。途端にコクピット内に明かりが点り、様々な計器類やハンドル類がせり上がってくる。
陣「うわっ」
蒼姫「認証完了。篁陣、ですね」
陣「え? この声、何?」
蒼姫「私は蒼姫。この機巧の制御を司る者です」
陣「え? え? 機巧ってそんなシステムついてるのか?」
蒼姫「あの、陣と呼んでもいいですか?」
陣「え? あ、いいけど……」
蒼姫「陣、あの」
陣「はい」
蒼姫「……あなたに、一目惚れしたんです。だから、陣のことは絶対に守ります」
陣「……え?」
蒼姫「その、好きになってもらえるように努力もします! だから、怖がって下りたりしないでほしいんです!」
陣「……ちょ、ちょっと待って、ええと」
蒼姫「蒼姫です。蒼と呼んでください」
陣「蒼、俺に少し落ち着く時間をもらえないか」
 陣、コクピットから出ようとする。コクピット内が明滅する。
蒼姫「待って、陣、置いていかないでください! 私、ずっと陣のこと待ってたんです!」
陣「いや、それはうん、ありがとう? えっと、その、機巧がしゃべるとか、俺知らなかったし、それに」
蒼姫「普通は喋りません」
陣「え?」
蒼姫「内緒で喋ってます」
陣「落ち着く時間を下さい」
 陣、再びコクピットから出ようとする。コクピット内が明滅する。
蒼姫「あのあのあのっ、陣が嫌なら黙ります! だから」
陣「蒼、俺、蒼のこと捨てないからさ、とりあえず、仲間と相談させてもらえないかな」
蒼姫「それなら、コクピットから会話してください! 今、通信回路開けますね」
 陣の眼の前がディスプレイになり、外の景色が映る。格納庫の一階で圭介が不安そうに見上げており、メイは手を振っている。
メイ「陣ー! 聞こえるー? 聞こえたら動いてみてー!」
圭介「どうするよ、幽霊格納庫だぜ? このまま陣出てこなくなったりしないよな」
メイ「縁起の悪いこと言わないでよ! 陣! 聞こえる!?」
蒼姫「幽霊格納庫? 失礼な人ですね。私の家のことを」
陣「圭介、メイ、聞こえてる! いや、色々話したいんだけど、コクピットから出られなくて」
圭介「マジか! やっぱり呪われてるんじゃないか!」
蒼姫「あの人、本当に失礼です」
メイ「ねえ、陣。なんか女の子の声聞こえない? ひょっとして幽霊?」
陣「いや、そうじゃなくて」
蒼姫「あの女の子も失礼ですね。幽霊みたいな非現実と一緒にしないでください」
陣「蒼は落ち着いて。やっぱり一度、コクピットから出してもらえないかな」
蒼姫「……出たら、絶対にあの二人に邪魔されて、陣は戻ってきてくれません」
陣「……否定できないなあ」
メイ「ねえ、陣! その可愛い声の女の子、誰? コクピットに誰か隠れてるの?」
圭介「それより、なんとかコクピットから出られないのか? シンクロ出来るのは陣だけだから、出られないとなったら、蒼姫壊すしかなくなるぞ?」
陣「それは困る! 蒼、壊される前に俺を出して。必ず戻ってくるから」
蒼姫「……わかりました。じゃあ、コクピット開けますね」
 と、格納庫にサイレンが響き、壁の回転灯が赤く回りだす。
メイ「何、何が起こったの?」
 メイ、不安そうに周囲を見渡す。備え付けの黒電話が鳴る。圭介が電話に出る。
圭介「はい、第一格納庫です」
恵「(電話)桜井です。三人とも、そこにいるのね? 篁君はシンクロに成功した?」
圭介「一応成功しましたが……」
恵「(電話)そっか……。タイミング悪いけど、もう出撃命令が降りたわ。こっちでも無理だって交渉したんだけども、この第十一ドーム近辺の戦闘だからって押し切られて……」
圭介「待ってください、出撃って蒼姫と陣で、ですか!?」
メイ「無理です! あたし、まだ蒼姫と通信回路結んでません!」
メイ、慌てて電話の横で叫ぶ。
陣「ちょっと待って、圭介、メイ……!」
 陣、コクピットの中で立ち上がり、頭をぶつける。
陣「痛ってー……。蒼、ごめん、痛くなかった?」
蒼姫「え? 私は大丈夫ですが、陣は……」
陣「蒼にぶつかったからさ、痛くなかったかなって思って。戦闘は、蒼、痛くないのか?」
蒼姫「痛覚的なものはほとんどありません。腕が切れたりしたら自信がないですけど……」
陣「そっか。あのさ、俺は正直に言うと戦闘は嫌いだ。蒼は?」
 蒼姫、少し黙る。コクピット内の明かりが静かに明滅する。
蒼姫「私も、嫌いです。でも、戦闘をしないことで陣と離れ離れになることのほうが、今は怖いです」
陣「蒼……」
蒼姫「陣と一緒にいられるなら、何も怖くないです。でも、それは私の感情だから、陣は陣で決めてください」
 陣、押し黙る。コクピットのディスプレイには黒電話へと怒鳴る圭介とメイが見える。
陣「圭介、メイ」
圭介「なんだよ、陣! さっさとそんな所から降りてこい!」
メイ「そうよ、降りてきちゃえば、もう出撃とか言われなくて済むんだから!」
陣「俺、出撃するよ。大丈夫、シンクロは出来てるんだから、早いか遅いかの違いだ」
メイ「バカ! あたし、オペレート出来ないのよ!? それでどうやって戻ってくるのよ!」
圭介「……」
 圭介、じっと蒼姫を見上げる。
陣「どうせ、オペレートもドーム内の有線のある地域だけしかできないんだ。着陸の時考えるよ。それより、俺、自分の近くで誰か死ぬことのほうがずっと嫌だ」
圭介「……わかった、メイ、急いで有線回路結べ。蒼姫との回路は後でいい。陣」
 圭介、陣のほうへサムズアップする。
圭介「どうせなら、かっこよく活躍してこい」
陣「努力はするよ」
メイ「あんたたち、本当にバカよね! 陣は一度くらい頭殴られてくればいいわ! でもちゃんと生きて戻りなさいよね!」
 メイ、通信機器のほうへ駆け寄る。圭介、黒電話へ声をかける。
圭介「陣、出撃するそうです。フォローはお願いします」
恵「(電話)……わかったわ。一ノ瀬さんのオペレートの分はなんとかするから」
 圭介、電話を切る。そのまま整備コンピュータのほうへ近づいて操作を始める。
陣「蒼、頼り切りになっちゃうけど、よろしく頼むよ」
蒼姫「大丈夫です。私が絶対に守ります」
メイ「第一格納庫、【AOI-01】出撃態勢に入ります。周辺車両、整備員などは退避をお願いします。カウント30、29、28……」
 陣、目の前のハンドルを握る。
蒼姫「陣、その機器から陣の動きたいイメージは私に伝わってきます。私はそのとおりに動きます」
 陣、頷いて、もう一度ハンドルを握り直す。
蒼姫「危険は私が回避します。だから、陣はのびのびとイメージしてください」
陣「わかった、やってみる」

