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audible『精霊の守り人』のナレーターが読むバルサがめちゃくちゃ良い

こんにちは。宇宮7号です。
絵を描いたり世界史の動画を作ったりしています。

今回は上橋菜穂子ファンから同じ上橋菜穂子ファンに向けて伝えます。
audibleを聴いてください。audibleで『精霊の守り人』と『獣の奏者』を聞いてください。
めちゃくちゃいいです。


audibleというのは、本を朗読してくれるサービスです。そこに登録されている上橋菜穂子作品、とりわけ『精霊の守り人』及び『獣の奏者』がとっても良いです。ファンには是非聴いてほしい。せめて試聴だけでもしてほしい。

どこが良いか語ります。

audible『精霊の守り人』

まず言います。バルサの台詞(読み方)が最高です。これです。これがバルサです。

どれくらい最高かというと、バルサの台詞でaudible登録を決めたくらいです。


はじめaudibleに登録するか迷ったときに、上橋菜穂子作品のナレーションで決めることにしました。

とりわけ『守り人』のバルサを決め手にしようと思いました。やはり最も長い物語ですから、ナレーターさんのバルサと私のバルサの解釈が違ったら聴くのは無理でしょう。相性を確かめようと思ったわけです。

幸い試聴できましたから、バルサの台詞の読み方を確認してみました。冒頭の牛車が青弓川に差し掛かるシーン、「第二皇子の行列か…」という台詞があります。完璧でした。即登録しました。


『精霊の守り人』はこれまでにもあらゆるメディアミックスがありましたから、そちらから入った方はそのイメージが強いのかもしれません。ただ私の場合は、幼い頃に出会ったハードカバー『精霊の守り人』の文面から立ち上がってくるバルサが、原初のイメージとして棲んでいたわけです。

アニメ版ドラマ版でバルサを演じていた方々もそれぞれに素晴らしかったのだけれど、やはり脳内には私だけのバルサがいて、そことはどうしても相容れない感じがありました。まあ当然と言えば当然です。アニメとドラマはそれぞれの媒体にあわせて再構成されているわけですから、キャラクターもそれに伴い変わります。作者曰く「原作が親ならメディアミックスは子」です。アニメのようなキャラクタリスティックでかっこいい女感も素敵ですし、ドラマのように仇が生きている故にまだ激情を抱えている精神の若いバルサもぴったりだったと思います。しかしやはりそれは原初のイメージとは異なるわけです。

で、今回のaudibleです。解釈大一致でした。私が文字で守り人を読んでイメージしていたバルサはこれでした。これくらい素っ気なく低く落ち着き払った凄みのある感じのバルサが聞きたかったんです私は。ありがとうございます。待っていたのはこれだったんです。

原作をそのまま読むわけですから、そりゃあ他媒体の雰囲気よりは近いはずでしょう。でもそれにしたって良すぎじゃないですか?

台詞の話ばかりしていますけど、勿論地の文も良いです。守り人の世界は奥行きとか重厚感とかそういう言葉が似合うと思うのですが、それを見事に声で表現されています。

ナレーションは大森ゆきさんという方です。audibleの他作品も担当されているようです。『守り人』のときは他と比較しても低めに発声されていて、そういうところが大変嬉しい。守り人って一応児童文学ですから、優しく読んでしまいそうなものですけれど、でも実際のところは非常に淡々と、そして殺伐とした空気感をもつ作品ですから、これくらい低く奥行きのある読み方が最も「らしい」んだよなあと、何度も聴きながら頷くことになります。

もう非常に良いです。戦闘や駆け引きの切迫感も、丁寧な心情描写も、こんなに生き生きと語れるものなのか…。世界を立ち上げるに相応しい方でした。
まだ『精霊』しかaudible化していないのですが、この人の声で全部聞きたいですね…。『天と地』第三部タンダの超重要シーンとか、「十五の我には」のジグロとか「ラフラ〈賭事師〉」とか、楽しみですね…。


各読者の脳内にはそれぞれのバルサが棲んでいるでしょうから、大森さんの朗読が、この記事を読んでくださっているあなたのイメージと合うかはわかりません。でもアニメやドラマのバルサは少しイメージと違ったという人は、可能性に賭けて視聴だけでもしてください。解釈が一致するかもしれないので。


audible『獣の奏者』

キャスティングが完璧です。誰ですかナレーターを平田絵里子さんに決めた人。ありがとうございます。


特に、かつてNHKアニメ「獣の奏者エリン」を見ていた人はぜひ聞いてほしいです。
平田絵里子さんというのは、アニメでエリンの母ソヨン、及びナレーションを担当された方なのです。

