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どうやってOKRを導入し運用するか

この記事はUMITRON Advent Calendar 2022 7日目の記事です。

はじめに

こんにちは。UMITRONのCo-founder / CTOの岡本(@um_takuma)です。今年も昨年に続きAdvent calendarをやることになりました。今年、イベントや採用面接などで会う人にAdvent calendar読みました、という声をたくさん聞き嬉しい限りです。ウミトロンのことに興味がある人に少しでも会社のことを知っていただけるようにやっていきたいです。
Advent Calendar 7日目は どうやってOKRを導入し運用するか という内容をお届けします。
ウミトロンでは今年の4月からOKRを全社に導入しました。OKRとは 「目標と成果指標(Objectives and Key Results)」という難易度の高い目標を掲げて進捗状況を確認できるようにするためにGoogle等でよく使われている手法です。国内のスタートアップでも導入している会社は多く、目標管理手法としてはある程度メジャーな手法だと思っています。
この記事ではOKRとはどういうものなのかということについては詳しく触れません。OKR自体について知りたい場合は「Google re:Work」のOKRのページを読み、「Measure What Matters 伝説のベンチャー投資家がGoogleに教えた成功手法 OKR」という本を読むのがよいです。OKRという概念を知ったときに出てくる疑問に対する答えはほとんどがこれらに記されています。

ではこの記事には何を記すのか。OKRは概念自体は簡単ですが、運用が難しいです。上記の本にも難しいということが繰り返し出てきます。ウミトロンで実際にOKRを自社に導入し、運用していくには会社の実態に合わせた運用方法が必要だと感じました。この記事では私達はこのようにOKRを導入し運用している、という概念と実態のギャップを埋めている部分について記します。このように考えたのは上記の本にのっている情報の中で具体的なOKRの例というのが一番役に立ったと感じたからです。概念がシンプルであるほど実態とのギャップは大きく、そこを埋める具体例こそが共有する価値があるものだと考えました。この記事の手法がそのまま他の会社で使えるわけではないと思いますが、これからOKRの導入を考えている、すでにOKRを導入しているが運用を改善したいと考えている人の参考になればうれしいです。


OKRを導入するためにやったこと

ウミトロンでは四半期に一度、「Q review」という全社での進捗を振り返るイベントを行っています。Q reviewでは各プロジェクトの四半期での進捗と次の四半期の目標の共有を行います。また会社全体に関わる大きな試みはこの場で発表しています。OKRの導入は全社員に関わる大きな試みであるので、その場で以下のようなことを伝えました。

OKRを導入する目的を明確にして説明する

まずはじめに全社員になぜOKRを導入する必要があるのか、OKRとは何か、OKRを導入することでどのような効果を得たいのかを明確にして説明する必要があります。ウミトロンではOKRの導入を意思決定した昨年後半にはコロナ下でリモートワークを業務を続け、その最中に社員も増えたことで以前の組織形態ではなかったさまざまな課題が出てきました。
例えば会社やチームの目標が明確ではない、自分の業務が会社のミッションにどう結びついているか・貢献できているのかわからない、ビジネスにおける優先度がわかりづらく各チームでの意思決定のスピードが遅くなっている、といった課題が社内からあげられました。
そこでこれらの課題を解決するためにOKRを導入すること、またどのようにOKRがこれらの課題の解決に作用するかということを説明しました。OKR自体に対する説明は上記のサイトと本の内容をまとめ展開し、また可能な限り一次ソースであるサイトと本を読むように勧めました。
これらの内容はNotion上にまとめ、全社員がいつでも閲覧できるようにしました。

OKRをどのような形で導入するか決める

ウミトロンでは組織構造に合わせて大きく分けて3つの階層のOKRを設定しました。

  • 会社全体の1年間の目標を表す全社OKR

  • 各プロジェクト、各チームの四半期の目標を定めるプロジェクト・チームOKR

  • 全社員が各個人毎に四半期の目標を定める個人OKR

全社OKRは1年に1回設定し四半期毎に振り返り、プロジェクト・チームOKRと個人OKRは四半期毎に設定し毎月振り返りを行います。これにより誰が、どのOKRを、どの頻度で設定するかを明確にしました。また、これらのOKRは期中の達成率の更新や途中でOKRを変更した場合の過程も含めて、全社員がいつでもどのOKRでも確認できるようにしました。
プロジェクト・チームOKRは全社OKRの、個人OKRは全社OKRとプロジェクト・チームOKRの達成につながるように設定しますが、100%つながるように設定しなくてもいいものとし、70%程度のつながりを意識して設定します。これは100%を目指そうとするとトップダウンな目標設定になってしまうためです。個人の裁量やフラットな組織を維持するためのバッファを設ける目的で70%程度を目安にしました。

