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【生産者のご紹介】自分が食べて美味しい魚しか作らない「本多水産」

養殖魚が苦手だった自分自身が、食べて美味しいと自信を持って言える魚を作るー豊かな海と美味しい魚を未来につなぐシーフードアクション「うみとさち」で実施したクラウドファンディングや、2021年2月から始まる量販店での実証販売で提供するクエを育てている匠の生産者、本多水産の本多さんをご紹介します。

本多水産の漁場

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本多さんの漁場は愛媛県の愛南町という、非常に養殖の盛んな地域にあります。愛南町の海は非常に透明度が高く、天気が良い日は南国のようなエメラルドグリーンとブルーの姿を見せます。時期により透明度は変わりますが、水深20~30m程度下まで見えることもあるそうです。

水温が高く、養殖に適した湾や入江が多い愛南町では、幾何学的な生簀が海にたくさん浮かぶ美しい風景を見ることができます。

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クエってどんな魚?

みなさん、クエがどんな風に普段過ごしているかご存知でしょうか?クエ自体を見たことがないという方も多いかもしれません。

こちらが本多水産のクエの生け簀の中の様子を撮影した動画です。いけすの底で大人しくしていますが、これは水深の深い場所で生息して餌を食べる時以外は大人しくしている習性によるものです。

ちなみにクエの稚魚は卵からかえったときはすべてメスです。メスとして繁殖を終えたのちオスへと性転換します。養殖のクエは繁殖前に出荷するため、生け簀の中のクエは全てメスということになります。人間ではとても考えられない、不思議なお魚なのです。

本多水産のクエはどんな環境で育つ?

衛星データを活用した水産養殖向け海洋データサービスUMITRON PULSEで取得したデータで、本多水産のクエがどんな環境で育っているのか見てみましょう。

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水温の変化 [℃]

クエは水温18度以下で餌を食べずに停滞しますが、本多水産の漁場は年間を通してクエに適した水温となっています。

塩分の変化 [PSU]

冬場は大気によって海表面の温度が下げられ、水が海表面と深い位置で混ざり合うため、水温や塩分は水深方向に一様になります。

波高の変化 [m]

波の高さは、冬場は穏やかで0.5m前後の日が多く、一方で台風の多い7~10月は波高が2mを超える日も多く、船を出せる日も限られています。

本多さんが養殖を始めた経緯

本多さんのお祖父様・お父様の代から養殖事業を愛南町で営んできたきましたが、お父様の代で倒産。船や漁具などは返済に当てられ、本多さんに残されたのは区画漁業権(養殖業を行う権利)だけ。それでも、「自分が何とかしないといけない!」という思いで、自ら本多水産を創業し直し、一人でまずは真鯛の生け簀6台から始められたそうです。

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海や天候といった自然が相手で変数が多い水産養殖。そのため、数十年にも渡り養殖に携わっている本多さんでも、自分の思い通りにいった年は一回もないと言います。

だからこそ、「自分が思い描いた理想の魚に近づけた瞬間が一番楽しい。難しい目標だからこそ、できた達成感は大きいし、難しさも楽しんだもん勝ち。」と笑いながら話します。

クエの餌へのこだわり

12年ほど前、新築祝いに養殖のクエをもらった本多さん。もらったものの、実は臭くてとても食べられなかったそうです。養殖を生業とする者として「自分でも食べたくなるようなクエを作ろう」と決心し、当時まだ珍しかったクエ養殖に挑戦しました。

養殖魚ならではの価値は、何を食べて育ったかが管理でき、消費者が安心して食べることができること。安心安全の追求のため、生餌やモイストペレットが主流の中、当時まだクエで使われることが無かった配合飼料を使用することに決めました。配合飼料であれば、どんな成分か、その産地はどこなのか、どれくらい配合されているのか、全て把握できるからです。

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<餌の種類>
生餌:イワシなど生魚の切り身
モイストペレット:生餌や魚粉を固めた半生の餌
配合飼料:栄養設計により原料の消化吸収性を高めた固形の餌

また、配合飼料は「自分で食べて心から美味しいと思える魚をつくる」ために、餌のメーカーと一から配合を調整してオリジナルの餌を作りました。味を優先し、脂肪分をなるべく抑えることによって、出荷サイズまで成長するのには従来よりも長い時間がかかることになりましたが、その分身がしっかりとして弾力があり、かつ加熱するとふわっとほどけ香り高い、とても美味しいクエをつくることができたそうです。

配合飼料を使うことは海にも優しい、と本多さんは語ります。生餌やモイストペレットに比べ、魚が食べ残した餌の水中への散逸率が非常に低くなるからです。

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さらに、餌やりの間にウミトロンの提供するテクノロジーを活用して、生け簀の魚のモニタリングを行い、海中でどのように餌を食べているのかを観察することで、より無駄な餌が発生しないような餌やりも心掛けています。

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(本多さんのご自宅でスマートフォンの画像を元に餌やりの極意を教わるウミトロンメンバー)

トレーサビリティーへのこだわり

クエ養殖を始めた当時、水産の世界ではまだ概念が確立されていなかった、トレーサビリティをしっかり担保することにも本多さんはこだわりました。安心安全という養殖魚ならではのメリットを消費者にしっかりと届けるためです。

本多さんはクエ養殖を開始した当初から現在に至るまで、人工種苗(漁獲した稚魚ではなく、人工的に孵化させた稚魚)である稚魚の履歴証明や、餌メーカーには原料となる魚粉の産地等の情報を含む品質証明の開示を求め、消費地に届ける際にはその情報を提示するようにしています。

また、養殖事業者の中には魚の病気を防ぐために抗生物質等の薬を用いる事業者もいますが、本多水産のクエでは薬を全く使用しないというポリシーがあります。生育密度を下げて広々とした生け簀で育てたり、付着物がつきにくい生け簀を用いて潮通しのよい環境を維持したりすることで、魚の健康に良い環境を作ることを心掛け、病気が出ないように工夫をしています。

クエ養殖への想い

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養殖の魚が苦手だった自分自身が、食ベて美味しくて安心安全だと自信を持って言える魚を育てる。その一貫したこだわりによって育てられたクエは、その身質と香りの良さで高い評価を得ており、首都圏向けでは百貨店の目利きバイヤーにも気に入られ、本多水産ご指名で注文が入ることも。

こだわりを持って美味しい魚をつくり、責任を持って消費者まで届け、喜んで食べてもらうこと。それが、持続可能な養殖の一つのかたちだと、本多さんは考えています。

ぜひ養殖の匠である本多さんの自信作のクエを、「うみとさち」シーフードアクションを通してご家庭でも堪能してみてください。

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