アニメは子供向けでしたから、母親の役者がナレーションをやることで、母親が子供を見守るような雰囲気を出していたのではないかと思います。

で、今回その方が、その優しくもどこか硬い(良い意味で)雰囲気をそのままに、全編(外伝刹那まで全部)読んでくれます。最高です。
地の文と母の台詞で「ああ、お母さんだ…」とアニメの記憶が一気に蘇ります。とりわけこの声で闘蛇編の序章3節「母の指笛」を読まれると、非常に心に来ます。アニメにおいても鮮烈だった母の死のシーン…世間では「トラウマシーン」と名高い大事件……。
アニメでは「お母さん!」という叫びと共に、エリンを乗せた闘蛇が遠ざかっていき、主題歌(スキマスイッチ「雫」)が流れるのですが、このaudibleを聴きながら、私の脳内では主題歌が自動的に大音量再生されていました。もうそれだけで登録した甲斐がありました。

アニメは闘蛇編、王獣編までなのですが、その後の探求編、完結編、そして外伝まで、全部お母さんが読んでくれてると思うと胸がいっぱいになります。

と、ここまで「アニメのナレーションと同じ平田絵里子さんが〜」という話を中心にしていたのですが、実際に聴き続けると、その感慨は抜きにしてもとっても良いです。

獣の奏者…というかエリンは静かな激情を抱えた女なのですが、それを見事に表現してあって最高でした。
だいたい母ソヨンも激しく頑なな女なので、平田さんのソヨンの優しいのに何かを抑えきっちり線引きして遠くを向いている感じ、私は大好きだったのですが、今回ナレーションでは、その親子に共通する業みたいなものが随所に感じられてああそういうところだぞと思いました。本当にありがとうございます。

audible『香君』『鹿の王』

(追記)
『香君』のナレーターも平田絵里子さんです。『香君』と『獣の奏者』は題材や雰囲気が似ていますが、『香君』は『獣の奏者』よりも激情が少なく諦念が多い静謐な作品だと思います。

(私のイメージは
柔『獣』⇔『香君』⇔『守り人』⇔『鹿の王』硬
激情『獣』⇔『守』⇔『鹿』⇔『香』寂寥と諦念
という感じです)

ですので当初は、どちらかというと『獣の奏者』の方が平田絵里子さん向きな感じがしていたのですが、改めて何度か聞くと、そんなことはなく、『香君』の静かに忍び寄る恐怖やさっと吹き込む風のような清涼さを完璧に表してあって、もうどちらもこの方じゃないと駄目だと思いました。



『鹿の王』のナレーターは男性なのですが、それも解釈一致でしたね…そう『鹿の王』はそうなのよ…。渋くて最高でした。

荻野晴朗さん、本当に良いです。あの物語は非常に淡々としているのですが、そのやり慣れた狩りの準備を黙って進めていく感じの読み方がまさに上橋作品で、美しかった。
個人的にホッサルの話し方がイメージ通りです。身分と技能と若さに由来する気位の高さが声に滲み出てるの最高なんですけど…。その声で『水底の橋』聴きたいんですけどまだですか…?

初期作とかもaudible化されるのかな、いずれ…。全部聞きたいものですね。


ときにこのaudibleのおかげで、「香君」のアクセントが平板(例:空軍/公開)でなく頭高(例:海軍/後悔)であったと分かったのはよかった。明君とか暴君とか細君とかと同じ感じなのでしょうね。これも音になって有り難いところです。ぜひ聴いてください。

とりあえず聞く方法

視聴は登録しなくてもできます。最高ですね。視聴だけでもするべきです。検索してください。
…いえ、やはり検索は不要です。リンクを貼ります。ここから飛んでください。


もしあなたがAmazon primeに入っていたら、audibleは3ヶ月無料で試せます。
3ヶ月の間にどれも聴いてください。

ただし先に言っておきます。
守り人はまだ精霊しかaudible化していないので全部聞きたかったら課金必須です。
私の心はバルサの最初の台詞を試聴したところでもう決まっています。全部聞きます。またサブスクが増える?仕方ない。この人の声で『流れ行く者』のラフラ〈賭事師〉が聞きたいので。


とりあえず8/18に『闇の守り人』がリリースされます。ぜひその頃にまた思い出してください。本当、ナレーター選んだ人天才だわ……。
大感謝……。


さあ、確かに伝えましたからね。
ファンとして。ファンへ。

それでは。

宇宮7号

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