会社と経営陣のOKRを公開する

OKRの導入を発表したときに、同時に今年度の全社OKRと経営陣3人の個人OKRを公開しました。会社全体のOKRが明確になっていないと、各プロジェクトや各ファンクショナルチームのOKRを立てる難易度が上がります。経営陣の個人OKRの公開は社員各個人がOKRを立てる際の参考になり、また経営陣も社員と同様にOKRの運用にコミットしていくというメッセージになります。また、経営陣の個人OKRは、会社OKRと100%対応していない、普段やっている全ての業務をカバーしない、経営陣のOKRを全部並べても全社OKRの達成を網羅的にカバーしていないといったOKRのもつ特徴を明示的に表すように設定しました。

最初から完璧を目指さない

OKRの導入・運用は難しいです。なので、まずOKRの導入・運用は難しいということを明確に伝えました。実際に運用していくと様々な課題が出てきます。OKRを立てるのに時間がかかり過ぎる、立てたOKRが会社の目指す方向とずれている、OKRを立てたが達成率が0のままになっている、雰囲気で達成率を決めてしまっている、などといった課題が出てきます。これらの課題は運用システムの改善だけで解決するものではなく、各個人がOKRに慣れ、よりよいやり方を学んでいく必要もあります。
最初はOKRを導入し当たり前にあるものとして定着させることを優先しました。OKRを実際に運用し理想の状態とのギャップを可視化するだけでも価値があること、課題は出てくるが運用システムを改善して解決し続けること、いいOKRの立て方などを見つけたら積極的に共有すること、といったメッセージを発しました。最初の1年は運用の練習・定着のための期間と割り切るくらいでもいいかもしれません。


OKRを運用していく上で改善したこと

OKRを運用していくと、いろいろと課題が現れます。そこでそのような課題に対してどのように解決していったかの具体例を一部紹介したいと思います。

KeyResultの達成率を計測する方法を決める

いくつかのOKRでは設定したもののKeyResultの達成率の定義が曖昧で何をしたら達成できるのか不明瞭、進捗があってもOKR設定時に予定していた目標が本当に達成できたのかどうかわかりにくい、という課題がありました。
これに対してはKeyResultの達成率の計算の仕方をOKR設定時に一緒に定義しておくことが効果的でした。不明瞭さ、曖昧さをなくすため誰が計算しても同じ達成率になるように定義します。KeyResultに数値目標が入っている場合は数式で達成率を定義できるところまでやっておくと良いです。数式の変数に値を入力するだけで達成率が計算できると振り返りにかかるコストが減り、より高頻度で振り返ることができるためです。Notionのデータベース機能の関数プロパティを利用して数式を定義したりもしていました。「XXをリリースする」のような目標はできるできないをゼロイチで表現するのではなく、「X月X日にXXをリリースする」のように期限を設定することで数値目標が入り計算可能になります。
目標によってはKeyResultに全く数値を入れることができないものもあるでしょう。その場合は事前に「XXができたら +10%, YYができたら +20%」のように達成率100%を分解した得点表のようなものを事前に定義しておくと計算可能な状態になります。
このようにしてKeyResultの達成率の計算方法を定義するということは計測可能なKeyResultを定義することと同義でもあります。言い換えればKeyResultを計測可能な状態にし、そのために必要な行動とそれによって得られる結果をより具体的に定義することにつながり、結果としてよりよいOKRの設定になります。

いつどこでKeyResultの達成率を確認するか決める

OKRを設定したら、そのOKRをいつどこでどのような頻度で振り返り進捗を確認するのかも決めます。プロジェクト・チームOKRと個人OKRは毎月振り返り達成率を全社員が確認できる形で更新しますが、振り返りの頻度は高いほど目標に対するズレや遅れ、達成のための課題の発見とその対応を迅速に行うことができます。そこでどのタイミングでKeyResultの達成率を確認するかを予め定義します。
実際には社内でプロジェクトやチーム単位で行われる週次ミーティングで確認することになります。OKR毎にどのミーティングで確認するか決めます。確認では、現在の達成率の数値、達成のために行ったこと、達成のために解決が必要な課題、その対応策などを議論します。またこのOKRはこのまま目標として追いかけていいのか、それとも現状に合わせて変更が必要なのかも合わせて確認することで状況変化に素早く対応できるようにします。OKRは途中で変更していいという大前提がありますが、自分から立てた挑戦的な目標を達成する前に変更することに心理的ハードルがある人もいます。しかし誤った目標に進むこと、その方向の修正が遅れることは会社に取って不利益しかありません。そこで、このように強制的にOKRが適切かどうか問う場を作ることで心理的ハードルを取り除きます。