○格納庫・中
 格納庫の天井が開く。月面ドームの青空が見える。圭介、その空を見上げる。
メイ「15、14、13、12……」
圭介「出撃準備完了。……っていうか、陣、これを本当に動かせるのかよ……」
メイ「5、4、3、2、1、【AOI-01】出撃します!」
陣「了解」
 蒼姫、軽く膝をかがめて、上空へと飛び上がる。
圭介「……ちょ、速い!」

○月面ドーム空~宇宙
 上空に舞い上がった蒼姫、滑らかな動きで月面ドームの空を飛ぶ。そのまま、何台もの機巧が飛ぶ中に合流する。
 その中でも極めて速い速度で、綺麗に飛ぶ蒼姫。
蒼姫「陣、速い……! 無理はしてませんか!?」
陣「俺は大丈夫。蒼は?」
蒼姫「大丈夫です、でも……」
陣「どうかした、蒼?」
蒼姫「いえ、宇宙空間に出ます。一時的に無重力になりますので、踏ん張ってください!」
 ドームの出口に吸い込まれるように入る蒼姫。途端周囲は宇宙空間になる。
 光線弾が飛び交い、機巧が敵のロボットと戦っている。敵ロボットは機巧よりも人型に近いガッシリとした姿。

(以下、後編へ)

実はお仕事募集中です

 主にゲームシナリオやシナリオ、小説などフィクションを書かせてくださる会社さまを探しております。

 乙女ゲームでは10年近くの実績がありますが、全対象のゲームでの実績はありません(乙女ゲームの実績はご連絡いただければ公開できます)。

 その上で申し訳ないのですが、以下の条件をつけさせてください。

・在宅勤務ができること(当方軽度のうつ病のため、通勤が非常に難しいです)
・金額は安くても構わないので、実績として公開できること

 ご検討のほど、よろしくお願い申し上げます。

趣味で書いているので、サポートは不要です。お気持ちだけいただくことに致しますね。