どのKeyResultを誰がリードするか決める

プロジェクト・チームOKRは複数のObjectiveとそれ毎に設定された複数のKeyResultから成ります。運用していくと毎週のように進捗があり達成率が上がっていくものと1ヶ月経っても達成率が0のまま進捗がないOKRが出て来ました。このようなOKRは実は優先順位が高くなく、この四半期のOKRとしては不適切なものだったり、OKRが曖昧すぎて達成のために必要な行動がわからず進捗がなかったり、単純に誰がやるか決まってないままだったりします。実際に優先度が低いOKRであれば削除すればいいし、曖昧なOKRは定義を変更すればよいです。しかし、実は本当に重要なOKRであるにも関わらず誰も手を付けていないだけという場合は重要なOKRが達成されず、また重要さを再認識するまでに時間がかかってしまうという問題もあります。
この問題を回避するためにプロジェクト・チームOKRでは誰がどのOKRをリードしていくか担当を決めておくのが効果的でした。OKRを設定するときに同時に誰がリードする担当かも決めます。これはこのOKRの達成を担当だけで行うというわけではなく、担当が達成率に対して説明できる状態になっていることを意味します。達成率が0のままでも担当がその理由を説明できる状態であれば、OKRが放置されているわけではなく、どのような理由で達成できていないかその問題を明確にすることができます。理由がわかった上で実際は優先度が高くなかったり、OKRの変更が必要ということがわかれば遠慮なくOKRの削除・変更ができます。

最初から完璧を目指さない

繰り返しになりますが最初から完璧を目指さず、改善していくことで理想に近づけていくことを社内に共有しています。上記のような対策は運用開始して最初から行われたわけではなく、一四半期、二四半期とOKRの設定と振り返りを繰り返すことで地道に課題を発見しそれに対する対策として行ってきたものです。OKRの運用は難しいです。最初の四半期ではOKRが多すぎるという問題が多くのプロジェクト・チーム、個人で発生しました。それを経て最適なOKRの数の感覚がつかめ、優先度の低いOKRをあえて設定しないという共通認識が社内に作れました。測定可能なOKRも設定の達成率の計算方法の作り方で適切な行動の起こしやすさが明らかに変わります。そういう筋のいいOKRのパターンは実際にOKRの設定を回数こなすことで発見されたりします。
このようなものは一定のセオリーはありつつも自分たちの事業や組織によって変わるものなので、銀の弾丸のような解答はなく自分たちで見つけていく必要があると感じています。OKRを運用していく上で会社の事業を目標に向かって推進するだけでなく、OKRの運用を改善し続けるということも目的であるというメッセージを発しました。


OKRを導入した結果

このようにOKRの導入・運用は難しく今後も改善が必要ですが、組織によい効果が得られました。
一番の効果はOKRを導入することで会社、プロジェクト・チームの方向性が明文化されたことです。これにより誰からみても進むべき方向が明確になり各プロジェクト・チームが自律的に意思決定できるようになりました。方向性を明文化することで間違った方向に進むリスクがあるのではないかという考えもあると思いますが、実際は間違っている場合にそれに気づきやすくなり修正も容易になりました。方向性が明示されることで初めてその方向性が本来進むべき方向とどれだけギャップがあるのか、という議論が可能になります。方向性を示しその達成度も可視化することでやり方に問題があるのではないか、実はこの方向性は間違っているのではないか、ということに気づけます。また方向性が示されてないが実は示さなければいけない重要なことが他にあるのではないかということにも思考が及ぶようになります。方向性が示されていない状態では詳細な議論はできません。具体的な指標を作ることで、人は相対的に物事を計測できるようになります。

おわりに

ウミトロンでのOKRの導入・運用について行ってきた取り組みについて記しました。これらは行ってきたことの一部であり、他にも大小様々な改善を行っています。今は三四半期目が終わろうとしています。これまでの運用でOKRの方向性においては素早く現状を反映し修正したり、各プロジェクト・チーム、個人で自律的に設定できるようになってきました。しかし、野心的な目標になるような難易度調整という部分ではほとんど改善できてなく、これからの課題だと感じています。また組織の規模が更に大きくなった場合、今までとは方向性を180度変えるような大きな方向転換が必要な場合、というときに今までのやり方の延長でできるかどうかもわかりません。しかし、そのような場合でも最初から完璧を目指さず、着実に改善していくことができると考えています。


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